ひとりひとりと、女神と人と。~改訂作業中~   作:M崎

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 これで1話です…。

 だめだ、コレは「理事長編」かな…?
 プロローグ、の一環でいいのかな…?

 それでは、どうぞ。
 読んでいておかしなところなどありましたら、遠慮なく感想でご報告をお願いします。

 ※5月5日追記

 加筆修正しました。
 やはりおかしいと思ったもので。


1話

 

 「あー、そうっす。俺が、神城柊哉(かみしろしゅうや)です。…遅刻してすんません…」

 

 2015年、7月1日、水曜日。

 午前10時57分、柊哉はやってきた女生徒―――絢瀬絵里に、謝罪した。

 理由は大遅刻。

 いろいろあったにせよ、定められた集合時間を2時間もオーバーしてしまったのだ。

 まずは謝らなければならないだろう。

 

 …と、5分間無言硬直した先にたどり着いた柊哉は、穴があったら入りたい、と、盛大に頭を下げる。

 

 その柊哉の謝罪に、彼女は呆れたようにため息をついていた。

 まるでこういう人たちを何度も見てきたかのような塩対応。

 手慣れた感じで、もしくはこうなることを予想していたような感じで、息ひとつで不遜を流す。

 

 「…はぁ、まあいいわ。それで?遅刻した理由は?」

 「…いやー、それが…理由が多すぎて、一言じゃ説明できないんスよね…はは」

 

 だがその次。

 彼女の発した問いかけに、柊哉は乾いた、ヘラヘラした笑いを返すことしか出来なかった。

 本当にそうするほかないのだ。

 遅刻した理由は人助け・事情聴取など多岐にわたり、ここで説明していたら軽く40分は超える。

 それで彼女に負担をかけるくらいなら、と柊哉は言わないようにしているのだ。

 

 だが当然、そんな柊哉の意図は初対面の彼女に伝わるはずもなく。

 彼女はさらにため息を追加していた。

 

 「あなたねぇ…。転校初日に理由不明で2時間も遅れてくるって、どうなのよ…」

 

 (はい、ホントマジすんません)

 

 無言で、頭を90度下げる。

 彼女の言うことは全く間違っていない。

 悪いのは柊哉なのだから、謝るべきは柊哉だ。

 

 柊哉はレンガ張りの地面を見つめる。

 

 「もういいわ。…貴方が、そういう人間だってことが分かっただけよ」

 「はは…まあ、本当はこんな遅刻する気は無かったんですけどね…」

 

 そんな柊哉に降りかかった彼女の3度目のため息は、前の2つよりも重く、そして突き放したようだった。

 

 確かに彼女の言うとおりだ。今の自分の行動で、彼女から見た柊哉(じぶん)の人となりが分かってしまう。

 その中で2時間も遅刻した柊哉は、時間にルーズなヤツとして、彼女の中で認定を受けてしまったということだ。

 

 (―――やっぱ、初日に遅刻なんてするんじゃなかった…)

 

 今更になって後悔。

 あの時ああしていれば、あの時こうしていれば、という、意味のない羅列が頭をよぎる。

 だがそれはもう遅い。

 いくら詭弁を弄しても、遅刻した、という事実は変わらない。

 柊哉は集合時間に遅れているのだ。

 

 つまりもうどうしようもない。

 柊哉はまばたき1つで、気持ちを切り替えた。

 

 というか、そんなことよりも、気になることが、と柊哉は頭を上げる。

 

 「…えーっとですね」

 「何?」

 「どちら様でしょうか?」

 

 そう。

 相手が名乗っていない。

 柊哉から見たところ、目の前の女生徒は柊哉の知っている絢瀬絵里にそっくりだ。

 だが、女生徒が本当に彼女なのかどうかに、確証はない。

 自己紹介をしてくれないと、柊哉はずっと分からないままだ。

 

 期待を込めて、柊哉は彼女を見据える。

 

 向けられたまなざしに、無意識だろうか、彼女は柊哉の思った通りの事を言った。

 

