えっ、シスコン魔王様とスイッチ姫みたいな力ですか?   作:のんのんびり

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 前回のあらすじ:かわいそうなドラゴン&忍び寄るおっぱい

 だいぶお待たせしました。久しぶりに筆をとりましたが、リハビリしないとなぁ…って感じです。今回は幕間なので、次回『聖剣計画編』に入れたらと思います。


第二百三十五話 勧誘

 

 

 

「という訳で、相棒のおかげで無事に『眠りの病』の治療をすることができました!」

「さすが、カナくんなのです。ちなみに、メフィスト会長が協会に帰ってきてからも慌ただしそうなのは…」

「……治療ついでに色々やらかしたから?」

「さすが、カナくんなのです」

 

 おかしいな、同じセリフなのに前半と後半で意味合いが真逆に感じる…。メフィスト様は冥界で魔王様と一緒に今回のやらかしでわかったことを、冥界の民や古き悪魔達にどれぐらい公表するべきなのかかなり話し合っていたからな。それで人間界に帰ってきたら、今度は魔法使いの理事長として対応することもたくさんあるようで…。毎度保護者の皆様にはご苦労をおかけしてすみません。

 

 『眠りの病』の研究のために冥界のグレモリー邸へ赴き、そこでイングヴィルドを治療することができた! ……だけでなく、まぁ本当に色々発見してしまったわけだ。悪魔側は『眠りの病』の研究記録の解析と悪魔の出生の新事実に日夜頭を抱え、堕天使側と天使側は『神器勝手にポン』による未確認の神器や神滅具が出現している可能性に悲鳴を上げていた。あと仏教側もこれらの事実に遠い目をしながら、超広大な煉獄の連日捜査も頑張っているらしい。改めて考えても、トップ陣だけ原作のようなルナティックスケジュールが到来している件…。

 

 冥界から『灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)』に帰還した俺を待ってくれていたラヴィニアに、三日間の経緯を簡単に話すとありゃーと遠い目をさせてしまった。特に神滅具が勝手にポンしているかもには、同じ神滅具を持つ者としてびっくりしていた。俺が神滅具に至った経緯はかなり特殊だったし、神を滅ぼす可能性のあるものがポンポン自然発生しているかもって考えると頭も痛くなるか。

 

「まぁ、なかなか濃い三日間だったよ」

「たった三日間で世界の常識をいくつもひっくり返していますが…。えっと、その方の神器は大丈夫なのですよね?」

「あぁ、少なくとも神器は安定していたから俺がいなくても大丈夫そうではあったかな」

 

 それに万が一暴走しても、冥界だから海はないし、ドラゴンが傍にいなければそもそも効果は発揮されない。そうじゃなければ、目覚めたばかりの神滅具をそのまま放置なんてできなかっただろう。彼女の場合、神滅具のオーラで『眠りの病』を打ち消しているので威力を抑えるような封印もできない。ある意味、限定的な効果に助けられたってところだな。

 

「イングヴィルドさんですか…」

「あぁ、俺と同じ年でドラゴン好きの元一般人なんだ。隔世遺伝による悪魔の血が濃いみたいで、紫色の髪と琥珀色の瞳を持つ綺麗な子でさ。おっとりしているんだけど、ちょっと小悪魔っぽいところもあるんだよね。ほら、これが写真」

「わぁ、確かに綺麗なヒトですねー。カナくんはイングヴィルドさんの先生になったのですね」

「うん、主治医と患者って関係かな。何故かみんなからの俺の扱いがだんだん雑くなることが多いから、せっかくなら格好良くて心強いお医者様のイメージを崩さないように頑張ってる」

 

 俺が腕を組んでふふんと鼻を鳴らすと、ラヴィニアから生暖かい笑顔と一緒に応援の拍手をもらった。アジュカ様に儚い夢って言われたり、タンニーンさんに吹っ飛ばされたり、グレモリー眷属達にツッコまれたりしたが、俺だって同年代の女の子の前でぐらいは格好つけたいお年頃である。理想としては、年上には頼りまくって、年下には頼られて、同年代からは頼もしくありたい。

 

「と言っても、ラヴィニアには俺の情けないところとか結構見せちゃっているけどな…」

「ふふっ、私はいつものカナくんが好きですよ。それに私にとってカナくんは、……誰よりも頼もしいパートナーです」

「えっ…。あー、本当?」

「はい」

 

