ハイスクールD×H ~龍と人間と世界の流れ~ 【本編完結】   作:みずしろオルカ

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 少々遅くなりました。

 七話目の投稿です。

 説明回になるので、苦手な人はごめんなさい。

 そしてチートに磨きがかかる。


第7話 傷と弟とチートな先生?

 小猫 side

 

 海原先輩は時々部室に訪ねてくる。

 依頼を受ける為なのでしょう。

 

「海原先輩は、どうして駒王学園に入学したのですか?」

 

 部室で先輩に依頼をしていた時に、私は何気ない疑問を提示しました。

 

 ある意味当然の疑問でもあります。

 

 駒王学園は悪魔や訳ありな人間が通っている、ある意味で平穏とは程遠い場所だと言えます。

 

 魔獣使いの家系の先輩もいますし、海原先輩が望む平穏はここに来ること自体、難しい事だと思える。

 

「ここにしか入れなかったんだよ。この学園が悪魔やそれを認識している生徒を受け入れているのは知っているよな?」

 

 当然です。

 

 一般生徒の方が多いのは当然ですが、それでもこの学園の特殊な事情を持つ人間はかなり多いです。

 

 しかし、それには確実に通る関門がある。

 

「貴方が特別な事情があるなんて、私もソーナも知らんかったのだけど……」

 

 そうです。

 

 部長や生徒会長という上級悪魔。

 

 この二人の許可を取らずに、この学園に来る意味は無い。

 

 そして、先輩は以前に魔術師の家系であり、波紋使いの家系であると言っていた。

 

 その情報は私も、部長も知らなかった。

 

「実家がそういう方面にしか進学させてねぇんだよ。兄貴はロンドンの時計塔だし、俺は駒王学園だ」

 

「三人兄弟ではなかったかしら?」

 

「弟は行方不明中だよ。四年になる」

 

 驚いた。

 

 海原先輩にはそれを背負っている悲壮感が無い。

 

 言葉にしている時すら、家で寝ていることを報告するような気軽さで話していた。

 

「そ、それはごめんなさいね……」

 

 でも、さすがに家族が行方不明である事実を聞かされて、戸惑わない程私たちは失礼な対応を出来はしない。

 

「別にかまわん。話を戻すと、ウチは魔術師と波紋使いの家系だから自主的にそういうのを集めている学校を親父から勧められる。特に俺は中学校はまともに通ってなかったからな」

 

 どうやら先輩は中学2年生から一人で世界を巡る武者修行の旅に出たと言う話です。

 

 その荒唐無稽で規格外の強さに納得がいくような話でした。

 

 入試試験の前に帰ってきて、親の勧められた高校を受けてそのまま入学。

 

 そしてまた入学まで放浪していたと言う呆れた経歴だった。

 

「では、先輩の右腕の傷はその修行が原因ですか?」

 

 佑斗先輩がビックリする情報を言ってくる。

 

 さすがに、長袖の制服の下を見る機会なんて……普通は無い。

 

 私も海原先輩の家に行きましたが、裸なんて見る機会はありませんでした。

 いえ、あっても困りますが……。

 

「良く見ているな。グレモリーの騎士」

 

「袖口から見えてしまいましてね。あれだけ強い先輩なのに、酷い怪我の跡……」

 

 佑斗先輩は、警戒をしていたのでしょう。

 仲間内で一番冷静で、私たちの足りない所を補おうとしてくれる人だから。

 

「良い目をしているな。……見るか?」

 

 そう言うと、海原先輩は右側をはだける。

 

 思わず頬に紅くなるが、その肉体を見て驚いてしまう。

 

 漫画から飛び出したような鍛え抜かれた筋肉。

 

 右上半身だけ脱いだ形なのに、その肉体美に圧倒された。

 

 それ以上に、その右腕に戦慄した。

 

 手首から右肩に至るまで裂けた上に焼け爛れたような傷痕。

 深く焼け爛れた右腕は、あの強さから想像もできない。

 

「……それだけの負傷、修行でやられたのですか?」

 

 思わず聞き返してしまった。

 

 堕天使の幹部、旧魔王の血族を無傷で殺した人間の負った傷。

 裂けた上に、焼け爛れた傷。

 

 波紋の効果も似たような力を持っていたはずですが……。

 

「これは、中学の頃に受けた俺の誇りだ。弟が兄を超える一歩の瞬間の傷だ」

 

 弟さんもチートですか、そうですか……。

 

 今行方不明と言う弟さん。

 

 もしかしたら別の所で、チートキャラとして生きているのかもしれません。

 

