ひとりひとりと、女神と人と。~改訂作業中~   作:M崎

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 とても短い後日譚です。
 だいたい4200文字強です。
 これだけ打つのに3日かけました。
 自分の文章力のなさに呆れるしかないです。

 そして結構よく分からない後日談です。
 終わりはこれで良かったのだろうか…。
 手探りというか、半ば賭けで投稿します。

 それでは、どうぞ。

 一応、このお話でえりち編は完結となります。



12.29話

 次に柊哉(しゅうや)が目を覚ましたとき。

 柊哉は自分が手配したバスに揺られていた。

 

 慌てて飛び起きて、ちょうど隣にいた絵里(えり)経緯(いきさつ)を問うと。

 

 あのタイミングで就寝した柊哉は。

 あの後絵里が呼んだスタッフ、総勢5名によってバスまで運ばれたらしい。

 そしてバスの後部座席に放り投げられ、毛布をかけられて、今に至るとのこと。

 

 柊哉はとにかく頭を下げた。

 スタッフを呼んでくれた絵里にも、何も言わずに乗ってくれた他のメンバーにも、運んでくれたスタッフにも(電話で)、感謝の念を伝えようと頭を下げた。

 

 幸いにも彼ら彼女らは許してくれた。

 

 柊哉はほっ、と一安心。

 とりあえず良かった、と胸をなでおろす。

 

 ―――物語は、そこを起点として、始まる。

 

 

 

                      ★

 

 

 

 7月12日、日曜日。

 バスの一番前についているデジタル時計は、「17:29」を表示している。

 

 柊哉はバスの最後部にある座席に座り、両肩をぐるんぐるん回していた。

 

 「―――…ふはぁ~…久しぶりに寝たから肩が痛てーや」

 「無理しなくてもいいのよ?起きるのが辛いなら、寝ても罰は当たらないでしょう?」

 「…うんにゃ、もう目が冴えちまった。それに一度寝たら起きるの面倒だし」

 「ふふ、それには同感ね。でも、私が起こすなら問題ないわ」

 「違いない」

 

 深呼吸と欠伸の中間みたいな口の開け方をして空気を取り込む柊哉。

 隣に座る絵里が、それを目ざとくキャッチしてクスリ、と笑った。

 なんとも穏やかな時間だ。このまま一生だってここにいたい、とすら錯覚させる重力がここにはある。

 

 伸びをした柊哉は、己の体がバキバキ音を立てているような感じがして、怪訝そうに首を傾げた。

 

 「…う~わ。俺どんだけ死にそうだったんだよ。背中の骨がバキバキ言ってるぞ?」

 「背骨から音が鳴る、って…いったいどんな仕事してたのよ…」

 「ちゃんと説明しただろ?あんくらいの仕事してたのさ」

 「…あれだけじゃ分からないわ…もっと説明を頂戴」

 「うーむ…じゃあ何から話そうか…理事長室のドアを蹴破った後から話そうか…」

 「…出来ればその前から話してくれると、こちらも助かるのだけれど」

 「え、そ、そっかー…あの前から説明するかー…学校につくまでに語れるかな…?」

 「…大丈夫よ。時間はまだまだあるのだし、学校まではまだ距離があるから」

 「んじゃお言葉に甘えようか。…ありゃ一昨日の話だな。俺は絵里(おまえ)と別れたあと、教室に行って電話してたんだ」

 「………何目的で?」

 「DJレッスンの依頼さ。こっちだけじゃなくて、向こうの都合も必要だしな」

 「………………」

 「んでまたあいつが酷いんだ。俺の話なんかマトモに聞きゃしねぇ。俺がなんか言うと即座に…―――」

 「―――…ごめんなさい」

 

 だが、唐突にその会話は中断することになる。

 

 柊哉が武勇伝でも語ろうかな、と語り部になろうとしたとき、絵里が突然、そのモデルのような小さく可愛らしい頭を、ぺこっ、と下げたのだ。

 花のようなつむじが見えるのもお構いなく、「ごめん」の言葉と共に。

 

 柊哉は、それが謝罪の合図だとは知っていた。

 だが、いざやられると少しびっくりして、たじろいだのも事実だ。

 

 柊哉が狼狽(うろた)えていると、絵里は柊哉を混乱させないようにか、妙に冷静に話し始めた。

 

 「―――…柊哉の頑張りに気づけなくて。柊哉に全てを任せすぎちゃって。…本当に、何と言ったら解らないけど…謝罪だけはしなきゃいけないって思ったから」

 「………………」

 「…だから、もう1回謝るわ…ごめんなさい、柊哉」

 