 ちょっと頬を赤らめながらこくんと頷いてくれるラヴィニアに、俺も赤面した頬をつい明後日の方へ向けてしまう。相変わらず俺のパートナーは直球である。ただこれまではのほほんとした笑顔で言っていたのに、こんな風にお互いに視線を泳がせながらだと何だか気恥ずかしさの方が強く感じてしまう。思わず居た堪れなくなった俺は、こほんと咳払いを一つした。

 

「そうそう! 今年の夏にみんなで人間界の海に集まろうって話をしているんだ」

「そ、それは楽しみです。同年代で同性の神滅具所持者に会うのは初めてですから」

「あー、そういえばそうか。うん、ラヴィニアもイングヴィルドときっと友達になれるよ」

 

 ラヴィニアとイングヴィルドは歌が上手だし、天然な気質とかも合いそうだよな。それにラヴィニアはイタリアにある海辺の街で生まれ育ったはずだ。イングヴィルドの記憶はまだ曖昧みたいだけど、海と結びつきが深い可能性が高い。海辺出身者だからこその地元トークとか盛り上がるきっかけにもなりそうだ。元一般家庭出身で、二人とも両親からたくさんの愛情をもらっていた。

 

 ……そして、理不尽な運命を経験してしまった境遇も少し似ているかもしれない。二人とも理不尽な理由で家族を、これまでの暮らしを奪われた『過去』を持っている。俺やリアスちゃんは彼女たちの『今』と『未来』を支えることはできるけど、本当の意味で彼女たちの『過去』を理解することは難しく想像することしかできないのだ。

 

 一応そういった機微に敏感な黒歌やグレイフィアさんが傍にいるから、イングヴィルドのメンタルケアはたぶん大丈夫だと思う。ラヴィニアもグリンダさんのおかげで今はもう過去を乗り越えられている。それは間違いなく彼女達の心の強さだろう。だけど、心の傷はたぶんずっと奥の方で消えていない。グリンダさんが攫われてすぐの時のラヴィニアは、過去のトラウマによって心が砕けそうになっていたのだから。

 

 もちろん、彼女達は傷の舐め合いなんて望んでいないかもしれない。自分と相手の不幸を比べたりもしないだろう。それでももしかしたら、誰よりもお互いに『過去』を遠慮なく見つめ合うことができるのかもしれない。まぁ、これは俺の勝手な想像だ。こればっかりは俺がどうこうできることじゃないし、考えを押し付ける気もない。ただ他者と深く繋がることを怖がるラヴィニアにとって、一つのきっかけになってくれたらいいなと思うだけだ。

 

「……私も友達になれるでしょうか」

「なれるよ、きっと。それにどんな時でも、俺はラヴィニアの傍にいるからさ」

「くすっ、はい…。やっぱりカナくんは頼りになるのです」

 

 俺からの言葉に笑みをこぼしたラヴィニアは、安心したように笑ってくれた。以前までと違いグリンダさんがいなくなってから、時々今みたいに自分が不安に思っていることを表に出すことが増えたと思う。いつも頼りになるパートナーとしての姿を見せていたけど、俺の前でなら弱音を吐いても大丈夫って思ってくれるようになったのなら嬉しいかな。俺もラヴィニアには弱音を吐きまくっているし、これぞ持ちつ持たれつってやつだよね!

 

 

「うーん、俺は黒色がメインで赤色を装飾にしてもらおうかな。俺と相棒の色って感じで。ラヴィニアは?」

「そうですね…。それなら私は、白を基調に碧色を入れてもらおうかと」

「確かにラヴィニアの色って感じだな。それに俺の色と反転って感じで、お揃い感は出そうだな」

「はい、せっかくカナくんと同じ杖を使うのですし…」

 

 パートナーへの報告会が終わった後、以前ラヴィニアと話していた新しい魔法の杖について相談をし合っていた。良い杖がないか魔法使いのお店をブラブラする案もあったが、俺の立場的に護衛が必要だし、俺というよりラヴィニアが使えるレベルの上質な杖を頼むのならプロの職人に直接注文する方が確実である。それにラヴィニア曰く、今最も話題になっている『変革者(イノベーター)』の杖をつくれるとなれば確実に混乱が起きるからとのこと。

 

