ガンダムビルドファイターズ アテナ   作:狐草つきみ

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Collaboration EPISODE-22:“全てを焼き尽くす暴力”

 プラフスキー粒子によって再現された、パナマ運河を見渡すこともできる広大なマスドライバー施設――パナマ基地の一画に、赤く塗られたガンダムが降り立つ。しかしその背中には、ガンダムでは見慣れない装備が取り付けられていた。

 アストレアのコーン型GNドライヴに直付けされたその兵器は、ガンダムの兵装としては(いささ)か大型過ぎるものだった。その折り畳まれた砲身は、何よりも目を引く。

 それを意にも介せず背負わせているツクモは、ダメージレベルが『C』だからこそ使えると自負していた。

 

「サトシュウ君から貰ったこの装備……まさか二対一の時に使えるとは」

 

 ――夢にも思わなかった。

 その言葉を飲み込んで、目の前に大きく(そび)えるマスドライバーを見上げながら、ツクモは地面を大きく蹴り上げた。

 緑色の粒子を撒き散らして飛び上がると、やや遠くから1機が向かってくるのを確認した。

 

「……地上からじゃない? まさか、上?」

 

 高度を上げるのを一旦止め、周囲を見渡すが見当たらない。しかし直感した直後には――

 

 

 

「気付くのが、少し遅いわ」

 

 

 

 真上から攻撃が振り下ろされた。

 しかし目で追う前にコンソールを動かした為か、間一髪避けることに成功したツクモは油断したことに舌打ちする。

 

「チッ、さっきまで遠くだったのに、いつの間に……」

「……今のを避けるの?」

「お姉さんだって、一筋縄じゃいかないのよ」

 

 現れた相手、アイの言葉にそう返しては新装備「GNショットガン」を撃った。見た目が水平二連とそう変わらないショットガンから、拡散するように聖へとビーム弾が迫る。

 広範囲にばら撒くかの如く広がるが、聖は残像を残して消えた。

 

「質量を持った……いえ、これは!」

「……今度こそ取った」

 

 サバイヴストライカーから広がる「光の翼」を広げ残像を残しながらも、今度はこちらの番と言わんばかりに、聖はトリケロス改からビームサーベルを突き出す。

 だが負けじとツクモは左手に装備していた三日月状の剣を聖へと向けた。

 

「甘いわよ、散れぇッ!」

 

 三日月の内側から青白いビームが飛び出し、トリケロス改のビームサーベルがせめぐ。しかしアストレアの持つ剣は、勢いがとどまるどころか寧ろ増していき、トリケロス改を押しやった。

 押し込まれたアイも今の状況は不利と悟り、聖を下がらせる――そんな時だろうか。

 まるで聖が下がることを予期していたかの如く、斜め下から大量の弾丸が噴き出すようにアストレアを襲う。

 

「きゃあっ!? な、ななな何よ今の!」

「は、外しちゃった……でも次は当てる」

 

 ツクモも慌てる程の弾幕は辛うじて躱すことができたものの、アストレアを襲った張本人ことヒルドルブ・グングニールは立て続けにミサイルを放ってきた。

 複数のミサイルが高速で迫り、それを確認したアストレアはGNショットガンで迎撃する。

 

「上も下も逃げ場がない、ねぇ。良いじゃない、お姉さん楽しくなってきちゃった」

 

 ますます不利な状況だと言うのに、ツクモは口角をつり上げる。

(まずは地上から、かしら?)

 まだ聖よりもヒルドルブの方が戦いやすい、と判断したツクモは聖を無視してヒルドルブの下へと降下した。

 重装甲に包まれたその車体は、全高がヒルドルブよりも高いアストレアとしては幾分低めに見えるものの……その圧倒的威圧感、とでも言うべきものを醸していた。その両手に持たれた、四門のマシンガンを束ねたようなものも相俟(あいま)って、その印象を更に助長させている。

 まさしくこのヒルドルブには「要塞」という言葉が当てはまる。

 

「こ、こっちに来るの?」

「面倒な方から倒させてもらうわ!」

「その前に……撃ち落とします!」

 

