ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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EPISODE-45:お茶会

 生徒会の催しから数日後、休日を利用して俺らはお茶会を開くことになった。なんでも「交友を深めるにはそれが一番」なんだとか。それこそ、ジンナイ先輩の粋な計らいってやつだろう。

 その為俺は男子として、準備に駆り出されているのだが……正直来なければ良かったと後悔している。

 

「ったく、なんでこんな堅っ苦しいモン着なきゃなんないんだ」

 

 俺はそう愚痴を呟きつつ、胸元のタイを少し緩めると、幾分か呼吸が楽になった気がした。

 だがまだやることは山積みとなっている。今こうしてローテーブルや椅子の用意、お茶や菓子類の準備などに精を出してはいるが、メイドさんに迷惑掛けてるんじゃあないかと、寧ろ心配になってくる。

 椅子とテーブルの用意を終えて、俺が屋敷へ戻ろうとすると、そこへ声が掛けられた。

 

「随分と頑張っておるようじゃのう、ユウキ。中々様になっておるではないか」

「誉め言葉として受け取っておくよ。俺はまだやることあるから、またな」

 

 声の主であるヤヤに振り向くこともせず素っ気なく返しては、急くようにしてそのまま屋敷へと駆けていく。まさかこの格好をとやかく言われるとは思わなかった。

 ……なんで恥ずかしくなってんだよ俺は!?

 顔が赤くなるのを感じて、深呼吸する。メイドさん達に無理矢理着させられたこの燕尾服、そんなに似合ってるものじゃねえだろう。

 おっと、そう言えば菓子類とか運ばなきゃなんないじゃん。

 思い出した俺は今頃菓子作りで奮闘しているであろう、メイドさん達のいる厨房へと早足で向かった。

 

 

 

 さあ、お茶会の幕開けだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準備が終わった、とだけメイドさん達から聞いて、私は恥ずかしさ半分でローテーブルの前に集まる皆を木陰の側で遠巻きに見ていた。

 アイドルでも歌手でもない私が、こんな格好をすればたちまち羞恥心に押し潰される。……目も当てられないよ。

 暗に私の格好は、この前のゴスロリに準ずるような格好だ。シルク素材の白地に緑の花柄レースフリルが特徴的な衣装だった。大きく蝶々結びで結ばれた帯のようなコルセットで上下に別れていて、上は着物みたいになっているけど下はゆったりとした大きめのスカート状になっている。これは俗に言う、和ロリというやつだ。

 勿論、恥ずかしがっている私だけじゃなく、先輩方や他の一年生組もそうなのだけれど……。

 

「何でこんな格好なの……」

 

 和ロリじゃなくとも、もう少しマシな服があったと思う。例えば、パーティードレスとか。

 これがヤヤちゃんの趣味ではないことも知っているから、恐らくは用意したメイドさん達の趣味なんだろうな。あの人と趣味が合いそうだ。

 私は嘆息して自分の格好を見回していると、アイカちゃんに見つかってしまう。

 

「お、マサキちゃん発見!」

「あっ、見付かっちゃった」

 

 そのままアイカちゃんに敵わず、ズルズルと引き摺られるように連れてこられた私は、アイカちゃんに抱かれながら観念したように項垂れる。

 

「マサキちゃんは安定の可愛さね! ヤヤちゃんの家のメイドは分かってるわね!」

「似たような格好をして言う台詞ではなかろう」

 

 アイカちゃんに褒められてるのかよく分からないことを言われつつも、ヤヤちゃんが呆れながらもそう言っていた。

 さっきも言ったし、ヤヤちゃんも言ったことだけど、私達は皆して和ロリの格好をしている。

 アイカちゃんはピンクの生地に白いレースフリルで出来た私とお揃いのデザイン。ただ腰にしていたコルセットが、帯に変わっているのがせめてもの違いかな。

 ヤヤちゃんは羽が橙色をしたモルフォ蝶のような髪留めでポニーテールに纏め上げつつ、肩と胸元が大きく露出した橙色の帯を持つ白い生地の和ロリで、やや多めな橙色のフリルと所々に蝶々が描かれている。妙にヤヤちゃんの衣装だけ力が入ってるけど、気の所為だよね。

 

「ヤヤちゃんの衣装ってすごい気合い入ってるよね」

「なっ!?」

 

 私が話題をヤヤちゃんの方へ向けると、それを理解していたらしいヤヤちゃんが頬を紅潮させて後退る。

 

