ひとりひとりと、女神と人と。~改訂作業中~   作:M崎

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 今回短めですが、凄く要素を詰め込んでいます。

 これからの話の伏線を、全部ここに詰め込んでみました。

 それでは、短いとは思いますが、どうぞ。

 あまり、期待しないほうがいいかもしれません…。


 追伸

 あと、UAが2500を超えていてびっくりしました。
 読んで下さった読者の皆様、本当にありがとうございます!




5話

 「絵里(えり)について…?え、なんかあったんかいな…」

 「いや、別に何かあったわけじゃないの!!…ないんよ…」

 

 深刻そうに悩みを告げた(のぞみ)の前で、柊哉(しゅうや)は困惑していた。

 

 時は2015年、7月1日水曜日、17時過ぎ。

 放課後の、日が傾きかけたくらいの空模様。

 生徒会室に入る日差しは暖かく、空の朱色を鮮烈に表現する。

 初夏の涼しい空気が、2人の間を駆け抜ける。

 

 柊哉は希と2人、夕暮れの部屋の中、見つめあう。

 

 そのうち、困惑に耐え切れなくなってきたのか、希が会話の口火を切った。

 

 「―――なあ、柊哉くん。えりちのこと、知っとる?」

 「ん?これまでの絵里、か?…知っているような、知っていないような…」

 「じゃあ、教えたる。―――えりちは、昔ね、μ’sのみんなと、敵対しとったんよ」

 「ほう…?」

 「正確には、穂乃果ちゃんらとだけどね。最初のほうは、えりちもピリピリしてた」

 「―――いつもピリピリしてるような…」

 「こら、そんなこと言わんの!!…これでも丸くなったほうなんよ。昔のえりちは、自分に素直になれずに、1人で抱え込もうとしてた」

 「んー…」

 

 柊哉は少し考え込む。

 そっちの絵里の方が、むしろ想像できない。

 今の絵里は、いい意味で他人と共存してる、といった印象を、柊哉は抱いている。

 

 でも、希が言うのなら真実なのだろう。

 柊哉は話の続きを促す。

 

 「―――そんで?」

 「でも、えりちはμ’sに入ってから、変わった。他人を頼るようにもなったし、メンバーを信頼するようになった」

 「………………」

 「でも、そんな今のえりちが、誰にも言わん悩みを持ってる。―――これはちょっとおかしい、って思って、今相談してるんよ」

 

 つまりはそういうことらしい。

 今の絵里が、絵里らしくない、というのだ。

 表面上は普段どおりの絢瀬絵里でも、ふとしたことで違和感が露見する、そんな絢瀬絵里が、見えるというのだ。

 

 (まぁ、よくある話だよな)

 

 それに柊哉は、デジャビュを覚えて頷く。

 実際、前の学校でもよくこういったことはよくあったのだ。

 

 今更驚くほどの話でもない。

 

 「ああ、概要は理解したよ。…で?絵里は今、何で悩んでいるんだ?」

 「それが…うちにも分からんのよ」

 「は?―――え?どゆこと…?」

 

 その後にあった、柊哉の何気ない問い。

 だがそれに希は、本当に分からない、といった感じで首を横に振った。

 自分は絵里の悩みを知らない、と。

 

 (悩みが何か把握していないのに、悩みがあると分かる―――?)

 

 柊哉は余計、頭に疑問符を浮かべる。

 そんなもの、虫の知らせか親友のカンくらいの、何となく信じられているような類のものではないか。

 それとも、自分には、何か特別な力でも宿っているというのか。

 

 柊哉が若干、疑るような目線を向けて希を見ると、

 

 「いや、そんな、騙そうって思ってるわけじゃないの!…うち、ちょっと、占い、しててね…」

 「はぁ、それで出たんですか。絵里が、悩みを持ってるって」

 「―――うん…」

 

 希は、彼女の関西弁すらも取れてしまうほど、必死になって弁解していた。

 柊哉は彼女のしゅん、とした頷きを、沈痛な眼差しで見つめる。

 

 (…そういうことか)

 

 ここに来て、ようやく柊哉は、希の持つ悩みを理解した。

 

 彼女は、絵里に相談して欲しかったのだ。

 頼ることを、して欲しかったのだ。

 

 そうしないと、絵里が、以前の絵里に戻ってしまうような気がして。

 

 「だから、柊哉くん。…えりちのこと、支えてやって。1人で、悩まないように」

 

 そして、希は、絵里に、元に戻って欲しくないのだ。

 過去を悪く言うつもりはないが、現在を捨てるわけにはいかない。

 

 今の絵里のほうが、楽しそうだから、と。

 

 

 そんな、希の、魂を込めた告白を、

 

 

 

 

 

 「―――いや、それ多分大丈夫ですよ」

 

 

 

 

 

 ―――だが柊哉は、なおも不敵に笑って聞いていた。

 いつもどおりの、あの笑顔を。

 

 当然、希はお気楽柊哉に食って掛かる。

 

 「…どういうことや?」

 「いや~、絵里なら大抵のことは普通に出来ますよ、ってこと。希がそこまで真剣に悩む必要性はないですって」

 「―――…ちゃんとした説明、してくれるんやろね?」

 

 だが、それでも柊哉は笑みを崩さない。

 その笑みに、言い知れない軽蔑を感じた希は、怒りのオーラをその身に纏う。

 

