これからの話の伏線を、全部ここに詰め込んでみました。
それでは、短いとは思いますが、どうぞ。
あまり、期待しないほうがいいかもしれません…。
追伸
あと、UAが2500を超えていてびっくりしました。
読んで下さった読者の皆様、本当にありがとうございます!
「
「いや、別に何かあったわけじゃないの!!…ないんよ…」
深刻そうに悩みを告げた
時は2015年、7月1日水曜日、17時過ぎ。
放課後の、日が傾きかけたくらいの空模様。
生徒会室に入る日差しは暖かく、空の朱色を鮮烈に表現する。
初夏の涼しい空気が、2人の間を駆け抜ける。
柊哉は希と2人、夕暮れの部屋の中、見つめあう。
そのうち、困惑に耐え切れなくなってきたのか、希が会話の口火を切った。
「―――なあ、柊哉くん。えりちのこと、知っとる?」
「ん?これまでの絵里、か?…知っているような、知っていないような…」
「じゃあ、教えたる。―――えりちは、昔ね、μ’sのみんなと、敵対しとったんよ」
「ほう…?」
「正確には、穂乃果ちゃんらとだけどね。最初のほうは、えりちもピリピリしてた」
「―――いつもピリピリしてるような…」
「こら、そんなこと言わんの!!…これでも丸くなったほうなんよ。昔のえりちは、自分に素直になれずに、1人で抱え込もうとしてた」
「んー…」
柊哉は少し考え込む。
そっちの絵里の方が、むしろ想像できない。
今の絵里は、いい意味で他人と共存してる、といった印象を、柊哉は抱いている。
でも、希が言うのなら真実なのだろう。
柊哉は話の続きを促す。
「―――そんで?」
「でも、えりちはμ’sに入ってから、変わった。他人を頼るようにもなったし、メンバーを信頼するようになった」
「………………」
「でも、そんな今のえりちが、誰にも言わん悩みを持ってる。―――これはちょっとおかしい、って思って、今相談してるんよ」
つまりはそういうことらしい。
今の絵里が、絵里らしくない、というのだ。
表面上は普段どおりの絢瀬絵里でも、ふとしたことで違和感が露見する、そんな絢瀬絵里が、見えるというのだ。
(まぁ、よくある話だよな)
それに柊哉は、デジャビュを覚えて頷く。
実際、前の学校でもよくこういったことはよくあったのだ。
今更驚くほどの話でもない。
「ああ、概要は理解したよ。…で?絵里は今、何で悩んでいるんだ?」
「それが…うちにも分からんのよ」
「は?―――え?どゆこと…?」
その後にあった、柊哉の何気ない問い。
だがそれに希は、本当に分からない、といった感じで首を横に振った。
自分は絵里の悩みを知らない、と。
(悩みが何か把握していないのに、悩みがあると分かる―――?)
柊哉は余計、頭に疑問符を浮かべる。
そんなもの、虫の知らせか親友のカンくらいの、何となく信じられているような類のものではないか。
それとも、自分には、何か特別な力でも宿っているというのか。
柊哉が若干、疑るような目線を向けて希を見ると、
「いや、そんな、騙そうって思ってるわけじゃないの!…うち、ちょっと、占い、しててね…」
「はぁ、それで出たんですか。絵里が、悩みを持ってるって」
「―――うん…」
希は、彼女の関西弁すらも取れてしまうほど、必死になって弁解していた。
柊哉は彼女のしゅん、とした頷きを、沈痛な眼差しで見つめる。
(…そういうことか)
ここに来て、ようやく柊哉は、希の持つ悩みを理解した。
彼女は、絵里に相談して欲しかったのだ。
頼ることを、して欲しかったのだ。
そうしないと、絵里が、以前の絵里に戻ってしまうような気がして。
「だから、柊哉くん。…えりちのこと、支えてやって。1人で、悩まないように」
そして、希は、絵里に、元に戻って欲しくないのだ。
過去を悪く言うつもりはないが、現在を捨てるわけにはいかない。
今の絵里のほうが、楽しそうだから、と。
そんな、希の、魂を込めた告白を、
「―――いや、それ多分大丈夫ですよ」
―――だが柊哉は、なおも不敵に笑って聞いていた。
いつもどおりの、あの笑顔を。
当然、希はお気楽柊哉に食って掛かる。
「…どういうことや?」
「いや~、絵里なら大抵のことは普通に出来ますよ、ってこと。希がそこまで真剣に悩む必要性はないですって」
「―――…ちゃんとした説明、してくれるんやろね?」
だが、それでも柊哉は笑みを崩さない。
その笑みに、言い知れない軽蔑を感じた希は、怒りのオーラをその身に纏う。
希の顔には笑みが湛えられているが、目は全く笑っていない上に、常人なら身がすくんでしまうほどの威圧感がある。
