今作で連載中の作品が二作となりますが、あらすじにあるようにこちらは完全に不定期更新です。
また、デッキ格差や『ヴァンガードなど知らん‼︎それよりMTGとか遊戯王でやれ‼︎」などの意見もあるかと思いますが、当作はヴァンガードが話の根底となります。
どうかそれをご了承していただき、閲覧して下さい。
第1話「幻想の中へ」
暗い暗い夜の森の中、容姿、服装が西洋風で中性的な容姿の少年がボロボロで倒れていた。
周りには血を垂れ流し、既に息が無い人間が何人、何十人と倒れていて、更に森には死臭が充満していた。
この臭いの濃さを考察すると、既に数百、或いは数千人以上の人間が死んでいると考えられる。
そんな死臭の中心に居る少年もよく見れば、頭から血が流れ、目の焦点が一点を向いていなかった。
「…………ハハッ、こりゃ参ったね…………なる様にしかなんさ、これがなって感じでやってたらヘマして………頭も少しやられて、意識が……………追撃が来たら、死ぬよねこれは………」
そんな愚痴を軽いノリでこぼしているが、内心は警戒心と焦りで満たされている。
彼は今、彼がいる世界中のあらゆる勢力から追われ、それから逃げ切ろうとしていたのだが………逃亡生活を始めて早5年、最早逃げ切る事も叶わず、その場に転がる死体がまだ生きて動いていた時に逃げるのを一旦止め、迎撃し、今に至る。
だが、追撃がこれで終わる筈が無く直ぐに次が来る。
よって、彼は今気絶する訳には行かなかった。
「………あ〜こりゃ駄目だ、もう意識が……………我ながら……………騒がし………い、人生…………だっ……………た………………」
………が、少年は遂に意識を闇の中に落とし、目を閉じてしまった……………。
本来ならば、彼の運命は此処で閉じる筈だった。
しかし、少年の周りの空間が突如歪み、その歪みが正された時には少年は消えていた。
それから数分足らずで次の追っ手が来るが、凄惨な現場と対象の不在により慌ただしく次の指示を待つ羽目になったのだった………………。
それからどれほどの時が経ったのだろうか、少年は目を覚ました。
周りは朝になったのか少し明るくなっている。
更に、微妙にではあるが、先程の夜の森とは違う雰囲気の森と感じており、また、気絶寸前まで転がっていた死体すら消えていた。
「…………どうなってるんだ、これ?
死体が消えて朝になって僕が無事で…………連中が僕を捕まえるか殺すかをしないで撤退なんてあり得ない、一体何が……………それにこの森、何だか違和感が………」
自分が置かれた状況を確認し、何が異常なのかを把握する。
先ず、少年は世界中のあらゆる勢力から追われているので追っ手が来ない事があり得ない。
更に、死体が消えていると言う事は友軍が回収して行った以外に考えられない。
何故なら、少年が気絶した森には肉食生物が生息していないのだから。
そして、友軍が回収したのならば自分もそのまま捕縛か処分されてた筈なのだ。
最後に、森の雰囲気が違うのも絶対にあり得ない。
幾ら昼と夜の違いはあれど、森その物の感じが変わる事は無く、それこそ今し方まで生えていた木を全て別の物にすり替えねばならなく、そんな人員も資金も無駄な為投入されない。
これら三つの異常事態を分析し、整理する少年の頭の中にある答えが浮かぶ。
しかし、それは突拍子も無いファンタジーの領域の為俄かには信じられずにいた。
「………本当、我ながら頭が可笑しくなったのかと思うよ。
まさか、僕が『先程の森とはまた別の森に転移した』なんて…………確かに可能性としてはありだけど、空間転移装置なんて僕は持っていないし、そもそも作ったとしても持ち運べるサイズじゃない。
装置じゃないなら外的な力がだけど、人間一人分の安定した転移なんて、装置無しでは出来ない筈なんだけど…………本当に何がどうなっているのやら」
そんな事を口走りながら立ち上がり、改めて周りを見渡す少年だったが………見れば見る程あり得ない仮説が正しいこと考えてしまう。
そんな自分に溜め息を吐き、少年は一旦思考を止める事にする。
「兎に角まずは行動、調査が必要だね。
此処が安全なのか、僕が知る場所なのかハッキリさせないと、ね」
そうして行動を起こす少年だった。
が、ほんの五歩北へと進んだ瞬間に少年の周りが一気に暗闇に包まれ、目の前が真っ暗となり見えなくなる。
「ちょっ、何これ⁉︎
真っ暗、真っ暗になったんですけど⁉︎
何、此処は急に真っ暗になる森なの⁉︎」
いきなり視界が真っ暗になり慌ててしまう少年であった。
しかし、その耳に微かな音が聞こえ、更に暗闇の中に自分以外の何らかの気配を感じ警戒し始める。
しかも、その気配は着実に自分へと近付いて来ている事も分かり、この暗闇は気配の主の仕業であり、自分を襲撃する為にこの様な暗闇を用意し、近付いていると判断する。
「…………………」
息を潜め、気配の主が目の前まで来るのを待つ少年。
そして五歩、四歩とそれは近付き、遂に目の前まで来る。
そして、少年は本来見えない筈の暗闇の中で、はっきりと見える様になり、目の前に来たそれを視認して少し驚いていた。
が、直ぐに次の行動に移る。
「…………アイアンクロー!」
「『ガシッ、ビキビキ‼︎』わぁぁぁぁぁぁ痛い痛い痛い痛ぁ〜い‼︎
何で暗闇の中で私の事が分かるのー!⁉︎」
殺気を感じ取れる程近付いて来たそれの頭部に少年は対象の頭にアイアンクローを決め、その瞬間暗闇が晴れるがそこに居た気配の主は自分よりも小さな黒白の服と赤いリボンが特徴の少女だった。
しかし、アイアンクローを決める直前に感じた殺気は本物であった為、少女が少年を殺そうとしていたのは火を見るよりも明らかだった。
「僕よりも小さな女の子⁉︎
何でこんな子があんな殺気を………。
……少しだけ落ち着けて、何故君みたいな子供が僕を狙ったの?
