サンクキングダムの上空へと飛び出した二機のガンプラは、互いに真正面からぶつかりに行っていた。
しかし先攻はヤヤのウイングガンダムフェングファンからとなる。
黄色い光線が、直線を描いてトールギスⅣへと向かっていく。それを悠々と躱し、トールギスⅣはヅダVDも真っ青な速度でフェングファンへと接近した。
「嘘じゃろうっ!?」
余りに度肝を抜かれるような速度に、ヤヤですら驚愕せざるを得なかった。
しかし驚いたと言えど、即座に頭を切り替えて順応に徹したヤヤは、僅か数メートルと迫ったトールギスⅣ相手にビームソードへ持ち替える。そして寸前に迫ったトールギスⅣへとビームソードを突き立てた。
「真正面から来るとは、
「それ、よく言われる。けれどもそれが私の取り柄でもあるのよ」
「ほう? してそれが何になる」
「あら、簡単よ。相手に隙を作らせるの、よッ!」
――直後、トールギスⅣは加熱した頭部ブレードを使い、フェングファンへと躊躇いなく頭突きする。不意にそれを悟ったヤヤは、コンソールを後ろへ引き込み、フェングファンを下がらせる。
ビームソードを突き立てた部分には焦げ目のようなものしか残っておらず、突き抜けるどころか傷一つ見当たらなかった。
対するフェングファンは無傷。自身の勘の良さに感服せざるを得ないが、今はそんな暇もない。
「次はどんな隠し玉を持っておるのじゃろうな?」
「カッカッカ」と少女らしからぬ笑い方をしながら、ヤヤは楽しそうにトールギスⅣを見つめる。相手が予想以上の戦いを見せてくれるのなら、それは自分にとって都合の良いものだ。例え負けたとしても、それを次への
サクラも対峙して始めて、ヤヤの実力の一端を感じた。猪突猛進に突っ込んでくる自身のトールギスⅣすら避けず、寧ろその勢いを利用してビームソードを突き立てようとしてくる。そんな度胸は初心者――ましてや世界大会のファイターでも難しい。「恐れを知らない」と言えば聞こえは悪いが、それを成せる度胸こそが彼女の実力に繋がっているのではないか、と。
「堅いのが少し厄介か。寧ろ燃えてくるな」
「生憎私が勝たせてもらうわよ? 例えウイングガンダムだとしても、そんな装甲、貫いてあげる」
冗談めいて言ったヤヤに、サクラは自信満々に告げた。その右拳を強く握り締めて。
再びスーパーバーニアから噴射炎を撒き散らし、フェングファンも虹色に輝く翼を広げてトールギスⅣへと立ち向かった。
ビームソードが効かないとなれば、関節を狙うしかないと考えたヤヤは、まずは膝を狙う。見たところスーパーバーニアだけでなく、脚部にもスラスターが集中しているのが分かる。なら脚部を潰せば、と一考した訳だ。
「そこじゃっ!」
「させないっ!」
だが、あとほんの少しと言うところでトールギスⅣに捕まってしまう。振り払おうとしても、トールギスⅣの押すスピードが明らかに尋常ではない。
その所為で動くこともままならなかったフェングファンは、サンクキングダムの地面へとぶつかり、盛大に土埃を撒き散らした。
……だがトールギスⅣもそれだけでは終わらない。
「どんな装甲も、打ち貫くのみ!」
右腕を勢いよく振り上げたトールギスⅣに、ヤヤは嫌な予感に背筋を凍らせる。ただのパンチではないと。
しかしどう足掻いても、その攻撃を避けるのは難しかった。だが避けられないのなら――
(逸らせば良かろう!)
