ラプラスの残骸が舞うだけの、静かな宇宙空間。
そこを特徴的なフォルムを持つ戦闘機のようなものが三機、編隊を組んで飛ぶ。そもそも真っ暗闇の中を赤、黒、白の三機が飛ぶのは、黒を除いてほぼ間違いなく目立つ。それらを駆る芳堂兄妹も、内心でそれを理解しながら飛んでいた。
「ユー兄ぃ、一機だけ異様に速いよ?」
「あぁ、それが
ユウキは赤に染まるデルタガンダムを駆り、バーニアから火を噴かして飛んでいく。ホノカとリリカもそれに置いていかれないようにと、必死に食らい付くとまではいかないが付いていく。
しばらく三機が進むと、前方から明らかに普通のガンプラとは思えないスピードで、接近してくるモノがあった。
「いよいよ、お出ましか」
「見つけた!」
両肩に新型装備を追加し、巨大なランスを手にしたヅダVDが、僅か一秒足らずでデルタガンダムへと接敵する。その間にも他の二機は相手となる小学生タッグを探すべく飛んでいく。
予想を遥かに超えたヅダの速さに、驚きの余り目を丸くしたユウキは、ヅダVDの突撃を
「全く、予想通り無茶苦茶だなぁオイ!」
「ユウキ君も中々のスピードだな。これなら楽しめそうだ!」
ヅダVDが再び攻撃体勢に入ると同時に、デルタガンダムを操作しては近付いてきたヅダVD目掛けて、ビーム・ショット・ライフルを放つ。
拡散したビームはそのまま大型ランスへと当たるが、低出力だったのか、それとも対ビームコーティングでも施しているのか、ビームをものともせずにデルタガンダムへと迫った。
「避けないだと!?」
「当たるのが怖くて突撃なんてするかよ!」
そのままヅダVDは、その手に持つ機体の全高ほどもあろうかという大型ランス「天津風」を片手で持ちながら、デルタガンダムへと叩き付けた。
「うっ……ぐっ!」
「今回の新装備、扱いづらいって話だが……最新型が負ける訳ねぇっての!」
「なら、俺のデルタに勝ってみろ!」
ビーム・ショット・ライフルをバックパックへと仕舞ったユウキは、シールドからビームサーベルを二本連結させ、完成したビームナギナタを振るう。
その様子を見て、リョウもまたこれは面白いと考え、迷いなくデルタガンダムへとぶつかった。
しかしたかがビームで壊せる程、天津風も伊達ではなく、数度ぶつかり合ったとしても壊れる気配はない。それを直感したユウキは、即座にビームナギナタをシールドへと仕舞う。
「……だったら直接、その体に叩き込んでやるよッ!」
「なにっ!?」
急に近付いてきたデルタガンダムに驚きを隠せないリョウは、急いでヅダを後退させようとするが、更に驚くべきことが待っていた。
「飛んでけ! サイコミュ・ガントレットォッ!」
突き出されたデルタガンダムの右腕が、なんと
その光景にリョウ本人も、見ていた周りの少女達も驚きを隠せない。
「腕が飛ぶってありかよ!」
「なんならファーストの終盤を見直してくるかぁ? ジオングが腕飛ばしてるだろうがよッ!」
ヅダVDの天津風から放たれる四門ものマシンガンすらも自在に躱して、遂には間近へと接近する。
咄嗟に天津風で防いだリョウだが、その勢いまで相殺できず、両肩に装備した新型装備ことフレキシブル・ブースター・ポッド「島風」を、後ろへ向けて全力で噴かす。
中々の攻撃力にリョウ自身も冷や汗が出るが、何とか防ぐことはできた。……しかしそうは問屋が
「まだ終わってねぇぜ?」
「……んなぁっ!?」
一息吐けたかと思いきや、いつの間にやらヅダの周囲を、先程ぶつかったデルタガンダムの右腕が飛び回っていた。
その光景に疑問を抱くリョウではあるが、直ぐ様その理由を目にする。若干見える黒いワイヤーのようなもの。――それは、