「確かに、ヤヤちゃんの大きなお胸が強調されて……そんな格好でユーを落とせると思ったら大間違いよ!」

「別に儂はこれでユウキを落とそうなどとは! ……そう言うアイカこそ、わざと寄せて上げている癖に何を言うかっ!」

「な、何故それを!? ええい、ままよ! その胸触らせろー!」

「ぎゃあああっ!? こら、何をするか無礼者っ! ひゃあっ!?」

 

 ヤヤちゃんがアイカちゃんの所為であられもないことになっている最中、ユー君が回りに居ないことに安堵した私は、アイカちゃんの餌食となったヤヤちゃんに合掌しつつその場を後にする。

 次にテーブルへと移った私は、カグヤちゃんの隣に座る。

 

「あら、マサキさんもようやく来られたのですね。……ですが、ユウキさんはまだですか」

「あ、うん。多分私と似たような理由で出てこないだけなんじゃないかな?」

 

 ユー君が居ないことに残念がるカグヤちゃんは、ティーカップの中身を飲み干していた。余程ユー君が居ないことが不満なのだろうか、拗ねるような顔をする。

 カグヤちゃんの格好と言えば、巫女というイメージを踏襲してなのか、上は白、下は赤い生地で分けられていた。フリルや帯は黒と、これまた違ったイメージも湧いてくる。ノースリーブに二の腕で留めた振り袖と、袴のようなミニのプリーツスカートにその上で結ばれた帯、更には膝丈上のブーツと言う姿はどこか、髪の色と相俟ってダイヤモンドの名前を持った戦艦に似ている。髪型や口調は似てないけど。

 

「そう言えば、私が見たときにはユー君は燕尾服だったよ?」

「燕尾服!?」

 

 たったその一言を聞いただけで妄想へと入り込んだカグヤちゃんは、にへらと美少女らしからぬ顔で夢の世界へレッツゴーしていた。

 そんな時に、今度は私の隣にシオリちゃんが座ってきた。

 

「失礼。お隣座らせていただきます」

「ど、どうぞ……」

 

 なんと言うか、この子の喋り方は苦手かなぁ。どこか機械的と言うか。表情すら変わらない、人形そのものとか言ったら信じれそうな顔付きは、見ているだけで気まずい。

 すると隣でマフィンを一つ取っては、ハムスターのように両手で咀嚼し始めた。……こういう姿は可愛いかもしれない。

 

「疑問。先程からこちらを見つめて、どうかいたしましたか?」

「へっ!? ああえっと……その格好可愛いね!」

 

 思わず思考を悟られまいと本音が出てしまった。可愛いと思っていたのは事実だ。

 私のデザインとほぼ同じだけど、違うのは肩が開けて、振り袖を二の腕で留めている点だろうか。それでもモノクロカラーが随分似合うから、私のとは大きく違って見える。

 その私の言葉に予想外で面食らったのかは分からないけれど、表情を変えずに私をしばらく見つめては、再びマフィンを咀嚼する。

 

「……一応、私も普通には喋れるんですよ。ただユーが誰かとシャオを見分けられるように喋っているだけです」

 

 咀嚼しながらボソリと小さく呟かれたその言葉に、私は冷や汗と言うものを感じた気がする。世の中、知らなければ良いということはいくらでもあるんだと。

 私はどんな顔をして良いのか分からず、取り敢えず目の前に置かれてあったお皿から、チョコレートを一つ口に放り込む。……甘苦くて苺ジャムの味が美味しい。

 私がもう一つ口に放り込んだ所で、後ろから誰かに抱き付かれる。でも感覚からしてアイカちゃんではなかった。

 

「HEY! マサキは楽しんでマスカー? ワタシは楽しんでマスヨー! Here we go!」

「ちょっと、シャロ先輩!? あれ、何かお酒の匂いが……洋酒でも飲んだんですか?」

「そこのチョコレートケーキは食べたヨー!」

 

 いつにも増してハイテンションになったシャロ先輩は、一つのお皿に盛られたチョコレートケーキを座す。

 私は1切れを小皿に乗っけて、フォークで一つ食べてみる。すると私は一口だけでそれが何なのか分かってしまった。

 

「ぶ、ブランデーチョコケーキ……」

 

 洋酒が使われたケーキだった。微かに風味が口の中に感じられるけれど、流石に酔う程ではない。……もしかしてシャロ先輩はお酒に弱いのだろうか。

 

「マサキ、少し熱くなってきたので脱がしてクダサイ! これを一人で脱ぐのは少し骨が折れそうナノデ」

「脱がせませんよ!? 後でユー君やジンナイ先輩も来るのにどうするんですか!?」

「No problemデース! 世にはNudist beachなるものもあるそうデスカラ! ……ゲホッゴホッ!」

 