 再びオートキャノンから、雨霰みたいな弾幕が飛んでくる。ツクモも長年培ってきたコントロールで弾幕を避けるが、それをハイスピードミサイルが邪魔をする。

 中々に手の込んだ防衛手段だとツクモは思うが、ただそれだけである。三日月状の剣を放り捨て(パージして)、腰の背にあったGNスナイパーライフルⅡへと切り替えた。

 そのまま砲身を折り畳んで3連バルカンモードとなり、ヒルドルブの頭上から掃射する。

 

「ま、真上!?」

 

 シオリが珍しく叫び、ツクモは一気に畳み掛けるかの如く迫る――のだが、

 

「ここでは終われません!」

 

 車体両側(サイド)からバーニアが点火、ツクモが近付く前に、その重量をものともしない軽々しさで移動した。

 当然、それを見たツクモは度肝を抜かれる。

 

「嘘でしょ! ヒルドルブがそんな動きってアリ!?」

「あ、アイさん、時間稼ぎお願いしても良いですか……?」

「分かったわ」

 

 そのままヒルドルブはブーストしながらアストレアから離れていく。それを追わんとしたアストレアの目の前に、今度は聖が現れる。

 

「……今の相手は……私」

「予定変更! まずは貴女から落とさせてもらう!」

 

 GNショットガンとGNスナイパーライフルⅡを同時に引き撃ちし、アストレアは聖から距離を取る。しかしシールドで受けた聖は、逆に距離を詰めようと接近した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遠目から二機のガンプラが戦っている最中、一人で戦わせていることを心苦しく思っていたシオリは、友達の為にと準備を急ぐ。

 ヒルドルブのその背部武装が変形し、右側ユニットがミサイルの発射台(カタパルト)となって完成する。次に左側ユニットからミサイルの弾頭部が推進器と結合、燃料を充填して弾頭が発射台へと乗せられる。即席で作られた弾道ミサイルはヒルドルブの全長を越え、大型弾道ミサイル(LBM)とも言うべきものが出来上がっていた。

 

「ヒルドルブのエネルギーを全部ミサイルに回して……っと」

 

 コンソールで的確に操作し、シオリは最終プログラムに入る。エネルギー(プラフスキー粒子)がミサイル内で高圧縮され、発射態勢へと突入。

 アイドリング噴射して、ミサイル後部から噴進煙を撒き散らし、巨大な弾頭を空の彼方へと打ち上げた。

 

「お願いだから……当たって!」

 

 距離がある場所からでも、はっきりと黙視できる程、そのミサイルの存在感は大きかった。

 勿論、アイやツクモもそれを視認しており、即座に戦闘を止めたアイはヒルドルブの方へと撤退する。

 

「何よ、あれ」

 

 頭上から降ってくるミサイルを見てツクモは、溜め息混じりにそんなことを呟いた。

 ああいう必殺系の武器は幾度となく見てきたものの、今回のパターンは初めてである。

 

「仕方ない、トランザム!」

 

 瞬時に赤い残像だけを残したアストレアは、ミサイルの着弾地点から離れる。

 そしてついさっきまでアストレアが立っていた地点は、地面がスプーンで抉り取られたような後を残して大爆発を引き起こした。

 

「当たっ……た?」

 

 不安げに呟くシオリは、よく目を凝らすものの、人型の影など一つも見当たらない、そんな時だった。

 

 

 

 ――目前から迫る高エネルギー熱源体が、一瞬にしてヒルドルブを呑み込んだ。

 

 

 

「へっ?」

 

 シオリが気付いた時には、ヒルドルブの右半身が見事に抉られていた。辛うじて撃墜判定にはなっていないようだが、半身を失っては動けない。

 余りに唐突過ぎて、シオリも反応が遅れてしまった。それに気付いた時には、落胆するようにシオリはアイに謝ったのだった。

 

「すみません、もう動けそうにありません……」

「気にしなくていい……後は私がやるから」

 

 気に掛けるようにアイはそう言うと、聖を動かして先の攻撃の元を辿る。するとそこには、巨大な砲を構えた深紅のアストレアが佇んでいた。

 

「何、あれ」

 

 その歪な姿に、アイもそう漏らさずにはいられなかった。ただ、危険だと言うことだけは犇々(ひしひし)と伝わってくる。

 そうなれば、やることは一つだ。

 