 侮りがたし、海原家の血筋……。

 

 弟さんもそれだけ強いなら、ご両親も強いでしょう。

 

 ましてや、訳ありの人間を受け入れる学校を知っているのは、それだけの実力と経験を持ってこの世界を生きてきた証拠。

 

「ひどい傷ですね」

 

「だが、俺の誇りで、戒めだ。この頃は溢れる力で強引に戦っていた。だから、その隙を突かれてこのレベルの傷を負うのは当然だった」

 

 いえ、川の水をどうやったら押し返せるのか……。

 

 弟さんはもしかして……。

 

「弟さんは、海原先輩より強いですか?」

 

「いや、行方不明の間にどういう訓練をしているかにも寄るが、出力じゃ負けない。精密操作は俺以上だ」

 

 やっぱり、別のタイプのチートでした。

 

 この人の血筋はどうなっているのでしょうか?

 

 

********************

 

 

 曹護 side

 

 グレモリーの騎士に言われて、懐かしい記憶が思い出された。

 

 俺の右手首から肩口にかけて裂傷と火傷の傷がある。

 

 今までどんな敵と戦っても大きな傷を負わなかったが、俺が過去に唯一受けた一生残るだろう傷。

 

「弟さんは、海原先輩より強いですか?」

 

 アイツが行方不明になる前の最後の修行。

 

 加速の世界を使って殴り合ったが、最後の最後で拳をぶつけ合った時だ。

 

 普通なら、波紋も気功も出力は俺が上だった。

 だが、俺の腕にここまでの傷をつけた。

 

 アイツの最高の成長の形。

 

 俺の出力の合間を縫って、自身の波紋を縫うように俺に届かせた。

 しかも、少しだけとかじゃない。

 

 確実に俺に負傷を与えるぐらいの高出力を、針を通すような正確さで届けてきた。

 

「いや、行方不明の間にどういう訓練をしているかにも寄るが、出力じゃ負けない。精密操作は俺以上だ」

 

 この評価が妥当だろう。

 

 あいつは、たった三の力で十の力の隙を縫ってみせた。

 

 俺は力の天才などとおだてられていたが、アイツは別の方向での天才。

 精密操作、技術や見切りに特化したタイプだ。

 

 この傷が俺の戒め。

 

 力が全てと自惚れていた代償。

 

「見苦しいモノを見せた。強い波紋で付けられた傷は火傷の様になる。裂けているのは高密度の波紋の通った後だな」

 

 オカ研の全員が微妙な顔をしていた。

 当然か、見苦しいモノを見せた上に重い話をしたのだからな。

 

 制服を着直すと、元のように話を続ける。

 

「さて、依頼されたオカ研全員の修行だが、条件付きで承諾しよう」

 

 グレモリーからすれば、これを機に波紋の呼吸を知りたかったのだろうが、波紋の修行は本当に手間と時間がかかる。

 というか、実戦に耐えられるレベルにするなら実家に行かなきゃならない。

 

 施設があるのは、実家の地下だしな。

 

「条件は?」

 

「まず、波紋はダメだ。時間と手間がかかる上に、修行に必要な施設が実家にあるヤツしか知らない」

 

 実家にあるヤツも、三連国にあった施設の模造品だと聞いたが、オリジナルが三連国のどこにあるのか、現存しているかとか分からんからな。

 

 それを聞いて落胆の表情をグレモリーから読み取ることができた。

 出さないようにしているのかもしれないが、もう少し腹芸を学んだ方が良い。

 その方面なら支取生徒会長の方が上手かった。

 

 眷属を拘束されてもポーカーフェイスを貫いていたのだから。

 内心では焦りや怒りがあったことだろう。

 

「残念だけど仕方ないわね。……他には?」

 

「兵藤一誠、木場佑斗、塔城小猫、ゼノヴィア……何と言ったか?」

 

「ゼノヴィアでいい、ファミリーネームよりファーストネームで呼ばれ慣れているからね」

 

 まぁ、海外ではファミリーネームで呼ぶよりもファーストネームで呼ぶことが普通と言うか礼儀である国もあったからな。

 本人が承諾するならそれでいいだろう。

 

「では、今言ったこの四人の修行であれば受けよう。俺は魔術師ではないからな」

 

「あら、魔法使いの家系と聞いたけど?」

 

 魔法使いと魔術師を混同しているのか?

