ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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文字数一万……ですって(ゆーちゃん風

いつもの倍近い長さですが、どうかお付き合いくださいませ。






EPISODE-44:対決、生徒会と模型部 後編

 私達は三戦目で勝てると踏んでいた。ユー、マサキちゃんが勝ってくれたお陰で、あと一歩だと――そう勘違いしていた。

 ジンナイは油断してはいけない。……だからこそなのに。

 決して強い訳でもなく、特別に機体がすごい訳でもない。なのにそれでも苦戦する不思議な奴、それが不知火陣内という男だ。

 

「シオリ君やメイ君のようにはいかないからね。……それにこれは“催し”だ。エンターテイナーとして、少しは皆を楽しませなくちゃあいけないよね? ミナツ君」

「…………そうね」

 

 ニコニコと陽気に語るジンナイの笑顔には、心底寒気がする。それに対して、ミナっちゃんは呆れたように静かにそう呟いた。

 ミナっちゃんが、ここまで追い詰められるのは正直予想外だった。私が苦戦する、あの歩く固定砲台(毒舌娘)すら苦しめただけはある。

 

「ミナっちゃん……」

「ツクモ先輩、もしかしたらミナツさんは負けるかもしれません」

「ちょっ、ユー!? アンタ何言って――」

「負ける可能性を示唆した……ってことはあるいは」

 

 肩を落とすユーに私は言葉を(つぐ)む。ミナっちゃんは負け戦を好まない傾向にある。マイペースではあるけど、意外にも負けず嫌いなの。

 だから敢えて負ける確率を割り出すということは、負けると分かってて戦うっていうこと。……現にミナっちゃんは絶賛苦戦中だ。

 

「前よりかは腕が立つようになりましたね」

「生憎、本調子なのだけれど」

「これが本調子とは……ご冗談を」

「それはこちらの台詞……よッ!」

 

 ア・バオア・クー要塞内部。ホワイトベースが痛々しい姿で沈黙している中、その傍らで響く銃撃音。ビームとビームの応酬戦は今も尚続いていた。

 だけれども重装型ガンダムは頭部と左腕を無くし、左脚も故障している半身不随のような状態。対するタソガレはその機体に傷一つ作ることなく、ドラグーンで応戦している。

 

「じゃあ、そろそろ終わらせようじゃあないか」

「まだ、ガンダムがこの程度で……」

「いや、終わりだよ」

 

 今まで空中に立つだけだったタソガレも、ようやく動き出す。――その手にハンドガンらしきものを持ちながら。

 そしてバトルフィールド一面に、ビームじゃないリアルな銃声が轟いた。

 

 

 

《BATTLE END》

 

 

 

 胸部を撃ち抜かれ、沈黙した重装型ガンダムの敗北によって、三回戦目は幕を閉じた。余りにも呆気ない終わり方に、未だ信じられなくなる。

 ホログラムが溶けた途端、視線の先にジンナイの顔が映る。だけど直ぐに逸らしては、ミナっちゃんを抱き締める。

 

「ごめんなさい、ツクモちゃん。……負けちゃった」

「別になんも悪くないわ。残る一戦、必ず私が勝つ。生徒会の思惑通りにはさせないんだから」

「次はあの子よ?」

「前のようにはならないわ。今日は一人だもの」

「……えぇ。でも私とユー君が傍に居ること、忘れないでね?」

 

 ミナっちゃんに逆に元気付けられた、私は小さく頷く。

 私は改めてバトルシステムへ向き直る。その手には、先日オーバーホールし終えたばかりのインパルスが握られていた。

 

『生徒会チームが初めて白星を挙げましたが、ピンチなのには変わらない! さてお次は最後の一戦、シャーロット選手対ツクモ選手! シャーロット選手はいつも通りのテンションか!? ツクモ選手はミナツ選手の仇を討てるのか!? お待ちかねの最終バトル! セットアップ!』

 

 今日恐らく最後になると踏んだニイミちゃんの言葉に、歓声が大きく湧き上がる。

 そして彼女は、自身のトレードマークと言えるユニオンフラッグ(イギリス国旗)柄のジャージをはためかせてバトルシステム前に立ちはだかった。その瞳には以前とは違う、闘志に燃えた青眼だった。

 

