VRMMORPG-ユグドラシル~非モテ達の嘆歌~【完結!】   作:黄衛門

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第一話 非モテと浮かぶ城

 クリスマスというのはいつの時代、何処の国でも変わらない。非モテ、非リアにとってはただのイベント限定アイテムゲットのチャンスでしかない。まあユグドラシルのイベント限定アイテムは、普通にプレイしてたら使えない代物だが。

 当然、オンラインゲームにアクセスする者達の殆どは非モテである。

 二一二六年に満を持して現れた、日本のメーカーが発売した体感型VRMMORPG、ユグドラシル。

 五感をゲーム内にフルダイブさせるが、論理システム的な何かによって女性にセクハラを行う事は不可能となっている、痒いところに手が届かないゲームである。とはいえそれは法律的に決まってしまっている事なので、それを不満に言うのは間違っているだろう。

 データ量が豊富すぎてテンプレートというものが存在せず、現実世界より大体自由に何にでもなれるゲーム。

それこそが、ユグドラシルなのだ。

 しかし、何事にも例外というのは存在する。そしてこのギルドには、その例外を求める者達が、その例外を妬む者達が募っていた。

 

 上位ギルドはトリニティ、2ch連合、アインズ・ウール・ゴウンと色々あるが、「最強のギルドは?」と問われれば、誰もが口を揃え、恐ろしさと虚しさと若干の同情心を持って、このギルドの名を謳うだろう。

 一年に二度、たった一日しか機能しないギルド。クリスマスとバレンタインデーしか現れない最強のギルド、くたばれリア充(アンチアベック)幸福の捕食者(ハッピープレデター)。総人数と質は年々上下するが、大体プレイヤーの六~七割だった。ちなみに浮遊城にあるギルドである。

 

 ユグドラシルにおいて唯一、公式が運営する特殊ギルド。このギルドの形式もかなり特殊で、異質で、そしてあまりにも哀しい。

 まず、ギルドの掛け持ちが出来る。というのも、一年に二度しか現れないギルドに永久就職なんて誰もが辞退するだろう。異質ではあるが、理には叶っている。

 もう一つは、嫉妬マスクを被っていなければ入れないという事。

 これはクリスマスにもユグドラシルをプレイしているプレイヤーに、半強制的に贈られるアイテム。効果はユグドラシルの結婚システムを活用(要するにゲーム内で結婚してる奴ら。勿論セックスは出来ないが、リアルで会う事は出来る)しているかどうかを見極め、そしてアンチアベック・ハッピープレデターに加入している間はPKが免除されるという、使いどころが難しく、活かすとなればとても虚しいアイテムである。

 最後にリア充を殺す覚悟がある事。その為ならば密告も辞さない精神こそが、このギルドの最低条件だ。

 ハートが割れたような模様が刻まれた大理石めいた床、首吊り処刑するようにカップルが吊るされたように見えるシャンデリア。悪魔めいた銅像が天井近くに立ち並ぶ巨大宮殿内部。

 ところ狭しと、様々なアバターがそこに集結していた。

 人間種や亜人種、異形種の姿が一同に揃うというのは、中々に衝撃的だ。

 それも全員嫉妬マスクを被ってるとなれば、ある意味ではあるがとても恐ろしく、とてもおぞましく、とても虚しい気持ちになってしまう。

 そんな見ているだけで虚しくなる仮面を被った彼らはカップルを槍で突き刺すステンドグラスの前に立つ男の方に、視線を注目させていた。

 

 男のいでたちは、異質の一言に尽きる。

 嫉妬マスクを被り、パンツを両肩にクロスするようにかけた、筋肉モリモリマッチョマンの変態。

 アンチアベック・ハッピープレデターのギルド長。運営スタッフからバックアップを受けているが、概ねリア充以外からの評判は良いプレイヤー。ムーンシャドーである。

 ムーンシャドーは教壇の上で集まった面々を眺め、満足そうに頷く。

 上・中・下と様々なギルドが集まっている。戦力としては申し分ない。

 ムーンシャドーは右手を静かに上げる。

 ムーンシャドーの後ろには粉々に砕かれたハートを催した杖、ギルド武器『ジェノサイドアベック』。性能はユグドラシルのカップルを殲滅するという、かなり使い勝手の悪い性能である。

 

「……諸君! 今年もこの夜が来た、来てしまった!