 

 まぁ、魔術師と魔法使いの違いを一から教える必要は無いか。

 

「魔法使いがどうかは知らないが、魔術師は一子相伝だ。だから俺は波紋使いでしかねぇよ」

 

 魔術関係は全部兄貴が担当しているんだ。

 俺は専門外だな。

 

「いいわ、波紋やウィザードタイプの修行ができないのは惜しいけど、それでも四人も受け持ってくれるのは助かるわ」

 

 こうして俺はグレモリーの眷属の前衛四人の修行を見ることになった。

 

 

********************

 

 

 一誠 side

 

 修行でたくさん大変な目に遭って来たけど、今日の修行は本当に大変だった。

 

「実力を見たい。全員で来い」

 

 侮辱、そう取ってしまいそうになったが、海原先輩の実力を俺達は直接二度も見ている。

 

 アレを食らう事を考えたら、全員でかかっても足りないと思えてしまう。

 いくら俺達があれから修行して強くなっていようとも、それはコカビエルと戦える程か? と聞かれれば、答えられないからな。

 

「こうして対峙すれば否応にも理解させられてしまうね……!」

 

 言葉を漏らしたのは木場。

 

 俺だってそう思う。あの、ただ立っているだけの男に一撃を加えられるイメージが一切湧かない。

 

 コォォォォ!

 

 呼吸音。

 

 波紋とかいう小猫ちゃんの知っていた技術だったっけ?

 

 全身に電気の様な力が弾けている。

 

「開始の合図は……そうだな。こいつを使おう」

 

 投げて寄越されたのは、ゲーセンのコイン?

 

「そいつを空中に投げて、地面に落ちる音と同時だ。分かり易いだろ?」

 

 こいつを俺達に渡すと言う事は、タイミングを任せると言う事。

 

 つくづく強者の余裕がある。

 

 俺だって知っている。

 『駒王学園の頼れるアニキ』と呼ばれている先輩。

 

 相談相手の悩みをきちんと解決してくれる姿が三年になるまで続いている。

 

 アニキってこの人の様な人を言うんだろうな。

 

「俺が投げるよ。俺は拳だし、倍化の力を使うならどうしても一拍おく必要があるからな」

 

 間違った選択じゃないはずだ。

 

 木場やゼノヴィアは剣を使うから構えを解かせる訳には行かないし、小猫ちゃんは俺と違って最初から最大戦力で突っ込んでいけるから、初手を任せるべきだと考えたからだ。

 

「それがいい。頼むぞイッセー」

 

 ゼノヴィアからもOKが出た。

 

 目配せすると、木場も小猫ちゃんも頷いてくれた。

 

 そのまま、指で弾いて落ちるのを待つ。

 

 海原先輩も波紋から銀色の闘気に切り替えて全身から溢れさせている。

 

 つまり、コカビエルを倒した時と同等の力を持って相手をしてくれると言う事だ。

 

 それが、嬉しいと感じる。

 

 金色の力は、海原先輩が言うには、アザゼル先生に言われたから見せただけで、十分に銀色だけで切り抜けられた場面だったと言っていた。

 

 チャリン……。

 

 音が響き、すぐに俺は神器を構える。

 

『Boost!』

 

 倍化を続け、自分や木場達の力を底上げする。

 

 それが今できる俺の役目だ。

 

 小猫ちゃんが一番手で突っ込んでいった。

 

「えい」

 

 短くつぶやくように拳を振り抜く小猫ちゃん。

 

 だけど……。

 

「速度良し、踏み込み悪し、威力良し、実力を抑えているのか? だが、あらゆる可能性を考えておかないと……こうなるぞ!」

 

 そう言うと、先輩は小猫ちゃんの腕を掴んで、回すように木場に投げつけた。

 

「にゃ!?」

 

「うわ!?」

 

 いきなり味方を投げつけられて、木場も慌てて剣を引いて受け止める。

 

 ここで止まってはならないと、ゼノヴィアがデュランダルを握り、海原先輩に斬りかかる。

 

「胸を貸して貰うぞ先輩!」

 

 真正面からの唐竹割。

 

 ゼノヴィアらしいと言えばらしいけど……。

 

「速度悪し、踏み込み及第点、威力良し、真正面からの一撃は評価できるが、お前はもう少し技術を身に付けろ」

 

 海原先輩は、振り下ろしているゼノヴィアの剣の柄に掌底を当てて止めると、そのままバランスを崩したゼノヴィアの鳩尾に掌底、同時に地面に叩きつけた。

 

 片手だった。

 

 部室で見た大火傷を負ったような右腕で、ゼノヴィアの剣を受け止め、バランスを崩したスキに鳩尾に掌底を叩き込んで、地面に沈めた。

 

 大丈夫かよゼノヴィア!?