「フッフッフ、ツクモ! 今日こそはワタシとのbattle! Exciteなものにしまショウ!」

「そうね、私も貴女との二重奏(デュエット)を楽しみにしていたわ! ……今度こそケリを付けてあげる」

「Really? ワタシは負ける気なんて更々nothingデース! このMeteoriteで捻り潰してあげるネー!」

 

 止まることを知らないその減らず口、今すぐに閉ざしてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《GUNPLA BATTLE Combatmode Start up. Mode damage level set to“C”》

 

 バトルシステムが起動し、機械音声が鳴り響いた。

 

《Press set your GP-Base》

 

 カチャリと()め込んだGPベースに、データが映し出され、ロードが完了する。

 

《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. Field4, Base》

 

 プラフスキー粒子が散布されると同時に、二人の周りをホログラムが包み込む。更にバトルフィールド上には辺り一面が青白く輝く領域が展開され、そのフィールド中央には巨大なシャトルが置かれてあった。――そう、北極基地だ。

 

《Press set your GUNPLA》

 

 互いにガンプラが置かれ、台座に乗せられた二人のガンプラは、その眼に光を灯して覚醒する。手元のコンソールを握り締め、セットアップが終わりを告げる。

 

 

 

《BATTLE START》

 

 

 

「鷹野月母、インパルス! 出るわよ!」

「ワタシの出番ネー! Charlotte Eigar! Gundam Meteorite! 出撃しマース!」

 

 カタパルトから投げ出された先は、一面が氷の大地と化した北極基地。未だ吹雪が吹き荒れるこの基地に、たった二機のガンプラが落とされた。

 

「あの時とは真逆ね……」

 

 北極基地の南東側、海面付近に面した場所に降り立ったツクモは、ふと全国の決勝戦を思い出す。あの時は強烈な暑さを誇るであろうタクラマカン砂漠。……だが今回は北極基地だ。そこに少し笑ってしまう。

 

「結局、私が不利なことに変わりないのよねぇ」

 

 誰に言うでもなく呟くが、その思いは割りと切実である。ツクモの知る限り、ガンダムメテオライトと呼ばれるガンプラは、ベース機であるサンドロックと同じ局地戦を強く重視した機体だ。更には局地戦に耐えうる強度を活かして、その名の通り「隕石(Meteorite)」の如き突進力を持つ。

 だが今回は新しい装備を背負ってきている。マサキ達との案を元に作り出した、対重装甲MS用ストライカー。

 

「ま、今回は思いっきり()った斬ってやるわ」

 

 ニヤリと口許を歪めたツクモは、氷の地面を強く踏み締め、高く飛び上がった。

 

 

 

 その少し前、ツクモが南東に降り立った場所とは反対に、シャーロットは北西にある氷山でできた高台に降り立っていた。そこからは発射台に乗せられた、シャトルのオレンジ色の船体がよく見える。

 

「流石は八基も繋げたbattlesystemだけありマース。遠くが見えませんネー」

 

 夜空のような深い藍色と発色の良い白でカラーリングされたメテオライトは、シャーロットの仕草を真似るかのようにその左手を額に当て、遠くを眺める挙動をした。

 

「吹雪も強まってきマシタ。これは早く移動しなければいけマセン。……さあMeteorite! 楽しいshowの始まりデース!」

 

 シャーロットの動きに合わせ、右手を勢いよく突き出したポーズを取るメテオライトは、直ぐ様その高台から飛び降りた。

 降りた際の衝撃すらものともせず歩くメテオライトの視界に、赤く飛び出したものが見えた。――ツクモのインパルスだった。

 

「ここで会ったが……って何て言うんデシタっけ? まあ良いデス! ワタシの剣でslaughterしてあげマース!」

 

 意気揚々と物騒なことを言ったシャーロットは、その言葉の直後に背後から二本の曲刀(カットラス)を引き抜く。吹雪の中で、ギラギラと煌めく刀身が獲物を求めた。

 

 

 

 やはり邂逅するのはフィールドの中心点、シャトル周辺だった。

 跳ねるように飛び出したメテオライトが、最初の一撃とばかりにカットラスを振り下ろす。それに合わせて威力をシールドの表面で逸らしたインパルスは、片手で背中の異質な大剣を抜刀した。

 