「まさかプロの杖職人複数で、俺達の杖を合同製作なんて大きなプロジェクトになってしまうとは…」

「カナくん、もう少し自分が世界的な有名人になっているってことに自覚を持ってほしいです。魔法使い側からすれば、『変革者(イノベーター)』の杖をつくれるという名誉をかけて熾烈な戦いがあるほどです。メフィスト会長の名の下に杖職人による世界大会だって開かれる予定なのですよ」

「俺が冥界に行っている間に、魔法使い側がとんでもないことになっていた!?」

 

 自分が有名であることは、一応わかっているつもりだったんだけど…。アザゼル先生が俺を箱入りだと揶揄するように、安全のために裏の世間から俺は隔離されている。外に出る時は用事がある時で護衛が常に傍にいるし、魔法学校に通っている時は身分を偽っているため一般生徒と同じ視点しかわからない。その所為か、あんまり自分が世界でどんな風に見られているのか認識が薄いのだ。

 

「魔法使いの協会の理事長の直属の部下で、魔王の弟子で、十四番目の神滅具持ちで、聖書陣営の停戦協定の立役者で、不治とされた病すら癒せる治療者。そんな人物が使う杖を作れたとなれば、業界で間違いなく一目置かれるでしょう」

「なるほど、自分の名前を世界的に売るチャンスってことね。大会による経済効果や技術革新のことを考えても、理事長であるメフィスト様がのらない手はないってことか」

「なので大会で審査して高成績を残した職人達を集めるという訳です」

 

 なお、この流れに一番ビビっていたのは立案者だったクレーリアさんである。「こんな大事になるなんてぇ…」と小鹿みたいにぷるぷるしていた。

 

「それに魔法使いは研究が大好きです。しかし、普段はお金や素材などの関係で製作を断念することも多いのです。でも、今回の杖に関しては」

「……俺が頼む杖だから、特に金に糸目はつけていないな。せっかくなら良いものを作って欲しいから、材料費は気にしていない。あと素材もリュディガーさんに頼めば最高峰の錬金術で作ってくれるし、タンニーンさんに頼めば魔物素材もくれるし、アジュカ様に頼めば冥界中から資材を取り寄せてくれるだろうし…」

 

 自分でも思ったが、これは魔法使いからすれば血眼になって大会の参加を表明するわ。有名になれるだけでなく、お金を気にせずあらゆる素材が使える環境を手に入れられるなんて研究者からすれば絶対に欲しい権利である。なるほど、こんな風に経済って回るんだな。自分が原因とは思っていなかったけど。

 

 あと、異世界との戦いも見据えて技術を競い合わせて発展させる側面もあるのだろう。これまではメフィスト様が用意してくれたり、ラヴィニアの知り合いにお願いしたりと細々とやっていたけど、俺の存在が有名になってきたからこそのやり方って訳か。しかも、和平後は新組織のトップになって、相棒関係で聖書の神様の後継者のことも公表されるだろうし、今以上の肩書きがついてしまうのだ。本来ならこういう有名税も許容していかないといけないのだろう。

 

「……今更だけど、心臓がバクバクして足が震えてきたよぉ」

「カナくんって行動力はすごいし、友好的な方なら誰とでも関係を築けるのに、不特定多数に注目されたりすることは苦手ですよね」

「性根が一般市民なもので」

「カナくんが一般市民…?」

 

 ラヴィニア、素で不思議そうに小首を傾げないでよ。真面目にイッセーがすごいなと思うところは、こういった有名税をちゃんと受け止めてファンサービスまでできていたことだ。英雄としての在り方、おっぱいドラゴンとしてのイメージだって大切にして堂々と活動していた。実写アニメに出演するとか俺なら緊張のし過ぎで胃に穴が空く。原作勢全員に言えることだけど、外から見られる自分を当たり前のように許容できるって一種の才能だと思うよ。

 

「ちなみにトップ陣のみなさんに丸投げして悲鳴を上げさせていることについては?」

「えっ、普通に申し訳なく思っているけど?」

「朱雀にも手伝ってもらって完成させた『アーシア・アルジェントちゃんを勧誘する100の理由』をたくさんの人の前でプレゼンすることは?」

「朱乃ちゃんと仲良くできそうな友達候補確保の為って言ったら、目の光が消えながらも原稿の推敲をしてくれた朱雀(シスコン)には感謝してる。妹や弟の良さを大衆に広めるのは、兄として当然のことだろ?」

「カナくんの心臓って本当に不思議です」

 