ヤヤは武器スロットからマシンキャノンを選び、射角が制限されていながらもトールギスⅣへ向けてバラ撒いた。頭部バルカンよりも倍の威力があるマシンキャノンは、それだけでも通常のマシンガン以上の威力を持つ。通常の装甲を持つ機体であれば、装甲を蜂の巣にすることすら容易い。
だがビームソードですら防いだ装甲が、マシンキャノンを受け付ける筈もなく、秒間で数十発放たれる弾は易々と弾かれていた。
「そんなものでぇぇぇっ!」
その事実にサクラも驚きを隠せず、腕を引き抜こうとコンソールを後ろに引いた。その間にもヤヤは、理屈など無視して、地面に埋まっている機体を動かす為、全身の推力を総動員させる。動きが止まったトールギスⅣを見て、ヤヤは更に前へとコンソールを押し込み、埋没した機体を無理矢理にでも脱出さることに成功した。
そのままマウントポジションを取るような形となっていたトールギスⅣすら押し上げて、フェングファンが空へ舞う。
「危なかったのう」
「なんて馬鹿力なのよ。相当重量がある筈のトールギスⅣを、押しやるだなんて……」
どちらも譲らない戦いはまだ始まったばかりと告げるように、舞台は空から地上へと移っていった。
■
俺はぶつかり合う二機を見て、どちらも「キワモノ」としか表現のしようのない機体だと、染々感じていた。片方は俺自身が作り上げたが、ヤヤのオーダーに合わせるにはああするしかなかったと言える。
「強襲、突撃が前提のガッチガチの近接機体に、扱いづらい高出力武装の使用が前提の高速機体。……
自分で言っているのもアレだが、俺は少なくともそう感じている。
あのガンダム達は、格好よさ重視で使う人は多いけれども、使用人口はその割りに少ないんだ。その理由は以前にもウイングを作った時に言った通り、武装の扱いづらさがあってのもの。それぞれが強い個性を持っている所為、ってのもあるんだが、いずれにせよ玄人向けと言えよう。
あのトールギスも、広義で言えばガンダムの内の一機だ。しかしそのキワモノ度合いはウイングゼロを除いて“どうかしてる”。過剰な程頑丈な装甲、バスターライフル程ではないにしろ威力は桁外れに高いドーバーガン、そしてパイロットにまで「殺人的な加速」と言わしめたスーパーバーニア。
それが更に重装甲かつあり得ない速度を持ち、近距離に特化したトールギスとなったらどうだろう? ……俺だったら身震いが止まらねぇな。
「何よあのデカブツ。ヴァーチェよりも酷いじゃない」
俺の隣でアイちゃんから貰ったらしいポッ○ーを
それ以外の皆は見慣れた様子だが、いくらなんでもこれは俺でも引くぞ。
「まぁ、ヤヤも言えた義理じゃないか」
改めてフェングファンを見ると、トールギスⅣに負けない速さ――一踏みで瞬間移動の如く動くとか、スーパーロボットでもあり得ない――で、ビームソードを見舞っていた。カグヤと渡り合えたヤヤの技量によるところも多いが、それに追い付くフェングファンもキワモノか。
「高出力・高機動」をコンセプトとしたフェングファンの強さは、ファイターによって大きく変わる。装甲も並み以上に備えており、火力もエピオンやウイングの装備を取ったことで過剰と言える。そんな機体を上手く扱おうとするには、どうしても立ち回りや武装の長所を上手く活用しなければならず、結果ファイター自身が器用でなければただのファイター泣かせだ。
そんな機体同士でぶつかり合えば、案外簡単に決着は付くものだ。
「でもやっぱり、どう転ぶかねぇ……」
染々とそう呟きながら、俺はこのバトルの行く末をシミュレートし始めた。
■
地上へと移り変わった戦場では、互いに一歩も譲らない争いになっていた。
どちらも(思想は違えど)ハイパワーの近接機であることには変わりないが、互いに
「ヒートロッドですら傷が付かんとは……これは手詰まりじゃのう」
「あんなに素早く動かれたら、当たる攻撃も当たらないじゃない」
ビームソードとシールド(ヒートロッド)というエピオンスタイルを取ったフェングファンと、左腕の3連装チェーンガンと両肩のクレイモアのコンボで追撃していたトールギスⅣ。
両者の睨み合いはしばらく続いていた。
(バスターライフルを無くす前提で、強引にでも接射させるか?)