君とは面識も無いし、服装や感じからして追っ手でも無い。
ならば何で」
「それは当たり前だよ、私は人喰い妖怪なんだも〜ん!
お腹が空いたら物を食べる生物の宿命を、パンとかで満たさず人で満たす存在なのだ〜!
………
その時、少年の頭に衝撃が走る。
目の前の少女は自らを人喰い妖怪とはっきりと言ったのだ。
少年は追っ手から逃れる為に色々な場所に行った事があったが、それでもモンスターやら妖怪やらUMAなどには出会わず、またそれらは居たとしても人間や『かなり変わっている』自分の前には現れないと思っていたので、ここまで異能の存在が近付いて来たのは彼にとってみれば貴重な経験だった。
但し、少女の言う事が真実であるならばだが。
「むむむむ〜、兎に角はなせ〜‼︎」
「うわっと⁉︎」
少年が少し惚けていた所、少女は両手でアイアンクローを決めている右腕を掴み、雑巾を絞る様に腕を捻る。
しかもその力は、普通の人間がやられたら皮膚が裂け、骨が砕ける程のものであり、少年も直ぐに振り解かなかったら腕は如何なっていたか分からかったのである。
「っつ〜……今の力、人間じゃあり得ない………て事はやっぱり、僕は妖怪とかの領域に何時の間にか来ていたと?」
「むむ〜‼︎
無駄に抵抗されたらまた『霊夢』が来て食べられなくなる!
ならば、『ファイト』だ‼︎
アンティルールは『私が勝ったら大人しく食べられろ』、『私が負けたらもう狙わない』でいいのか〜‼︎」
微妙に話が噛み合わない中、少女は懐からTCGっぽい………否、TCGの一種、『カードファイト‼︎ヴァンガード』のカードを取り出してアンティルールを要求して来た。
しかし……………少年はそのカード自体は知っていて、元ユーザーでも現在は手放して所持していない。
よって、結果はと言えば。
「あの、そのカード今持っていないからアンティも何もないよ?」
「えっ?」
「えっ?」
「何それ怖い、今のご時世でデッキを持たずに妖怪の前に出るって自殺しますと同じ意味だよ?」
当然ながらこんな風になり、これが日常の相手にはこんな反応で返されるのである。
しかし、少年は此処がどんな場所か、幾つルールがあるのか分からない状態。
電車で例えるなら本来降りる筈の駅で寝過ごし、終電まで行ってしまい其処で降りて右往左往するのと同じである。
「な、なら実戦‼︎
『弾幕ごっこ』とかなら出来るでしょ!
これが出来ないと本当に殺して下さいってのと同じだよ‼︎」
「えっと、何それ?
何かのゲーム?
そもそも此処はどこなの?
僕が居た場所と違う気がするんだけど」
またしても訳の分からない単語が出た為、少年頭に?を3つ浮かべて少女に疑問を投げかけ、更にこの場所がどんな所なのかも聞く。
すると少女はキョトンとした顔をし、改めて少年をマジマジと見始める。
「あ、あの……」
「弾幕ごっこも知らない、改めて見たら『幻想郷』じゃあ珍しい服装………まさか、君は外来人なのか〜!」
少女の口から外来人と言う言葉が出て、それを頭の中で一文字一文字変換して行く少年。
すると、まんま『外』から『来』た『人』となった為、少年は頭を縦に振り頷く。
「そっかー、外来人かー……………なら、運が無かったと思って食べられろー‼︎
こっちは何も食べずにいたから、お腹ペコペコなの‼︎」
「うわっ、ちょっ、結局襲って来るの‼︎」
結局襲われ、少年も臨戦態勢に入り怪我させない程度に迎撃する事にした。
そして、少女が少年の眼前に…………迫らなかった。
何故ならば、介入者が現れたからだ。
そう、2人の間に護符を投げ付けた人物が、だ。
その人物は、赤と白の脇の無い巫女服と赤い大きなリボン、そして、ミドルヘアの黒髪と何処か浮いた様な掴み所の無い雰囲気と確かな力強い瞳を持つ少女………人々は彼女を『博麗の巫女』と呼ぶ。
「うわっ、もう来ちゃったの⁉︎」
「はぁ、『ルーミア』………何人を襲ってるのよ。
しかも見た所外来人だし………本気で退治されたいの?