 「―――ああ、こちらの紹介がまだだったわね。私は絢瀬絵里、3年生よ。よろしく」

 

 (…はい、ビンゴ)

 

 その言葉に、柊哉は心中でガッツポーズ。

 やはり彼女は正真正銘、柊哉のよく知る絢瀬絵里だった。

 柊哉の大好きなアイドル、μ’sのえりちだった。

 

 観察してると、初対面でも色々なことが読み取れる、と、柊哉は実感。

 だがそれと同時に、柊哉の頭には新たな疑問も浮かんできた。

 

 

 (―――なんで、μ’sの絢瀬絵里がここにいるのだろうか)

 

 

 それは至極まっとうな疑問。

 今この状況に陥ればまず思うはずの疑問だった。

 

 彼女は見るからに制服姿。

 それも、校門の奥、学校側から姿を現した。

 まさか、この音ノ木坂の生徒なのだろうか。

 だとしたら、ここは日本最高峰でのスクールアイドルの本拠地。

 そうなれば、相当な有名女子高で、倍率4倍というのもうなずける話になってくる。

 

 だが理事長(ハゲ)は、そのことに対して『何の変哲もない、普通の女子高だ』と冷たく言い放っていた。

 付け加えて、『倍率4倍なんぞ、どうかしているとしか思えん』とも。

 つまりは何もない、ということらしい。

 精神的に参っていた柊哉でも一笑に付したが、こうして前に立ってみると、思わず鵜呑みにしてしまっても間違いではないような気がしてくる。

 

 いったいどっちが正しいのだろうか。

 柊哉は少し悩む。

 

 しかしその疑問の答えは、解答を出す前に、ほかならぬ絵里本人からもたらされた。

 

 「私、ここの生徒会長をしてるから。困ったことがあれば何でも聞いて頂戴?」

 

 (…マジでか…)

 

 柊哉はその解答にショックを受ける。

 そして入ってきた事実を整理しようと、頭をフル回転。

 

 まず、絢瀬絵里(かのじょ)はここの生徒だ。

 それもだいぶ重要な役職、生徒会長。

 この学園の生徒たちをまとめる、音ノ木坂の代表なのだ。

 

 さらに彼女は、柊哉にとっては大好きなアイドルグループの一員。

 ここはそんな美少女が、籍を置き、授業を受け、活動しているという学校なのだ。

 

 (―――え、ということは…?)

 

 

 そしてその事実を認識したと同時、柊哉の脳内に、思わぬ期待が転がり込んで来るのも、必然の事だった。

 

 

 理事長(ハゲ)は、『通う学校は音ノ木坂で決定だから、つべこべ言うな』と吐き捨てた。

 「音ノ木坂」という女子高に、「神城柊哉」という男子生徒が通うことの確約。

 あの時、柊哉は中指を立ててスルーしていたが、今こうしてみると、あれは最高の一言だったのだ。

 

 柊哉はμ'sを育てた学校に、今日、7月1日から通うのだ。

 μ'sと同じ学校に、同じ一生徒として。

 大好きなアイドルと同じ目線で、授業を受けるのだ。

 

 これは全くもって「普通の女子高」ではない。

 どれだけ低く見積もっても「最高の女子高」だ。

 理事長(ハゲ)がそれを隠したかったのでは?という説さえ浮かんでくる。

 

 柊哉は自分の結論に確証を加えるため、目の前の絵里(アイドル)に問う。

 

 「―――え、待ってください?…絢瀬絵里って…まさか、μ’sの…?」

 「ええ、そうよ」

 

 速攻でガッツポーズ。

 

 「マジですか!!俺、ファンだったんですよ!!―――まあ、にわかなんで、俺がこんなこと言ったらマジのファンに瞬殺されそうですけどね」

 「まだそこまでの人気はなさそうだけど…まあ、褒め言葉として受け取っておくわね」

 

 柊哉がここぞとばかりに褒めると、彼女はまんざらでもなさそうな顔でそれを受け流す。

 褒め言葉には慣れているようだ。やはりμ’sは侮れない。

 まあ、だから柊哉はこのアイドルが好きなのだが。

 

