戦乱の幻想郷/Battle for Gensokyo 作:アシャヤ
幻想郷。
人々から忘れ去られたもの――絶滅危惧種の動物を始め、妖怪、魔法、神などの超常現象――が集まる場所。
現代の科学に否定された者達の避難所。
かと言って、人間がいないわけではない。
妖怪には恐れが、神には信仰が必要なため、多いとは言えない程だが人間もまた存在する。
現在、人里近くの道を散歩中の男、与作もその一人である。
与作は幻想郷で生まれ、幻想郷で育ったが、早くに親を亡くし、誰とも深く関係を持たず、怪異の類にはほとんど縁がないという稀有な男だった。
彼は妖怪を恐れてはいたが、妖怪に対面したことは(巧妙に人間に化けた妖怪を除き)無かったのである。
つまり、この幻想郷の人間には珍しく、彼には危機感というものがまるで欠如していたのである。
そんな彼が突如として虚空から現れた男に近寄り声を掛けてしまったのは詮のないことだったのかもしれない。
「おい、大丈夫か」
与作は鈍くもあった。
現れた男には全身に独特な模様の刺青が施されており、フックのような鋭い角が両肩から生えていることを大して疑問に思わなかった。
そのような民族衣装なのだろう、と自己解釈し、それ以外の可能性を廃していたのである。
男は両目をぎょろぎょろと上下左右に向けた後、与作に向き直り値踏みするようにじっと見つめた。
「『外』の世界から来たのか?」
居心地が悪くなった与作が再度声をかける。
「『外』?」
ようやく返答が帰ってきた。
その声は小声だったにも関わらずよく通り、口からちらりと見えた歯が異様に綺麗に光っていたのが男を少し不気味に感じさせていた。
「外来人なんだろ?」
「外来人…」
オウムのように抑揚なく言葉を返す男に、与作は心配になっていた。
狂人なのでは?という思いがふつふつと湧いてきたのだ。
「な、なあ、本当に大丈夫か?『外』から来て混乱してるのはわかるけどよ。……そうだ、アレ見せてくれよ!外来人が流れ着いたときは必ず“けーたい”って式神を見るって幻想郷縁起に書いて――」
「定命の者よ。貴様は二つ勘違いをしている」
与作は自分の言葉を遮ったのが目の前の男だと気づくのに数秒かかった。
余りにも明瞭で心に入り込むような声音だった。
「一つ目は貴様の言う『外』から私は来ていない。この世界自体が『内』と『外』に別れているようだが、私が来たのはこの世界の隔絶された領域ではなく、真に『外』の世界だ」
与作にはこの男が何を言っているのかわからなかったが、次の瞬間にはそんな考えは頭に残っていなかった。
正確には与作にとって最期の思考になった。
視界から男が消え、首筋に痛みを覚えると同時に、与作は意識を失った。
干からびた死体と化した与作に男は言う。
「二つ目だが、私は人間ではない。吸血鬼だ」
幻想郷はすべてを受け入れると妖怪の賢者は言う。
この日の出来事も、これからの出来事でさえも、幻想郷にとっては何ら変わらない小さな日々の1ページだったのかもしれない。
・与作
導入の為だけのオリキャラです
今後出ません
名前テキトーです
・けーたい
幻想郷の科学技術は明治初期?程度で止まっています(河童や天狗はその限りではないでしょうが…)
PCや携帯の仕組みは式神だと信じられています
・幻想郷はすべてを受け入れる
それエルドラージの前でも同じこと言えんの?