 いや、ここはビーチでもなければ他人の私有地ですから。裸体を晒すということはしないでください。

 そのまま咳が酷くなったシャロ先輩は、私を巻き込んで後ろへ倒れ込んでしまう。口元を抑えては顔を青くして、どうやら気分が悪くなったらしい。

 

「は、吐きそ……お、お手洗い……トイレ……」

 

 もう限界らしいシャロ先輩は、華奢なドレスを揺らしながら屋敷の方へ駆けていってしまった。

 嵐が一つ過ぎ去ったのを見て、私は再び椅子に座り直しては、小皿の上に乗っかったブランデーチョコケーキを食べきる。中々に美味だったのでもう一切れ小皿に乗っけていると、今度はツクモ先輩とミナツ先輩がやって来た。

 

「あら、マサキちゃんは安定の可愛さね」

「それ、アイカちゃんにも言われました」

「あらあら、見事先に一本取られちゃったわね」

 

 ツクモ先輩はコホンと咳払いしつつ、隣のミナツ先輩を睨む。それを気に留めることもなくミナツ先輩はクスクスと笑って、その手にマカロンを一つ取って食べていた。

 二人の服はそれぞれ同じデザインで、違うのは色合いだけだった。赤と黒がツクモ先輩で、水色と白がミナツ先輩。まるでアイドルの衣装と言っても通じるような、振り袖やスカートなど至るところにフリルが使われていて、それでいてくどくない感じに纏められているのが素直に可愛い。またツクモ先輩のは帯の左、ミナツ先輩のは帯の右にそれぞれ大きく結ったリボンがあって、結び目には大きめな宝石らしきものまで付いていた。

 両者共に歌手(片方はアイドルだけど)である為か、こんな衣装でも様になるぐらい着こなしていて、何故か尊敬してしまう。

 

「この衣装、二年前のライブを思い出すわね」

「確か、和服祭でのゲリラライブだったかしら?」

「……何かあの時を思い出した途端、歌いたくなってきたわ! ミナっちゃん、久々にアレを歌うわよ!」

「半分歌詞を忘れてるのだけど……」

「気合いで何とかしなさい!」

 

 余りに無茶苦茶なツクモ先輩の勢いに押され、ミナツ先輩は引き摺られていってしまう。

 すると最初から(あつら)えていたらしいステージの上に、マイク片手に飛び乗ったツクモ先輩が勢いよく腕を振り上げた。

 

「そんじゃあ元「Scar Tears」の歌、行くわよ!」

「……音源はあるの?」

 

 どんどんとテンションが上がっていくツクモ先輩を余所に、ミナツ先輩がメイドさんに尋ねているとどうやらあるらしく、既にセッティングは終えているのだとか。……周到と言うか、なんと言うか。

 

「満ちるは月、咲かすは華」

「散らすは涙、なぞるは傷跡」

「「“無双歌~全てを祓う鎮魂歌(レクイエム)~”Are you ready?」」

 

 ピアノの音色と共に始まった歌は、背景に桜が映り込みそうな歌だった。二人の歌う姿は懸命で、ステージを大きく移動しながら振り付けも完璧。息の合った二人の歌は、思わず聞き入ってしまうぐらいに没頭させられた。ツクモ先輩のアルトにミナツ先輩のソプラノが重なって、その周りに居た全員がステージ上を見つめる。

 そんな時、私の耳に聞き慣れた男声が聞こえた。

 

「懐かしいな。全国行く前にあったイベントで歌った歌だ」

「あ、ユー君」

 

 そこには今まで顔を見せなかったユー君が立っていた。その顔はどこか嬉しげで、綻んでいるのがよく分かる。

 しかし格好は執事そのもので、黒い燕尾服が格好よく思えるのが悔しい。

 

「あんな風に楽しく歌ってる先輩見んのは久しぶりだ」

「今は、一人で歌ってるもんね……」

「アイカが独り立ちできたらまた、ミナツさんと組むだろうさ」

「アイカちゃんが独り立ちって無理じゃない?」

「まあそう言うなよ」

 

 冗談めくように私が言うと、洒落にならないと言いたげにユー君が返す。

 やがて四分半ぐらいもの歌が終わって、ツクモ先輩はやり遂げた感満載で腕を振り上げた。

 

「あー、ミナっちゃんと歌うのは本ッ当に楽しい!」

「もう、ツクモちゃんたら……私もよ」

 

 珍しく恥ずかしがったミナツ先輩が、僅かに頬を赤らめながらステージを降りる。やっぱり、ミナツ先輩もツクモ先輩と歌うのが好きなんだ。

 すると拍手をしながらジンナイ先輩が現れた。……何故か彼だけ制服だった。

 

