戦乱の幻想郷/Battle for Gensokyo   作:アシャヤ

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東方のキャラクターをMTGの色で表すのが好きです。

霊夢は赤白だろうなあ。


未知への挑戦

地平線が動いている。

 

 

レミリアの思考は少しの間、この奇妙な光景に占領されていた。

闇に生きる吸血鬼の眼をもってすれば、月明かり程度の光で彼方を見渡すのは造作もない。

 

どうやら報告に誤りは無いらしい。

不気味な錯覚を起こす程の軍勢だ。

 

後ろを振り向くと剣や槍、弓矢などで武装した妖精とホフゴブリン達がいた。

中には園芸用のスコップや鍬、フライパンと中華包丁を構えた者もいる。

 

こちらは軍隊というより農民の一斉蜂起に近いな、とレミリアは思った。

 

「皆の者!これより攻めてくる敵どもを蹴散らす!巨大な敵は私に任せるがいい!最低5名で組を作り、小さな敵から囲んで潰せ!単独行動は慎むように!」

 

この命令のほとんどは戦いに緊張して青い顔をした妖精に発したものだ。

最後の一文は一部の興奮したゴブリンに対してであったが。

 

 

「美鈴、あなたは臨機応変に対応してちょうだい。状況次第で後退、他の者を連れて逃亡しても構わないわ」

 

側にいた美鈴にレミリアは耳打ちする。

危なくなれば紅魔館に戻り、皆を連れて逃げろと言っているのだろう。

 

美鈴は目を丸くした後、にっこり笑って口を開く。

 

「かしこまりました、お嬢様。そのときは紅魔館ごとお嬢様を持ち上げて逃げますかね」

 

今度はレミリアが目を丸くする番だった。

そして釣られて美鈴に笑顔を返した後、照れ隠しをするように妖精とゴブリン達に向き返り叫ぶ。

 

 

「くれぐれも先程言ったことを忘れるな!さあ散れ!紅魔館に手を出したらどうなるのか教えてやるのだ!」

 

 

そして自身も翼を広げ、刻一刻と迫りくる大群へと飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館内に位置する巨大な図書館。

 

そこでパチュリーは使い魔にしてこの図書館の司書、小悪魔と共に床へ巨大な魔方陣を描いていた。

 

「パチュリー様……これは一体何の魔法なんですか?」

 

敵が攻めこもうとしている真っ最中だということは小悪魔の耳にもしっかり届いていたため、若干焦りながら尋ねる。

 

「見ればわかるわ」

 

ふう、と息をついて魔方陣に魔力を通す。

 

すると突如図書館中が強く揺れ始め、本棚が本を吐き出す。

 

それぞれの本は床に落ちるよりも先に浮き上がり、ページを捲りながら鳥のように図書館の空を飛行しだした。

 

「半自動迎撃システムよ。魔理沙が来たときも少し起動しているけど、こんな規模は久しぶりね」

 

パチュリーは腕を振り、魔法で図書館中の扉と窓を開け放つと、魔導書達は檻から解放された獣のように外へ散っていく。

 

直後、外から轟音が響き渡り、壁の一部が吹き飛んだ。

 

おそらく付近に潜んでいた敵をタイミング良く魔導書達が攻撃したのだろう。

 

崩れた壁からは煙が立ち上ぼり、3メートル程の物体が倒れ込むのがぼんやりと見えた。

 

「パチュリー様!どちらへ!?」

 

その物体へ歩き出すパチュリーを見て、小悪魔は今にも泣き出しそうだった。

 

「『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』ってね。死体でいいから解剖したいのよ」

 

パチュリーの能力は『火水木金土日月を操る程度の能力』。

属性魔法に非常に長けている。

万物は各属性により構成されているため、いかなる敵でも解析しつくせば対処可能。

 

調べて倒す。

パチュリー・ノーレッジはまさに魔法使いを体現したような魔法使いであった。

 

 

 

 

 

しかし、今まさに調べようとしているモノがどれほど異世界の学者と魔法使い達を困らせ、苦しませた難問であるかは、パチュリーはまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

『それら』は紅魔館から数百メートルも離れていない大地に既に到達していた。

 

先頭を飛ぶレミリアはその光景に息をのむ。

 

地面を埋め尽くすような数、ざっと千は下らないだろう。

しかし、レミリアが驚愕したのはその量ではなく、形状だった。

 

吸血鬼であるレミリアは現在500歳である。

お嬢様と周囲から敬われて育った彼女だが、決して箱入り娘だった訳でもなく、むしろ目新しいものを求めて冒険をするような性格だった。

 

幻想郷の外、内を問わず、常軌を逸した怪物に会ったことも両手で数えきれない程ある。

 

 

