えっ、シスコン魔王様とスイッチ姫みたいな力ですか? 作:のんのんびり
倉本奏太が紹介PVを流す順番を決めたのは、とりあえず自分が所属している魔法使いの組織からでいっか! という軽い気持ちだった。杖職人大会は今世界で最も注目されている催しであり、子ども達が『週刊ぶれいぶエンジェル』を読んでいるのなら興味を引けるかもしれないと思ったのも決め手だ。人間が主に参加する大会だし、主催者だから経緯も語れるし、教会関係者も一部参加している。これならそこまで突飛なことにはならないだろう、と軽く考えていた。
だが、その想定は原作のヒロイン達とのイチャイチャより甘すぎるのは当然の結果であった。
『これこそが、『聖王剣コールブランド』が持つ能力。次元を切り裂き、斬りたい対象のみを斬り伏せる力だ』
『さすがはお兄様です! 外殻はすっごく硬いのに、中身はちょっとした衝撃でも割れてしまう幻の鉱物をこんなにも綺麗に切り分けてしまうなんて…』
『さすがはアーサー様です。素晴らし過ぎますっ…!』
『……この大会、最高過ぎる』
「地上最強の聖剣の力をそんなことに使うでないわぁぁアアアッ!!」
妹と片思いの相手に絶賛され、クイッと眼鏡に手をかける思春期アーサーくん。そんな姿に血走った目でツッコミを入れながらも、聖剣を嘗め回すように見つめるバルパーにドン引きする子ども達。初手からこの施設の目的だった生の聖剣使いをこんなかたちで見せられるとは誰も予想しておらず、心の準備ができていなかった。魔法使いの大会に参加する一般通過聖剣使いとか誰が予想しろと。しかも聖剣ってこんな風に使っちゃっていいの? というおまけ付きだ。内容のインパクトと剣士としては間違いなく人類最強枠のアーサーの剣技に、全員が釘付けになっていた。
「ほう……、まさか、この歳になって見ることが叶うとは…」
「伝説の聖剣『カリバーン』ってイギリスの国宝ですよね。この大会へのペンドラゴン家の総力を感じるっス」
「げ、猊下ッ! 感心している場合ではありません! 伝説の聖剣使いとしてあのような――」
「あぁ、素晴らしい剣裁きだ。一人の戦士として、血が沸く感覚を久しぶりに覚えた」
「誉めている場合ですかっ!? 伝説の聖剣をあのように使うなど、神への冒涜にもほどがあります!」
「…………そういう文化もある」
「猊下ァァッ!?」
『聖剣クッキングもちょっと気になりますが、まだまだたくさんの参加者がいますのでどんどん紹介していくのです』
「ちょっと気になる程度で流していい内容ではなかっただろうッ!?」
「聖剣クッキング…」
目の前で行われる聖剣ショーをさらっとまとめ、マイクを持つラヴィニアののほほんとした声に慣れを感じる。そのまま無情にもカメラの視点が切り替わり、聖剣が見れなくなったことに愛しさと切なさと怒りがごちゃ混ぜになった声で嘆くバルパー。子ども達は目の前で急上昇と急降下を繰り返す大人のおかげで逆に冷静にビデオを見ることができた。とりあえず、聖剣クッキングの名前は見事にインプットされただろう。
「はぁ、はぁ…。クッ、この私としたことが…。だが、これ以上血圧が上がるような参加者はいないで――」
『魔法の杖大会と聞き、我ら北欧のアースガルズが参加しない訳には参りません。ここは戦場と同じと心得なさい。戦乙女の力と矜持、――今こそ全世界にわたくし達のロック魂を届けるのですッ!』
『――ハッ! フレイヤ様ッ!!』
「北欧神話の女神とヴァルキリーが、何をしているのだァァアアアアッーー!!」
車体が七色に光る大型トラック――
『なんでワルキューレの僕が、こんな極東の島国にいるんですかね…』
『あらあら、シュベちゃん。少し前にあった音楽祭でわたくしを倒して一番になると宣言したロックさはどうしたのですか? せっかくわたくし達の
『ふぇぇ~…。ここまで来ちゃったのなら、ゆるーくやりますけどねー』
『ちょ、ちょっとシュベ。フレイヤ様のご厚意で連れてきてもらったのに…』
『おやおやー、レギンってば習いたてなのに天才の僕へ注意する余裕があるなんてさすがだね~』
『む、むぅー!』
白銀に緑のメッシュが入った髪を持つ十歳にも満たないシュベと呼ばれた幼い少女は、女神相手にブーブー文句を言いながらも手付きは真剣に純白の魔法
戦女神たちが持つ魔法