「細切れにしてあげる!」

(のぞ)むところデース!」

 

 けたたましい騒音を伴って、今度はインパルスの一撃がメテオライトに打ち込まれる。……が、左手のカットラスで防ぎ、ギャリギャリと音と火花を散らしながら互いに離れる。

 

「チェーンソーとは、これまたnonsenseなものを選びましたネー?」

「ナンセンスとはお言葉ね。貴女のガンプラを倒すには丁度良いかと思ったんだけど。……マサキちゃんが思い付いてくれたのよ?」

「Oh! それは予想外デスネ。でもMeteoriteには傷一つ付けられマセン!」

 

 地上に降りても鍔迫(つばぜ)り合いが続き、会話をしつつもその手は止めない。

 インパルスが、今度は両手で振るった大剣――チェーンブレードで、横一文字に薙ぎ払うものの空を切る。跳んで躱したメテオライトは、カットラスをそのまま質量に任せて地面へと叩き付ける。

 力強くも大振りな一撃が交錯し、切って避けられ躱して切るという連鎖が起こっていた。

 

「あれからもう三年デスガ……その力強さは失われてないみたいデスネー……」

「貴女こそ……そのすばしっこさには磨きが掛かってるわね……」

 互いに息を荒くしつつ、視線を交差させる。

「お互い様デス」

「同感」

 

 その言葉を皮切りに、更に激戦へと傾くばかり。シャーロットは目で攻撃を追いつつ、その状況によって退く、躱すを繰り返しながら戦況を維持しているが、ツクモはチェーンブレードの威力に任せた一撃一撃でシャーロットの手数を奪っていた。

 思わず観客達が声援もなく静かに見守る程、会場は緊迫していた。パンパンにまで水を溜め込んだ水風船の如く、薄い膜が生徒達の緊張感を高め、それは伝播するようにツクモとシャーロットに犇々(ひしひし)と伝わっていた。

 

「やはり進展が無いのは厳しいデス。前々から準備しておいて損はありませんデシタネ」

「この期に及んで何を……っ!?」

 

 回避しながら淡々と喋るシャーロットに、ツクモは嫌な予感がしてならなかった。だがそれも束の間、地面から三機のガンプラが固い氷を砕いて出現した。

(ズゴックEにハイゴッグ……!?)

 攻撃に転じると直感したツクモは、ワンステップで大きく距離を取る。だがズゴックEもハイゴッグも、動くことはない。

 

「前のツクモとは段違いに用心深いデース。デスが、ワタシが()()()()()()()しか用意していないとでも思っていたのデスカ? Came on! ハイゴッグ達!」

 

 高らかに叫んだ途端、ツクモの後ろから三機、左右に三機ずつハイゴッグ達が出現する。水色の独特なシルエットが十一機、インパルスを囲み、前方ではメテオライトとズゴックEが佇んでいる。

 

「十二機って嘘でしょ!? 幾らなんでも出鱈目にも程があるわ!」

「これがワタシの実力ってヤツデース! ツクモもそんなものを背負ってないで、本気を出したらどうデスカ?」

巫山戯(ふざけ)ないで!」

 

 チェーンブレードを唸らせ、インパルスは一番近いハイゴッグを袈裟斬りにする。反撃する間もなく切り落とされたハイゴッグは爆散し、それを合図に他のハイゴッグ達が一斉に襲いかかってきた。

 

「無駄よッ!」

 

 振り返り様に薙ぎ払うも、一機を斬っただけで他は退く。更にインパルスの攻撃直後へ数機がハンド・ミサイルを撃ち込み、インパルスは体勢を崩しかける。

 しかも散開した挙げ句、ズゴックEまでビームカノンで応戦し始めた。多勢に無勢、まさしく一方的になっていった。……これがシャーロットの本来の戦い方である。

 

「Teambattleでは使いまセンが、One on Oneは別デース!」

 

 多対個での戦術は至極シンプルである。役割分担を決めて、それをこなさせるだけだ。時にそれらを織り混ぜて、自身すら駒に見立て戦う。

 その空回りしそうな、明らかなハイテンションからアホの子に見られがちではあるが、その実、指揮官としては立派な策士でもある。

 

「チッ」

「バイス・クローの使い方には、こんなのもあるんデスヨ! Here we go!」

 

