さあ出来たぜえりち誕生日編!!
時間軸、今までの設定、すべてを完全無視してお送りする誕生日編!!
きちんとした話を楽しみたい方は、2つ先の6話まで飛んでみてください。
お願いします。
それでは、読みたい、といって下さった読者の皆様、どうぞ!!
矛盾しかありませんよ?読むときはご注意ください。
追伸
UAが3700を突破していました…。
読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!!
Maybe,baby. ~μ's Birthday Edition Vol.9~ 前編
10月21日、朝5時17分。
お嬢様然とした部屋の中で、音ノ木坂学院3年、
寝ぼけ眼で周りを見回し、2分間も鳴りっ放しの目覚ましを止める。
そして、大きく伸びをして、寝起きの体を
絵里自慢の
(―――ああ、そうか。今日は、10月21日だっけ…)
途端、意識がスウッと覚醒する。
ベッドからゆっくりと起き上がって、隣に置いてあるクローゼットに向けて歩み寄る。
クローゼットの扉を開放しながら、絵里は悩ましげに呟く。
「…今日は私の誕生日…」
そう。
今日、10月21日は、絵里が神様から生を授かった、記念すべき1日だ。
「バック・トゥ・○・フューチャー」の未来世界の日付なんかではない。絵里にとって何者にも代えがたい、大事な1日なのだ。
そんな今日は、水曜日。
祝日なんかではない、至って普通の水曜日だ。
だが、だからこそ。
平日の学校で、大切な仲間たちに、自分の生まれた日を祝って欲しいと、絵里は心の底から願っていた。
自分の誕生日が休みで消えて、退屈なあいさつ回りに回らされるよりかは、そちらのほうが断然良かった。
そしてそこに、自分の想い人も、一緒に―――。
(―――これ以上、このことを考えちゃダメね。…眠れなくなってしまう…)
赤くなってくる頬を押さえながら、絵里は、制服を引っ張り出す。
いそいそと着替えている最中、絵里は頭も動かしていた。
―――無論、自分の誕生日に対する、周りの反応を想像して、だが。
そんな風に、頭の中で一喜一憂する中、絵里は、1つの疑問にぶち当たった。
「…皆、このこと、覚えているかしら?」
そう、これだ。
そもそも、誕生日イベントなんて、μ’sのメンバーがそれを覚えているかどうかによるのだ。
肝心の彼女らが忘れていては、元も子もない。
だが、流石にそれは無いだろうか―――。
絵里が猜疑心にかられそうになったときである。
「お姉ちゃん!…ご飯出来たよ?」
「ああ、亜里沙…分かった、すぐ行くわ」
妹、亜里沙の声が、それをすんでのところで繋ぎとめた。
意識が急速にクリアになっていく。
それは、覚醒ではない。
それは、ストレス解消でもない。
それは、発見の
(―――そうだわ、…なってみないと、分からないものだし)
そうだ、誕生日を忘れているかどうかなんて、今日1日を過ごしてみなければ分からないではないか。
最後にサプライズがあるかもしれないし、最初から最後まで1日騒ぎっぱなしかもしれない。
誕生日の祝い方は1つではないのだ。
絵里はそう、思考に強引にケリをつけると、亜里沙に返事を返した。
★
その後、朝食を普通に済ませ、登校中に襲われることも無く(ファンには校門前で超出待ちされたが、華麗にスルー)、朝することも無かった絵里は、音ノ木坂学院の中庭で、朝の空気を存分に吸っていた。
「今朝は、何もすることは無かったわね…久しぶりに、静かな朝だわ」
そう、誰に聞かせるとも無くごちると、深呼吸をする。
ゆっくりと息を肺に詰め込み、それを一気に吐き出す。
まるで、演奏を前にした、オーケストラの指揮者のように。
―――絵里は内心、少し緊張していたのだ。
誰かが、自分の誕生日に気づいて、押しかけてくるのではないか、と。
μ’sのメンバーや、生徒会の役員たちが、自分の生まれた日を祝いに来るのではないか、と。
だが、今の時点で、そういった類のことは未だ1度も無い。
何も、仕掛けてくる気配が無いのだ。
少しだけ、吐く息にため息を混ぜる。
そんなふうに鬱になりかけていたとき、絵里は1つの人影を視認した。
(―――あれは…
その人影は、見た感じ、自分の後輩、
彼女らしく、おっかなびっくり、といった感じで、ゆっくり、ゆっくり、と歩いてくる。
傍に、相棒である
どうやら、本当に1人のようだ。
絵里としては、声をかけないままその場を立ち去る理由もないので、花陽のもとへと近寄り、手を挙げた。
「あら、花陽。今日は随分と早いのね、おはよう」
何てこと無い挨拶。
でも返って来た言葉は、絵里の予想の斜め上をいった。
「あ、え、絵里、ちゃん!?」
「ん?どうかした?」
「…ひ、ひいっっっっっっっっっっっ!!?ご、ごめんなさいっっっっっっっっっっっ!!」
「は、花陽!?」
