ひとりひとりと、女神と人と。~改訂作業中~   作:M崎

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 前書きで書くことが見つかりません…。

 とりあえず、7話、どうぞ!!

 一応、ハイライト、かなぁ…?



7話

 絵里(えり)柊哉(しゅうや)の関係が膠着(こうちゃく)状態のまま、1週間が過ぎた。

 

 時は7月10日、金曜日。

 期末試験とμ’sの練習を終え、残すは夏休みだー!というムードの中。

 迎えるは、音ノ木坂学院高校生徒会会員選挙の、公示日である。

 

 現生徒会にとっては、終わりに近づく大切な1日。

 次世代に託すべき、「選挙」というイヴェントの、プロローグ。

 

 そんな大切な日付だというのに、生徒会は恐ろしいほどに、通常運転だった。

 

 「―――え、今日だけの仕事か、これ…」

 「しかも、ほとんどが雑用じゃないの…」

 「こんな日でも、毎度の如く2、3山作る生徒会(うちら)が恐ろしいわ~」

 

 いつもと全く変わらない書類の山を見て、柊哉、絵里、(のぞみ)がそれぞれの感想を漏らす。

 そこには言い切れない諦念と、溢れんばかりの呆然が浮かんでいた。

 

 ただまあ、量に関しては大丈夫であろう。

 この程度の量には最早3人とも慣れたものだ。

 

 だが、それにしたって時期が悪い。

 

 公示日だというのに、これでは通常業務だけで今日が終わってしまう。

 今日だけで、公示に関する別の仕事も入っているのだ。

 今日1日で終わるわけが無い。

 

 そしてこの量の仕事を、次の世代に残すわけにはいかないのだ。

 

 「―――はぁ…やるしかないんだろうな…」

 

 柊哉は諦めて書類に手を伸ばす。

 これを終わらせないことには、選挙なんてやっている余裕は無い。

 行動してみないことには、結果は変わらないのだ。

 

 パソコンを立ち上げ、書類仕事を怒涛の勢いで終わらせようとする柊哉。

 だがしかし、そこに待ったがかかった。

 

 「―――待ちなさい、柊哉」

 「ん?何だよ、絵里。遠慮なんてしなくていいぞ?」

 「いえ、そういうことではないわ。あなたは依頼のほうをこなして頂戴。書類仕事は私と希、それに真夏(まなつ)ちゃんで終わらせるから」

 「…?まぁ、了解。ユーリ先輩は?」

 「有理(ゆうり)には別の仕事をしてもらってるわ」

 「ふーん…」

 「わかったらチャッチャと動きなさい?」

 「了解であります」

 

 生徒会長としての絵里が、柊哉に雑用を命じたのだ。

 書類仕事は絵里と希と、2年生の書記、猪瀬(いのせ)真夏が終わらせるから、と。

 

 だがその意味深な用無し宣言に、だが柊哉は特に何も考えずに了解を返す。

 

 正直、彼女らは信頼における人たちだ。

 書類を終わらせるスピードも、経験則からかものすごく速い。

 

 ここはごねて時間を無駄につぶすよりも、彼女らに潔く任せて雑用をこなそう、という判断を、柊哉は下したのである。

 

 (―――うん、大丈夫だ。力仕事とかもあるだろうし、俺が行ったほうがいいんだろうなぁ)

 

 「…真夏、本当に大丈夫か?」

 「え、うん~。別にいつものことだし、もう慣れた慣れた~」

 「あ、そ。ならいいや」

 「うん、こっちは私たちに託して、柊哉くんは向こうを頼んだ~」

 「オーケー。―――んじゃ、行って来るよ。留守は任せた」

 「了解や!」

 「待ってるよぉ~」

 「柊哉こそ、頑張って」

 「おお、頑張ってくるぜ」

 

 生徒会の面々の励ましを背に、柊哉は軽く手を上げて外に出た。

 

 (―――最初、いきなり水道管工事かよ!?)

 

 そしてメモを確認すると、最初の目的地へと飛び出していった。

 

 

 

                     ★

 

 

 

 (―――お、終わった………つーか、アルパカの掃除とか、俺らじゃなくてことりの仕事だろ…)

 

 その2時間後。

 柊哉(しゅうや)は満身創痍といった体で、よたよたと廊下を歩いていた。

 

 「雑用」を舐めてかかった結果である。

 

 (全部ピンポイントで7月10日に持ってきやがって…)

 

 正直、柊哉は「雑用」なんてすぐ終わるものだと思っていた。

 自分だけならまだしも、横に手伝っている人がいるのなら、1つ1つに時間はかからない、もし1人だったとしても、待ってる人がいるんだし、チャッチャと終わらせて合流しよう、と考えていた。

 

 だが結論からすれば、その考えは甘すぎた。

 