 柊哉は勢いそのままに、絵里に対して質問の嵐を浴びせた。

 

 μ'sの歩んだ経緯や、彼女自身に関することまで、たくさんの質問を。

 答えてくれなかった質問もあったが、柊哉にとってはこの上なく楽しかった。

 美少女と話せることが、楽しかった。

 

 

 ひとしきり話し終えた柊哉が、ふと時計を見ると、時間は11時08分。

 柊哉がここに来てから15分以上が経過していた。

 

 今更ながらに心配の感情が忍び寄ってくる。

 

 (―――そろそろヤバいんじゃないのか…?どうも人を待たせてるっぽいし…)

 

 それに、遅刻者だしな…、と柊哉は視線を校舎へとやった。

 

 そう、考えてみれば、柊哉は今、絶賛大遅刻中なのである。

 授業開始時間はとっくの昔に過ぎ去っており、今は3時間目の真ん中とかそんな感じの時間だ。

 およそ「遅刻」しうる領域の時間ではない。

 前の高校なら、確実に鉄拳制裁コース行きの最悪手だ。

 

 これは不味い。

 何かペナルティがあるかもしれないし、そろそろ行くべきだろう。

 

 柊哉がそう結論付け、彼女に時間を進言しようとする。

 「時間ないです、そろそろ行きましょう」と、一言。

 

 だがそれを柊哉が言う直前、彼女のほうが遠慮がちに告げてきた。

 

 「―――ええと、凄く言い辛いんだけど、人を待たせているの。だから、ちょっとついてきてもらえるかしら?」

 「いや、それは別にいいんですけど………ああ、そゆこと」

 

 柊哉は彼女の、どこか回りくどい言い草に納得する。

 そういえば。

 彼女―――絢瀬絵里を柊哉が視認した瞬間から、音ノ木坂学院前の坂に人だかりが出来始めていた。

 おそらくは彼女の美貌と、彼女の知名度によるもの。

 ただでさえ目の前にμ'sファンの聖地・音ノ木坂学院があるのだ。

 そのうえ平日の昼間に彼女が姿を現すなど、珍しいどころか今後一生ありえない。

 

 そんな有名な女生徒・絢瀬絵里が、見知らぬ制服を着た見知らぬ男子生徒と話している。

 

 ファンにとっては最悪の、マスコミにとっては最高の、事件(スキャンダル)の香りしかしない。

 

 人ごみに交じって殺気飛ばしてくるガチ勢もいるし、ここは誘いに乗ったほうがよさそうだ。

 柊哉の命はこんなところで尽きるわけにはいかない。

 

 柊哉は頷いて、案内してくれる彼女の横を、共に歩き始めた。

 

 「こっちよ」

 「了解」

 「あら、案外素直なのね」

 「素直で悪いですか?」

 「ふふ、そんなことないわよ」

 「なら良かったです」

 

 軽く会話を交わしながら、正門を潜り、奥へと向かう。

 2人とも、もう後ろの視線なんて、完全に気にしていなかった。

 

 

 

                   ★

 

 

 

 

 ―――さあ皆さん始まりました、KMS(かみしろ)ニュースの時間です。

 さて、いきなりですいませんが、今回、中継がつながっております。

 それではマイクを渡して見ましょう。現場の神城さーん?

 

 

 …はい、こちら、神城柊哉です。

 ただ今、7月1日の11時チョイ過ぎ、天気は晴れです。

 

 今、俺がいる場所は国立音ノ木坂学院、1階理事長室です。

 現在、この場所には、

 

 笑顔で不機嫌オーラを撒き散らす、温帯低気圧がいらっしゃいます。

 はっきり言って、超コワイです。

 俺の体中ら、冷や汗の雨(比喩)が降り注いでおります。

 

 外は晴れ、しかし中は雨です。

 いっそこのまま外にいればよかった。

 

 あ、そろそろ爆発しそうなので、そろそろマイクお返し致しま~す。

 

 

 ―――はい、こちらスタジオです。神城さん、死にはしませんかね…?

