ハイスクールD×H ~龍と人間と世界の流れ~ 【本編完結】 作:みずしろオルカ
どうも、オルカです。
前回につなげる予定だった、だけど雰囲気的に分けるべきな、オーフィス視点。
短いですが、彼女なりの変化を、どうぞ。
ソーゴと出会った時のことは、今でも覚えている。
全てが灰色の世界で、たまたま呼び出された街。
静寂を邪魔する存在。
だから、殲滅した。
街丸ごと、二度と呼び出されない様に。
そんな時だった。
ソーゴは今の我の姿よりも幼い。
そんな年頃のソーゴも、街を燃やす炎も、それを消そうと奔走するソーゴの父親も、全てが灰色。
今考えれば、残念。
あの頃のソーゴは可愛い。
もう少し見たかった。
どうでもいい。
昔の我はすべてがどうでもいいと思っていた。
呆然と我を見つめるソーゴにも興味が無く、立ち去ろうとした時だった。
「まって!」
明らかに我に投げかけられた言葉。
我に話しかけた人間など、あの時の様に我を呼び出して使役しようとした愚か者ぐらい。
内容次第では、同じようにすることも考えていた。
「いつか、君の隣に立ちたい」
理解が追い付かなかった。
我にかけられる言葉は、恐怖か媚を売る様なものばかりだった。
「……? 弱いお前には無理」
その時に初めて、ソーゴを観察した。
どこにでもいるような子供。
珍しい力を少しだけ纏っていたが、それもソーゴの父親程じゃなかった。
「いつか、いつか絶対に。君を護るだけの戦士になるから!」
その時のソーゴの眼。
太陽の色、随分と忘れていた色。
全てが灰色の世界で、唯一見た光。
ソーゴの眼に見た。
それから、数年。
修行をしているソーゴを見かけた。
この数年で、どういう修行をしたのかわからない。
数年で今のソーゴとほとんど変わらない程にまで、成長していた。
それでも、あの眼。
太陽の様な暖かい色と光。
その頃から、我の世界は少しずつ色づいて来た。
禍の団の者達、暗い色と淡い色。
ヴァーリは淡かった。
黒歌も淡かった。
二人と一緒に居た者達もみんな淡かった。
シャルバもカテレアも暗かった。
曹操も暗い。
淡い色はソーゴを思い出したから、楽しかった。
暗い色は昔の我を見ているようで嫌だった。
ソーゴの色。
それを見ていれば、触れていれば、もっと世界が色付くと思った。
だから、禍の団を抜けて、ソーゴと過ごした。
この場所はすごい。
たくさん、たくさん。
いっぱい、いっぱい。
知りたいこと、やりたいことが溢れてくる。
お菓子が美味しい。
遊園地が楽しい。
トランプだとソーゴは弱い。
テレビゲームだとソーゴは強い。
トランプだと小猫は強い。
テレビゲームだと小猫は弱い。
トランプでもテレビゲームでも、我は強い。
でも、いくら勝っても、ソーゴも小猫も挑んできた。
それが楽しかった。
トランプだと小猫に時々負ける。
テレビゲームだとソーゴに時々負ける。
それが楽しい。
美味しいお菓子を食べるのは、嬉しい。
小猫が買ってくるお菓子はどれもおいしい。
ソーゴが作ってくれるお菓子は、沢山の発想があって、とても幸せになる。
ソーゴと小猫と、一緒にお菓子を食べながら、甘くておいしい・香りが心地いい・食感が楽しい。
あの頃の我と、今の我、どっちも我なのに。
別の存在の様な、気さえする。
我の隣、ソーゴはそこに立つだけの力を付けた。
その為に、ソーゴは命を削る。
こんなに暖かい場所なのに、無くなるかもしれない。
それが恐い。
無限の龍神という名前で生きて来て、多くの姿で、多くの視点で、世界を見てきた。
たくさんの敵と戦ってきた。
真なる赤龍神帝とも戦った。
でも、恐怖を感じたことは無かった。
その恐怖を、我はソーゴの喪失を想像することで感じている。
小猫がシャルバに殺されそうになった。
それだけで、我の力を全力で振るいたくなった。
友達が傷つけられた、これが怒りなのだと、ソーゴは教えてくれた。
気付いた時には、我の周りは綺麗に色付いていた。
世界は、こんなにも綺麗で、こんなにも多くの楽しみがある。
ソーゴは教えてくれた。
そして同時に、ソーゴが死んだ時。
また、あの頃の様な世界になる?
灰色で、味気無くて、誰も居ない。
嫌だ。
ソーゴは一緒に居てくれる。
我の隣で、笑ってくれる。撫でてくれる。抱き締めてくれる。
でも、人間。
ソーゴは、百年も生きないかもしれない。
無限の時を生きている我にとって、百年という単位はまばたきする様な一瞬の世界。
それなのに、この数年間。
瞬きよりも短い期間が、我にとって初めての事ばかりだった。
初めてお菓子を食べた。
初めてトランプをした。
初めてテレビゲームをした。
初めて料理をした。
初めて友達が出来た。
初めて隣に立ってくれる者に出会えた。
今まで生きてきた時間が、本当に薄く感じた。
この数年が、とても輝いて見えた。
あの日、ソーゴの眼の中に見た輝き。
ソーゴの波紋は、あの輝きに似ている。
あの日、我の隣に立つと誓っていた時の眼の輝き。
だから、我はソーゴの波紋が好き。
ソーゴの息遣いが好き。
ソーゴのトクントクンが好き。
それが、残り百年も無い。
恐い。
怖い。
こわい。
悲しい。
寂しい。
辛い。
ソーゴと一緒に居て、楽しい気持ちだけじゃなかったけど、いろんな気持ちを覚えられた。
感謝している。
ソーゴ。
一緒に……生きられれば、我は……
本当に短いですが、22話でした。
次回からロキ編を予定しています。
それが終わったら遂に完結です。
しっかりと書ききりたいですね。