セーフ、テスト週間中に合間をぬって作りきりました。
たぶん短いですが、どうぞ。
※6月16日追記
大幅に改稿しました。
どこかおかしいと思いましたので。
2015年7月1日。
何故か。
生μ’sとの初対面を果たしたからである。
μ'sファン垂涎の行動を、こんな形で実現できたからである。
ただし、完全に不意打ちであるが。
「ええと、よろしく?」
その情景があまりにもぶっ飛びすぎていたせいか、珍しく素のままで言葉を返してしまった柊哉。
表情も心なしか固い。緊張感を顔全体に剥き出しにしてしまったような顔だ。
そんな顔でも一応、「よろしく」と言えたのだから、理性というものは侮れない。
我ながら褒められるべき行動だと柊哉は思う。
だがその後に柊哉にかかってきた言葉は、それ以上に、割と、辛辣だった。
「なんで
(―――だろうなと思ったよ…)
そう、彼女だ。
μ’sメンバーがここに9人全員勢ぞろいしているなら、当然、そこには先ほど刺激的に対面を果たした2年生、
光景の凄さにすっかり失念していた。
柊哉はため息をつきながら、驚くどころか最早嫌悪のまなざしを向けてくる海未に向かって反論する。
「―――そんな、俺が悪い奴みたいな扱いしないでくれ…」
「他に誰が悪いというのですか?」
「そこで笑顔かいな。その笑顔は100点満点だけども」
「あ、まさか…絵里が悪いなどとは、言いませんよね?(笑顔)」
「はい俺が悪かったです」
美少女の天使スマイルにはどんな男も無力である。
たとえ悪魔がはたに見えていたとしてもだ。
柊哉は土下座をひらりと繰り出しながら、自分の行動が間違っていないことを確かめる。
ともかく、これで、柊哉の海未に対しての反論は
無くなるの早くね!?って思う人が多いかもしれないが、仕方ない。
柊哉はもともと女子に対する反論の手段の数など持ち合わせていないのだ。
それでいちいち突っかかって、子供認定されるほうが嫌だ。
と、彼女の笑顔を見ながら結論を出していた柊哉の耳に。
「―――えーっと、状況を説明して欲しいんですけど…」
横にいたオレンジ髪の美少女の声が、遠慮がちに届いてきた。
後ろを見ると、同じような表情で待ち構えるμ'sの面々がおよそ7つ。
そういえば、他の人たちを置いて来てた、と柊哉は反省。
そして今までの表情を消して、即座に笑顔を作る。
「…いーや、なんでも?俺は2年2組配属になっただけですよー?」
「つまりは…海未ちゃんのクラスメイト、ってこと?」
「そーですそーです。後は出会い方が劇的過ぎただけでー…」
「劇的にゃ~?」
「そう、劇的にゃー」
「…どういうことよ、それ」
「おおっと説明を求めますかね。結構ハズいんですけどー…ま、いいや。理事長んとこ行くんで、手短に済ませますね」
柊哉はそこで口を一旦噤み、直後底抜けに明るい表情で言い放った。
爆弾を。
「―――要点だけ抜き出すと、彼女に公開告白してフラれたってわけですね」
「「「「「「「「「―――――――…はい?」」」」」」」」」
柊哉が投下した大爆弾に、海未も含めてμ’s全員が目を点にした。
世界の時が停まるとは、この現象のことを指すのだろう。
それほどまでに何もなく、ただ秒針だけがくるくると回っていた。
