戦乱の幻想郷/Battle for Gensokyo   作:アシャヤ

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1ヶ月も空いてしまった…orz

先週戦乱のゼンディカーブロック第2エキスパンション、ゲートウォッチの誓い/Oath of the Gatewatchのプレリに1回出場したのですが、カリタスを引き、他にも強いエルドラージを何枚か引きました。
同盟者は殆ど出ず。
自分、エルドラージ側に傾倒し過ぎでは無かろうか…(゜Д゜;)


めくるめく

人里で最も広い敷地面積を誇る場所、稗田邸。

 

そこに少女達二人はいた。

 

片やその屋敷の主、稗田阿求。

片やそこに訪れた貸本屋の娘、本居小鈴。

 

 

小鈴は用意された座布団へ腰を下ろしながら、緊張の溜め息をほう、と吐いた。

 

「相変わらず仰仰しいお屋敷ね。ここ最近何回も来てるけどやっぱり慣れないわ」

 

「あんた来るたびにそんなこと言ってるわね」

 

阿求は一々面倒な伺いを立てなければならないこの屋敷より、パッと入れて麦茶がぽんっと出てくる鈴奈庵のほうがよいではないかと喉元まで出かかったが、口は災いの元、発言は控えておこう。

 

「それで今日は何の会議?妖怪?未だに続いてる行方不明事件?」

 

小鈴は半ば投げ遣りに聞いた。

最近、人里では物騒な話題ばかりが右往左往している。

人里の有力者達が混乱を防ぐために情報操作に勤しんでいるらしいが、小鈴のような少女ですら耳にする程には噂は闊歩してしまっていた。

 

にも関わらず混乱が起きていないのは、人里全体の被害がかなり少ないからなのだろう。

一部の妖怪が怪しげな動きをしているという噂は噂の域を出ず、行方不明事件の被害者は皆独り身だった。

 

このあいだ奇妙な容姿をした怪物によって里の警備隊が少々死傷したが、幻想郷の歴史的にはその手の職業従事者が命を落とすことはさほど珍しいものではなかった。

 

「これを読んで」

 

阿求は小鈴の目の前に畳まれた紙の束を投げ渡した。

人里の人間の中でも際立って書物に精通している小鈴は開いて目を通すまでもなくそれが何かを即座に理解した。

 

「天狗の新聞じゃない。それもここ(人里)にあるってことは文々。新聞ね」

 

天狗は極めて高度な社会性を持つ種族だが、それは『天狗』という種族内でほぼ完結している。

同じく妖怪の山に住む河童や神々とは交流が存在するが、基本的に天狗の他のコミュニティへの対応は酷く封鎖的だった。

自分たちの縄張りへ許可なく入る者へは警告及び攻撃を繰り返し、趣味の新聞作りでさえ仲間内で発行し、仲間内にしか配らない。

 

その様は迷いの竹林に住む薬師に『学級新聞』と揶揄される程だった。

 

その例外とも言えるのが、『文々。新聞』の執筆者、幻想郷最速の異名を持つ烏天狗、射命丸文である。

 

里に最も近い天狗を名乗るだけはあり、人間にインタビューをしたり新聞を配ったりしている。

 

比較的お手軽に手に入る妖魔本ということもあり、内容はともかく小鈴も手に入り次第家に保管している。

 

「とりあえず読んでちょうだい。1面よ」

 

阿求に促されるままに両手で紙の端を掴み、ばさっと音を立てつつ広げて1面に目を通す。

紙面にはでかでかと『号外』と書かれており、相変わらず号外を頻繁に出すことを止めていないのだな、と小鈴は思った。

日付は昨日、天狗は不定期に新聞を刷る(といっても文はハイペースで新聞を作ることで有名で、小鈴もそれを知っていた)ので今日大事件が起こらない限り最新の新聞と断言してもいいかもしれなかった。

 