「やはり、何度聞いても飽きたらないね、君達の歌は」

「あ、ジンナイ。……まあ当然と言えば当然よ。それであれだけのファンがいるんだから」

「それもそうだね。失礼なことを聞いた」

「いいのよ別に」

 

 肩を竦めながら謝ったジンナイ先輩に、ツクモ先輩はさも当然のように許した。

 改めて全員(先程の都合でシャロ先輩はお手洗い)が集まったところで、ローテーブルを囲いながら談笑をする。そう言えば、全員とは言ったもののメイさんの姿が見えない。

 

「シオリさん、メイさんはどうかしたの?」

「回答。彼女なら家の都合で来れないそうです」

「あ……そっか」

 

 まぁ世界を牛耳る財閥のお嬢様なんだから、当然と言えば当然の話なのかもしれない。……ヤヤちゃんも似たような立ち位置の筈だけど、そんなことすら感じさせないような。

 すると唐突にジンナイ先輩が手拍子して、注目を集めさせる。

 

「さて、目的自体は既に達成しているけれど、僕はここへは別の目的もあって来た」

「……まーた始まったわ、ジンナイの回りくどい始め方……」

 ツクモ先輩の些細な突っ込みすら無視して、ジンナイ先輩は続ける。

「今後の全国大会について……だ。どうやら今年は少々特殊になりそうなんだ」

 

 勿体ぶるように話すジンナイ先輩の顔は暗い。何やら雲行きが怪しくなりそうな話のようだった。

 

「今年はPPSE社社長が直々に全国を見に来るらしいんだ」

 

 その言葉に私とヤヤちゃん、カグヤちゃん以外の全員が驚愕の顔色へと変わる。その顔から、私は段々と不安に駆られそうになっていた。

 そしてしばらく間を置いたジンナイ先輩が、またしても口を開く。

 

「今まで顔を見せようとすらしなかった、あの社長が直々に……となれば今年は大荒れの可能性もある。けれどもツクモ君やユウキ君は、勝ちたいのだろう? 全国で」

「当然だ」

「勿論よ」

 

 その問いに真っ先にイエスと答えた二人の目はいつにも増して真剣であった。

 

「俺には確かめたいことがある。その為に、全国で勝たなきゃならない」

「私も、ユーと同じ。……あの人が最後に残したメッセージの意味を知りたいの」

 

 堅い決意を感じさせるその瞳に、ジンナイ先輩は瞑目して頷く。

 

「分かった、なら僕は止めないよ。……あぁそうだ、今回ユウキ君の助っ人として、君達の部活にシャロを入部させたいのだが……」

「はぁっ!?」

「おや、ユウキ君は不満かな?」

「いや、不満なんて何も……寧ろ助かるけど、どうして」

 

 尋ねようにも口籠るユー君に、ジンナイ先輩は優しく微笑みかけながらも答えた。

 

「君達が全国に進むという意思は受け取った。……なら後は、僕達が君達の全国出場を支える。その為には尽力を惜しまないつもりだけどね」

 

 その台詞に誰もが言葉を失う。私も同じ気持ちだった。……なんで今まで敵対していたのに、なんで今になって掌を返すようなことをするのだろうか、と。

 でもそれには、ジンナイ先輩なりの思いがあったんだと思う、そう思いたい。

 

 

 

「君達、聖蘭学園模型部には僕らの思いが掛かっている。だから今回はストレートに言うよ。――優勝してくれ」

 

 

 

 黙って聞いていた私達は、深々と頷く。その期待に応えれるのなら、私達は進む。

 

「当然じゃない、バカ」

「俺達で優勝杯を持ち帰ってきてやりますよ」

「私達には勝利の女神が付いてるんです、心配しないでください」

 

 ツクモ先輩、ユー君、私がそれぞれジンナイ先輩の言葉を返しつつも立ち上がった。

 

 

 

 

 

 全国大会開催まで、後一ヶ月と僅か。

 

 






どうも、長らくお待たせしました(そもそもこの作品を待ってる人なんているのか?)。
ヤヤの和ロリですよ、マサキ達も和ロリですよ。でも可愛い美少女のイラストが描きたくても描けないんだッ!(血涙
稚拙な文をカバーするのにイラストは最適だけど、それが描けないんじゃあ意味がないよね。

どうも、体育祭の練習で腰を強打して下半身がうまく動かないカミツです。もう少しで将来の分岐点が来るのに何をしてるんだろうね。

次回から新章……と行きたいのですが、またしてもある人とコラボします。三度目のコラボ相手は……まぁその時のお楽しみですね。
ではまた次回、ノシ。
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