これまでアースガルズは閉鎖的な神話勢力であったため、初めて見るヴァルキリーと魔法
「北欧神話までが参加するだと…? そもそも何故ロックフェスなんだ? アース神族が何をやっているんだ……?」
聖剣クッキングで価値観をぶん殴られた後に、女神主催のロックフェスに常識が宇宙猫になったバルパーは虚空を眺め出した。大音量のロックミュージックをバックに立ち尽くすしかない。脳の処理に多大なダメージを受けたバルパーは、とにかく冷却をするために素数を数えるように歴代の聖剣達を思い浮かべて頭聖剣になった。
「……カナたん、この杖大会本当に収拾がつくの?」
「俺も不安になってきた」
初めての音楽フェスに子ども達は興奮気味に楽しんでいるので、ある意味で魔法に対する忌避感の払拭には成功しているのかもしれないが、別の意味でカオスな状況になってきたことに遠い目になる。自分が思っていたよりも『
『さすがは魔法の本場である北欧。素晴らしい音楽と技術ですねー。……惜しむべきは、カナくんの音楽センスは学校で習ったリコーダーで限界だと前に言っていたので選考に選ばれるのが難しいことでしょうか』
「ラヴィニアぁぁああッ!」
マイク片手にパートナーの音楽センスのなさを暴露するラヴィニアに、羞恥心から床に項垂れる奏太。真面目に品評しているだけのパートナーには当然悪気はない。アースガルズの技術がどれだけ素晴らしくても、使い手が音楽センス皆無だとどうしようもないのだ。さすがの相棒も0から1は生やせないのであった。
『ちょぉぉぉっと、待ったァァァアアアッーー!! フレイヤちゃんっ! 北欧のロックも格好いいけど、私達魔法少女のテーマ曲だって可愛さなら負けていないんだからねっ☆』
『魔法の杖が一番似合うのはやはり魔法少女! 魔王少女様の名に賭けて、この勝負負けるわけにはいかぬっ!』
『ウオオオォォォッーー!!』
野太い男たちの掛け声と共に、ファンシーなステージがデコトラに対抗するように盛大に主張を始めた。ヴァルキリーのバンドに対して、魔法少女達もバンドを組み力強い音響が鳴り響く。魔王少女様がステージの上でくるっとターンを決めるときわどい衣装のスカートがふわりと揺れ、会場の目線も釘付けとなった。切れのある振り付けとダンス、会場を魅了する歌声にバックミュージックのむさ苦しさなど忘れて大盛り上がりとなった。
『うふふふ、魔王セラフォルー・レヴィアタン。あなたもこの大会に参加していたのですね。このわたくしに音楽で勝負を挑むとはなかなかロックな誘いですが、生半可な覚悟なら――ぶち殺しますよ?』
『そっちこそ、魔法少女を舐めたら痛い目にあっちゃうかもね☆ 私達の魔法少女ステッキと
『望むところです!』
どっちも遠慮させて下さい、と手を合わせて懇願した。陣営を越えた音楽バトルを突発で開催するトップ陣に胃薬を流し込んでおく。子ども達は魔王の名に驚き、魔法少女の格好に二度驚き、さらにバンドメンバーの猫耳トロルの群れにどういう状況なのか理解が追いつかず、頭がショート寸前になる。展開に追いつけないおかげで、魔王という身分が吹っ飛び、ただの魔法少女で脳裏に刻まれていった。
「すごい、カナたんの名前でまたパワー外交してる…」
「魔王少女様のフットワークが軽すぎる…」
「とりあえず、北欧との繋ぎをつくれたことを喜びましょう」
外交担当をしているセラフォルーがこの大会に参加を表明した北欧勢力に気づかない訳がなく、「これはチャンスだわ☆」としっかりと参加者として登録をしていた。停戦協定から和平に向けて、そして『眠りの病』についての新たなアプローチのために北欧神話との繋ぎを探していた彼女からすれば、まさに千載一遇のチャンスだったのだ。
だが、そんなお仕事は後回しで、今はお互いに本気でぶつかり合う勝負の時。観客もごくりと唾を飲み込むほどの迫力だった。
『大変盛り上がっていますねー。魔法少女vs戦女神の音楽フェスもちょっと気になりますが、まだまだたくさんの参加者がいますので次の紹介にいくのです』
『えっ、えぇぇぇッーー!?』
「ラヴィニアさぁーーん!?」
こうしてカオスながらも、天然のマイペースさでテンポよく進んでいったのであった。後に、この時の円盤は売れに売れたらしい。
――――――
