ハイスクールD×H ~龍と人間と世界の流れ~ 【本編完結】   作:みずしろオルカ

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 お久しぶりです。

 風邪と左腕負傷と歯痛からくる右顔面炎症を乗り越え、復活です。

 復活と言うか、右目が開くぐらいまで腫れが引いたので、残りわずかな所を書きあげての投稿です。

 会社側も理解ある対応をしてくれたので、早く治ることが出来ました。

 まぁ、明日埋め合わせで宿泊予定ですがw

 とりあえずお楽しみください。


第11話 地獄昇柱と家族

 小猫side

 

 

 大失態。

 

 今回の私の失敗はそれしか言い表せない。

 

 状況が不確かな状態での独断専行。

 勝手に突っ込んで、回復が必要な程のダメージを受けた。

 

 私一人が戦線から離脱すると言う単純な話じゃない。

 

 私の怪我を治すために、アーシア先輩が私に付きっきりになったし、ギャー君が付きっきりになってしまった。

 

 戦況を私中心で立て直す必要が出て来て、それで大きく私たち側を不利にしてしまった。

 

 あれがアザゼル先生のテストでなければ、あの場で全滅していてもおかしくない程の失態。

 

 自分が弱い事を自覚して焦っていた、そう言えば聞こえはいいけど、所詮独断専行の大馬鹿。

 

 だけど、海原先輩はこんな私を鍛えてくれると言ってくれた。

 

「そちらの屋敷へ飛べる魔法陣を俺とオーフィス、小猫の分を用意してくれるなら実家の施設で小猫を波紋戦士にして鍛えられる」

 

 と言ってくれた。

 

 部長の役に立ちたい。

 そして、この身体に流れる血と力を受け入れなければならない。

 

 でも、そのための覚悟が足りない。

 

 恥ずかしながら、乗ってきた列車にそのまま乗り、町に戻って来た。

 

 そして、海原先輩は電話を掛けると、そのまま別の列車に乗せられた。

 

 降りた駅から更にバスに揺られて着いた先が冬木と言う町だった。

 

 新都と呼ばれる場所に降りて、徒歩で大きな橋を渡り、洋館を超え、日本屋敷を超えた先にある大きめの古道具屋。

 

 そこが先輩の実家である『海原古道具店』だった。

 

 さすがは先輩の地元と言うだけあって、少しだけ饒舌に町の各所を紹介してくれました。

 

 橋を超えた先は住宅街と学園や寺などの生活感の漂う施設が多い。

 

 その中で古道具店は浮いた存在ではありましたが、橋の向こうの新都にも似合う店ではないので、意外と溶け込めているのかもしれません。

 

「ここが俺の実家だ。親父は居るかな?」

 

 中に入ると、いくつか古道具は普通の中古品ですが、中には魔力が漂う物もあった。

 

「魔力のある道具は気にするな。魔術師が買ってったり、売ってったりするんだよ」

 

 いえ、どんな道具屋ですか……。

 

 魔力のこもった道具が陳列されている道具屋って……。

 

「ソーゴの家?」

 

「ああ、子供のころ住んでた家だ。……親父、居ねぇのかな?」

 

 靴を脱いで、奥の部屋に入っていく。

 

 オーフィスさんも背中にくっ付いたまま奥に行く。

 

 残された私としては、勝手に奥に行くわけにもいかないし、商品を手に取るわけにもいかない。

 

 行儀が悪いですが、キョロキョロと店の中を見回す。

 

 シックな雰囲気に家電から古道具まで節操無く置かれている。

 

 よく見ると、魔力を帯びている道具は一スペースにまとめられ、その周囲には結界が張られている。

 

 一般客が買ってしまわないようにする工夫だろうか?