(―――いや、あそこで笑ってる奴が1人いるな)
そんな停止した世界の中で、柊哉はひとり、それをものともしない美少女を見つける。
あれは柊哉の予想が正しいのなら、8の番号を冠する女神・
紫色の分けた長い髪や、綺麗な
というか、生粋のμ’sファンたる柊哉が、μ’sの面々の顔を、今更見間違えるはずもない。
柊哉は爆弾投下したときのままの表情で、くすくすと笑っている希に話しかける。
「―――え、そんなに面白いですか、俺の盛大な失敗談」
「ううん、そうじゃなくて。…神城くん、よくあんなこと言えるな~。尊敬するで」
「いや~、お褒めに預かり恐悦至極………おい」
柊哉のノリツッコミに、さらにクスクスと笑みを零す希。
(…おおう、意外と心にグサッと来たぞ…)
それに柊哉は軽く傷つく。
(というか、希の言葉ってある意味マジ正論だよな…)
そして柊哉は二重に傷つく。
喩えるなら、RPGでほとんど体力残っていないのに毒状態を重ねられたような感じだろうか。
本音と正論のダブルパンチを食らってふらふらしている柊哉に、更なるジャブが。
「…す、すごいですね、神城さん…うぅ…」
「おお~い、小動物系キャラに引かれるのはメンタル的にキッツいんだーがー…」
「神城くんって、メンタル凄いね~♪」
「その凄いは使い方を間違ってるぞ~☆」
「神城くん!」
「何でしょうか!」
「キミ、大丈夫!?」
「リーダーに心配されてしまったZE!」
「…大丈夫、にこにー負けない!!」
「アンタはキャラがブレてきてるぞー?」
カオスすぎる。
柊哉の軽い一言だけで、こうも天国から容易く地獄へいけるものか。
ある意味、もうほとんどHPの残ってない柊哉に、更なるダメージが。
これまでずっと沈黙を貫いていた海未が、柊哉のもとで立ち止まる。
「―――神城さん、もう金輪際、私に話しかけてこないで下さい」
「それはあんまりじゃないかなぁ!!?」
その海未から告げられた突然の絶縁宣言に、慌てて待ったをかける柊哉。
これは仕打ちとしてはだいぶ最悪の部類だ。
そこまで酷いことを言った記憶は、柊哉の中にはないはずなのだが。
「―――知りません。自業自得です」
「俺のせいか!?俺のせいだな、マジすんませんしたっ!!」
「謝るまでが早い!?」
だがとりあえず、彼女の表情を見るに、悪いのは
穂乃果が驚くほどのすばやい身のこなしで、柊哉は鮮やかに土下座を決める。
「そして土下座!?」
「誠心誠意って、大事だよな」
「ここでそんな良さげな言葉を使うにゃー!?」
「はい、俺は悪い子でした。これから、ちゃんとした人生を生きたいと思います」
「そんなボケいらないわよ!?」
「え、俺ボケてないんすけど?」
「自覚ないんか~」
途中からだいぶ話が脱線してきた。柊哉はふと思い立って辺りを見渡す。
見る先にいる彼女らの間に揺蕩うのは困惑の空気。突然のノリについていけないという雰囲気。
その視線はお世辞にもプラスとは言い難い。
海未などもう完全に柊哉へ目線を向けていないのだから。
(―――もしや、ふざけすぎたせいで、好感度が下がってしまったのか…?)
その情景を見た柊哉は、遅まきながら今の情景について考える。
たっぷり熟考すること5秒。
結論。
(…そっ、それは…マズい!!)