 避けることに専念するインパルスへ、追い討ちをかけるかの如くハイゴックのバイス・クローが襲う――かと思いきや、インパルスの持っていたチェーンブレードを何の躊躇いもなく掴んだ。

 焦ったツクモは刃のチェーンを回転させ、バイス・クローごと断ち切ろうとするも、それさえお構い無しに他のハイゴックがインパルスの腕を掴み、握り潰そうとする。

 

「う、腕が……くっ!」

 

 握っていたチェーンブレードも過負荷で中折れしてしまった挙げ句、右腕も引き千切られてしまう。

 苦い顔をするしかないツクモに対して、シャーロットは無邪気に愉悦を覚えていた。かつての全国大会、決勝戦にて奥の手を使ってまでも負けた相手。それが今ではこれだ。

 シャーロットは、状況的に身動きが出来ないインパルスへ向かって歩みを進めた。両手に持ったヒートカットラスが赤熱し、赤みがかったオレンジへと輝く。

 

「ここでワタシが勝てば、延長戦にもつれ込めマース。今度はワタシが勝たせてもらうデース。……Are you ready?」

「フン、馬鹿ね。それだけで私が諦めるとでも思って?」

 

 尋ねるシャーロットへ馬鹿と一蹴したツクモは、掴まれた左腕を確認しつつ、インパルスでハイゴックを蹴りつけ、更には掴む手が緩んだことでサイドアーマーからアーマーシュナイダーを抜き出し、ハイゴックの(モノアイ)を潰す。

 邪魔するハイゴックが視界から消え去った途端、ツクモはユウキに向かって叫ぶ。

 

「ユー! ドラグーンストライカーMk-Ⅱの準備は良いわね!」

「お、おうっ!」

 

 ツクモに言われたユーは、取り敢えずポケットの中からドラグーンストライカーMk-Ⅱを取り出して投げる。

 すると山なりに飛んだドラグーンストライカーMk-Ⅱがプラフスキー粒子散布内に入り、それと同時にインパルスが跳躍した。

 

 

 

「……アンタ、本気出しなさいって言ったわよね? だったら見せてやるわ、ファンネル系を使わせた私の実力をッ!」

 

 

 

 インパルスの背負っていたストライカーパックが強制排除され、ドラグーンストライカーMk-Ⅱが背中に背負われる。カラーリングが赤から変わるこてはないが、性能も変わることはない。

 ストライカーパックからドラグーンが射出され、縦横無尽に駆け巡りながらメテオライトへ向かっていく。

 インパルスもまたその手にデファイアント改ビームジャベリンを握り、メテオライトへと突貫していく。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

「たかだかドラグーンが増えた所で、no problemデース!」

 

 迫ってくるインパルスに対し、シャーロットは焦りを見せつつハイゴックやズゴックEを操る。

 しかしドラグーンから放たれたビームが、インパルスの行く手を阻むハイゴック達を貫き、一直線へと止まることなく突き進んでくる。

 

「Oh shit! ワタシの大切なガンプラがっ!」

「これで………終わりよッ!」

「Not yetデースッ!」

 

 ビームジャベリンがメテオライトへ差し迫った瞬間、赤々と赤熱するヒートカットラスがビームジャベリンを切り裂いた。

 切り裂かれた途端に、ツクモはコンソールを後ろへ目一杯引き、メテオライトから離れる。

 

「嘘でしょ……」

「My brotherお手製のヒートカットラスは、特別なのデース。威力も強度もお墨付きってヤツデース」

 

 高らかに自慢するシャーロットは、ニヤリと笑っていた。

 メテオライトは、その手に持ったヒートカットラスを打ち鳴らす。金属特有のカンッと言う甲高い音が、その存在を強く示していた。

 

「ワタシのガンプラが全て落とされるとはunexpectedデシタが、削るには十分デース。このまま延長戦に持ち込んだ所で、ワタシ達のwinは見えてマース!」

「その慢心が敗北を生むってことを、教えてあげる!」

 

 ドラグーンを駆使して攻撃を仕掛けたツクモは、残ったもう一本のビームジャベリンを掴んで再び突貫する。

 

「芸がありまセンネー。無駄ってことを知ると良いデース!」

「あら? 足元がお留守よ?」

「煙? ……why!?」

 