 まあ、大丈夫でしょう。

 

 それでは、また来週~。

 

 

 

 (―――って、終われるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)

 

 思わず心の中で大絶叫する現場の神城さん。

 全く終われない。終わるなどちゃんちゃらおかしい。終わらせてはいけない。

 

 しかし声には出さない。

 出せない。

 

 何故か。

 

 「―――…さあ、神城くん、覚悟はいい…?」

 

 コレである。

 温帯低気圧―――もとい、目の前の椅子に座る音ノ木坂学院理事長が怖いのである。

 

 優しげな双眸に、アッシュグレーの長髪と白いスーツ。

 いかにも仕事のできそうな美人。

 そんな美人が笑顔で柊哉を見ている。

 

 だが、そのはずなのに放たれるプレッシャーがハンパじゃないのだ。

 可愛らしいけど本当に怖い。

 

 柊哉はガクガク震えながらも、何とか言葉を返すしかなかった。

 

 「…なんですか、覚悟って…」

 「もちろん、神城くんが大遅刻したことに対する、罰よ?」

 「いや罰よ?じゃなくてですね。確かに遅刻しましたけど、それは俺にも理由があってのことでしてね?決して、意図的に遅刻したわけではなくてですね?それで…」

 「それで?」

 「情状酌量を求めます」

 「うーん、却下かしらね」

 「一撃!?」

 「だって、反省の態度が見られないですし」

 「ほんとマジすんませんしたぁっ!!!!」

 

 土下座。

 清々しいまでの、綺麗な土下座。

 理事長への反省の態度は、コレで示すしかない。

 

 頭を地面にこすりつけながら、柊哉は理事長の言葉を待つ。

 

 「まあ、罰は与えますけどね~」

 「じゃあなんだったんですかこのくだり!!!」

 「面白さ?」

 「求めてないですって!!!」

 

 ―――柊哉と理事長の夫婦漫才みたいになってきた。

 そろそろケリをつけなければ。

 

 そのための手段は1つ。

 

 「で?…俺がする罰って、どんな感じのですか?」

 

 諦めるしかない。

 アレは無理、と割り切るしかない。

 

 柊哉は覚悟を決めて、理事長に問いかける。

 潔く諦めたほうが、罰も軽くなるのではないか、という柊哉の考えた結果の、問いかけ。

 理事長はその質問に、腕を軽く組んで少し考えた後。

 

 「え?うーん………ちょっと、待っててもらえるかしら?」

 

 笑顔のまま表情を変えることなく、小首をかしげて、こう言い放った。

 

 (何するんですか理事長!?)

 

 柊哉はその返答に心底ビビる。

 冷や汗が本当に止まらない。

 理事長がこの後、軽い口調で「処刑♪」とか言いそうで、全く安心できない。

 

 (こんなところで死ぬのか…ぶるぶるぶるぶる)

 

 柊哉は地震を起こすほどの勢いで武者震いする。

 そこに「ふーんふふふふーん♪」という理事長の上手い鼻歌まで入ってきて、柊哉はもう死にそうになるしかない。

 

 そのまま針のむしろ状態で柊哉が待つこと数十秒。

 

 「―――よし、これにしましょうか」

 「何ですかね…?」

 

 理事長は、柊哉にどんな罰を与えるか決めたらしい。

 手をぽん、と叩き、弾んだ声をだして、にっこりと微笑んでくる。

 柊哉に向かって、満面の笑みで。

 

 ―――きっと、理事長の笑顔に、Jekyll(てんし)Hyde(あくま)が見えるのは気のせいだろう。

 

 柊哉はなんとなく、気持ち身構えて、答えを待つ。

 

 「―――じゃあ、神城くんには…」

 「………………(固唾を呑む)」

 

 さあ、柊哉の罰はなんなのだろうか。

 理事長が唇を開く。

 

 

 

 「―――生徒会の仕事を、手伝って頂戴♪」

 

 

 

 (――――ありゃ、案外楽か…?)