 

「親父いねぇみてえだな。塔城、上がっていいぞ」

 

 呼ばれた。

 

 店側から居住スペースへ移る扉を潜ると、一般的な家庭の空気です。

 

「地下にある施設が波紋使いの訓練場だ。っと、その前に……」

 

 いきなり、海原先輩が振り返ると、私の鳩尾に一撃を加えた。

 

「!? ガ、ハッ!」

 

 衝撃で肺から空気が排出され、横隔膜を刺激されたのか呼吸することが困難になる。

 

 痛みと衝撃で意識が朦朧とし、空気を吸おうと口を開けてもまったく酸素が供給されない。

 

 息苦しさで両膝をつき、喉を上げて少しでも息をしようともがく。

 

「特殊な方法で横隔膜を突いた。次に呼吸する時……」

 

 ようやく空気が吸えるようになった。

 その呼吸はいつもとは全く違う奇妙な感覚だった。

 

「それは波紋の呼吸となってお前の新たな技術となる。その感覚を忘れるなよ」

 

 その呼吸は一瞬で全身を満たし、あのドラゴンの一撃でまだ痛む身体をなにも無かったかのように回復させてくれた。

 

「小猫、ソーゴと同じ力。使い方覚える」

 

 そうか。

 

 これが波紋の呼吸。

 

 海原先輩が使う力の一端。

 

「……これからよろしくお願いします!」

 

 自然と先輩の背に礼をしてしまいました。

 

 

********************

 

 

 曹護 side

 

 

 一週間。

 

 塔城に波紋を教え込んでいた。

 筋はかなり良い。

 

 無理やり波紋の呼吸を覚えさせてから、効率の良い波紋の練り方や理論を文字通り叩き込んだ。

 

 以前に比べて、かなりの戦闘力向上が見られるはずだ。

 

 だが、彼女の求めている力はそんなものじゃないと言う事は理解している。

 

 俺も弟も死に掛けたある意味最凶最悪の修行に入ろうと思う。

 

「たった二十日で波紋を極めるのは不可能だ。だが、無理やりにでもそれに近い場所まで連れて行く」

 

 実家に来てから一週間だから残り十三日。

 

 それまでに、塔城を鍛え上げる。

 

「いいか塔城。これから連れて行く修行場は死と隣り合わせの修行だ。俺も弟も文字通り死に掛けた」

 

 グッと塔城の表情が硬くなる。

 

 いくら悪魔稼業で死線を潜っていようと、この修行は容易に命を奪っていく。

 

「どんな、修行ですか?」

 

「まずは案内する。……こっちだ」

 

 地下。

 

 我が家の地下には道場や修行場が作られている。

 

 これから案内するその施設もその一つだ。

 

「ここだ。名前を地獄昇柱(ヘルクライムピラー)、とりあえず行って来い」

 

「え? ……にゃぁぁぁぁぁ!?」

 

 問答無用で、大きな柱と深い底に溜まる油へと投げ落とす。

 

 ついでに、彼女の背にとあるシールを貼り付ける。

 

 ドボンッ!

 

 着水ならぬ着油した音が聞こえた。

 

 ここを登り切らなければ、飢え死ぬだけ。

 

 可哀想だが、強くなるためには必要なのだ。

 

 それに、下に懐かしい気配があった。

 そいつに任せるのもいいだろう。

 

 

********************

 

 

 小猫 side

 

 

 地獄昇柱と言う波紋の訓練施設。

 

 そこに着いた途端、海原先輩に投げ飛ばされて、底に溜まった粘度のある液体に落ちてしまった。

 

「ぷはっ!」

 

 なんとか顔を出すと、かなりの高さの柱と底に溜まっている液体、その液体は柱を伝うように上からゆっくりと流れて来ている。

 

「……これは、油?」

 

 すくい上げてみると、独特の粘度とわずかに色の着いた液体。

 何のかは分からないけど、確実に大量の油。

 

「その柱を波紋の力だけで登れ。この柱は波紋以外で登ろうとすると拒絶するぞ」

 

 海原先輩の言葉が柱の上から聞こえる。

 

「あと、悪魔の翼は封印させてもらった。波紋の力だけで頑張れよ」

 

 その言葉に翼を出そうとしてもなぜか出てこない。

 

 見ると、腰の辺りに奇妙なシールが貼られていた。

 

 これが、悪魔の翼を封印しているのだろう。

 

 だけど、私は波紋の修行をしているのだ。

 

