1
いつもの学校。いつもの教室。何も変わらないそれは、誰にとっても同じだった。
(・・・またアイツやってる)
僕の視線の先には、一人の学ラン姿の霊、名前は知らないが僕が入学した時より前からいる。
いつも、勉強してるやつを見つけると近づいて行って分からないところを教えている。
しかしその声も助言もクラスメートには伝わらない。
(あんな事やって、何がいいのやら・・・)
僕は内心そう感じるが実際には、授業中かなりの頻度でお世話になっているのであまり文句も言えない。
お世辞でもなく(幽霊にお世辞を言う必要があるかは知らないが)アイツの教え方はとても分かりやすくまたアイツ自体勉強ができるやつなので、少し尊敬の目で見てしまう。
「やぁ。勉強はしないのかい?」
「うるせぇ。こんな時に声かけんな」
「昼休みなんだから、少しぐらい次の授業の予習なり前の授業の復讐なりすればいいじゃないか?」
「天才の考えることは、よく分からんな。いまのところ転んでるところは無いから、せいぜい誰かを教えてやれよ」
「他の皆は僕が見えないことぐらい知ってるだろ?君が入学したときは驚いたよ。僕が見えるなんて」
「他の奴が見えないのに何でお前は、勉強を教えるんだ?意味でもあんのか?」
「いや、全くないよ。あるのは君の成績が上がることぐらいだ。僕の教えたことが結果に残るなんて30年間で初めてだね」
「へぇー、30年。じゃあ大先輩だな」
「そうだね、大後輩」
「そのいいかたムカつく」
「ははっ、ごめんよ」
「なぁ、聞いていいか?」
「何をさ?」
「お前何で幽霊になったんだ?」
「僕は生きているころ、この学校でずっといじめられてたんだ」
「・・・・・・」
「いじめるやつは嫌なやつでね、僕は勉強出来るのもあって奴らは気に入らなかったらしい」
「・・・・それで?」
「ある日自転車に乗っていると、奴らが追いかけてきた。必死で逃げて飛び出した道路で轢かれて死んだ」
「そうか・・・・」
「幽霊になって最初の5年はずっと勉強してた。一年生から三年生までの授業を毎日見てた」
「残りの25年は?」
「今のように、教え続けていたさ」
「めんどくせぇ奴だな」
「おかげさまで」
「・・・なぁ」
「どうした?」
「あんたもいつか、いなくなっちゃうのか?」
「その質問は、残念ながら一択だ。答えはイエス。いつかこの世から去る」
「だよな・・・」
「でもまだこの世には居座り続けるよ。それこそ死神に襲われるまでね」
死神
霊に第二の死を与える存在。
奴らは、霊を見つけるとそのままどこかへ連れていく。
どこに連れてくのか僕は分からない。
でも何度か見たことがあるその姿は、とても残酷な顔をしていた。
「あいつらが来るのってわかるのか?」
「さぁね?いつ来るか全然わからない。霊になって30分で襲われた奴もいると聞くし、僕のように何十年も見逃されているのもいる。奴らの目的も存在も誰にもわからない。僕的には、自然の摂理と言う奴かな?」
「自然の・・・・摂理・・・ねぇ・・」
「まぁピンと来なくてもいいよ。僕の勝手な解釈だから」
「そうか。勝手にいなくなるなよ」
「その頼みは、ちょっと聞けないかな」
「何でだよ?」
「僕が決める事じゃないから」
「?」
「そのうちわかるさ。さて次は三年生の授業を見ようかな・・・」
「・・・・・・へんなやつ」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。
2
うちの学校は、中高一貫の私立中学である。しかし中学と高校の敷地がちと離れているためその出入りはほぼ無く土曜日にも授業があるので文化祭等に出向くものも少ない。
しかし私立だけあって、管理体制は良くできている。
いたずら防止のためにロッカーや下駄箱には個人用のカギを取り付けることが出来る。
そして僕は、下校するためにその下駄箱のカギを開けていた。
「3、9、2、3・・・開いたっと!ん?中になんか入ってる・・・」
この時点で管理は出来てない。
「手紙か・・・?でも何で?」
中には、丸みを帯びた字で
「今日、放課後、5時ぐらいに〇✕公園に来てください。」
「・・・・・マジかよ」