 足元から大きく煙が出ており、シャーロットは一瞬動揺する――が直ぐに原因を突き止めた。

 滞空するドラグーンが放つビームで、地面の氷を溶かしているのだ。それによって起こる水蒸気が、この煙の正体。

 しかし感付いた所で遅かったことは把握しており、シャーロットは煙に呑まれる前にバックステップで回避しようとした。

 

「前かと思った? 残念、後ろからよッ!」

I didn't know when behind me(いつの間に私の後ろに)!」

 

 即座に振り向こうとするが、ピンポイントでドラグーンから放たれるビームに邪魔されてしまう。そこへビームジャベリンが、煙を吹き飛ばしながらメテオライトへと再び差し迫る。

 

「Oh no……Meteoriteが……」

 

 バックパックへビームジャベリンが突き刺さり、メテオライトは放電を起こしながら、前へよろよろと歩く。

 だが爆発も起こらないうえに機体もまだ動く。シャーロットはコンソールを強く握り締めて、最後の賭けに出た。

 

「これでッ!」

 

 突如インパルスへ飛来したことは、深々とインパルスの腹部へ突き刺さる。……そこにはヒートカットラス同様に赤熱したヒートマチェットが埋まっていた。

 その出来事に反応が遅れたツクモは、直ぐ様ドラグーンでメテオライトを集中砲火に巻き込む。……だが大した傷すら負っていない。

 

「ハハハッ……ワタシの勝ちデース……」

「どうかしらね」

 

 二人の機体は、その言葉を最後に光を失って、その場へと沈黙した。

 

 

 

《BATTLE END》

 

 

 

 最後の試合に決着が付いた途端、観客から拍手喝采が飛び交った。

 ホログラムが溶け、二人の顔が露になる。両者共に息を荒くして、肩を大きく上下させていた。

 

「やるじゃない、アンタ」

「ツクモこそ、very good」

 

 互いに認め合い、称賛し合うと同時にふらついたツクモを、ミナツが傍で受け止めた。無茶ぶりをかました幼馴染みであり親友を、ミナツは笑顔で抱き締める。

 

「もう、ツクモちゃんのおバカさん……勝つって言ったじゃない……」

「ゴメン……引き分けになっちゃった」

 

 ミナツの愚痴にツクモはちょっぴり舌を出す。恥じる気はないが、このまま延長戦になるのであったら少し辛いものを感じる。

 

「私もマサキちゃんも疲労があるし、ユーもバトルには――」

 

 ツクモがそこまで言った時だった。備え付けのスピーカーからニイミの声が響いた。

 

「最後の試合はまさかのまさかのまさかの! ドローで終わってしまったぁー! 引き分けは無効試合! ……と言う訳で第五試合目をぉ――ってジンナイ先輩、どうしたんですか? え? マイクを貸してほしい?』

 

 響いたのだが、途中から様子がおかしくなった。観客もその様子にどよめきだすと、スピーカーからニイミではなく男子にしては高めのジンナイの声が響く。

 

『やあ諸君、今回の“催し”は楽しんでくれただろうか? ……うん、どうやら楽しんでくれたみたいだね。ニイミ君の言う通り第五試合目、と行きたいんだが、時間の都合で今日はここまでとさせて貰うよ。また機会があれば、またこのような催しを開きたい。……それで許してほしい。今日はお集まりいただいてとても感謝しているよ。僕からは以上だ』

 

 長々と語ったジンナイの言葉に、観客もツクモ達も、唖然とした顔になる。

 しかし流石は統制の取れた学園か、お開きと言うことを理解した生徒達はがやがやと騒ぎつつも、ぞろぞろとアリーナを後にしていた。数分後に残っていたのはツクモ達模型部と、生徒会の面々のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マサキとシオリを除いた面々は、アリーナの中心で向かい合っていた。その場にはヤヤとアイカ、カグヤも居る。

 誰もが黙る中、ツクモが開口一番に不機嫌な態度を取った。

 

「アンタ……一体どういう風の吹き回しかしら?」

「おやおや、随分と嫌われているものだ。――それも仕方ないか」

 

 やれやれと言いたげにポーズを取るジンナイは、特に敵意を持つことなく嘆息した。少し間を置いてから、眼鏡の位置を直しながら再び喋り始める。

 