「なんか色々あり過ぎて、教会の錬金術師が魔法使いの大会に参加しているぐらいなら普通だなって思えるようになっちゃった」
「僕も」
「私も」
見事に価値観を漂白された子ども達は、先ほどまでの光景に呆然とするしかない。外の世界ってあんなにカオスなの? とこれまで生きてきた世界がどれだけ狭かったのか痛感した。少なくとも魔法使いに対する考えは、不思議と軽くなったのは気のせいではないだろう。みんな自由過ぎだし、あの中に入っていく勇気はなかなか出ないが、それでも邪悪な存在とは思えなかった。欲望には大変忠実だったが。
「私、ちょっと音楽に興味が出てきたかも」
「わかる。俺達より小さい子が格好良くギターを弾いているのすごかったよな」
「私は魔法少女のダンスと歌がすごかったな。すっごくキレがあったし、ダンスってあんなに格好いいんだね」
「僕達もあんな風にバンドができるのかな」
これまで聖剣とは関係ないからと触れてこなかった文化を全身に浴びた子ども達の中には、先ほどまで夢が見つからないと俯いていた子ども達の目に好奇心という名の光が差し込んだ。他にも魔法や製造技術に興味を示す子も現れ、純粋に関心を引けたのは結果オーライであるだろう。奏太たちも疲れた表情で肩を竦め合ったが、杖大会の後処理の怖さにブルッと寒気がする。今は現実逃避することにした。
「さて、それじゃあ次のビデオは……アーシアちゃんとイリナちゃんの教会組にするか」
「うん、アーシアちゃんは聖女として有名だったし、イリナちゃんはさっき話していた紫藤さんの娘さんだからね。初っ端から衝撃の映像集だったし…」
特にビデオを見せる順番は決まっていなかったが、教会、堕天使、悪魔の順番が良さそうかと話し合う。幸い、魔法使い側のインパクトのおかげで種族や陣営に対する忌避感は薄らいでいる。それに邪魔をしてきそうな研究者側は、先ほどの衝撃映像集を子ども達のように柔軟に受け止めきれていない。今も聖剣の名前を口ずさみながら違う世界に旅立っている。傍から見ても怖い。
そうしてビデオの再生ボタンを押してしばらく経つと、金髪少女のドアップが映し出された。それに驚くと向こうも驚いたようで「はわわっ!?」と可愛い悲鳴と一緒にステンッ! 後ろに転がってしまう。ギリギリパンツは見えなかったが、羞恥心から顔を真っ赤にして涙目になる美少女に男子諸君はガン見し、近くの女の子達から叩かれていた。
『えっ、大丈夫アーシア? 怪我していない?』
『は、はい。大丈夫です。すみません、急に赤いランプが点灯して「びでお」が始まったことに驚いてしまって』
『アーシアも少しずつ機械に慣れていかないとねー。えっと、どうかな? 私達のことちゃんと映ってるー?』
心配そうに声をかけるもう一人の少女の声が聞こえ、次には栗色の髪をツインテールにした利発な少女のドアップが映像に映し出された。ひらひらと手を振って笑顔を浮かべた少女――紫藤イリナは床に尻もちをついていたアーシア・アルジェントの手を引き上げ、元々決めていたのだろうポジションに立ったのであった。
『よーし、アーシア! まずは自己紹介だよ。初登場シーンは第一印象の要だからね!』
『はい、イリナさんと頑張って練習した成果を見せてみせます!』
ふんす! と胸の前で拳を握りしめたアーシアに、見ている全員の気持ちが和んだ。これだよ、こういうアットホームなビデオを求めていたんだよとちょっと涙ぐむ。そんなほのぼのした空気が流れた瞬間――二人の少女達が突然ポーズを決め始め名乗り口上を高々と上げた。
『私達こそ、愛と正義の使者にして教会の代表として駒王町に赴任することになった期待の星! 悪い人達はみんなアーメンで撲殺して改心させちゃう可愛い系! パパ公認のスゥイート・エンジェル☆紫藤イリナ参上よ!』
『た、助けを呼ぶ声があれば、いつでもどこでも治しにいきます愛のキューティ・ナース! どんな怪我も治すゾンビせんぽー……イリナさん、「ゾンビせんぽー」ってそういえばなんですか?』
『お兄ちゃんが教えてくれた回復役の究極系の姿だって』
『なるほど、奏太さんが言うのなら間違いありません。どんな怪我も治すゾンビせんぽーの使い手で癒し系! 聖女パワーでミラクルを起こす☆アーシア・アルジェント参上です!』
『ど、どーん…』