 その謝罪の言葉に、柊哉は今度こそ黙りこくってしまう。

 

 それは不器用な謝罪の言葉だった。

 でも、それを補ってプラスに変えるほどの誠実さがあった。

 故に聞く人の心を動かした。

 どんな謝罪よりもそれは効いた。

 

 柊哉は無意識に頭を下げて、同時に同じような謝罪の言葉を告げていたのだ。

 

 「―――…こっちこそ、すまん。…俺も、絵里に気づいてやれなくて」

 

 それは絵里の言葉よりも上手い言葉を考えようとして、結局出来なかった、みたいな文言になってしまっている。

 ―――柊哉は急に恥ずかしくなった。

 なんだか絵里の真似をしているようで、申し訳なくなった。

 

 赤く染まった頬を隠すように頭を上げない柊哉。

 そのせいで前方は見えない。

 だが、絵里が頭を上げたのだけは、気配で分かった。

 

 声だけが聞こえてくる。

 

 

 「…ふふ、結局似たもの同士だったわけね」

 

 

 (…っ…)

 

 その言葉に引っ張られるように、柊哉も顔を上げた。

 引力のようなものを感じて、つい、吊り上げられた、という感じだ。

 

 顔の熱はもう引いている。

 代わりに苦笑が浮かんでくる。

 

 「―――…ま、そういうことだったんでしょ。なんとなくそうだとは思っていたさ」

 「思ってた、って…思うだけじゃなくて、口に出して言いなさいな」

 「う…そりゃすまん」

 「別にいいわよ…でも私、似ていると言ったって、柊哉みたいな向こう見ずじゃないわよ?」

 「嘘こけ。似たもの同士なんだったら、俺も絵里も同じだよ」

 「…そうね。そうかもしれない」

 

 絵里は突然、辛そうに言葉を切った。

 

 絵里は唇を噛んでいる…ように見える。

 何かをこらえる、とまではいかないにしても、どうしたものか、と迷うような唇だ。

 だから柊哉は言葉を引っ込める。

 自分の口から、話してもらうのを、柊哉はただじっと待つ。

 安心させるような笑み、なんて器用なことは自分には出来ないから。

 

 ただ、応援の気持ちを届けるために、真摯な瞳で、絵里の(ブルー)を見つめる。

 

 絵里が口を開いた。

 

 「―――…自分のことを棚にあげて、自分以外をつい優先させて。…そう、私と柊哉は似たもの同士」

 

 「似たもの同士」。

 語られたのは同じ言葉なのに、柊哉は何故か違う言葉に聞こえた。

 絵里が自嘲するように告げたから?

 そんなわけが無いだろう。

 こちらの受け取り方が違ったからだ。

 

 2回目の言葉は。

 ―――酷く、哀しげに聞こえた。

 謝る前の、あの絢瀬絵里が言っているように聞こえた。

 

 柊哉はこれ以上聴いていられなくなって、あえて絵里から目線を外し、正すように言葉をかけた。

 

 

 「―――似たもの同士だって、別にいいだろ?」

 

 

 絵里がこの言葉にどう反応したかは分からない。

 なんせ見えていないのだから。

 吐息すらも聞こえない。もしくは、聞こうとしていない。

 

 柊哉は絵里の反応を待たず、さらに続ける。

 

 「…俺は猪突猛進型で。他人すらも巻き込んで面倒ごとの傷を広げていくタイプで」

 「………………」

 「すっげぇ、面倒な奴だ。―――でも、なんとかやっていけてるんだ」

 「………確かに、そうね…」

 「それはさ。俺も絵里も同じだろ?…同じ悩みを共有する仲間がいる。それでいいじゃないか」

 「………………」

 「…だから、俺も絵里も、他人を巻き込んで、精一杯やってこうぜ。それしか出来ないんだから」

 

 柊哉はすぱっ、と言い切る。

 というか、言い切るしかない。

 途中で口を濁したら、たぶん一生後悔しそうだったから。

 

 そんな柊哉の決意を感じ取ったか、若干空気が柔らかくなった。

 絵里が微笑んだような気がする。

 

 「―――…やっぱり、そう言うと思ってたわ」

 

 ―――否、絵里は微笑んでいた。

 顔を見るまでもない。声色から嬉しそうに聞こえる。

 とびっきりの笑顔を魅せているに違いない。

 

 柊哉はそっぽを向き続ける。

 やっぱり見ていられない。

 今の彼女を一目でも見てしまったら、きっと柊哉は眩しさに目を開けていられなくなる。

 