「ケーブルか!」
リョウは急いで切ろうと考えるも、サイコミュ・ガントレットはそんな暇すら与えてはくれなかった。
焦りがどんどんと募っていくと、直後に機体が勢いよく縛り付けられ、天津風と共にヅダVDを締め上げられていく。
「気付いたところでもう遅い。……さぁ、俺と踊ってもらおうじゃないか」
デルタガンダムから覗くピンク色のモノアイが、強かにヅダVDを睨み付けたのだった。
■
その頃、芳堂姉妹もまた残る二人とぶつかっていた。
「可変機対可変機っていうのも、中々乙なものじゃないか」
「それじゃあ今度はボクの番だよ!」
その手にドレイクハウリングを握るブレイヴは、周囲を颯爽と飛び回るデルタプラスを睨んでいた。一向に止まる気配すら見せないデルタプラスは、通常よりも幾分か大きく見える。
「普通のデルタプラスとは大分違うね。……でも、それだけだ」
「それだけじゃあないんだなぁ~! キミに落とせる? ファンネル・ミサイル!」
バックパックに背負ったディフェンダー・ユニットから、三十基ものファンネル・ミサイルが射出され、一斉にブレイヴを狙う。
「ただのミサイルじゃない……
複雑な軌道を描き、ブレイヴへと
ブレイヴの周囲に浮かぶのは鋏のような刃を持つビット――シザーファングであった。
「何ボーッとしてんのよバカ! 目の前の相手に集中しなさいっ!」
「……ああ、済まないねレイカ。私としたことが、
「この借り、今度返してもらうわよ!」
「良いだろう。直ぐにでも返してあげるよ」
レイカと言葉を交わした後に、ミオはブレイヴを変形させてデルタプラスへと接近する。
しかしその目の前を巨大な白い剣が横切り、ミオは急速変形でギリギリ止まる。するとそこには、かつて戦ったガンダムのように真っ白な、デルタカイが佇んでいた。
「ホノカはやらせないから!」
「とんだお相手が出てきたものだね」
軽口を叩くミオは依然として表情を変えずに、ドレイクハウリングを見舞ってやる。だが、それすら白い巨大剣に防がれた。
白銀の機体が交わる最中、反対に黒いデルタプラスと深紅のカースロードは機動戦へと突入していた。
「キャハハハハハッ! 全部ぶった斬れ、シザーファング!」
「しつこいって言葉、知ってる? 全門一斉射、始め!」
レイカの意思に応えるかの如く、シザーファングがデルタプラスを襲う。迫り来るそれらを撃ち落とさんと、ホノカは全身の火器を総動員させて迎え撃つ。
縦横無尽かつ無茶苦茶な機動を見せるホノカに、レイカは腕からGNバスターソードを切り離す。
「キャハハハッ、アンタ本当に面白い動きするわね。……良いわ、直々にぶった斬ってあげる♪」
「そっか、ならボクは全力で迎え撃つよ。全身全霊込めて、乱れ撃つだけだからねっ!」
仰々しく大振りに振り回したバスターソードを構え、カースロードが突っ込む。
それに対してMS形態へと変形したデルタプラスが、全身のミサイル、ビームライフル、ビームランチャー、ビームガトリングを惜し気もなくぶち噛ます。
「こんだけ動いて、こんだけ撃っても粒子が枯渇する様子もないって、どんだけ溜め込んでるのよコイツは!」
器用に避けて、斬って、シザーファングで死角を守りながら進む。我ながら感心する動きだな、と思いつつこの弾幕の中で的確にこちらを狙うなど、相手はコーディネイターかと一瞬悩んだレイカだが、そんな思考すら振り払い、目前で砲火を晒す敵へとただひたすらに突撃する。
やがてバスターソードの射程内へと入ったレイカは、迷わずしてバスターソードを振り
「これでいっちょ、お仕舞いよッ!」
「どうかな? ……リリカ、スイッチ!」