柊哉はすぐさま海未に向き直る。
そして。
「…ちゃんとしてなかった自己紹介します!!俺の名前は
大声で自己紹介をした。
先に何か言われる前に、さっさと自己紹介をしておこうと考えてのことだ。
彼女らが、意図を理解できないという目線でこちらを見ているのが視界に映る。
そりゃそうだ、柊哉だって、何でこんなことをしたのか分からないのだから。
再び、頭にクエスチョンマークを浮かべるμ’sのメンバー。
柊哉の意図というか、会話の流れに、先程以上に戸惑っている様子だ。
柊哉もどこか困ったような笑みを浮かべて、やっぱマズったか、と頭をかく。
そんな困惑の空気が支配するアイドル研究部の部室の中、そんな空気を打ち壊すかの如く、1人の女生徒が立ち上がった。
今この場にいる全員の視線が彼女に集中する中、彼女は大爆弾の
そして彼女は、営業スマイルを浮かべて、こう、言い放った。
「にっこにっこにー、あなたのハートににっこにっこにー、笑顔届ける矢澤にこにこー、にこにーって覚えてラブにこっ…柊哉くん♡」
その、今の空気とはあまりにかけ離れた、ノリノリの自己紹介に。
彼女が作り出してくれた、「にこにー」による、また新しい空気に。
柊哉も、μ’sも、苦笑を浮かべた。
そして。
「―――オーケー、にこにー先輩。こちらこそ、よろしくお願いしますぜ」
柊哉は、その自己紹介に会釈を返した。
それは何も、形式的な自己紹介の返し、という意味合いだけではない。
空気をリセットしてくれた彼女に対する、感謝の念だ。
「ありがとう」の心だ。
「…へぇ?案外話の分かる子じゃない」
「あらら、そっちが素か。…まあキャラ作りは大切だと思うし」
それを手に滲ませたまま、柊哉はにこと自己紹介をする。
―――そして、その空気に、他のメンバーが乗っかり始めた。
まずは、1人。
それに続いて、2人、3人と、柊哉に手を伸ばす。
言葉という、媒体を経て。
「―――柊哉!」
「おん?なんだ?」
「知ってるかもしれないけど…私は
「おう、これから9ヵ月、よろしく!」
「そこでなんだけど…私のことは穂乃果って呼んでいいよ?同い年なんだし」
「りょーかい、穂乃果ね。俺も柊哉でいいぜ…って、もう呼んでるか」
「柊哉が言い始めたんじゃんっ!!」
「ごめんなさいねー…」
「柊哉っ!!」
「おう、どした?」
「凛はね、
「おー、よろしく、凛」
「ウム、素直でよろしい!!真面目に返事を返すとは、いい心がけだにゃー」
「それ絢瀬先輩にも言われたし、あんま似合ってないぞ、それ」
「あれ、そうかにゃー?…そっくりだと思ったけど…」
「そっくりなのはそうだな」
「―――次は私ね。
「簡潔な自己紹介だなー。ツンツンしてらっしゃる…」
「…ねぇ、柊哉」
「あん?なんでござらんしょ、真姫ちゃん?」
「ちゃん付けはやめてよ!子供みたいじゃないっ!!」
「うーん、でも真姫って呼ぶのしっくり来ないんだよなぁ。やっぱ真姫ちゃんだわ」
「もう、意味わかんないっ!!柊哉のバカっ!!」
「あ、でも俺を柊哉って呼ぶのは大丈夫なのな」
「―――柊哉さん、改めて自己紹介します」
「ん」
「
「こちらこそ、よろしく頼むぜ、海未」
「…私は、まだ貴方のことを許したわけではありません」
「ああ、別に許されるようなことをした覚えも無いしな」
「…同じようなこと、他の人には言わないで下さい」
「努力はしてみるけど…無理だろうなぁ」
「―――えっと、私は
「りょーかいっと。よろしくなー、ことり」
「ねー、柊哉くん。名前縮めて、しゅう君って呼んでいい?私、そっちのほうが落ち着くから♪」
「…ええと、ご自由にどうぞ?そんな呼ばれ方初めてだけど」
「あ、嫌だった?嫌なら、もとの柊哉くんって呼び方に戻すよ…?」
「いやいやいやいや、そのまんまでいいよ。全然おっけー」
「じゃあ、しゅう君、だね♪」
「なんか新しい世界を開拓した気分だ…」
「…あうぅ…わ、私は
「―――うん、よろしく。小泉さん、って呼んだほうがいい?」
「よっ、呼び方ぐらいは、べべべ別に何でもいいです、よ?」
「…何この可愛い生き物。今俺ちょっと
「…柊哉さんは、アイドルが好きですか?」
「おう、μ’sを筆頭に、意外と好きなもんは多いぞ」
「そうなんですかっ!!!それなら、今度一緒にお話ししましょう!!」
「…ああ、俺はなんと幸せなのだろうか…」
「…あ、次の自己紹介、うち?」
「そのようですねー」
「…うちは、
「はい、どうもでーす、東條先輩。…あれ、どっかで見たことがあるような…?」
