風の吹き始め
戦車道。
それは読んで字のごとく戦車を使用した武道であり、華道や茶道と言った大和撫子としての伝統的な女性の嗜みとされていた。
そしてその中の常識は戦車道は女性だけの物、と言う認識が高い。
なら男が戦車道をしては行けないのか?
女性の嗜みに男が入ってはいけないのか?
俺はそうは思わない。
何故なら俺は戦車の部品ひとつひとつ眺めながら食べてもいいくらい戦車が好きだからだ。
....いや食べたいと言ったのはあくまで例えであって、本当に食べたりはしない。
どこぞの「ぴぽぱ」と言いながら飛び、頭の触覚から電撃を放つ妖精(?)では無いからな。
とにかく俺は女性の嗜みとして馴染み深くなった
男でも戦車は乗れる。その事を全世界に知らしめてやりたい。
この思いは誰にも止められはしない。
――――――――――
一隻の学園艦が広島の呉港から出港しようとしていた。
この学園艦『県立シラヌイ付属高等学校』は『県立シラヌイ付属男子高等学校』と『県立シラヌイ付属女子高等学校』の二校があるある種珍しい学園艦でもあるのだ。
艦の姿は加賀型一番艦『加賀』と近似した広島県の飛び地艦である。
そして前世からの転生者である俺、新見一馬がいる高校は男子高の為、戦車道とは無縁の高校である。
それに対する女子高は伝統的な戦車道がある高校ではあるが全国大会出場はおろか予選にすら勝てないのである。
しかし、この学園艦は女子高の戦車道のお陰で持ち直している状態。
我々男子高は頭が上がらない、と言うのが現実だ。
それに男子高と女子高がすれ違う時は必ず女子高に道を譲れと言う何とも情けない伝統があるのだ。
これは由々しき事態だ。早く何とかしないと俺の学園ライフが―――
「ねえ、一馬。なに一人で考え耽てんだよ」
そう声をかけるのは俺の親友であり腐れ縁の幼馴染みである五十嵐相馬である。
長年一緒だった幼馴染みには俺が考え込んでた事はお見通しのようだ。
「なぁ相馬。今の現状をどう思う」
俺は言外に先ほど考えていたいたことを話す。
そして相馬は少し逡巡した結果
「実は僕もよくないと思う」
「それは何故だ」
俺は相馬の発言をさらに促す。
「確かに今の県立シラヌイ付属男子高等学校はだらしないと思う」
「その理由は?」
「君だってよく知っているだろう?」
普段から温厚な相馬の事がこういうのは珍しい。
だがそれも無理もない。
そして先ほど相馬が言った理由。
それは俺達が入学式の校長講和で『県立シラヌイ付属女子高等学校と遭遇したら何もせずに道を譲りなさい』と発言したのだ。
更に各授業担当の教師でも校長講和と同じ事を言う。
はっきりいって惨めに見えてくるものだ。
「なぁ、相馬」
そして俺は先ほどの呼びかけよりも硬めに相馬に呼びかける。
「ん?ないだい?」
その気配を感じ取ったのか、相馬も少し硬めに返事をする。
「今の現状を打破する策はあるか?」
「きみはどうだい?」
その最後の返事は俺が何を言いたいのか分かっている風でもある。
「俺は戦車道を初めようと思う」