「……止める」

 

 全身のある一部分の装甲が展開し、コロイド粒子が散布。それと同時に頭部のVアンテナからビームが発振する。マガノイクタチを翼のように広げた聖は、その真価を発揮するように、優雅に空を駆け抜けた。

 やがてアストレアをレーダー上に収めた途端、聖は右側へ全速力で躱す。すると先程いた地点を、ヒルドルブの半身をも奪った弾が飛んでいった。

 

「あらら、外しちゃったわね」

 

 アストレアの砲を見れば冷却時間なんて関係ないように、もう次弾発射の為に構えている。

 そんな姿にアイは内心「化け物か」と思うが、それもまずはあの物騒な砲を潰さなければならない。

 

「攻めあぐねている、って感じかしら」

「………ッ!」

 

 一瞬、心の内を読まれたと動揺したアイに、ツクモは一つ尋ねてきた。

 

「そう言えばアイちゃんは、()()()()って知ってる?」

「……知らない」

「まあそうよねぇ、多薬室砲って言えば良いかしら」

「多薬室……砲」

 

 何となく想像してみるが、中々イメージが湧かない。まず「多薬室」の意味すら分かっていないのだから。

 ツクモはチャージを再開しながら、疑問符を浮かべるアイに説明を始めた。

 

「銃や砲は必ず、弾が薬室に装填されてからトリガーを引くことで、薬室内にある弾薬の火薬が爆発を起こして、その反動を利用して銃身又は砲身を通して螺旋を描きながら押し出される。……この多薬室砲は、それが幾つもあるのよ」

 

 ムカデ砲――それは第一次世界大戦当時にまで遡るらしいが、要約すると「薬室を増やして、弾の初速上げて遠くまで飛ばそうぜ!」と言うことである。

 しかしそれとこれと何の関係があるのか、とアイは思った。至極当然のことである。

 

「何が関係するの?」

「まあまあ慌てないでよアイちゃん。……この砲、GNギガキャノンも同じ原理になってるわ」

「つまり」

「絶対避けれないってことね♪」

 

 次の瞬間、アストレアの構える砲――GNギガキャノンから青白い爆発を伴った()()が射出される。

 聖もそれに合わせて飛翔体をギリギリを躱す。……が、スレスレを避けたにも関わらず体勢を崩され、更には背後で爆発が起こり、背中から押し出されるように聖は吹き飛ばされる。

 

「……機体が……っ!」

 

 爆風だけでもこの威力とは、何とも想像つかないことではある。しかし無理矢理押し出された機体をアストレアの方へ向け、アイはマガノイクタチを展開した。

 

「……今度は捕らえた」

「なっ、動けないからってぇ」

「全部、吸い取ってあげる」

「勘弁願おうかしら!」

 

 「ガバッ」と仰々しく開かれたマガノイクタチがアストレアを挟み、プラフスキー粒子を吸い上げるが、ツクモはGNギガキャノンを無理矢理にでもパージして素手で殴りつけた。

 聖はそれに耐え、今度はこちらの番だと言わん限りにビームクロー内蔵シールドからビームを発振させながら、アストレアへと勢いよくぶつけた。

 その攻撃によってか、アストレアの右肩が吹き飛び、ツクモは苦い顔をする。先程の攻撃で決着が付くと踏んでいたが、よもや避けられるとは想像していなかった。

 

「中々、思い通りにいかないものよねぇ……!」

 

 所詮、バトルとはそんなものである。実に分かりやすい相手はともかく、バトルは常に動きを見せる。「予想外」や「不測の事態」なんて言葉もあるが、そんなことは当たり前だ。それがなければ、見てくれる人(オーディエンス)も湧かないし、自分自身(プレイヤー)も楽しめない。変則的なのがバトルなのだ。

 

「だから……離れろっての!」

「あっ」

 

 残った左腕でマガノイクタチを退け、両脚で蹴り上げたアストレアはなんとか()け出すことに成功する。

 蹴り上げた衝撃でよろける聖だが、それでもランサーダートを一本撃ち込んでくる。それを何とか器用に、脇下を潜らせて回避したアストレアは、地面に倒れ落ちる。

 