「あぁ、そりゃそうか。うち、たまに神田の明神さんのとこで手伝いさせてもらっとるんよ~。…困ったときは、うちのとこへおいで?」
「なるほど、道理で。…朝のランニングコースに入れてみよぉかなぁ~?」
「ぜひぜひ!うちも待っとるよ!」
「東條先輩の巫女服か…あれ、なんかすごく素敵に聞こえるぞ?」
「―――では改めて、もう1度自己紹介しておくわね、柊哉。―――
「はい、よろしくお願いします。…絢瀬先輩」
「…ああ、言ってなかったわね。ここでは先輩後輩の垣根をなくしてるの。だから、私のことをどう呼んでも構わないわよ?」
「へー、そうなんすか。では、絵里先輩で」
「先輩が消えてないじゃない…」
「やっぱ絵里って呼ぶのか…まぁいっか。俺のことも柊哉って呼んでくれてるし」
「ハラショー、なら良かった」
絢瀬先輩―――否、絵里が紹介を終えたところで、μ’sメンバー全員が一旦集合する。
そして首を傾げた柊哉が、何かを言うよりも早く、再び絵里が口を開いた。
「この、9人のメンバーで、スクールアイドル、
「――――――っ!…ああ、こちらこそ、お手柔らかに頼みますよ、μ’sの皆さん」
柊哉は感動で少し言葉に詰まったものの、絵里の締めに笑みを零す。
それを見たμ’sメンバーも、柊哉の笑みにつられて、それぞれに笑顔を咲かせた。
柊哉も含めて、この10人で笑いあう。
少し前、ひいてはこの学校に来る前なら絶対にありえなかった光景が、今目の前で展開されている。
それが神城柊哉の持つオーラによるものかどうかは分からない。
μ’sたちの持ち前のフレンドリーさが上手く作用したのかもしれない。
あるいは、もっと他の、様々な運命が交わった結果、こうなったとも言えるはず。
一概にその理由を1つと割り切ることは出来ない。
だが彼女らも柊哉も、打ち解けるのにそう時間がかからなかったことは―――
つまりは、いろいろな理由が組み合わさって、よい方向へと事が動いた、というのだろう。
まあつまり何が言いたいのかというと―――。
「―――ねぇ、しゅう君!」
「お、なんだ?ことり」
「えっとね、その………………」
「―――しゅう君さえ良ければ、ことりたちと一緒に、活動して欲しいな!」
「―――――…Well,I beg your pardon?(ええっと、もう1回言ってもらえる?)」
―――今までの
それはもう、突然流れるような英語が出てくるほどの、絶大なるインパクトが来るくらいの、超ハッピーな誘いが。
「え、まさかの英語!?」
「Shuya,please listen to me.She said,we’d love for you to be active.(柊哉、聞いて?ことりはあなたに、一緒に活動しないかって言ったのよ)」
「えりちも英語で答えんの。ほら、穂乃果ちゃんや凛ちゃんの頭から湯気出とるよ?」
「ふしゅぅ~」
「え、にこも分からないの?」
「え、わ、分かるわよ!?」
「ていうかしゅう君、英語話せるの?」
「いや、あまりに唐突に誘われるもんだから、つい…」
「つい、で英語が出てくるわけないでしょ!?ホント、意味わかんない!!」
「意味はわからんくないが…で、なんで俺、μ’sに誘われてんの?俺女子じゃないよ?女装もしないよ?」
ぎゃあぎゃあ騒いだ後に、柊哉は当然の疑問、と言わんばかりにメンバーに投げかける。
そりゃそうだ。なんで、っていう疑問は絶対に出てくるだろう。
こんな突拍子も無く、誘われるなんて絶対に何かがおかしい。
その柊哉の疑問に答えたのは、なんと海未だった。
「柊哉さんをここに加入させて、と、ことりのお母さんから言われたんですよ。そうでなければ私が許すはずがありません」
「―――ちょ~~~っと待て。ことりの母さんって、まさか…」
「うん、この学校の理事長さんだよ?」
「だろうなと思ったよコンチクショウ!!俺にとって『理事長』のポジションって天敵だなオイ!?」
予想の斜め右上を行く答えに、更なる地雷原を踏んでしまった柊哉。
柊哉にとって、
地団駄踏んで憤慨する柊哉に、少しビクッとするメンバー。
(あ、驚かれたかこれ?)と冷や汗をかく柊哉。
だが、メンバーは別の意図だと勘違いしていたらしい。
「か、神城さん、μ’sのメンバーに、入らないんですか…?」
(Gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!罪悪感ヤベェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!)