 あのー、ラヴィニアさん? そんなしみじみと言わなくても…。うん、とりあえず考えすぎてもお腹が痛くなるだけなので難しいことは置いておこう。杖の審査に関しては魔法に詳しいラヴィニアやメフィスト様が主にやってくれるみたいなので、俺はスポンサーとしてお金や素材なんかを突っ込んでおけば大丈夫らしい。未だに初級魔法ぐらいしか使えない俺に杖の良し悪しなんてわからないからな。ここでも丸投げして申し訳ない。

 

 

「そういえば、今の会話で思い出しましたが、次は教会の研究施設に行くのですよね」

「ん、あぁ。『聖剣計画』の研究施設に、おじいちゃんとデュリオっていう最高戦力を引きつれてのカチコミだな」

 

 前回の全体報告会で天使長であるミカエル様に強制執行の権限はすでにもらっている。もし大人しく子ども達を引き渡してくれるのならそれでいい。非人道的な実験の摘発については後日になってしまうが、証拠となる子ども達はこちらで保護しているのだ。優先すべきは正義の執行ではなく、子ども達の安全。「人工聖剣使い」という教会への技術貢献度は確かにあるだろうが、そのあたりはしっかり償ってもらうつもりだ。

 

 原作のように大虐殺をしなかったのなら、バルパー・ガリレイが教会を追放されることはなくなるかもしれないが、それならそれで教会の監視下に置くことはできる。今の情勢的に追放して野放しにする方がむしろ危険だ。『皆殺しの大司教』なんて異名がつけられるような危険人物だが、研究者としては有能だった。このあたりは教会側と要相談って感じになるだろう。

 

「今は子ども達は大丈夫なのですか?」

「違法研究をしていることをバレたくないのは向こうだ。さすがに視察が入るってわかっているのに、子ども達を酷使するわけにはいかないだろう。むしろバレないように身綺麗にさせているかもな。一応抑止力として、教会の監査も時々入れてもらっている」

 

 『聖剣計画』は教会でも隠された最重要の研究施設だ。当然外部からの守りも固い。無理やり子ども達を助け出すのは、彼らの安全を考えたら悪手だ。研究者達だって後がないと思って自暴自棄になるかもしれないし、最悪人質に取られる可能性だってある。それなら権力を使って、合法的な手順を踏んで子ども達を助け出すべきだろう。運良く俺にはその伝手があったのだから。

 

「計画の責任者であるバルパー・ガリレイは、『聖剣計画』に対して表向き合法的な看板を掲げている。だったら俺も、表向き合法的な看板を掲げて何食わぬ顔で子ども達を保護するだけだ。非人道的な実験なんてしていないと言うのならそれでいい。その嘘で掲げた看板ごと、こっちは笑顔で利用させてもらうだけさ」

「こういう時のカナくんって、大変生き生きとしていますよねー」

「だって、実際にこっちは何も悪いことをしていないからな」

 

 正当性がある、って言葉の響きは素晴らしいよね。俺達が『聖剣計画』の研究者に言っていることは、本来なら善意しかないのだから。シグルド機関がまさにそれだ。研究の終わりと同時に研究の過程でつくられた子ども達の扱いに教会側は色々配慮しないといけなかった。あそこは遺伝子操作とか、試験管ベイビーとかマジで倫理観はグレーだったけど、真っ当な研究所ではあった。だからこそ、残った子ども達の新しい居場所に手を焼いていたのだから。

 

 そこに研究で残った子ども達を一括で引き取ってくれる場所を提供したとしよう。もし当時のシグルド機関だったら諸手をあげて歓迎しただろう。子ども達だって研究で苦楽を共にした同胞とバラバラにならなくてすむ。まぁジークフリードやフリードくんを見ていると、彼らは彼らで「今」を楽しんでいそうだけどね。

 

「ただ色々と複雑な過程はあっても、一番大事なのは『聖剣計画』にいる子ども達の気持ちだ。合法的な看板を掲げているからこそ、「子ども達が望まない場所に送ることはできない」って名義上の保護者としての大義名分を向こうだって掲げることができる」

 

 おそらくバルパー達研究者が考えている方針はそっちだろう。今子ども達を消すのは、上の目がある現状不可能だ。しかし引き取りの話がなくなり、監査としての目もなくなれば子どもたちの扱いを自由に決めることができる。むしろ一度上に睨まれたことを考えれば、毒ガスなんて派手なやり方じゃなくて秘密裏に処分する方針に転換しかねない。あのやり方は、バルパーの私怨が多大に含まれていたのだから。