(あの機動力を削ぐには、やっぱり突撃した方が手っ取り早いわよね)
考え付いたことを実行しようにも、相手の出方次第では不利になる可能性もある。……しかし動きを見せたのは意外にもサクラの方であった。
「分の悪い賭けは嫌いじゃないわ」
立っていた場所からコンマ数秒でトップスピードへと到達したトールギスⅣは、ほんの一瞬でフェングファンの眼前へと躍り出た。
「しまっ――」
「零距離……取ったわ!」
右腕に装備されたトールギスⅣの象徴を振り翳し、反対の左腕でフェングファンを掴む。今度こそ外さない為に。
しかしフェングファンとて、ただでやられる為に立っている訳ではない。フェングファンもまた、いつの間にか切り替えていたバスターライフルの銃口をトールギスⅣの胴に当てた。
「「貫けッ!」」
振り下ろされたトールギスⅣの右腕がフェングファンの顔面に当たり、トリガーを引いたフェングファンのバスターライフルがトールギスⅣの胴を突き上げる。
互いの攻撃が盛大に音となって周囲へ響き渡る。「ガコンッ!」と鈍い金属音を轟かせながらリボルビング・ステークがフェングファンの頭部を吹き飛ばし、特有のSE音を奏でながらバスターライフルがトールギスⅣの身体に風穴を開けていた。
それと同時に、銃身が急な接射に耐え切れず膨張した所為でバスターライフルが暴発し、フェングファンの右腕が更に吹き飛ぶ。
《BATTLE END》
夕空へと移り変わるサンクキングダムの中で、バトルはようやく終わりを告げた。
■
バトルが終わり、儂――私は近くのソファーに腰を掛ける。中々に座り心地が良い柔らかめのソファーは、包み込むように身体を僅かに沈ませる。
そうしてバトルの疲れを取ってくれるソファーに身を預けていると、そこへサクラさんがやって来る。
「さっきのバトル、悔しかったけど楽しかったわ。ありがとうね、ヤヤちゃん」
握手を求めるように手を伸ばされ、私はその手を取る。
「いや、こちらこそ礼を言いたい。良き勉強になった、ありがとう」
笑顔で返すと、サクラさんは私の隣に座る。黙っていれば中々に凛々しい横顔に、私はバトル前の台詞を思い出した。
(……見た目によらず、か。女が女を襲おうなど、世も末よな)
変わってしまった世の中を嘆きつつ前へ向き直ると、サクラさんがふと話し掛けてくる。
「ヤヤちゃんってかなり強いみたいだけど、いつからガンプラバトル始めたの?」
「つい最近じゃ。して何故、そんなことを?」
「別に他意はないわ、ただの興味本意。……そっかー、最近かぁー、なんかへこんじゃうなぁ」
軽く笑いながらも、サクラさんは言葉の通り、落ち込んだ様子を見せた。それもまあ当然か、と理解できるのにそう時間も掛からなかった。
年下で始めたのもつい最近となれば、負けた側として相当辛く感じてしまう。そうなるのも無理はない。
私は
「サクラ殿がへこむ理由はない。儂が勝てたのも、自滅紛いの賭博のお陰ぞ。……あのまま何も出来なければ、きっと儂が負けていた。サクラ殿の突進力は、何者にも劣らぬ速さと力強さであった。だから、その、へこまないでほしいのじゃ」
素直に言えない自分が恥ずかしいけれど、私はサクラさんに励ますように言った。これで立ち上がってくれるとは思っていないけれど、それでも。
そんな私を見て、悲しそうな顔から一転、サクラさんは明るい笑顔を再び見せて、私を抱き寄せてきた。
「私を励まそうだなんて、ヤヤちゃんは酷い子ね。私は前向きなのが取り柄なのよ」
抱き寄せられた状態でそう言われ、何か更に自分が恥ずかしくなってくる。でも、前を向いてくれたのならそれで良い。
「でもま、励ましてくれたのは嬉しいの。ありがとうね」
追い打ちだ。
そうとしか言いようのない言葉に、私は顔を赤くする。まるで見透かされているようで……私ってば、そんなに分かりやすい顔でもしているのだろうか? そんなことはない筈だ。
しかし次にサクラさんが言った言葉もやはり、私の心を見透かしたような言葉だった。
「ヤヤちゃんは少し素直なのよ。そこのユウキ君にも、少しは素直になってあげたら?」
「よっ、余計なお世話じゃっ!」
茶化すようにけらけらと笑ったサクラさんに、私は調子が狂うとばかりにその場を後にした。
その間にも、他の人が次の対戦カードを決めたらしい。
してその対戦カードとは――、
「はうぅ、私ですか?」
「決まった以上は……がんばる」
シオリさんとアイさんの二人と、
「それじゃあ、お姉さんが相手してあげる」
ツクモ先輩の三人だった。……あれ、三人!?