「簡単だ。シャロを欺き、敗北まで追い込んだ……それだけで僕の目的は達しているからだ。シャロは不満のようだけれども」

「Of course!」

 

 ジンナイの言葉にシャーロットは間髪入れずして答えた。その様子にジンナイは更に嘆息する。

 ツクモは自分が知らぬ内に、ジンナイの目的が見事達成されていたことが気に食わなかった。

 

「何で……私がアレを使えるようになったり、シャーロットを倒せることがアンタの目的なのよ!? 一体何を考えてるのよ、この腹黒眼鏡!」

「一応、誉め言葉として解釈しておくよ。そうだね、簡潔に言えば君達に勝って欲しいからさ、全国大会を」

『…………は?』

 

 模型部の間の抜けた声が、アリーナ全体に響く。

 依然とニコニコしているジンナイは、更に話を付け加えた。

 

「君達は当然、御三家の話は知っているだろう?」

「そりゃあ、日本では有名どころか常識だもの。歴代天皇から認められた三家で、日本の由緒ある家柄だと。それがどうかしたの?」

 

 ツクモの疑問に、ジンナイはふと溜め息を吐く。

 

 

 

「政治の日本(ヒノモト)、神事の神椎(カグツチ)。そして天賦の七種(サエグサ)。この名字に心当たりがないとは言わせないよ」

 

 

 

 ツクモ達はそこでジンナイの言葉の意味を覚った。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんな大袈裟なと一蹴したくとも、日本の象徴ともある天皇に絡む御三家ともなれば無視は出来なかった。

 

「シオリにカグヤにマサキが……? んな馬鹿なことがあるかよ!」

「あるから僕は言ったんだ。ユウキ君、彼女は――マサキ君はサエグサの人間だ。そして天賦を司る。……この意味が分かるかい? 彼女は生まれもって才能を授かった天才だよ。その子がガンプラバトルをしている。勝てるんだ、全国を!」

 

 珍しく語気を強めたジンナイは、その顔に焦りを表していた。焦りを知らない男かと思っていたツクモは、その顔に驚かざるを得ない。

 熱く語るジンナイに、ユウキは鼻で笑ってみせては冷めた眼でジンナイを睨んだ。

 

「ハッ、天才だから勝てる? ……マサキを道具みたいに言いやがって巫山戯んじゃねぇ! マサキだって――シオリやカグヤもそうだ、一端(いっぱし)の女の子だろーが! それをテメーは何だと思ってやがんだ糞眼鏡!」

 

 あからさまな怒りを露にしたユウキに、ジンナイもツクモ達も目を丸くする。

 

「ちっこくて、弄りやすくて力が強くて体力なくて、笑顔がめっちゃ可愛くて! あんな奴をお前の道具みたいに言うんじゃねぇぇぇッ!!」

 

 勢いに乗って呆気に取られていたジンナイを、勢いよくぶん殴った。そのまま宙を漂ったジンナイは、一メートル飛んだ所で地面に落ちる。

 シャーロットが第一にジンナイの傍へ駆け寄り、それ以外は誰一人として動けずにいた。

 

「ジンナイ! ジンナイっ!」

「くっ……あっ……後輩に面と向かって殴られるとはね……」

 

 空を仰ぎ見ながら、ジンナイは痛みを堪えてそう言う。シャーロットに抱き抱えられ、しばらくしてジンナイは上半身を起こした。

 

「……すまない、先程の言葉は撤回しよう。僕も熱くなりすぎた。でも勝ちたかったんだ、僕は」

 

 静かに呟いたジンナイに、シャーロットは肩を貸す形で立たせる。まだよろめきながらもユウキの目の前まで戻ってきたジンナイは、俯いていた。

 その姿を見ていられなくて、ユウキは口を開く。

 

「顔を上げてください、ジンナイ先輩。俺達はアンタに言われなくとも全国を勝つ。それまで生徒会室でふんぞり返っててください。絶対に優勝トロフィーを持ち帰ってきますから」

 

 先程の怒声からとは思えない、優しい声でジンナイに語りかけたユウキは、そのままシャーロットに保健室まで連れていってあげるように頼んだ。

 シャーロットもそれに頷き、メイもそれに付き添う形で去っていった。改めて残ったのはマサキを除く模型部面々のみだった。

 