 計27の雑用は約半数が力仕事で、もう半数がただの「要望書」だったのだ。

 その種類は書類仕事、水道管工事、花壇の水やり、貨物運搬、果ては飼育小屋掃除と、多岐にわたった。

 そしてそれらすべてが、「生徒会がするものかこれ?」というものだった。

 

 柊哉としては、だいぶ頑張ったと思う。

 すべてをフルスピードで行い、完璧に終わらせたのだから。

 

 しかし、それでも2時間はかかってしまった。

 

 柊哉が―――端的に言えば、だが―――この学園の生徒会は、「便利屋」だったのだ、と思い立ったのは、その雑用が27個すべて終わった後である。

 

 もっと言うならば、気づくのが遅すぎた。

 

 (―――はは…情けな…)

 

 自らの無様な姿をあざ笑いつつ、柊哉は生徒会室の扉の前に着く。

 その瞬間、柊哉はそれらのマイナスな考えを、すべて心から叩き出した。

 

 頭をクリアに、心を冷静に、レバーを戻す。

 

 目を閉じ、瞑想する。

 悩むのは、自らの先輩、絢瀬絵里(あやせえり)について。

 

 心で、言葉で、事実を再確認する。

 

 

 

 「―――俺は先週から、絵里にはずっと、距離を置かれている」

 

 (―――それが何故なのかは知らない)

 

 「―――今まで話しかけるチャンスを無駄にはしてこなかった」

 

 (―――でも、ダメだった)

 

 「―――絵里が何に悩んでいるのか、俺にはわからない」

 

 (―――でも絵里の悩みに、俺が関連していることはわかる)

 

 「―――ならば、それを解決するのは」

 

 (―――ならば、絵里の悩みに応えるのは)

 

 

 

 「(―――神城柊哉(おれ)じゃなくて誰だというんだ)」

 

 

 

 思考を確立させる。

 意識と言動をシンクロさせて、結論を導き出す。

 

 その結論が出た瞬間、柊哉は覚悟を決めて、目を開ける。

 そして、ドアの傍に近寄ると、そのドアを、勢いよく開け放った。

 

 「頼もうーー!……………」

 

 大声と共に、生徒会室に進入した柊哉。

 だがその大声は、最初の勢いを、最後まで保つことが出来なかった。

 

 何故か。

 

 生徒会室に、金色の女神がいたからである。

 

 (―――すげー、綺麗…)

 

 その女神の名は、μ’s(ミューズ)一柱(いっちゅう)、絢瀬絵里。

 生徒会長という肩書きを持つ彼女は、右手に資料を抱え、力を抜くように、机に体重を預けていた。

 

 夕焼けの生徒会室の中、物憂げに机に腰掛け、ため息をつく。

 ただそれだけなのに、柊哉は目を離すことが出来ない。

 彼女が1つ動作するだけで、柊哉の全神経が彼女へと向く。

 

 それほどまでに、美しく、清らかで、綺麗な光景であった。

 

 「あら、おかえりなさい、柊哉。…どうしたの?そんなにボーッとして」

 

 絵里の声が無かったら、そのまま何時間だって魅入っていたに違いない光景。

 

 柊哉は慌てて全神経を覚醒させ、絵里へと話を向けた。

 

 「―――いや、なんでもない。それより、そっちはどうだ?終わったのか?」

 「ええ、皆が頑張ってくれたおかげで、何とか終わったわ」

 「良かった。こっちも終了したから、報告しとく。報告書とか書いたほうがいい?」

 「今日はいいわ。公示日だし…私も少し、疲れちゃったしね」

 「ふぅーん…」

 

 絵里はそういうと、凝りを解すように、肩や腕を回す。

 その仕草も、絵里がすると十二分に妖艶な仕草だったが、柊哉は別のところに注目していた。

 

 確認のために、絵里に問う。

 

 「―――なぁ、絵里。その資料、なんだ?」

 「ん、これ?…まぁ、ちょっとね…今回の選挙に関して、見ておかなきゃいけない資料よ」

 「へぇ…俺も見たほうがいいやつ?」

 「いえ、大丈夫よ。柊哉が見る必要はないわ」

 「わーった」

 

 絵里がそれ以上何も言わなくなったので、柊哉は書類仕事に戻ろうとする。

 

 本来なら、会話はここで終わるはずだった。

 絵里は資料をじっくり閲覧し、柊哉は残りの仕事にかかっていた。

 

 その、はずだった。

 

 でも、そうならなかった。

 柊哉は、最後に絵里のほうを、少しチラ見してしまったのである。

 

 見なければ良かったのかもしれない。

 見たほうが良かったのかもしれない。

 

 でも少なくとも今は…柊哉にとって最善な行動とはいえなかった。

 

 柊哉は見てしまったのである。

 絵里の資料に書いてある、よく見知った名前を。

 

 見ただけならまだ大丈夫だった。

 