(冷静になれ!自分!!確かに人生にはモテ期があるとは言うがそれはいまではない!はずっ!!確かにこれピンクの便覧で女子と思われる字だがこれはきっと悪質な男子のいたずらだ!!まず僕は誰かに好意を寄せられるようなことはしてないし、そんな度胸もない!!だからと言っていたずらを受けるほどクラスで目立っているか?じゃあもしかして・・・・いやいやいやいや、それは無い!!あり得ない!!あと最初にモテ期とか考えていた自分が恥ずかしい!モテ期とかキモイ!あり得ない!!あり得るのは漫画とかの世界だけ!!最近、漫画なんて読んでないけどきっとそれが原因だ!!間違いない!!煩悩に飲まれた僕の勝手な想像だ!!落ち着け!!静まれ己よ!!というか静まれって何それ?中二病??キモイうえダッサイ!!あり得ない!!!というか何であり得ない連呼してんだ!?語彙が足りない!足りなくなってる!!どんだけ動揺してるんだ僕!!落ち着けぇぇぇぇ!!まずこれを入れたのが誰なのかを考えるんだ!!特定するんだ!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思いつかねぇ!!!!!!!!!!!!!!
誰だよこんなことするやつ!!やめてくれよ!!くそっ!!こうなったら・・・・・)
〇✕公園
「良かったぁ!!来てくれたんだ!!」
女子が来た。おそらくうちのクラス。顔は悪くないな・・・・・そこじゃなくて!
「えと・・・僕は・・・」
「牙流君だよね?私は、
「ゆっ・・・幽間?」
「そうよ!同じクラスの・・・」
「だっ!だよね~!!」
「うん!今の嘘」
「・・・・・・・・・・・・・・」
跡が無くなった。君のこと知らないんだ。って言えないのにもう後に引けない。
「やっぱ私のこと知らないか~~~~、当たり前だよね!話すのこれが初めてだし!!」
「ごっ・・ごめんね・・・。知らなくて・・・・」
「いいよ!私こそ急に呼び出してごめんね!」
「僕は・・・基本的に暇だから気にしなくていいよ・・・」
「あっ!!もしかして変な期待しちゃった?告白だと思ったんでしょ?」
「エーーーーーーーソンナコトナイヨ」
「図星か・・・・」
女子ってなんでこんなに勘が鋭いんだろう。
「まぁ、告白という意味では間違ってないかもね!」
「えっ!!マジで!?」
「ただし私じゃなくて、牙流君が!!」
「僕と付き合ってください!!!」
「何でよ・・・。私の事をちゃんとクラスメートとして認識してなかったでしょ・・・」
「へっ?クラスメート?」
「あぁさっきのが嘘。クラスメートは本当」
「なんだ・・・」
「大体うちの学校8クラスもあるのにわざわざほかのクラスの人まで名前覚えてらんないでしょ?」
「まぁ・・・・そうなんだけどさ・・・」
「さて話を戻そう」
「なんだっけ?」
「・・・・・・はぁ。呆れた。牙流君に告白してもらうのよ」
「愛じゃなければ何の告白?」
「君は・・・・見えてるんだよね?」
「・・・・・・・まさか」
「幽霊が見えてるんだよね」
「いつから気づいた?」
「確信を持ったのは今日。あの優等生の幽霊と君が話してるのを見て」
「あれか・・・・」
「正直、牙流君と話したいことはたくさんあるけどその前に頼みたいことがあるの」
「何を?」
「あそこ見える?」
幽間は静かに指をさす。
そこには、チンピラの姿をした幽霊がいた。
「あのキンピラ?」
「そうそ・・・・いまなんて言った?」
「あのチンピラ?」
「・・・うん。最近現れたんだけど、この公園に取り付いてるみたい」
「へぇー、物好きなやつだな」
「あの優等生君も学校に取り付いてるけどね」
「あいつ、30年ほど取り付いてるらしいぜ」
「そんなになんだ。ちょっと驚き」
「で、キンピラをどうしたらいいの?」
「祓ってくれない?」
「祓う?」
「あいつ、ずっと公園で悪さをしてるの」
「例えば?」
「散歩してる人に足をかけて転ばせたり、自動販売機で飲み物を買おうとした人の邪魔をしたり」
「やることがしょぼいな」
「だから、祓ってほしいの」
「めんどくさいしそのうち死神が来るよ」
「死神を待っててもいつ来るかわからないじゃない!!」
「だからってなぁ・・・」
「お願い!!牙流君しか頼りにできないの!!」
「・・・・・・・」
「駄目?私なんでもするから!!」」
「はぁ、女の子が簡単にそんなこと言っちゃだめだよ」
「うん。分かってる」
「分かったよ。祓えばいいんだろ?ちゃちゃっと片付けますかな」
「本当?やってくれるの?」
「そこまで頼まれちゃねぇ!!」
「ありがとう!!牙流君大好き!!!」
「ヴッ!?」
幽間が抱き着いてきた。
こいつ中一かよ!?超デカい!!メッチャ柔らかい!!