「ったくユーは……私が殴ろうと思ったのに、何で先に殴るのよ」

「俺がマサキにしてやれることをやっただけだ。でもマサキが御三家とは……思えないな」

「そうよねぇ」

 

 二人して同タイミングで溜め息を吐く。そこへアイカが、傍に居たカグヤへ尋ねるように聞く。

 

「カグヤちゃんは知ってた?」

「いえ、私は知りませんでした。マサキさんがあのサエグサの方とはこれっぽっちも。……サエグサには私やシオリさんよりも年上の方が居る、とは知っているのですが……」

 

 自信無さげに答えたカグヤに、アイカはそれで十分と告げた。カグヤもそれに苦笑いで頷く。その間に考え込んでいたヤヤは、この場に来て初めて口を開いた。

 

「ジンナイ先輩は、どうやら相当固執しているようじゃったな。見ていておぞましかった」

「それは同感。アイツがマサキちゃんに固執していたのは初めて知ったけど、理由が酷すぎるわ」

「まあ改心してくれるのを待つしかない、か……」

 

 ヤヤのその言葉に全員が頷く。ジンナイは腹黒いし回りくどいが、道だけは外れない。そう信じるからこそ、模型部は後のことを生徒会に託した。

 

 

 

 

 

 何はともあれ、生徒会の仕掛けた催しは無事終わりを告げた。だが次は全国、まだ気は緩められない。

 

 




これにて三編に渡っての対生徒会戦はお仕舞いです。
それでは今回はちょこっとしか出なかったジンナイのタソガレと、メインであったメテオライトの紹介です。


タソガレ
武装:イーゲルシュテルン×2、ガーベラストレート、タイガーピアス、ドラグーン×8、対MS用ハンドガン×2
特殊機能:対ビーム防御・反射システム「ヤタノカガミ」
「HG アカツキ」をベースに、不知火陣内が作り上げた機体。アストレイGF天ミナを彷彿とさせる金と黒のカラーリングと、背中に背負ったストライクフリーダムのようなバックパックが特徴。
武装は頭部のイーゲルシュテルンに、アストレイRFの持つガーベラストレートとタイガーピアスの二振り、そして背部のウイングに格納したドラグーンと、腰裏の装甲に内蔵したM1911A1ガバメントに酷似した対MS用ハンドガンを装備する。
これと言って大まかな改造を施しておらず、シンプルな改造にのみ留めているが、陣内の実力によってその強さは計り知れない。
名前の「タソガレ」は、夕暮れを指す「黄昏」から。因みに「暁」は、明け方のことを指す。つまりは「アカツキと対になる機体」と言う意味合いが込められている。……決してエレファントなレディーと対にはならない。


ガンダムメテオライト
武装:頭部バルカン砲×2、ホーミングミサイル×2、ヒートカットラス×2、ヒートマチェット×2、ビームサブマシンガン
特殊機能:自爆
「HGAC ガンダムサンドロック改」を改造した局地戦用機。機体重量は高く、その突進力はまさに「隕石」。
武装は原典機にもあった頭部バルカン砲、ホーミングミサイルとビームサブマシンガンに、ヒートショーテルの代わりとなる新規金型で鋳造した特注のヒートカットラス、両腰のヒートマチェットを装備する。ヒートカットラスの切れ味は高く、叩いて斬るという使い方の為、威力は比較にならない程高い。
またこの機体は原典機と同様、司令塔として機能し、シャーロットの判断力も相まって十分に活かされる機体となっている。他に「MDビット」と呼ばれるMS型ビットを指揮することもでき、これ一機で最大十三機程操作することが可能。しかしそんな無茶が出来るのはシャーロットのみであり、他が十三機も同時に扱うと機体操縦が追い付かずに自滅するのだとか。
藍色と白色のツートンカラーが特徴。実は一人で日本に来る際に、大好きな兄から贈られた大事なガンプラである。


因みにタソガレは、蒼鋼さんから戴いた案を元にしています。蒼鋼さん、ありがとうございます!
次回では唯一紹介してなかったストライクインパルスを……(忘れてたなんて言えない、言えないよ……
さて次回は、再び新しい仲間の登場です。一体誰が模型部に入るんでしょうか?(すっとぼけ
ではまた次回、ノシ
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