 

 その場合はさすがに全面対決にならざるを得ない。子ども達は必ず助ける。だけど、無理やり子ども達を奪うことになるので、彼らとの関係に(ひび)が入るも同然だ。原作で木場祐斗さんは言っていた。当時の子ども達は研究者達から「神に愛された子」だと「特別な存在になれる」と信じ込まされていたと。辛い実験の日々も全て神が与えた試練であり、死ぬ寸前まで神に救いを求め続けていたと。

 

 普通に考えれば、自由を奪われ、人間として扱われず、非人道的な実験を日常的に受けていた子どもたちが、そんな場所に残りたいなんて思わない。助かりたいと思って当然だろう。だけど、手を伸ばした先が更なる地獄じゃない可能性は? 「聖剣使い」になるために必死に耐えてきたこれまでを、「失敗」の二文字で片づけられることに納得できるのか? そんな不安や過去を塗り潰せるほどの未来()を、俺は彼らに見せなくてはならないのだ。

 

 俺は原作で結末を知っているけど、毒ガスで処分される未来を子どもたちは知らない。未だに聖剣を使える者になれると信じ込まされている。俺達は救うつもりでも、それを理解されない可能性だって十分にある。新しい組織を一から築き上げていくのに、その要となる子どもたちとの信頼関係が築けていなかったら意味がない。

 

 

「アーシアちゃんの時はイリナちゃんの子どもパワーで壁を突破できたからなぁ…。前回みたいに遊びに誘うのも難しいだろうし。それに教会の教えを受けてきた子ども複数が相手となると、これまで敵だと言われていた悪魔・堕天使・魔法使いと共存することを割り切れるかのハードルも高いんだよね」

「そうですね、特に子どもの見える世界は狭いです。言葉だけで信じてくれるか、と言われると難しいようにも思います」

「……言葉だけで今見える世界を壊すのは難しいか」

 

 ふむ、なるほど。言われてみれば確かに。ラヴィニアからのアドバイスに、俺はポンと手を打った。

 

「つまり、言葉以外のプラス要素も必要って訳だなっ!」

「……あの、カナくん?」

「言葉だけじゃ足りないなら、視覚から訴えるのも大事だよね。人間は理解できないものに怯えてしまう傾向があるんだし、それなら悪魔や堕天使、魔法使いとついでに新組織でお世話になる魔法少女の良いところをまとめた紹介PVを作っちゃえばいいじゃん!」

 

 実際に『アーシア・アルジェントちゃんを勧誘する100の理由』を狂信気味だった教会関係者に見せたら、ちゃんと最後には理解を示してくれたからな。子どもを誘うなら子ども同士が一番だろうから、悪魔側のPVはリアスちゃん達にお願いして、堕天使側は朱乃ちゃんだろ。教会側はアーシアちゃんで、イリナちゃんには駒王町や魔法少女についても紹介してもらおう。俺からは魔法使いや新しい組織についてわかりやすく解説って感じかな。

 

『ねぇ先生、悪い悪魔はいると思うけど、良い悪魔もいるよ。クレーリアさんと八重垣さんがパパと一緒にお酒を飲んで笑っていたり、リアスさんやソーナさん、黒歌さんとも友達になれたりしたよ。あと堕天使の朱乃さんは私より日本人過ぎてすごいの。えっと、あと猫又の白音ちゃんも可愛かったな。直接会って話してね、人間の私とそんなに変わらないんだなってわかったんだよ』

 

 イリナちゃんの言葉は真理であり、同時に困難なことでもある。それでも、思いを届けることはできる。子ども達に任せるんだから、かたっ苦しいのはなし! テーマは「自由」で、それぞれがみんな目指したい「夢」や「未来」を語ってもいい。子どもらしく自分の目標に向かって「生きている」姿が伝わればいいんだ。そんな生き方を、そんなチャンスを、誰もが持っているんだと手を伸ばせるように。キミたちは「生きていいんだ」と全力で伝えるんだ。

 

「ふふっ、カナくんらしいです」

「迷惑はかけちゃうけど、俺だけでたくさんの子どもを説得するのは実際に難しいからな。それならこっちも、たくさんの子ども達のパワーに頼りまくるさ。これまでも、これからだって俺は、一人で困難を何とかしようなんて思わないしね」