花陽は突如奇声を上げると、そのまま弾かれたように、ものすごい勢いで絵里の前から走り去ってしまったのだ。
そして絵里が止める間もなく、花陽は視界から外れてしまった。
誰もいなくなった中庭で、絵里は1人、呟く。
「―――私、何かしちゃったのかしら…?」
絵里としては、そう心配せざるをえない出来事だった。
★
絵里は、誰にも誕生日のことを気づかれないまま、昼休みを迎えていた。
少しのもやもやを、胸に抱きながら。
(―――はぁ…)
そう、今の今まで、誰にも気づかれていないのだ。
10月21日が、絵里の誕生日だ、ということに。
それなのに、この学園の皆は、普段の平日のように、この日を過ごしている。
(―――たまたまよね…。私が気にしすぎなだけよ…)
ただ絵里は、この過ごし方こそが彼ら彼女らにとって普通なのではないか、とも考えていた。
自分自身が神経質になりすぎているだけ。
他人にとっては、今日は普通の水曜日なのだ。
そう、自分の気持ちを納得させて、無理やり押さえつけようとする。
しかし、1つ解せないことがあった。
(…でも、本当に、何で気づかないのだろう…)
そう、仲間であるμ’sのメンバーすらも、絵里の誕生日に気づいているそぶりがないのだ。
プロフィールは渡しているので、誕生日など知っているはずなのに、だ。
親友の
『―――ん~?えりち、今日元気ないなぁ。どないしたん?』
と、いつもどおりのふわ~っとした感じで話しかけてくるだけだ。
おかしい。
それは分かる。
では、何が、おかしい―――?
絵里は思考の海に沈む。
その状態のまま、廊下を1人、寂しく、ゆっくりと歩いていたときである。
「絵里!?え、絵里か!?」
通路の反対側、廊下の角あたりから、絵里が待ち望んでいた人の声が響いてきた。
いつもどおりの眠たげな声で、少しの焦りを含んだ声で。
自分を助けてくれた、あの時そのままの声で。
「
その声に、若干の期待と嬉しさを感じながら、絵里は声の元に、小走りで走り寄った。
だが、
「―――きゃぁっ!!?」
「うわっと!!?…ちょっ、危ないぞ~。走り寄ってくるんなら最初に言ってな~?」
「ちょっと、何よこれ!?」
―――その想い人が、両手に溢れんばかりの荷物で前が見えなくなっているとは、絵里も考えなかったらしい。
ぶつかるギリギリでブレーキをかける。
その甲斐あってか、柊哉とぶつかることだけは回避できた。
そしてぶつかりそうになった絵里は当然、お相手の柊哉に向かって抗議する。
「ちょっと!!危ないじゃない!!」
「Don’t worry,that’s the way it goes!!(仕方ないぜ、世の中そんなもんだ!!)」
「ここで英語スキル出すの!?」
だがその抗議を、柊哉に華麗なボケで避けられてしまった。
なんとなくおちょくられたような気がして、絵里はふんっとそっぽを向く。
…しかし、柊哉は何も考えなしにボケたわけではないらしく。
「―――というのは冗談だが、今リアル系統で急いでるもんでな」
「………………そう」
「というわけで、文句苦情難癖言いがかりなんかは後で聞く!!そんじゃな!!」
「あ………ちょっと!!」
その理由を「急いでいる」と述べた柊哉は、絵里がその後何かを言う前に、荷物を抱えなおして、風のように走り出した。
絵里が慌てて手を伸ばすも、もう彼は遠く彼方。
凄い勢いで角を曲がって、ついには見えなくなってしまった。
「―――もう!何なのよ…」
柊哉のその反応に、絵里は少しだけ憤慨する。
今日は誕生日なのに、この仕打ちは酷いのではないか。
誕生日の時だけ、自分中心に世界が回っている、というわけではないが、もう少しくらい、
絵里が想いを寄せた
(まるで、柊哉じゃないみたい)
ついには、先ほどの男は神城柊哉ではない、とまで考えた。
自分の大好きな、あの柊哉はどこへいったのだろうか。
絵里が意味も無く、あたりをきょろきょろと見回し始めたときである。
「―――それ、本当なの?」
「嘘はついてないにゃー。
「…ふうん…」
「あり?…真姫ちゃん、もしかしてジェラシーにゃ~?」
「なっ!!?ち、違うわよ!!ただ、私だって………柊哉に…」
「柊哉に~?」
「…な、なんでもないわよ!!あぁもう、意味わかんない!!」
「にゃはは~!照れる真姫ちゃん可愛いにゃー!!」
絵里と柊哉の後輩にして、同じμ’sのメンバーである、凛と真姫が、廊下の反対からやってきた。
絵里の見た感じでは、からかう凛にからかわれる真姫、といったような、最早おなじみともなりつつある光景ではないだろうか。
(―――凛も真姫も、変わったところはなさそうね…)
絵里はその光景に、本当に少しだけ、落胆する。
この2人も、今日が絵里の誕生日だということに、気づいていないらしい。
サプラーイズという感じでもなさそうだ。
だが、絵里がここにいることには気づいていないらしい。
(…少し、驚かせてみようかしら…?)