私は思わず首を突っ込むようにツクモ先輩に食って掛かった。
「ちょっと待てツクモ先輩! 相手は二人じゃぞ!?」
「そんなの、お構い無しよ。先輩の意地の見せドコロってヤツね」
ニヤリと何かを企んでいるみたいにして笑うツクモ先輩に、私は顔に手を当てながら溜め息を吐く。これは何を言っても無駄か、と。
ユウキも似たような考えに行き着いたのか、肩を竦めながらも同意してくれた。
「ありゃあ何がなんでもやるぜ」
「二対一で勝てると思うか?」
「なーに、この前サトシュウから戴いた秘密兵器を積んでるからな」
その台詞に嫌な予感しか付いて回らないが、私はどうにでもなれと投げ槍な感情を示す。それを悟ったユウキは「大丈夫大丈夫」と宥めるように言ってくれるも、やはり不安と心配しか残らない。
「先輩のアストレア用にアタッチメントや性能も調整してあるから問題すんなって。……それに、当たれば一撃だしな。粉砕! 玉砕! 大喝采! って訳だ」
「もう、訳が分からんぞ」
私は吐き捨てるように力なくそう言うと、既にバトルシステムの準備は始まっていた。
《GUNPLA BATTLE Combatmode Start up. Mode damage level set to“C”》
本日さ度目のこの音声は、変わらない語調で聞き取りやすい英語を喋る。
《Press set your GP-Base》
三人がGPベースをセットして、次のシークエンスに入る。
《Beginning [Plavsky Particle] dispersal. Field4, Base》
プラフスキー粒子が散布され、フィールドが形成される。今回は見たところマスドライバー施設と言ったところか。
《Press set your GUNPLA》
どの場所か、と探る間もなく各々のガンプラがセットされ、三人がホログラムに包まれる。
《BATTLE START》
「鷹野月母、ガンダムアストレアリペア! 出るわよ!」
「……御影愛、アストレイロストフレーム聖、行きます」
「神通志織、ヒルドルブ・グングニール、出します!」
三機のガンプラが、マスドライバー施設へと降り立つ。
そうなれば巻き起こるのは、必然的に楽しい遊びなんて生易しいものじゃないわけで、惨劇とはまさにこのことだろうと、私――夜天嬢雅八々は痛感するのでした。
キョ○スケは格好いい、エク○レンはネタ台詞の宝庫、はっきりわかんだね←とか言いつつ使っていない
どうも、入試が間近に迫って胃がキリキリと悲鳴を上げながらも、傭兵としてガチタン駆りながら「EGF!」と叫ぶカミツ(ミグラ○ト)です。
漢検、レポート、入試のことと、かなりてんてこまいでしたが、十一月は何とか平常運転に戻れそうな気がします(多分)。まだ気は緩められませんけども。
次回は当分先かと思いますが、次はあかいあくまと龍騎とガチタンの戦いですw
ではまた次回、ノシ
追記:今日はハロウィーンだけど、ハロウィーン回はまた来年ということで