 この処置も飲み込んで、柱に対峙してみる。

 

 かなり太い柱。

 

 表面は研磨されて、ツルッとしている。

 そこに上から油が流れていて握力や筋力で登るのは不可能だろう。

 

 全身が油で濡れているし、触れてみてもヌルッと滑ってしまう。

 

「まずは……コォォォ!」

 

 波紋を練って、くっ付く波紋を試してみる。

 

 掌全体を柱に吸着させるように操作する。

 

「これは……」

 

 自重を支えるだけで、かなり消耗する。

 

 練る量が足りないのと、消費量が多いのとでグングン力が減っていく。

 

 私は軽い方ですし、悪魔で戦車なので腕力も相当あります。

 

 それでもダメでした。

 

 軽い私ですら自重を支えるだけの波紋を柱に流していると、おそらく三回も手を動かせば限界かもしれません。

 

「曹護の奴も厳しいねえ。アイツがここをクリアした時は参護と一緒だったろうに……」

 

 後ろから聞こえた声に驚いて振り向くと、二十代前半の男性が立っていた。

 

 いつから居た?

 

 私が落ちて来た時から?

 いや、落ちて来た時に辺りを見渡しましたが、上以外にここに来る方法は無いでしょう。

 

 あそこから落ちて来て、それ以降落ちてきた音も衝撃も無かった。

 

 つまり、私が落ちて来た時にはここに居たことになります。

 

 猫又と悪魔の感覚を持ってしても、気付けなかった。

 

「あなたは……!?」

 

「ん? そう警戒するなよ、白猫ちゃん」

 

 なんでしょうか。

 

 海原先輩程の脅威は当然感じません。

 

 でも、彼以上に油断ならない雰囲気が目の前の男性から漂っています。

 

 もしかしてロンドンの時計塔に居るって言うお兄さん?

 

「コツを見せてやる。見て盗めよ?」

 

 そう言うと、男は油面を歩いて柱まで移動していきます。

 

 私は大体膝ぐらいまで沈んでいる油の池。

 

 それを、油面を歩く程の波紋を展開している。

 

 服装も油に濡れておらず、いつからここに居たとしても長時間波紋を展開して油面に立っていたことになる。

 それだけで、十分手練れだと分かる。

 

「波紋は一点集中が最も効率が良いんだぜ?」

 

 五指の先だけを柱に付けてスルスルとあっという間に上ってしまう。

 

 スッと足を柱に付けると、柱に対して垂直に立ち、こちらを見る。

 

「慣れればこんなことも可能だぜ? まぁ、曹護や参護もできるまで二年はかかってるし、すぐにゃできんだろうがね」

 

 恐ろしい程の波紋コントロール。

 

 しかも、柱に立ちつつ会話しながら、一切乱れていない波紋の力。

 

 理解できる。

 この人は海原先輩以上の手練れ。

 

「さて、お手本に戻りますかっと」

 

 元の体勢に戻ると、男の人はまるで遊ぶように片手で柱に対して垂直に立つ。

 

 逆立ちの様だけど、腕や体幹を支えているのは本人の筋力だ。

 波紋で強化されているとしても、支えるだけの筋力と持久力はこの人自身の物。

 

 侮れない。

 

「……見て、考えて、試せ。失敗を恐れるにはお前も曹護も若すぎんだ」

 

 衝撃を受けた。

 

 タンニーン襲撃。

 

 あの時以来、私は少し突っ込んだり自分で何かをすることを恐れている部分があったかもしれない。

 

 しかし、若いってお兄さんも十分若いでしょうに。

 

「お兄さんだって若いじゃないですか」

 

「ん? あー、そういやそうだったなぁ。いいじゃねぇか、白猫ちゃんよ? レッツチャレンジだぜ」

 

 そう言うと二カッと笑って見せる男の人は、海原先輩のご家族なのでしょうけど……。

 

 ……海原家の人間は、きっと人間のカテゴリから外れて、種族:ウナバラ とかそんな感じで図鑑に載っているのではないでしょうか。

 

 というか、誰が白猫ちゃんですか。

 

「見て盗む……。考えて、試す……!」

 

 五指の先だけで柱を捉える。

 

 波紋を流す部分を小さく、そこから勢いよく流し込む。

 

 悪魔で戦車な私です。

 

 腕力と持久力は人間の比じゃない。

 なら、五指から三指にして、柱を捉える!