そんな過程の中、ほんの少しの悪戯心が働いた絵里は、廊下の角に身を隠す。
音と気配を出来る限り消して、後輩2人の様子を窺う。
そして、絵里の耳は良く分からない会話を拾った。
―――いや、傍目から見れば、ただの世間話かもしれないが、絵里は、あえてこう評したのだ。
少しだけ、おかしいところがあったから。
まず、真姫が喋りだす。
「―――それにしても、柊哉も大変ね」
「全くだね!凛も、ちょっと今日の柊哉くんの扱われ方は酷いと思うにゃー」
「凛もそう思う?…そうよね…
「でも、考えたら真姫ちゃんもおんなじことしてると思うのー」
「う、うるさいわね!…私が、そんなこと、するはず…」
この何てこと無い会話を、絵里が「おかしい」と評したのは、この二言だ。
『凛も、ちょっと今日の柊哉くんの扱われ方は酷いと思うにゃー』
『…海未やことりにこき使われちゃって…』
(おかしいわね…海未やことりは、一番柊哉を使役しそうで、してないはず…)
絵里は考え始める。
確かに柊哉は、μ’sの10人目ではあるが、今はマネージャーのような業務をこなしている。
それは当然、男が女装してステージに立つわけにはいかないからだ。
そして柊哉自身も、それを肯定的に受け入れ、日々馬車馬のように働いている。
―――だが、そんな働く柊哉を、自分のために使いたい、と考えるメンバーも、特にこの10月に入ってから現れるようになってきた。
本音は「柊哉(くん、さん)と一緒にいたい!!」というものなのだが。
その中で一番柊哉使用頻度(言っちゃなんだが)が高いのは、ダントツで
そしてそれに真姫や凛、にこが続き、希や花陽、絵里自身も1回だがある。
しかし、ことりと海未に関しては、夏以降、そういったことを全く聞かない。
なのに、今日に限って、この2人にこき使われている―――?
(―――これは、聞いてみる必要がありそうね…)
絵里は、疑問解決の手段に「直談判」を選択すると、廊下の角から姿を見せる。
「…うにゃっ!!?」
「え、絵里!!?」
颯爽と、突如現れた絵里に驚く2人を尻目に、絵里は毅然とした口調のまま、言い放った。
警戒させないように、少しだけ、言葉をオブラートに包んで。
「―――ねぇ、凛に真姫。…柊哉が急いでいた理由を、知っているの?」
その絵里の疑問に対し、2人はこともなげに言葉を紡いだ。
「…知らないわよ、そんなの」
「凛も何も知らないにゃー!」
まさかの、2人連続のI Don’t Know宣言。
普段だったら、絵里は2人を信じてすぐにこの場を立ち去っていただろう。
だが今回の「知らない」に対し、絵里は微塵も信頼を抱くことが出来なかった。
しかし、余計な警戒を2人にさせるわけにはいかない。
絵里は一応笑顔を形作り、条件反射的に言葉を返した。
「―――ふーん、そうなのね。ありがとう、2人とも」
「…そ。じゃぁ、私たちは先に行くわね」
「絵里ちゃん、じゃーねー!!」
「ええ、またね」
挨拶を済ませると、2人は楽しく談笑しながら、廊下の奥に消えていく。
だが絵里は2人から、何故か視線を外すことが出来なかった。
長かったので前後編に分けました!!
気に入ってくださるとよろしいのですが…。
それでは、後編で!!
追伸
…後編間に合いませんでした…!!
誠に申し訳ございません。私の不手際で…。
つきましては、後編を翌日の21時16分に投稿したいと思います。
楽しみにして下さっている皆様、本当に、申し訳ございませんでした。