花陽の涙目の上目遣いに柊哉は死にかける。
物理的にも精神的にも、いい意味でも悪い意味でも、意識を飛ばされそうになる。
だから柊哉は必死で弁解。もう超必死に。何を言っているか分からなくなるくらい。
「いや、そういうことじゃなくてだな、ちゃんと説明を求めるっつーか、あの…」
「説明は私たちもされませんでしたよ?…さあ、入るか入らないかどっちか、早く決めて下さい」
「海未ちゃん冷たぁい…」
その弁解も海未によって一撃轟沈させられたため、いよいよ柊哉は選ぶしかなくなる。
この提案を「受け入れる」か、「逃げる」か。
柊哉は一度小さく息を呑む。
でも、逃げる、という
多分もう2度とここには戻ってこられないだろう。
というか大元の話として、この誘いを断れる男がいるはずがない。いるとしたら、余程アイドルが嫌いか、余程捻くれた性格をお持ちの人くらいだ。
美少女の誘いを断るとか、男の風上にも置けやしない、と言ってしまっていいだろう。
ということは、だ。
「―――了解しましたよ。俺が、μ’sの10人目のメンバーというわけですね?わかりましたよ!…不束者だけど、よろしくお願いします!!!」
もう柊哉には、「受け入れる」という選択しか選べないのだ。
理由も知らされないままに。
何も分からないままに。
「知らない」何もかもを諦めて、目前のアイドルに身を委ねるしかないのだ。
そうして柊哉が叫んだとたん、彼女らの期待の眼差しが歓喜の眼差しに切り替わる。
「本当に!?」
「ああ、本当の本当だ。…理事長と美少女のコンボには逆らえん…」
「え、最後なんて言ったにゃ?」
「いーや、なんでも。…んで?μ'sで俺が活動するっつったって、俺、男だぞ?ステージの上に立つのか…?」
「いや、そういうんじゃなくてな。裏からうちらをバックアップして欲しいんよ~。お願い出来ん?」
「そういうことか。なら、納得だな。いいよ、全力でやってやる」
柊哉がそう肯定を返すと、μ'sのメンバーたちは全員で顔を見合わせる。
そして全員で、喜色満面のまま、示し合わせたように同じ事を言った。
「「「「「「「「「神城柊哉くん、ようこそ、μ’sへ!!」」」」」」」」」
(―――――っ!)