そのレミリアをしても、今目の当たりにしているものたちは奇怪だったのだ。

 

 

それらの中にはまるで海を泳ぐかのように体をくねらせて飛び回るもの、触手を大きく広げて空間そのものに張り付くように浮遊するものもいた。

幾重にも枝分かれした腕で地面を掘り返しながら這いずるもの、短い足をヒョコヒョコと滑稽に動かして歩く左右非対称の鮮やかな肉の塊のようなものもいた。

昆虫のような固い皮膚に覆われ全身の至るところに瞼のない濁った目玉を覗かせるもの、のっぺらぼうのような真っ白な頭蓋骨を思わせる頭をしたものもいた。

 

最も小さなものは人間の子供や妖精程の体長だったが、最も大きなものは三階建ての建物のような高さで、腕の一本一本は長い時を経た大木のように太かった。

 

それらの生物全てに共通するのは触手を持つこと、生物とは思えない形状をしていることだけだった。

 

端から期待していなかったが、話し合いや『弾幕ごっこ』が通じる相手ではないな、とレミリアは嘆息した。

 

 

向こうもレミリア達に気づいたのだろう。

 

うねる触手をまるで渇望するように、あるいは助けを請うようにこちらへ伸ばしながら突進してくる。

 

 

この不気味な軍勢を部下達に直接ぶつけるのは気が引けたため、自分が目立ち奴らの気を引かなくてはいけない、という奇妙な信念がレミリアの身体を動かしていた。

 

翼を後ろに回し地面に急降下しつつ、できる限りの轟音と土煙を出しながら、手近にいた自身の4倍はあろうかという大きさの怪物を拳で捻り潰す。

身体に巨大な穴を空けられたそれは、外面に違わぬ濁った血液を撒き散らしながら絶命した。

 

 

しかし、それでも怪物達は止まらない。

 

激昂したのか?仲間が殺されて?

 

いや、違う。

 

 

レミリアはまたしても戦慄した。

 

 

同族を一瞬で惨たらしい肉の塊に変貌させたレミリアを前にしたにもかかわらず、その怪物達の仕草には怒りも、憎しみも、悲しみも、恐れも、さらには敵意さえも無いように見えたからだ。

 

 

紅魔館のため、仲間のため、家族のためにこの場に立っているレミリアにとっては、その事実は何よりも――それこそ異形の怪物達の姿よりも――異質で、気味が悪かった。

 

 

 

 

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああーーーッッッ!!!」

 

少女は絶叫しながら目を覚ます。

 

荒い呼吸が冷たい壁に響く。

 

ふと目を下ろすと寝る前に抱いていた熊のぬいぐるみはただの綿の塊と化していた。

 

 

またあの夢だ。

 

怪物が群れを成して私や親しい人に襲いかかってくる、そんな夢。

 

気がつけば血の海の中に私はいる。

しかし、それは私のものではないのだ。

 

 

「怖い、怖いよ」

 

「大丈夫だよ、フラン。私には全てを壊せる力があるじゃない」

 

「それでも、怖いの」

 

「私が怖がっているもののは何なの?怪物?孤独?死?」

 

「……全部」

 

「弱虫フラン。本当に怖いのは自分自身なんじゃないの?」

 

「どういうこと?」

 

「私より怪物染みたヤツなんていないわ。皆を殺す怪物は本当は私なのかも。そう思わない?フラン」

 

「そんなの嫌!」

 

「そうなりたくないなら自分の感情を支配しなさい、フラン。私ならできるわ」

 

 

紅魔館の地下で、フランドール・スカーレットはあらゆる意味で自問自答していた。

他人が見れば狂人のそれに見えただろう。

 

少し冷静になり一呼吸ついたとき、地下室に重い振動が届いてフランの身体を揺らした。

 

 

「……なんだろう?」

 

「またあいつが厄介事に巻き込まれてるんでしょ」

 

「お姉様が?」

 

「紅魔館は問題児ばっかりだからね。人のこと言えた義理じゃないけど」

 

 

治まらない振動に不安とほんの少しの興味を覚えたフランは立ち上がる。

 

「私、ちょっと行ってくるわ」

 

「いいの?下手な事になったら、夢が現実になるよ?」

 

「そうならないために今、一歩を踏み出さなきゃいけない気がするの」

 

 

地上への階段がある扉へ向かうフラン。

 

胸中で自分を騙すように言い訳をしながら。

 

 

本当に望んでいるのは、怖い夢を見たと言って姉に慰めてもらうことだった。

二人で両親のベッドへ向かった、あの頃のように。




紅魔回が続きます。


フランドールは狂っているという設定ありますがどのような状態なのかは不明ですので、このSSでは多重人格のようにしてみました。

書籍とかで再出演してほしいですね。
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