『クリスタルディ先生、もっと真剣に効果音を言ってください! ミルたんさんに教えてもらった最初の登場シーンと名乗り口上はすっごく大事なんですよ! お兄ちゃんに頼まれたビデオなのに、カラー照明や煙幕とか爆発物を使っちゃダメって注意したのは先生なんですから!』
『――ドーンッ!!』
クリスタルディ猊下の迫真の「どーん」からおそらく
「カナたん…」
「俺の所為じゃない。
「後で労災をお願いしましょう」
すげぇー、聖剣ってライブ会場みたいなこともできるんだー! と先ほどの魔法少女VS戦女神が脳裏に焼き付いている子ども達はしっかり適応していった。
『さて、改めて紫藤イリナだよ。私のパパはエクソシストで、聖剣使いなんだ。まぁ、私には聖剣の適性がないんだけどねー』
『私は少し前まで聖女をしていて、今は日本に渡るための勉強中の身です。……えっと、イリナさん。次のお話しはどうしましょう』
『うーん、じゃあトップバッターはアーシアからかな。新しく仲間になってくれるかもしれないみんなに伝えたいことがあるんでしょ?』
『はい、わかりました』
イリナからのパスにこくんと頷いたアーシアは、端に寄せていた椅子を持ってきて静かに座る。普段垂れている目元をきゅっと上げ、真剣な表情でビデオカメラの方へ視線を向けた。胸の前で手を合わせ祈るような姿に、子ども達も自然と空気が引き締まった。
『先ほどお話ししたように、私は聖女として教会で働いていました。八歳の頃に『
聖女アーシア・アルジェントの名を聞いたことがある子ども達は、彼女が話すこれまでの境遇を自分の事のように聞き入っていた。神のために祈り続けた日々、与えられた力に意味があるはずだと信じ続けた日々、大人達から与えられた使命を全うしようと生きてきた日々。
『私は大人達に言われるまま「聖女」として生きることに疑問すら感じませんでした。この生き方しか自分にはないのだと思っていました。みんなが必要としているのは「聖女」であって、私自身ではない。分け隔てない慈悲と慈愛の心を持ち、主からの愛だけで生きるべきだと何度も心を縛ってきました』
でも、ダメだったんです。と申し訳なさそうに笑うと、隣に座るイリナに視線を向けて微笑み合った。
『私は自分の心に嘘がつけませんでした。一緒に笑い合える友達が欲しかったです。聖女じゃない私を見て欲しかったです。一人ぼっちで食事を食べたくなかったです。自分でもどうしたらいいのかわからなくて、苦しくて、でも私らしく生きる方法もわからなくて。……そんな心の悲鳴を、奏太さん達が拾ってくれたんです』
今思うと優しい光というより、ビーム光線のような衝撃ばかりだったが、それでもアーシアの世界はたった一日で色づいてしまった。楽しいと思ったら笑い、おいしいものを一緒に食べて、これから先の未来が楽しみで仕方がないと感じる気持ち。「聖女」である自分が、本当はこんなにも欲深かったのかと最初は呆然としたが、そんな「私」を受け止めてくれる人たちがいることを知った。
『自分で選択するって怖いですよね。私も今までの生き方から変わりたいって思った時、すっごく怖かったです』
大人達に言われるまま進んできた道。それを変えたいと言葉にしても、否定されて失望させたらどうしようと恐怖で竦みそうになる足。心や感情は選択を決めたはずなのに、その一歩を踏み出す足が震えてどうしようもなかったことをアーシアは今でも覚えている。同時にそれでも勇気を振り絞れたきっかけも。
『みなさんも、きっと今の自分から変わることに悩んでいると思います。だけど、心は嘘をつけないと思うんです。だから、その想いを見て見ぬふりだけはしないでください。イリナさん達が私の手を握ってくれたように…。今度は私が――みなさんの手を引っ張ってみせますから!』
祈る様に握っていた手の平を画面越しに前へ伸ばす、アーシアの満面の笑顔。
『私は回復以外、本当にダメダメなシスターで…。世間知らずで、おしゃべりをする時もおどおどしちゃって、今でも自分自身に自信は持てていないかもしれません。でも、そんな私でも自分を変える一歩を踏み出せたんです。だから、えっと…そのぉ――』
最後にどう伝えるべきかあわあわと口ごもったアーシアだが、意を決して力強い眼差しを向けた。