 

 その意外すぎる罰に、柊哉は拍子抜けしてしまった。

 あまりにも、遅刻のペナルティとして楽すぎやしないか、と。

 

 思わず罠かと疑ってしまったくらいに、敵意がまるで見当たらない。

 

 「―――えっと………そんなので、いいんですか?」

 

 柊哉は問いかける。

 今度は前と違い、確認の問いかけだ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということを聞くための。

 

 そんな、裏の見え透いた問いかけに対し、

 

 「ええ、いいですよ、別に。それで十分ですしね」

 

 案の定理事長はこう返してきた。

 

 普通なら安堵するところなんだろうが、どうしてだろうか、柊哉には裏があるように感じられてならない。

 一発では信用が利かないのだ。

 だから確認する。

 分かるまで、何度でも。

 

 「―――本当ですか?」

 「ええ、本当よ」

 「本当の本当ですか?」

 「本当の本当よ」

 「本当の本当に本当ですか?」

 「本当の本当に本当よ」

 「本当の本当の本当に本当―――」

 「しつこい男は、嫌われますよ?」

 「はい、すいませんでした」

 

 ほら、笑顔が怖い。

 たまに修羅がみえるんだよなー、あの理事長、と柊哉は頭をかく。

 

 柊哉がまたもビビっている中、理事長は笑顔のまま、こうも告げてきた。

 

 「―――というか、神城くんにはうちの生徒と仲良くやってもらわなきゃ困るの」

 「―――というと?」

 「イロイロと事情が重なっちゃって、今回の神城くんの編入を良く思っていない生徒が多いのが、主な理由ね」

 「…ほう?」

 

 柊哉的に、聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 

 (ええと、「今回の神城くんの編入を良く思っていない」、だっけか?)

 

 …そうなると話はだいぶ変わってくる、と。

 柊哉は、心を聞き手モードにシフトさせて、聞く体勢に入る。

 

 理事長はさらに話す。

 

 「神城くんの編入を告げたときは、喜んでいる人たちもいたんだけど…『女子高に男子を入れるとか不潔!!』とか、『せっかく知名度出てきたのに、この編入で評判落としたらどうしよう』という声も、校内で聞かれるようになってきたの。こっちとしては、せっかく打った策だもの、成功させたいとは思うわよね?」

 「まあ、そっすね」

 「だから神城くんには、一刻も早くウチの生徒と仲良くなって欲しいの」

 「へえ」

 

 「そのためには、まずは校内で一番知名度のある生徒会と、仲良くなるのが一番手っ取り早いじゃない?」

 「―――なるほど、そういうことか」

 

 これで納得がいった。

 適当にほいほい考え出したペナルティってわけじゃないらしい。

 きちんとした理由があったのだ。

 

 (なるほど、理事長は俺の編入を支持する側陣営に、『生徒会支持』っていうでっかい看板をかけたいわけね)

 

 つまりはこういうこと。

 柊哉の編入を、『生徒会の支持』という札を使って、反対派に強制的に認めさせるのだ。

 およそ学校のトップがとるような方法ではない、だいぶ横暴な手段だが、

 

 (―――俺は嫌いじゃないけどな、その手段。超やりやすいし)

 

 柊哉はそれがむしろ大好きだ。

 「虎の威を借りる狐」戦法は、単純明快にして結構強い。

 前の学校でも良く使った手。

 

 ―――ということは、柊哉としても断る手立ては無いわけで。

 柊哉は半ばやけくそな感じで、その策に肯定を返した。

 

 「―――分かりましたよ…、受けますよ!!」

 「ありがとう、神城くん…本当はもう1つ、仲良くなって欲しいグループがあるのだけど…まずはそっちからね♪」

 「はいはい…」

 

 柊哉は仕事が増えたことにげんなりする。

 仕方の無いことだとは思うが…毎度毎度キツい話なのだ。

 特に「理事長」から渡される仕事の数は多い。

 面倒どころの話では済まなかったときもある。

 

 でも、前と違ってうれしそうに微笑む理事長を見て、そんなことなんて口が裂けても言えない。

 