「それでは、私もお手伝いします。せっかくなので杖職人世界大会という金銭を気にせず、最高の素材が使える舞台でウッキウキに作業する魔法使いのみなさんを中継してきますね」

「うわぁ…、いい大人がテンションMaxで奇声あげて雄たけびあげてヒャッホーイしている姿が目に浮かぶ…」

 

 魔法使いって自由人が多いからな。自分が考えた最強の杖を作るために燃え上がることだろう。ちなみにここで作られた杖は、きちんと精査された本職の魔法使い達にオークションされるらしい。そのオークションで売れたお金はスポンサーとして負担した俺の下に戻り、一部は職人に渡されるようだ。職人からすれば、全力で自分の技術を披露してアピールできる舞台を用意してくれたことが一番の還元だからこれで大丈夫とのこと。魔法使い全体の強化もでき、職人の質を向上させられ、隠れた人材も発掘できるかもしれない。これぞまさにWin-Winってやつだな。

 

「となると、俺もPV用に組織の名前をそろそろ決めないと…」

「神器所有者の為の組織であり、異種族との間を取り持つ和平の象徴となる場所ですよね。案はあるのですか?」

「うーん、一応は」

 

 俺が創る組織は表は人と異種族を繋げる為の場所であり、そして裏では異世界対策の本部にもなる。元ネタは原作にもあった、テロ組織特殊対策チーム『D×D(ディーディー)』だ。リゼヴィムが創った『クリフォト』はまだ存在していないが、すでに俺達には見据えるべき『敵』が存在している。将来的にこの組織が種族や陣営の垣根を越えた中心地となり、世界を救うために飛び立つことになるだろう。

 

 そうなると原作のように混成でチームを組んで、協力していく象徴のような名前がいいと思う。原作と同じように『D×D(ディーディー)』と名付ける案も考えたけど、それだと俺がやりたい趣旨とちょっとズレちゃうんだよな…。この名前は原作の小猫ちゃんが付けたもので、異形たちによる混成チームの象徴としての名なのだ。悪魔(Devil)ドラゴン(Dragon)堕天使(Down fallen)――まさに異種族(Different species)の為って感じである。

 

 原作のアザゼル先生曰く「グレートレッド(D×D)を守る」って目的がわかりやすい名前で、「おっぱいドラゴン」は正義だからOKという大義名分も掲げていた。そして名前に組み込むことが難しかった天使と人間の部分を、転生天使のデュリオをリーダーにすることでイメージを補っていた。

 

 ――なら、今回の場合は? そもそもこの組織の前提は「人」である。そして彼らに「夢」を、「未来への選択肢を与える場所」だ。まずは『人』と『異種族』の間に立ち、そして『世界』へと広げていきたい。原作に籠められた思いも大切だけど、俺自身が築いていきたい思いだってある。だから、せっかくなら人間と天使も仲間外れにせず、それでいて『ハイスクールD×D』らしい名前もつけたいんだよなぁ…。

 

「名前は思いや方針を決める上でも重要です。ですが、何となく象徴らしい感じになればいいとも思いますよ」

「多少こじつけでもいいってこと?」

「はい。カナくんがそうありたいと願う気持ちが大事です。あと参考にですが、総督さんが相棒さんに名前を付けた時、『暁紅(ぎょうこう)の聖槍』と『ティファレス・リィンカーネーション』というそれぞれ意味が異なりながらも重なる名前をつけていましたよね」

「あぁー。当て字と読み方に二つの意味を持たせながら、重ね合わせてもいいのか…」

 

 ラヴィニアの助言に盲点だったと感嘆の言葉がこぼれた。言われてみれば相棒の名前は、当てられた字と読み方が一致していない。めっちゃ厨二心をくすぐる名前で、さすがはアザゼル先生! って気にしていなかった。初見でこの神器の読み方がテストに出たら、絶対に答えられない。受験生泣かせは間違いないだろう。

 

 しかしそれなら…、と俺は携帯電話を取り出して、国語辞典や英和辞典をネットで何度も操作して調べていく。ラヴィニアにも見てもらってアドバイスをもらい、お互いに肩を寄せ合って一緒に当て字を考えながら紙にメモを増やしていった。そうしてついに決まった名前に、俺達は両手でハイタッチをしながら笑い合った。

 

「よーし、栄えある新組織の第一期生確保のために、みんなでPV作りを頑張るぞー!」

「オーなのです!」

 

 なお、推敲は朱雀、監修は大人達にお願いした。

 

 

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