 だがそれを、柊哉は会話の糸口を求めるために、声に出してしまった。

 そして、それが、運命を狂わせた。

 

 「―――…穂乃果(ほのか)?」

 「っ!!!柊哉っ!!!」

 「んぁ?」

 「何で知ってるの…!」

 「ん、何を?」

 「何で、穂乃果が生徒会長に立候補したことを、知ってるのって、聞いてるのよ…!」

 

 その名前を告げた瞬間。

 絵里は警戒するように柊哉から距離を離すと、柊哉に問い詰めるように言葉を発したのだ。

 

 (あ、これが龍の逆鱗だったか…)

 

 柊哉はしまったと思うがもう遅い。

 絵里と、更なる距離を開けてしまったのだ。

 

 (最悪だな…)

 

 だが会話を終わらせないことには話は始まらない。

 柊哉は涼しげな顔を作ると、絵里の問いに答えた。

 

 「―――え、今日公示したじゃん。俺ポスター貼りに行ったし、今日学校に来たときから知ってるぞ?」

 「…っ!!」

 

 その言葉に動揺したのは柊哉ではなく、絵里だった。

 らしくも無く動揺し、冷や汗をかいている。

 

 こりゃ何かあるな、と感じ取った柊哉は、さらに言葉をかぶせた。

 

 「―――というか、どうしてそんなに怒ってるんだ…?俺はずっとそれが聞きたかった」

 「…わ、わたしは…」

 「絵里が何か抱えてるんなら、俺は相談に乗るし、一緒に手伝うぞ?」

 「………………」

 「もしそうじゃないんなら、俺の誘いは断ってもらって結構」

 「………………」

 「でも、最近の絵里見てると、なーんかおかしいぞ?大丈夫か?俺でよければ、いくらでも相談してもらって構わんぞ?」

 

 それは善意から出た言葉だった。

 それは本心から出た言葉だった。

 

 裏もないし、心配という感情から来たものだった。

 

 柊哉の嘘偽りない言葉。

 でも、とる人によっては、違う解釈をしたのかもしれない。

 

 軽い同情、軽い慰め。

 

 自分のことをたいして知りもしないのに、薄っぺらな気持ちでかけられた情け。

 

 普段の絵里だったら、「そうね、お願いするわ」とか、「大丈夫よ、これは私の問題だから」と笑い飛ばしていただろう。

 ―――だが、ボロを出して焦っている今の絵里に、その言葉は、痛いぐらいに、効いた。

 

 

 「―――……ね…!」

 「ん、どした?」

 

 「(うるさ)いって言ってるの!!!」

 

 「へ…?」

 

 事態についていけず目を白黒させる柊哉に、絵里は怒鳴る。

 無責任な言動に対して、吐き出すように怒る。

 

 

 「…もう、皆、手伝う手伝うって!自分が生徒会長になりたいわけでもないのに!私の仕事を全部肩代わりしてくれるわけでも無いくせに!!」

 

 

 涙を零しながら、自分の思いのたけを、ぶちまける。

 自分が今の今まで溜め込んできたストレスを、すべてぶっ放すかのように。

 

 ストレスを言葉の砲弾に変えて、柊哉という目標にぶち当てる。

 

 「貴方だって同じでしょう!?転校してきて、生徒会に入っただけで!μ’sに入っただけで!」

 

 絵里はここで一旦言葉を切り、息を吸い込む。

 そして。

 

 

 「―――今の私の悩みを、貴方はどう手伝うって言うのよ!!」

 

 

 言い切った。

 柊哉に向かって、言い切った。

 

 絵里(じぶん)の思いを、すべてぶつけた。

 

 ぶつけて、しまった。

 

 絵里はここで、自分の頬を涙が伝っていることに気づいた。

 それで我に返ったように、こほん、と小さく咳払いすると、

 

 「―――!ごめんなさい、少し熱くなり過ぎたわ…」

 「え、いや…」

 「…少し、外で風に当たってくるわね」

 

 気まずい空気から逃れるように、彼女はこの空間から駆け出した。

 

 「あっ、おい!!」

 

 柊哉は手を伸ばすが、もう届かない。

 絵里はそのまま、ドアから先に消えていってしまった。

 

 「―――やっちまった…」

 

 残された柊哉は、首筋をポリポリとかくことしか出来なかった。

 

 

 

 

 




 さて、ここで1つ、お知らせがあります。

 私M崎は、リアル多忙により、更新ペースが大幅に遅くなってしまいます。
 おそらく2、3ヶ月くらいでしょうか…下手したら2月くらいまで全く更新できないかもしれません。
 感想返信も多分出来ません…。

 心残りは花陽ちゃんと柊哉の誕生日編を打てなかったこと…!
 本当に申し訳ございません。

 オリジナル作品、「月夜の悪戯」のみ、隔月投稿していきます。
 そして凍結するわけではないので、ご安心ください。


 それでは、また8話で!!

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