「え〜〜っと……なになに……『[紅魔館、陥落か!?]後日未明、霧の湖のほとりに建つ紅魔館に謎の怪物達が襲来。被害は甚大であり、紅魔館主のレミリア・スカーレット嬢を初めとした住人が重軽傷。死者も多数。本紙はその紅魔館に残された傷痕と怪物の写真を入手……』」

 

小鈴の読み上げていた声は段々驚きと不安に支配され、不鮮明ながらも白黒写真に写りこんだ見覚えのある姿を見て一旦言葉を止めた。

身体がめまいを訴えている。

 

「……これって、この前の……」

 

不気味としか形容し難い容姿。

白黒写真でも何となくおかしいと思ってしまう体色。

今にも動き出しそうな波打つ触手。

記憶の中にある強烈な姿が思い起こされる。

小鈴はただ、この醜悪な再会がカメラのフィルム越しであることに感謝した。

 

 

「ええ。お察しの通り、悪魔虫よ。危険だとは前々から思っていたけど、考えを深刻に改めないといけないわ。木っ端の野良妖怪ならまだしも、まさか紅魔館がこうなるなんて思ってもみなかった」

 

 

小鈴は我に帰ったように新聞の続きを読み漁る。

一度自警団が遭遇しているのだ。明日狙われるのが人里でないという保証は何処にもなかった。

 

「『……紅魔館や霧の湖の一部及びその周辺の土地や木々は奇怪な塵のようなもの、虹色に煌めく結晶、あるいは不気味にねじくれた痕跡に覆われている。この空間は静寂に包まれており、生命の気配を全く感じさせないようである。これらの結果を引き起こしたであろう上記の怪物達の目的と詳細な規模は不明。続報を待て』……。結局、重要なことは何もわかっていないようなものね……」

 

小鈴は新聞にかじりついた手を離し、いかにも残念そうな顔つきで阿求を見やるが、阿求はそこだというふうに指を彼女に向けた。

 

「この間悪魔虫の死体を見たときのことを思い出しなさい。言ってたわよね、食べ物が特殊だって」

 

 

そんなことも言ったっけな、と小鈴は先日のことを頭の中で振り返る。

 

「この写真がその答えってこと?土地がこいつらの食料?」

 

ほんの少し思案した後で阿求は言葉をつらつらと紡ぎ出す。

 

こうして凄まじい速さの頭の回転を見ると小鈴が半信半疑に捉えていた阿礼乙女の話も満更作り話ではないのかもしれない。

 

「紅魔館や霧の湖、木々にまで言及していることを考えると、土地というよりあらゆる物質の何らかの力…生命力や気力のようなものを吸い取っているのかもね」

 

小鈴は魔法使いが魔法を使う際、自身から魔力を生成する以外に外界から魔力を引き出すことがあるという話を本で読んだことがあった。

 

今回は単純に魔力という括りでは無いだろうが、遠くはない方法で力を食らっているのだろうかと推測した。

 

「つまり、悪魔虫の食料はこの世界全て、というわけね。雑食にも程があるわ」

 

阿求は頷く。

 

「もはやこれは紅魔館の生き残り達の問題でも、人里だけの問題でも無くなったわ。これは幻想郷に生きる者全ての問題よ」

 

小鈴はいよいよ凄いことになってしまったな、と心の中で呟いた。

本を読み耽てこの友人と雑談を交わすような日常も変わってしまうかもしれない。

 

「これからどうするつもり?誰かに討伐を頼むとして、霊夢さん辺りかしら」

 

阿求はふふん、と得意気に返答する。

 

「幻想郷縁起を何代にも渡って書き連ねていると独自のパイプも増えるのよ。霊夢さんは勿論だけど、妖怪の賢者や各派閥のトップにそれとなく進言してみるわ」

 

そんな可愛らしく憎らしいしたり顔の友人を傍らに、小鈴は幻想郷の為に働くことができる実力がある彼女をほんの少しだけ羨ましいな、と思った。

 




今回は幕間のような形で、少し短くなっております。

阿求の働きかけがどのように功を奏するかは各勢力に委ねられます。
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