 希の顔には笑みが湛えられているが、目は全く笑っていない上に、常人なら身がすくんでしまうほどの威圧感がある。

 そしてそれらは雄弁に、柊哉に対して語りかけてくるのだ。

 

 

 ―――次、えりちを馬鹿にしたら、許さない、と。

 

 

 だがそんなオーラにあっても、柊哉は涼しげな笑みを浮かべたままだ。

 逆に軽薄な雰囲気を醸し出して、ゆっくりと告げる。

 

 「…当然、説明ならいくらでも致しますよ~?希が、納得のいくまで」

 「―――………言ってみて」

 「はぁいお許しを貰ったので、これから懇切丁寧にお教え致しまぁす」

 

 そこで柊哉は一旦言葉を切る。

 そして、軽薄な雰囲気を、アン・ドゥ・トロワのうち(さんびょういない)に消し去ると、

 

 「―――まず、今ここにたまりにたまっている仕事。そのほとんどが、生徒会関連の仕事でした」

 

 まるで名探偵のように、生徒会室をキザったらしい歩調で歩き始めた。

 

 突然おかしくなった柊哉を半目で見ながらも、希は視線だけで続きをせっつく。

 それに応える様に、柊哉は歩みを少しだけ速める。

 

 「―――生真面目そうな絵里の性格上、サボったというわけではなさそうです。生徒会関連の仕事をほっといてでも、やるべきことがあった、と考えるのが妥当でしょう」

 

 これは何も、憶測だけで言っているわけではない。

 自分が今日1日で見てきた絵里から、客観的に、総合的に判断して、その上で結論付けているのだ。

 根拠も、一応、押さえてはいる。

 

 だから、他人からとやかく言われても、自分は大丈夫だと、ひとまずは言えるのだ。

 

 

 柊哉はさらに続ける。

 

 「では、生徒会の仕事を放り出してでも、やらねばならぬことはなんだったのか。それは、生徒会と同じくらい、絵里にとって大事なもの。―――おそらく、μ’s関連でしょう」

 

 内心、いつ、希の堪忍袋の緒が切れるか、ヒヤヒヤしながら。

 

 だが勝手に、言葉が口からスラスラと出てくるのだ。

 そして公正な説明を約束してしまった以上、柊哉にそれを止める理由はない。

 

 柊哉の口は、喋り続ける。

 

 「そのμ’sのメンバーにも相談しなかったということは、大切な人を巻き込みたくない、という思いの表れ。絵里1人に、関連する重大な責務、ということです。…さて、ここで1つ、希に質問があります」

 「―――なに?」

 「7月10日、この学校に予定されている行事は、何ですか?」

 

 その問いに、希は半目だった目を、限界まで見開いた。

 柊哉が、何を言いたいのか、聡明な希には伝わったようだ。

 それにほっと、心中安堵しながらも、柊哉は希の答えを待つ。

 

 そして、希は正解を、その口に乗せた。

 

 「―――選挙の公示日、やね?」

 「大正解。そしてそれに、μ’sが関わってきてるんですよ。だから相談しなかった。というか、出来なかったんです」

 

 そして柊哉は、1枚の書類を希に手渡した。

 

 そこには、「立候補届」という文字と、「希望する職種:生徒会長」という丸っこい文字のほかに、

 

 

 

 ―――その字体のまま、「高坂穂乃果(こうさかほのか)」と書かれていたのだ―――。

 

 

 

                    ★

 

 

 

 同時刻、ほとんど同じ場所。

 

 

 『大正解。そしてそれに、μ’sが関わってきてるんですよ。だから相談しなかった。というか、出来なかったんです』

 

 生徒会室から、神城柊哉(かみしろしゅうや)の声が漏れ聞こえてくる。

 それ以外に音はなく、ただただ静寂のみが広がる廊下。

 

 そんな廊下にいる、μ’sメンバー、絢瀬絵里(あやせえり)は、

 

 

 

 (―――ああ…所詮、こんな男だったのね…)

 

 

 

 神城柊哉に、失望していた。

 

 

 

 (…自分は勝手に舞い上がって、バカみたい)

 

 絵里はぐっと、拳を握る。

 そうだった。自分の知る男なんて、己の利益と欲望に忠実な、そんな人しかいなかったのだ。

 

 ―――最初の印象は、すごく上々だった。

 軽薄そうにしながらも、場をしっかり盛り上げてくれて。

 理事長や絵里の無茶振りを、キリッとした顔で了承してくれて。

 

 そして、…自分のことを、綺麗だ、ってほめてくれて。

 

 もうその時点で、彼を心の底から信頼していた、といってもいい。

 

 

 だが、その好印象は、今このとき、いとも容易く崩れ去った。

 

 絵里のいないところで、絵里について語る。

 ふざけたような、おちゃらけた口調で。

 

 ―――まるで、絵里のことを、さも当然のように知っているかのように、言葉を作り出す。

 それが、今までの好意を、余りあるほどのマイナスへと変える。

 無性に、腹立たしいのだ。

 

 (―――希には悪いけど、私はもう無理ね…)

 

 これ以上聞きたくも無い、と、絵里は生徒会室に背を向ける。

 

 そして振り返るそぶりすら見せず、そのまま歩き去っていった。

 

 

 

 

 




 やっちまった…。
 大分話を、よく分からない方向につなげてしまった…。

 まぁ、何とかしなきゃいけないんでしょうけど。

 次は6話だと思います。
 間にエリチカ誕生日編を入れるかな…?

 下手したらお休みするかもしれません。

 それでは、また。
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