『私は、みなさんとお友達になりたいです! 私も仲間として仲良くしてくれると嬉しいです』
えへへ、と恥ずかしそうにふにゃりと笑うアーシアに、子ども達は眩しそうに画面を見つめていた。そこに映る笑顔が、まるで今を変えた後の自分達の未来の姿のように感じてしまったのだ。教会が定める「聖女」としての在り方を考えれば、彼女はもう「聖女」ではないのかもしれない。だけど、愛を知るからこそ愛を返せる彼女の姿は紛れもなく「聖女」に見えた。
「う、うっ…。アーシアちゃんの笑顔が眩しい…」
「成長したね、アーシアちゃん。お兄ちゃん嬉しい…」
「若、デュリオ、涙を拭きなさい。気持ちはわかりますが、抑えてください」
なお、
『私もみんなに会えるのを楽しみにしているよ! さて、じゃあ次は私から駒王町についてお話しするね』
アーシアの頑張りによしよしと頭を撫でていた紫藤イリナは、ポケットから眼鏡のようなものを取り出して鼻の上にかける。胸の前で腕を組んで、まるで先生のようなポーズを取った。おそらく形から入ることにしたのだろう。それから駒王町の地理や人口の説明がまず始まり、過去悪魔と教会が共同で経営していた背景についても語っていく。これは事前に決めていた内容で、推敲は紫藤トウジが行っていた。
自分たちが暮らすことになるかもしれない街だと聞き、イザイヤ達も聞き耳を立てていく。希望があるなら通えると教えてもらった駒王学園についての説明もあり、その規模やできることの多さに感嘆の声が上がっていった。イリナのはきはきした口調は聞きやすく、くるくると変わる表情とリアクションにふふっ笑いも起こる。そんな和やかな雰囲気を変えたのは、やはりアレであった。
『この写真は駒王町の警備をしてくれている駒王町名物「魔法少女流星群」だよ。街が平和かどうか、常に空からパトロールをしてくれているんだ』
「あれ、これさっきのビデオにも映っていた魔法少女…?」
「えっ、お祭りの時だけに出てくる仮装なのかと思ったら、常時存在しているやつだったんだ」
『あとね、悪いことをしている人を見つけたら魔法少女にして光堕ちさせて仲間を増やしていくんだ』
「はっ! 世界大会のルール説明にも載っていたやつだ。世界にはこんな種族がいるのか…」
「外の世界って俺達の想像を遥かに超えた場所なんだな…」
魔法少女で世界の広さを学ぶ子ども達に奏太たちは目を合わせる。「否定する?」「いや、でも駒王町で暮らすならこれが常識になるし」「常識って何だろう…」と目線だけで会話をした三人は、無言を貫くことにした。実際、これを受け入れられないと駒王町で暮らすのは大変だろう。常に常識と戦うことになってしまう。それなら柔軟に受け止められる子どもの内に刷り込んでおくべきだ。普通を知るが故にツッコミ続けて教祖化して異世界の神様を召喚した事例を知っている手前、目を瞑るしかなかった。
『そして、これがおっぱい教のシンボルである「おっぱいドラゴン」だよ。おっぱいの守護者であるオスの赤いドラゴンは、おっぱい教のイメージキャラクターとして駒王町で名産品にもなっているんだ。特に『おっぱいドラゴン饅頭』と『おっぱいドラゴン肉まん』はおっぱいの張り、艶を再現しながら街のみんなで作った最高傑作なの。売っているお店の名前は『
「……あの、若。確か教祖をしている少年の神器が、赤いドラゴンだったような記憶があるのですが…」
「偶然偶然」
「でも、じいさん。おっぱいドラゴンシリーズはマジで美味かったっス」
「すでにシリーズ化もしているのか…」
美食に関しては辛口のデュリオが監修を務めているので、自信満々に胸を張る姿におじいちゃんも色々悟ったのか冥福を祈る様に十字を切った。おっぱい教という名前に顔を赤くする子ども達だったが、「パパも絶賛しているよ!」と言われ、「日本の局長で聖剣使いが加入しているなら真っ当なところなんだな」とつい偏見で見てしまったことを反省していた。なお、原作でアザゼルの「おっぱいは好きか?」の質問に「はい、大好きです」と即答できるぐらいには性職者なのは彼の威厳のためにも黙っておいた。
こうして、紫藤イリナによる
※今回の話のアースガルズ組は、HSDDのもう一つのストーリーである『ジュニアハイスクールD×D』に登場する方達です。こっちも面白いのでもし機会があれば、読んでみて下さいね。