ホノカの突然の叫びに一瞬だけ面食らったレイカは、直後に目の前をビームが通過したのに気付く。
急いでその場から離れると、視界端にコの字型に折れ曲がった物体――フィン・ファンネルを目にする。それを確認すると共に白いデルタカイが迫り、今度は大剣同士の押し合いへと発展した。
ミオもまたドレイクハウリングでレイカを援護するも、ブレイヴの周囲をビームライフルの射撃が襲う。
「また君か」
「交互に遊んでくれなきゃあ、ボク達が退屈しちゃうだろう?」
「それもそうだね、思う存分遊ぼうじゃないか」
そしてこちらではビームライフルによる応酬戦が開幕した。
■
遠くで小学生組の激戦が繰り広げられる中、ラプラスの残骸の周囲では未だに赤いデルタガンダムとヅダVDが戦っていた。
ビーム攻撃がランスに効かないと分かったユウキは、即座にビームによる攻撃を破棄、そして肉弾戦へと変更していた。
「可変機で肉弾戦とか、機体が……っ!」
「あぁ、そんなモン、俺と変態科学者で何とかなったんだよ!」
ヅダVDの胸ぐらを左手で掴み、残った右手によって頭部を数回強打する。
しかしヅダVDも負けじと島風を噴かせ、デルタガンダムをラプラス表面にぶつけ、更にはぶつけた勢いを利用し、島風を百八十度反転させて強力な蹴りをお見舞いした。
「倍返しだぜ!」
「……んなろ……もう一発、サイコミュ・ガントレットォッ!」
今度は両腕から放たれたサイコミュ・ガントレットを見て、リョウはそこから伸びるケーブルに目を光らせる。
今度こそ、と思いながらヅダVDを正確に駆り、そしてシールド六型丙のシールド・シザーで断ち切る。
「これで右腕は使えない!」
リョウはそれを確信してから、もう片方も同じようにして千切る。
ただ宇宙空間にケーブルだけ伸ばしたデルタガンダムは、そんなリョウの声を聞きながらも、バーニアの推力に任せてラプラス表面に埋まった機体を無理矢理にでも宇宙空間へと放り出す。
そんなユウキの顔には一切の焦りも見えず、寧ろ口角が吊り上がっていた。
「一体いつから、
その台詞を言った途端、ヅダVDの背中を強く打つものがあった。
リョウもその攻撃に驚いて振り向くと、そこには動かなくなった筈のデルタガンダムの腕が浮遊していた。そのままデルタガンダムの腕へと帰投し、元通りに動いている。
「……ジオングと一緒なら、もう使えない筈……何故だ!」
そんなリョウの疑問に、ユウキは快く答えた。
「有線誘導式だと勘違いしてもらっては困るな」
「なんだと!?」
「そうさこれは、ただの……ただのエネルギー供給用の、ケーブルだぁぁッ!」
ユウキの叫びと共に再び放たれたデルタガンダムの右腕が、今度は天津風を掴む。リョウはそれを振り払おうと格闘するも、その間にデルタガンダムが近付いてきた。
「チッ、ならこうするしかねぇよな!」
リョウはコンソールを思いっきり押し込み、ヅダVDを即座に最大加速値まで引き上げる。
近付いてきたデルタガンダムを通り越し、更にリョウはスロットから一つの機能を選択する。
「ブースト解放!」
モノアイを強く光らせたヅダVDは、バーニア噴射の青白い炎で軌跡を残してスピードをぐんと上げる。そして最高速へと達した途端、ユウキのデルタガンダムへ向けて全力で突貫する。
「ハッ、良いじゃねぇの。だがなあ、まだこっちも終われねぇ!」
ニカリと笑ったユウキは、シールドをバックパックへと仕舞い、残った左手にビームナギナタを構える。
天津風の質量をものともしないヅダVDは、島風まで最大出力で噴かして天津風をデルタガンダムへとぶつけた。デルタガンダムの胸部装甲へ切っ先がぶつかった途端、ユウキは迷わず頭部バルカン砲で天津風を撃つ。更に左手で持ったビームナギナタを何度でもぶつける。