 現実世界という地獄から逃れた我々に追い討ちをかける為、リア充の奴らが我がユグドラシルに、楽園に侵略をしてきたのだ!」

 

 彼の声は大きく、遠くまで響き渡る。喋る度に仕込まれたプログラムによって、マスクが点滅し一物がぴくぴくと動く。

 ギルド長の一言一言、一字一句聞き逃さないように、アンチアベック・ハッピープレデターの面々は神妙な面持ちでそれを聞く。

 

「本来であれば従来通りリア充の狩りへと向かうところだが、今年は少し趣向を変える……と、いうのも、ついにリア充の奴らが、我らが敵が! 我らが楽園にギルドを立ち上げたからだ!」

 

 腕を大きく振り上げ、降り下ろすと同時。ムーンシャドーの頭上にそのギルドの立体映像が姿を表す。

 大量のパート形めいた浮遊物体、その下には大量のピンクい建物。これがアンチアベック・ハッピープレデターの宿敵の、分ギルドである。

 

「中規模ギルド、ハッピーLOVE。参加条件はカップルである事、リア充である事。童貞ではない事……これこそ、我らが最大の敵!

 敵は強大だ。故に! 我らが一丸となり、奴らに引導を渡してやろう! 奴らは我々を嘲笑い、あろうことかユグドラシルを出会い系サイトのように扱っている! この愚行、許されていい筈が無い!

 剣を取れ! 杖を取れ! 奴らに本当の闘争というものを、我々の力を見せつけてやれ!」

 一頻り演説を終えると、ムーンシャドーは教壇から降り、入れ替わるように白い研究衣を羽織った、痩せぎすな男が教壇に立つ。無精髭に目の下の濃いくま、ひび割れた唇、焦点の合っていない眼からは生気を感じさせない

 アンチアベック・ハッピープレデターの参謀、ロリショタ万歳である。ハンドルネームの割りにはどちらかというと老けた感じなのは、本人がロリかショタのアバターを使用した際に色々と我慢が出来なくなるからだ。

 

「作戦を説明する。目的はアルフヘイムを拠点とするハッピーLOVE。人間種が五割、亜人種が三割、異形種が二割のギルドだ。平均レベルは五十弱。ギルドマスターはエルフ種のクライン、職種は魔法戦士レベル八十。装備は精々聖遺物級程度といった所か。最もその数はかなりのものだが、所詮虫が集まっても虫程度でしかないな」

 

 聖遺物級、上位アイテムに比べればその性能は紙のようなものだが、普段は現実での恋愛に現を抜かす連中からしてみれば、まあ頑張った方だろうという評価が出来る。

 とはいえアンチアベック・ハッピープレデターの面々からしてみれば、さながらゴブリンの大群。無双してくださいと言っているようなものだ。

 

「とはいえ、ギルド長の彼女でるくみんはワールドチャンピオンであり、更に超位魔法の使用に長けている。ゆめゆめ油断しないように」

 

 超位魔法というのは、百レベルの者にのみ許される最強の魔法である。一日に四回、使用するのにかなりの時間を要し、発動負荷時間や経験値ダウンなどの制限がかけられている。強力だが使いどころの難しい魔法だ。

 しかし人数的にも平均レベル的に見ても装備的に見ても、アンチアベック・ハッピープレデターの方が何十倍も上である。

 

「では諸君、行こうか。徹底的に蹂躙するぞ!」

 

 筋肉モリモリマッチョマンな変態から青銅色の全体的に丸っこいフォルムの鎧に着替えたムーンシャドーは、あまりのアレさから没になった、レア度だけは伝説級アイテムをも超える剣。『アヘガオ』と『ダブルピース』を持ち、立ち上がる。

 それと同時に突き上げられる拳、野太い男達の雄叫び。

 隣で同じように雄叫びを上げる黒い天使の羽を付けた、トマトのように膨れ腐ったような色をした肌のるし★ふぁーと、黒山羊のような顔をし黒いスーツをぴっちりと来たウルベルト・アレイン・オードル、そして後ろで同じように拳を突き上げ叫んでいる白いタコに水死体めいた身体を与えボンテージのような服装をし、赤黒いマントを羽織ったタブラ・スマラグディナに囲まれた、黒いローブを着た、後にアインズ・ウール・ゴウンのギルド長となるスケルトン、モモンガは、独り言ちに呟く。

 

「なんで俺巻き込まれたんだろう……」




 かなり速いがクリスマスプレゼント、気晴らしに書いたので読みにくかったらごめーんね
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