そしてそれらは雄弁に、柊哉に対して語りかけてくるのだ。
―――次、えりちを馬鹿にしたら、許さない、と。
だがそんなオーラにあっても、柊哉は涼しげな笑みを浮かべたままだ。
逆に軽薄な雰囲気を醸し出して、ゆっくりと告げる。
「…当然、説明ならいくらでも致しますよ~?希が、納得のいくまで」
「―――………言ってみて」
「はぁいお許しを貰ったので、これから懇切丁寧にお教え致しまぁす」
そこで柊哉は一旦言葉を切る。
そして、軽薄な雰囲気を、
「―――まず、今ここにたまりにたまっている仕事。そのほとんどが、生徒会関連の仕事でした」
まるで名探偵のように、生徒会室をキザったらしい歩調で歩き始めた。
突然おかしくなった柊哉を半目で見ながらも、希は視線だけで続きをせっつく。
それに応える様に、柊哉は歩みを少しだけ速める。
「―――生真面目そうな絵里の性格上、サボったというわけではなさそうです。生徒会関連の仕事をほっといてでも、やるべきことがあった、と考えるのが妥当でしょう」
これは何も、憶測だけで言っているわけではない。
自分が今日1日で見てきた絵里から、客観的に、総合的に判断して、その上で結論付けているのだ。
根拠も、一応、押さえてはいる。
だから、他人からとやかく言われても、自分は大丈夫だと、ひとまずは言えるのだ。
柊哉はさらに続ける。
「では、生徒会の仕事を放り出してでも、やらねばならぬことはなんだったのか。それは、生徒会と同じくらい、絵里にとって大事なもの。―――おそらく、μ’s関連でしょう」
内心、いつ、希の堪忍袋の緒が切れるか、ヒヤヒヤしながら。
だが勝手に、言葉が口からスラスラと出てくるのだ。
そして公正な説明を約束してしまった以上、柊哉にそれを止める理由はない。
柊哉の口は、喋り続ける。
「そのμ’sのメンバーにも相談しなかったということは、大切な人を巻き込みたくない、という思いの表れ。絵里1人に、関連する重大な責務、ということです。…さて、ここで1つ、希に質問があります」
「―――なに?」
「7月10日、この学校に予定されている行事は、何ですか?」
その問いに、希は半目だった目を、限界まで見開いた。
柊哉が、何を言いたいのか、聡明な希には伝わったようだ。
それにほっと、心中安堵しながらも、柊哉は希の答えを待つ。
そして、希は正解を、その口に乗せた。
「―――選挙の公示日、やね?」
「大正解。そしてそれに、μ’sが関わってきてるんですよ。だから相談しなかった。というか、出来なかったんです」
そして柊哉は、1枚の書類を希に手渡した。
そこには、「立候補届」という文字と、「希望する職種:生徒会長」という丸っこい文字のほかに、
―――その字体のまま、「
★
同時刻、ほとんど同じ場所。
『大正解。そしてそれに、μ’sが関わってきてるんですよ。だから相談しなかった。というか、出来なかったんです』
生徒会室から、
それ以外に音はなく、ただただ静寂のみが広がる廊下。
そんな廊下にいる、μ’sメンバー、
(―――ああ…所詮、こんな男だったのね…)
神城柊哉に、失望していた。
(…自分は勝手に舞い上がって、バカみたい)
絵里はぐっと、拳を握る。
そうだった。自分の知る男なんて、己の利益と欲望に忠実な、そんな人しかいなかったのだ。
―――最初の印象は、すごく上々だった。
軽薄そうにしながらも、場をしっかり盛り上げてくれて。
理事長や絵里の無茶振りを、キリッとした顔で了承してくれて。
そして、…自分のことを、綺麗だ、ってほめてくれて。
もうその時点で、彼を心の底から信頼していた、といってもいい。
だが、その好印象は、今このとき、いとも容易く崩れ去った。
絵里のいないところで、絵里について語る。
ふざけたような、おちゃらけた口調で。
―――まるで、絵里のことを、さも当然のように知っているかのように、言葉を作り出す。
それが、今までの好意を、余りあるほどのマイナスへと変える。
無性に、腹立たしいのだ。
(―――希には悪いけど、私はもう無理ね…)
これ以上聞きたくも無い、と、絵里は生徒会室に背を向ける。
そして振り返るそぶりすら見せず、そのまま歩き去っていった。
やっちまった…。
大分話を、よく分からない方向につなげてしまった…。
まぁ、何とかしなきゃいけないんでしょうけど。
次は6話だと思います。
間にエリチカ誕生日編を入れるかな…?
下手したらお休みするかもしれません。
それでは、また。