 結局、柊哉はため息を追加して、マイナスの気持ちを胸から追い出すしかなかった。

 やるせない気持ちが、頭を離れない。

 「あはは…」という空笑いしか出てこない。

 

 すると、柊哉が笑い終えた瞬間に、理事長が急に立ち上がった。

 どこかへ行くのか、そのまま理事長室のドアノブに手をかける。

 

 …会議にも出るのだろうか?と、柊哉はいぶかしむようにそれを見やる。

 

 まあ柊哉としては、もうちょっとゆっくり出来るので願ったりなのだが。

 

 (―――ぶっちゃけ今、どこかに入れる気がしないし…)

 

 柊哉は理事長がいなくなった後を考える。

 だがその前に、理事長がこちらを振り向いて、そのまま柊哉に言葉を投げてきた。

 

 「それじゃあ、ついてきて?」

 「え、どこにですか?」

 「どこって、決まってるじゃない…」

 

 今、理事長はなんと言っただろうか?

 柊哉は理事長の発言に面食らい、すぐには言葉を返せない。

 柊哉が動けないところに、理事長はすかさず言葉をかぶせてきた。

 とびっきりの笑顔と共に。

 

 

 「―――神城くんの教室♪」

 

 

 

                   ★

 

 

 

 「―――えー、はじめまして!俺の名前は神城柊哉(かみしろしゅうや)。タメ口とかそーいうの好きじゃないんで、気軽に柊哉(しゅうや)って呼んでくれ。仲良くしてくれると嬉しいかな」

 

 どうも…こちら神城柊哉さんです。

 

 ただ今7月1日午前11時42分、4時間目のスタート時刻。

 今俺は、音ノ木坂学院2年2組で自己紹介中だ。

 

 来た時間があまりにも微妙っちゃ微妙だったもんで…、結局こんな時間に来る羽目になっちまった。

 なはは、なんだそりゃ。

 

 当然俺の突然の乱入に皆さん驚きのご様子で。

 まあ目は見開いてるわ、声なんて1つも聞こえないわ、口開きっぱのヤツもいるわ。自己紹介をちゃんと聞いてるやつの方が珍しいな。…俺泣くぞ?

 

 「―――ええと、神城くんの席は、あそこね」

 「りょーかいですー」

 

 いち早く現実世界に復帰してきた先生の一言に、俺は頷きを返して歩き始める。

 ちなみに先生のお名前は山田先生というらしい。覚えておこう。

 

 そして席に座り、隣の席の奴に挨拶しようとして、

 

 

 

 「よー、隣の席の人かな?今日から1年、よろし…く……な………」

 

 ―――固まった。

 

 

 脳がそれを認識するのに、かかった時間は約3秒。

 認識した瞬間、脳が悲鳴を上げ始める。

 

 …なんで、この人がここにいるんだ?

 なんで、この人がここに…?

 なんで…!?

 

 俺が驚きを隠せないでいる中、隣の席の人も、俺の視線に気づき、固まる。

 何故か。

 

 何故なら。

 彼女は、俺の大好きなグループのメンバー。

 俺がずっと憧れて止まなかった人。

 曲の作詞者。

 その名は、

 

 

 

 (―――う、海未…!?)

 

 

 

 …園田海未(そのだうみ)

 16歳で俺と同い年の、「μ’s」のメンバー、「3」の点呼をとる2年生。

 現在最も輝いている美少女9人のうちの、1人。

 

 そして、俺の、神城柊哉の、2人目の推しメン。

 つまり、大好きな人。現在進行形で。

 

 (―――おいおいおいおい、嘘だろ!!?)

 

 予期せぬ憧れの人との出会いに、俺の脳は沸騰する。

 …え、音ノ木坂って、そんなに好待遇でいいのか…!?

 

 俺はしばらく、口から言葉が出なかった。

 

 

 

 




 どうでしょうか…。
 駄文特性が完全に生きてしまいました…。
 本当にすいません…。

 感想や評価を、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは!

 あ、オリジナル作品の投稿しなきゃ…。

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