柊哉はその発言に涙を流しそうになりながらも、しっかりと頷きを返し、親指を立てた。
そう、これで、彼女たちμ’sのメンバーと柊哉は、新たな関係を作ることが出来たのだ。
大好きなμ’sのメンバーの一員となって、「アイドルとファン」という関係から、「同じアイドルのメンバー」という、より緊密な関係に。
そして、
「―――そういえば、柊哉。あなた、理事長の所に行こうとしてるんじゃなかったの?」
「…あ゛」
―――柊哉がものの見事に忘れていたことにも、気づかせてくれるような関係に。
ふと真姫が、柊哉が最初に言ってた事に気づき、指摘する。
「理事長の所に行くから、手短にね」と、他ならぬ柊哉が言っていたことを。
その指摘された張本人はというと、
「―――わぁっすれってたぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!」
超大声で叫びながら大急ぎで廊下へと身を躍らせた。
★
「一度ならず二度までも…
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
そしてその30秒後。
あれだけμ’sの前で格好つけたのが、台無しになるくらいの勢いで土下座していた。
その体勢のまま、1つの動作もしない。
そもそも動作を、許されるような状況じゃあないことくらい、柊哉も分かっている。
ただ、その圧力が強すぎるだけの話だ。
まあ、それも当然だろう。
怒られてもしょうがない、という諦念も、心の片隅にあるのだ。
だから柊哉はあってないようなプライドをかなぐり捨てて頭を下げる。
「―――全く…神城くんがここまで時間にルーズだとは思わなかったわ…」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「…まぁ、いいですよ。今回は許してあげます」
「本当ですかマジですかありがとうございます俺一生ついていきます!!」
「い、一生は余計ですよ?…話するから顔を上げてくれますか?」
「はっ、ありがたき幸せ」
「ふざけないで」
柊哉は理事長の声に、素直に顔を上げる。
その視線の先で、理事長が気だるそうにため息をついているのが見えた。
(あれま、困らせちったな…)
瞬間、柊哉の心に、罪悪感が湧いてくる。
何となく、もう一度頭を下げようという気分になってくる。
そんな悶々と悩む柊哉を無視して、理事長はため息を吐き出し終わると、おもむろに話を始めた。
「―――今日はごめんなさいね?柊哉くんを、強引にμ’sにひっつけてしまって」
「え、どゆことですか?俺がテンパって無いかってことですか?」
「そう。…神城くんが、突然の環境変化に戸惑っていないか、って」
聞くと。
どうやら理事長は、柊哉の急な環境の変化に、柊哉自身がついていけているのか、聞きに来たらしい。
心配はしてくれているようだ。女子高という異空間に、男子である柊哉が馴染めているのか、と。
そして、柊哉を、
(よく言うよ…だから理事長って怖いんだよなぁ…)
柊哉は心で軽く、吐き捨てる。
面倒くさい、と。
正直、もう理事長との化かし合いにはもう疲れたのだ。
(…ああもう、やめだやめだ!辛気臭いことなんて、俺の考えることじゃない)
まあでも、議題に関しては真剣に悩まねばなるまい、と、柊哉は意識を切り替える。
しかし。
(―――まあ正直大丈夫どころか、むしろ最高なんだけどねー)
それほど深刻に悩むような悩みでもなさそうだ。
ううむ、と少し悩んだ後、柊哉は笑顔を作り、理事長に告げた。
「…ぅおーるオッケイですよ?今はヘェェェルからパァラダァァイスっていう状態ですしね」
「…パラダイス…?」
「文字通りですよ?
「―――やっぱりμ’sとは離した方がいいのでしょうか…?」
「はぁいWAITING FOR ME !!…何でもう離すんですかい。俺危険人物ですかそんなに」
「…少なくとも、私の中では
「ごめんなさいマジナマ言ってすいませんでした」
柊哉は、また全力で頭を床にこすりつける。
誠意を見せるために、フローリングとキスする。
(考えたら、今日だけで俺3回も土下座してるよな…)
空しく考えながら。
あはは、と柊哉が乾いた笑いを漏らしていると、
「―――ねぇ、神城くん?話があるから、顔を上げてくれませんか?」
「はい喜んで」
理事長が指示を出してきたので、柊哉はがばっと顔を上げる。
柊哉の目に映る理事長は、またもため息をついていた。
★
国立音ノ木坂学院理事長、
(神城柊哉くん、ね…)
そして、つい先ほどまでいた1人の少年を、思い浮かべる。
(―――彼ならきっと、この学校を、もっと面白くしてくれる…)
一縷の望みに託すしか、彼女には手段が無いのかもしれない。
彼女はそれを再認識すると、また、物憂げなため息をついた。
これでいいのだ。
よくないけどたぶんこれでいいのだ。
―――いやいや全然ダメですね。ここまで駄文とは…。
こんな私の作品にも、感想や評価などお願いします。
それでは、また4話…?で。
次投稿するのは何話かな、4話かな?