「今エッチなこと考えたでしょ」
「はぁあああ」
「声が裏返った・・・・」
という訳でこれから幽霊退散することにする。
3
「ん?何だお前?」
「牙流厚。見たまんまの男だ」
「キモッ」
「うん!言った自分も思った」
僕はチンピラを観察した。
身長が180センチ程でやせ形。両手をポケットの中に突っ込んいるんでおそらく丸腰。
または、メリケンサックを装備してるかな・・・。
髪を赤く染めている。ぶっちゃけ似合ってないが今口に出すとろくなことにならなそうだ。
後は・・・特にないな。よくいるチンピラ。弱そう。
僕の手には、空のペットボトル。綾鷹が入っていた。口の中が苦いから水にすればよかった。
相手が丸腰だと思うので、このペットボトルはかなり有効だ。
完全に舐め腐った目でペットボトルを見ているが後で後悔させてやろう。
この自信は、出鱈目なものじゃない。ちゃんとした経験から言っている。
僕のような体質は、ちょくちょく幽霊に追いかけられたり殺されかけたりする。
小さいころは、必死に逃げ回っていたがある日追い詰められた日にとっさに幽霊を殴ったら
予想以上に効いたのでそれからは返り討ちにしている。
こちらから、喧嘩を売るのは初めてだが何とかなるだろう。
「すーはー」
深呼吸をする。常時攻撃態勢だ。
「そんなペットボトルで俺を倒す気か?」
「あいにくな。悪かったな」
「舐められたもんだなぁ!ぁあ!!」
チンピラの右ストレートが飛んでくる。
僕は冷静に右に避ける。
「オラッ!!」
次は左から拳が飛んできたがこれもかわす。
「オラオラオラオラ!!!」
チンピラが連続で殴りかかってきた。かわし切れずに顔に一発拳が入る。
「っ!!」
「貰ったァァ!!」
チンピラは間髪入れずに拳を放つ。
それをしゃがんで僕はかわした。
「なっ!?」
「僕の勝ちだね!!」
そのままタックルを入れる。
僕の身長は160センチしかないが、
「ぐっ!?」
ラッキー!鳩尾に入ったみたいだ。これは大ダメージ。だけど腹を抱えて立ってるな。
顔が下を向いている。ペットボトルで後頭部を殴りつけるか。
「フンッ」
「うごっ!?」
うつぶせに倒れた。後は頭を踏んで・・・
「あばよ。チンピラ」
潰す。
チンピラはいつもどうり潰れて消えた。これでおそらく倒せているはずである。
「よしっ!!幽間!!終わったぞ!!」
「・・・何で?」
「はっ?」
「何で牙流君は幽霊に触れて、幽霊と話せて、幽霊を倒せるの?」
「えっ?どういうことだよ・・・」
「私は,幽霊が見える・・・けど牙流君が今やったことは何一つとしてできない」
「・・・そうか」
「何でそんなことできるの?」
「僕にもわからない」
「そう・・・だよね。ごめんね攻めるように言って」
「気にすんな。それより今から暇か?どっかでかけないか?」
「えっ?いいの?」
「あぁ!遠慮すんな!!幽霊が見える者同士お互いに話し合おうぜ!!」
「・・・うん」
この日から僕の運命は逆転していった。