勢いを止めることすらないヅダは、衝撃波を伴ってラプラスへとデルタガンダムをぶつける。大きくめり込んだデルタガンダムの胸部を天津風が貫いていた。
「これも持ってけ!」
最大出力を維持していた島風を暴走させ、ハンガーユニットから切り離す。
暴走した島風はそのまま大質量のミサイルとなって、デルタガンダムへとぶつかり、ラプラスを巻き込んで核にも匹敵する大爆発を起こした。
「………っはぁ……あれが、ユウキ君の実力かよ」
アーニャに「話が違う」と文句を一言言いたかったリョウは、まだバトルが終わってないことにその言葉を飲み込み、未だに戦っているミオ達の元へと向かうのであった。
コラボ回も三話目。今回はバトルで始まってバトルで終わる。私のコラボ回では良くあることですね、ハイ。
ではデルタ三連発の一つ目こと、デルタガンダム改の説明をば。デルタプラスとデルタカイは次回に持ち越しです。
デルタガンダム改弐号機「彗星」
武装:頭部バルカン砲×2、ビーム・ショット・ライフル、ビームサーベル×2、サイコミュ・ガントレット×2、ビーム・ピストル×2、シールド
オプション装備:メガ・バズーカ・ランチャー
特殊機能:ウェイブライダー形態
ユウキが中学生時代に部長と共に作った
武装はこめかみ辺りに内蔵した頭部バルカン砲とサザビーも持っていたモード切替可能なビーム・ショット・ライフル、格納時はビームガンとして機能する外に連結させることでナギナタとしても使えるビームサーベルに、両前腕を切り離して使う有線式のサイコミュ・ガントレット、背面にマウントする小型のビーム・ピストル、そして変形用サブユニットとしても機能するシールドを装備している。サイコミュ・ガントレットは本家同様の有線制御に見えるが、実際は稼働時間を延長するエネルギー供給用のチューブであり、切断されてもオールレンジでの稼働時間が減少するだけで問題なく使用可能。
また今回登場はしなかったものの、オプション装備としてメガ・バズーカ・ランチャーが存在し、折畳機能と伸縮機構を併用して組み込んだ結果、出力を四十七パーセントまで落としつつ極限まで小型化させた代物。しかしその小型化の代償として、砲身が耐えられずに一回しか使用できないと言う欠点が存在する。
機体形状はジオン系機体のような流線形に一部仕上げられており、可変機構も問題なく作動するように考えられて作られている模様。
カラーリングはベース機同様、赤系統に染まっているが、一部オレンジと白の差し色が入っている。
また名称の末尾に付けられた「彗星」は、単に部長の趣味で名付けたものであり、GPベースにもそう記載されているが、ユウキ曰く「別になくても良い」とのこと。その由来は、第二次世界大戦後期、日本海軍主力機として名を馳せた大日本帝国海軍の艦上爆撃機「彗星」と、シャア・アズナブルの異名である「赤い彗星」から。
因みに機体名の最後に「改」と付いているが、デルタカイとは何の関係もない上、特に他意もない。
この機体は、N.Aさんが考案してくれたものに色々な設定を付け加えたものですw
N.Aさん、素晴らしい機体をどうもありがとうございます!
元々別の名前と素体にしようと考えていたのですが、デルタガンダムを調べていた際に(DOME-G用に設定された機体ではありますが)シャア専用デルタガンダムみたいなデルタガンダム弐号機を知ったので、素体をコイツにさせてもらいました。……赤と弐号機ってだけである人型決戦兵器を思い出すのは気のせいじゃないよね。
次回は小学生組が戦います。ではまた次回、ノシ