 絵里がそれをどう捉えたのかは知らないが。

 彼女は逆に、少しだけ声のボリュームを上げた。

 柊哉の脳の奥底に気持ちを送り出すような。

 そんな、凛として、真剣な心音(こころね)がふんだんに詰まった言葉を。

 絵里はきっと、今までの中でも最高の笑みを咲かせて、言った、のだろう…。

 

 

 

 「―――…柊哉がそう言うなら、そういうことに、しといてあげる」

 

 

 

 

 ―――(いな)

 ()らした目の先で、窓ガラスに反射して映っていた絵里は、笑っている、というわけではなく。

 茶目っ気たっぷりに、左目だけをぱたっと閉じて、ウィンクしていた。

 

 その極悪とも呼べるキュートな姿に。

 普段の絵里からは想像もつかないような可愛い側面に。

 柊哉は「見惚れる」どころか「視線が吸い寄せられて」。

 今度こそ、頬を真っ赤にして、目線を完全に自らの真下へと向けた。

 

 バスの座席の明るいインディゴブルーを目に焼き付けながら、考える。

 自らの性質(たち)なのか、つい考えてしまう。

 

 (―――可愛すぎんだろうあの子…もう俺のメーター振り切ったよ…)

 

 心中で身悶える。

 可愛さが脳内でリピートされる。

 割と本気で「萌え」死にそうになる。

 

 可愛いものを()でたい、という感情が、ふつふつと起こって来た。

 それは頭の中でごっちゃごちゃになって、その気持ちのスペースを確保しようと、ほかの感情を頭の外へとやろうとする。

 

 ―――すると、放り出される感情の中で、ふと、今日のフレーズが見つかった。

 柊哉は衝動に突き動かされるがまま、口ずさむ。

 

 歌うのはサビの後半。

 

 Shangri-La Shower(楽園に降り注ぐもの)

 音の女神の宴の余韻。

 無償の愛と、溢れんばかりの祝福。

 そして、それ以上の、歌いたい、踊りたい、という単純な衝動。

 

 小さく、囁くように(うた)っただけでも、柊哉はそれに万感がこもっているように感じた。

 気持ちか軽やかになる。

 声が自然と大きくなる。

 

 声のボリュームは、いつの間にか少し大きくなっていた。

 そのせいで柊哉の歌に気づいたであろう絵里も、何も言わずに、柊哉のフレーズに合わせて、とても楽しそうに、歌う。

 

 『~♪』

 

 終わらせたくない。

 終わりたくない。

 終わりを考えたくない。

 終わらないでほしい。

 

 終わるべきではない。

 

 この宴を、この出会いを、この経験を―――。

 

 『~♪』

 

 いつしかその歌は、2人だけの小さな演奏会になっていった。

 柊哉と絵里だけの、小さな小さなコンサート。

 

 

 ―――だが柊哉にとっては、絵里と紡いだとても大切な思い出。

 

 

 忘れたくとも忘れられない。

 忘れさせない。

 

 その思いを胸に、「Shangri-La Shower」という歌の最後の最後まで、柊哉は歌い続けた。

 

 

 ―――和解。

 柊哉が味わったその2文字の言葉は。

 心に大きな経験となって蓄積されて。

 

 またひとつ、芽を伸ばした。

 

 

 

                       ★

 

 

 

 

 ―――あなたのしたいことは何ですか?

 ―――あなたがしたいことは何ですか?

 

 

 2015年、7月12日、日曜日。

 国立音ノ木坂学院・第74代生徒会会長、絢瀬絵里(あやせえり)は、この問いかけに、こう、答えた。

 

 

 「―――私は………μ’sの起こした奇跡を、ここで終わらせたくない。大好きな9人の仲間と一緒に、この夢を、続けたい!!」

 

 

 

 

 




 とんでもなく微妙なところで話を終えましたが、これでえりち編完結です!!
 これ以上書くと10900文字というバカみたいな文字数になったので、途中で大幅に切りました。ボツ案はまたどこかで公開できればなぁとは思っています。

 …いやー、それにしても長かった。10月から受験挟んでちょうど5ヶ月。
 えりちの魅力に気づいてもらえると幸いです。

 感想、評価、心よりお待ちしております。


 さて、次の13話からは新ヒロインのお話に入ります。
 実は2月20日にくじ引きをして、超最高のタイミングでこの子を当てました。
 我ながら自分のくじ運にびっくりです。
 活動報告にて発表しているので、どうしても気になる方はそちらを参照してください。

 …ということで、2月29日から始まる次のヒロインとのお話に、こうご期待!

 それでは、また13話で!
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