「ショットガンだけでも――!」

「……もう、終わらせる」

 

 よろけから回復した聖に向かって、アストレアは上半身を起こしながらショットガンを構える。対する聖もトリケロス改を構え、突撃する姿勢を取った。

 一瞬の間を置いてから聖が動き出し、ツクモは最後の賭けと言わんばかりにタイミングをひたすら待つ。

 一定の距離を聖が詰めたのを見極め、ツクモはGNショットガンのトリガーを引き、聖もトリケロス改のビームサーベルを突き出した。

 

 

 

 ビームの散弾は至近距離で受けた聖の赤いフレームを貫通し、トリケロス改のビームサーベルはアストレアの胸をしっかりと貫いていた。

 

 

 

《BATTLE END》

 

 

 

 静かな屋内に、終わりを告げる機械音声のみが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バトルシステムから粒子が拡散し、三人の姿が露となる。フィールド上に落ちているガンプラ達も、先程の傷など無かったかのように平然と佇んでいた。

 

「うーん、惜しかったなぁ」

 

 終了直後、そんな風に開口一番呟いたのは、引き分けに持ち込んだツクモだった。まさか、GNギガキャノンが避けられるとは考えてもみなかった、というのが素直な気持ちだろう。

 対してツクモと戦った二人も、そんなツクモの言葉に顔を見合わせては苦笑いする。

 

「……面白いバトルができて良かった」

「私も……あんまり活躍はできませんでしたが、勉強になりました」

 

 アイとシオリのその台詞に、ツクモも「どういたしまして」と返す。それと同時に「こんなことも偶には良いかな」と思う。

 

「こうやって後輩と戦ってみるのも、案外良いのかもしれないわね」

「うむ、先輩後輩であれど、互いに切磋琢磨することに変わりはない。――そうじゃ先輩、今度マサキとやってみたらどうじゃ?」

 

 ツクモの発言にヤヤが頷くと、ヤヤは面白そうだと不敵に笑いながら提案してみる。しかしツクモは、

 

「え、遠慮しておくわ……」

 

 と負けしか見えないバトルに顔を青くしながら拒否したのだった。

 こうして回り回ってアーニャを除いた全員がバトルしたものの、しばらくアーニャの淹れたロシアンティーを啜っていたユウキが、対面で同じようにしてロシアンティーを飲むアーニャに尋ねる。

 

「さてこうして全員が戦った訳だが……アンは戦わないのか?」

「それなら問題ないお。データは十分取れた上に、明日はヴィーにも手伝ってもらうお」

「何をだよ」

 

 大体こう言う時に限って面倒事しか起こらないユウキは、内心断ることを諦めつつ聞き返す。

 しかしアーニャはニッコリ微笑むと、口元に人差し指を当てては、

 

 

 

「秘密だお♪」

 

 

 

 と隠したのだった。




どうも、進路云々が終わって通常進行に戻れたカミツです。ようやく小説も安心して書けそうです(笑)
やっぱりACネタは楽しいですね。続編出ないものか(切実
まあ、今回出したので「ちょっとお手伝い」できるツクモの装備の説明をば。


GNギガキャノン
ツクモが行きつけている喫茶店の店員から貰った、試作装備の改良版。GNドライヴに対応する為、アタッチメントなどが変更されている。見た目は左側にGN粒子を膨大な動力へ変換するGN粒子タービンとも呼べる円柱状のユニットがあり、右側には折り畳まれた二十一もの薬室を持った巨大な砲身を持つ。
使用時にはGNドライヴと直結した粒子タービンが展開しフル稼働し始め、折り畳まれた砲身が右腕のGN粒子供給用コネクタに接続されて、右腕を覆う形になる。またサブグリップを左手で持つことで安定性が増す模様。
トランザム状態で使用し、フル稼働したジェネレータによって供給されたエネルギーを全て砲身に回すことで、弾頭を音速で撃ち出す。相手は死ぬ(※ただしイレギュラーは除く消えろ、イレギュラー!)。
元ネタは焼け野原ひろしも使った、ある変態企業が産み出した規格外兵器と、その海外名。


……とまぁ、なんか怒られそうな気もしないではない兵器でした。後悔はしていない。
ではまた次回、ノシ
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