 

 受け身を取った気配が無いし、呼吸困難になってしまっているかもしれない。

 

「小猫ちゃん、ゼノヴィアの回収を頼む! 木場! 渡すぞ!」

 

 赤龍帝の籠手の能力の一つ、『赤龍帝からの贈り物』で倍加した力を木場に譲渡する。

 

 小猫ちゃんを木場に吹き飛ばした。それなら木場とゼノヴィアなら木場の方がめんどくさいと考えているはずだ。なら、木場を強化して少しでも可能性を上げる!

 

『Transfer!』

 

 木場への力の譲渡と同時に、小猫ちゃんがゼノヴィアを回収しやすいように陽動に出る。

 

「ありがとう、イッセー君! 魔剣創造!!」

 

 地面から突き出してくる。

 

 その全てが魔剣。

 あらゆる魔剣を作ることのできる神器、『魔剣創造』。

 そして、禁手に至った姿が『双覇の聖魔剣』。

 

 この戦いでは、禁手を使わない様にしているが、使った所で勝てるかどうか怪しい。

 

 人間なのになんだよその理不尽な強さは……!

 

「地面からの攻撃は飛び退くのが基本だ。だが……!」

 

 ガガガガガガガガ!!

 

「は?」

 

 思わず間抜けた声が漏れてしまう。

 

 普通は、何かが地面から来ると分かっているなら、後方に飛び退くのが正解だし、いくつ出てくるかもわからないから、その場にいるのは下策だとアザゼル先生も言っていた。

 

 それをあの先輩は、その場から動かずに、拳だけで全ての魔剣を砕いた。

 

 文字にすれば簡単そうだけど、それがどんなに困難なことか、分かるか!?

 

 本当にあの先輩は俺達とは違う時間で生きているとさえ思えてくる。

 

「こうやって、砕く奴も出てくるだろう。今のうちに知っておくといい」

 

 いえ、そんなことをするのは先輩だけです。

 

 だけど、俺も木場も立ち向かわなければダメだ。

 

 小猫ちゃんはゼノヴィアが気を失っているのを確認し、距離を取って警戒している。俺達二人で立ち向かわなければ。

 

「イッセー君、僕が行くから追撃を頼むよ」

 

 確かに一回でも多く強化して相手にぶち込む必要がある。

 

 だったら、俺が最初よりは木場の方が……。

 

「頼む。でかいの叩き込んでやるぜ!」

 

 木場は頷くと、先輩へ斬りかかっていった。

 

「木場佑斗、行きます!!」

 

 斬りかかってきた右腕を先輩が止める。

 

 すぐに、左手に魔剣を作り斬りかかる。

 当然の様にそれも止められる。

 

「これなら……どうだ!」

 

 口に作り出された魔剣で、先輩の顔面に斬りかかる。

 

 ガキィン!

 

 当然の様に口でそれを噛み砕いて見せた。

 

「な!?」

 

「速度良し、踏み込み良し、威力悪し、独創性があるが、威力が弱い。打点と力点をよく考えて最大威力が出せるタイミングを探せ」

 

 そのまま掴んでいた両手を外側に弾くと、掌底を叩き込んで木場を吹き飛ばす。

 

 あいつの作った隙を無駄にしない!

 

 全力で先輩に向けて突っ込んでいく。

 木場を吹き飛ばした直後だから、伸ばしている腕の外側から確実に!

 

「速度及第点、踏み込み及第点、威力良し、基礎が出来て来ている段階だな。指揮系統としても才はあるか? お前は今のまま精進あるのみだな」

 

 伸ばしきった腕、その外側から攻めていったが、先輩は身体を捻る様に回し蹴りを放ってきた。

 

 咄嗟に赤龍帝の籠手でガードしたが、相当吹き飛ばされて、地面を転がりようやく止まった。

 

「ぐっ……あ……」

 

 グラグラする。

 

 地面をバウンドしながら転がったせいか、眩暈も吐き気もひどい。

 

「四人とも鍛えがいがありそうだ。しばらくよろしく頼むぞ」

 

 早まったかな?

 

 あれで人間って、俺も人間だったんだけどなぁ。

 

 部長、見てるとは思いますが、人間の定義って何でしょうか?

 

 元人間の俺も分からなくなりそうです……。

 




 実は、曹護の怪我は、私のもう一つの作品で外伝で書いている話の時に付けられた傷です。

 皮膚が裂けて、波紋の力で火傷のような状態になっています。

 動かすことに支障はないですが、かなりグロイ傷だと思っていただければと思います。

 そして、チート回。

 次回もよろしくお願いします。
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