最近は大人しくなったって聞いてたのに」
「むむ〜、人喰い妖怪が人を食べないとか可笑しいでしょ!
だから私は人を食べるの!
分かったら邪魔しないでよ『霊夢』」
「そう言う訳には行かないのよ。
だって私は、『博麗』の巫女だから。
と、そんな訳だからさっさと終わらせよ。
アンティは『私が負けたらこの人を好きにして良い』よ。
あんたは当然『負けたら連れて行って良い』でしょ?」
「そうとも!
お腹空いたもん!
じゃ、ファイトなのだ〜‼︎」
介入者、『霊夢』が『ルーミア』と少年の間に割って入り、そのまま少年をアンティ対象にして『ファイト』と呼ばれるものを開始。
それは一見、否、何処から如何見ても少年の知るTCGの戦いそのもので、少年は何が何だか分からなくなって来ていた。
そしてそうこうしている内に、『ルーミア』が敗北していた。
「ま、負けたのか〜…………」
「はい、アンティ通りに連れて行くわよ。
分かったら今日は帰りなさい、何も無かった事にするから」
「あうぅ〜、お腹ペコペコなのに〜………」
『霊夢』はさっさと『ルーミア』を追い払おうとし、少年と距離を離し始める。
そのやり取りを見ていた少年は、『ルーミア』が少しだけ不憫だと思い、懐に何か無いかと探し、その何かを見つけていた。
「………待って『ポイッ』」
「うん?
わわっと!」
『ルーミア』は、少年から何かを投げ渡されてそれをキャッチする。
その何かとは、何とコッペパン(潰れたり千切れたりしているが元の量はある、袋は破けてない)であった。
「お腹空いてるなら、それあげる………って言ってもそれしか無いけど、無いよりマシかと思ってね。
でも、もう僕を、人を襲わないでね?
聞いてたら何か色々危なそうだし、ね?
次何も食べずに居たなら、何か食べさせてあげるからさ」
「…………あ、ありがとう…………」
『ルーミア』はぺこりと頭を下げてそのままその場を去った。
それを見ていた『霊夢』は、ふーんと言って少年に近付く。
「貴方、優しいんですね。
自分が襲われていたのにコッペパンあげるなんて、普通ならやりませんよ」
「そりゃ、襲われてたと言っても実害が結果的に無かったし、妖怪………………人じゃないって言われても見た目が子供でしょ?
そんな子がお腹空かせてたら反射的にもあげるでしょ?
まあ、お人好しは否定しないけどね」
そんな他愛の無い会話を少しし、『霊夢』がまたしてもふーんと言う。
そして、『霊夢』が頭を下げて挨拶をする。
「順序が逆になりましたが初めまして。
私は『博麗霊夢』、この先にある『博麗神社』の巫女をしています。
以後、お見知り置きを、外来人さん?」
「はい、初めまして。
僕は……『ブライト』と言います。
それで、此処は一体何て場所ですか?
僕を外から来た人って言ってましたけど?」
少年、ブライトは霊夢と挨拶し合い、改めてこの場所の事を聞く。
すると、霊夢は少し木々が開けて太陽光が指している内に入り、簡素に話し始める。
「此処は、貴方達が住んでいた世界とは大結界で切り離された場所。
人間や妖怪達が共存し、たまに外の世界で忘れ去られたり死んだり、何らかの方法で此方に来た者達も住まう最後の理想郷………………ようこそ、全てを受け入れる地、『幻想郷』へ…………」
ブライトはそれを聞き、此処は自分の居た世界とは領分が違い、また通常は来られない場所…………幻想郷と呼ばれる地だと知った。
こうして1人の少年は、美しい大地と澄んだ空気が満ち、他の種族と人間が共存し、バランスを保つ最後の理想郷へと誘われたのであった。
ヴァンガード要素の本格的な登場は第2話からとなります。
見切り発車感がありますが、以降よろしくお願いします。
感想、指摘をお待ちしています。
追記
何やら違和感があると思っていたらとんでもミス発見。
時系列を紅魔館『以降』と書いた筈が『以前』になってた……………穴があったら入りたいです(ToT)