 

「へぇ……」

 

 上の方からあの男の人のつぶやきが聞こえてきましたが、やはり集中力を切らせるわけにはいきません。

 

 確かに、練る波紋量と使用する波紋量が丁度いい状態になった。

 

 これならまだ柱を登っていける。

 

 

~~~~~~

 

 

「こうして登って見ると分かりますが、この柱はまっすぐじゃなくて上に行くにしたがって反っていますね」

 

「他を見る余裕もある。いいねぇ、曹護の奴も面白いの連れて来たなぁ」

 

 彼は笑いながら独特な登り方をしていく。

 

 逆立ちしながらとか、手本になる気ありませんね?

 

「一日以上経っているのに、まだ持つな。一日と半日で半分以上来るとは、良い傾向だ」

 

 なにが楽しいのか、ここまで一緒に並んでいる男性は隣でしゃべっている。

 

 ひたすら、ノロノロと登り続けているだけの時間。

 それで精神が圧迫されないのはこの人がこうして飽きさせない様な話や登り方をしているお陰……なのでしょう。

 

「発想良し、持続力良し、威力及第点って所か」

 

 この評価の仕方は海原先輩のと同じですね。

 

 やっぱりご家族の方でしょうか?

 

 これまで、これ見よがしに亀裂やら何やらが柱にありましたけど、罠の匂いがプンプンします。

 

 当然無視しました。

 

 海原先輩が波紋以外を拒絶すると言っていましたし、下手に亀裂に手をかけて休んだりしたら、大変なことになりそうですしね。

 

「……危機回避能力良しっと」

 

 何かを呟いていたようだけど、内容までは聞こえませんでした。

 

 何か今、壁に張り付いて回転しながら下りていくオモチャの逆ヴァージョンをやりながら登っていく姿はシュールです。

 

「結構いい訓練になるなコレ」

 

 斬新すぎます。

 

 人間の駆動じゃないですよソレ。

 

 こっちが死ぬ思いで登っているのに、すっごい余裕で斬新な登り方されるのも腹立たしいです。

 

 

~~~~~~

 

 

「ぐっ、後……一手!」

 

 あと一手で届くと言うのに、波紋が練りきれない……!

 

「ん!」

 

 大きな手に引っ張り上げられて、床にそっと置かれる。

 

 見ると、オーフィスさんと海原先輩が心配そうに見ていた。

 

「一週間の修行で地獄昇柱を登り切るなんて大したもんだ。一日休め、部屋に連れて行ってやる」

 

「良い娘じゃねえか。実力も潜在能力も、俺が太鼓判押してやるよ」

 

 一緒に登ってきた男の人。

 

 やっぱり海原先輩のお兄さんだろうか?

 

「うるせぇクソ親父。今ロンドンじゃなかったのかよ?」

 

 父親!?

 

 どう見ても二十代前半。

 高く見積もっても、三十前にしか見せません!

 

「ロンドン? ああ、呼び出しなら無視したに決まってんじゃん」

 

「バカか! 魔術協会の呼び出し無視するとか、仕置き人みたいなの仕向けられたら大変だろうが!」

 

「大丈夫大丈夫。逃げるのなら得意だぜ?」

 

「俺らにやお袋に迷惑がかかるんだよ……」

 

 おお、海原先輩が珍しく叫んだり、疲れた表情をしてたりしています。

 

 そっか、先輩もこんな表情するんですね。

 

 そう考えたあたりで、私は疲労と安心感から意識を失ってしまった。

 




 消費した徳用冷えピタ二箱。

 痛み止め二箱。

 一週間を乗り切るのに消費した量です。

 体重は三キロ減りましたともw

 買い物する時のドラックストアの店員の慌てた表情を今も忘れませんw

 これからも、ハイスクールD×Hをよろしくお願いします。
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