麻帆良の炎髪灼眼   作:rain-c

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妖怪×異能

 自称、六百年の時を生きる悪の魔法使いのマクダウェルさんの姿が見えなくなると、渋いおじさんはポケットからタバコを取り出し、火をつけた。役目の終わったライターをズボンの左のポケットへと仕舞い、右手を使いタバコを吸う。

 喫煙者なら誰でもやる可能性のある何気ない仕草だったが、このおじさんはやはり普通ではないのだろう。彼がズボンに手を入れた辺りから、場の空気が重くなり緊張感が漂い出した気がする。

 

「さて、エヴァには後で話をするとして、君は誰だい?魔法生徒でエヴァの興味を引く人物はいなかったと思うんだけど」

 

 少し困った風な笑顔を浮かべ、タバコを吸いながら尋ねてくる渋めのおじさん。マクダウェルさんの興味を引いたというのはよくわからない。学園を覆う規模の結界が張られていることから、多少は魔法関係者がいるとは思っていたけど、魔法生徒なんてのがいるのか。凄いな麻帆良。

 

「……言えないかい?」

 

 確認の言葉とともに、渋めのおじさんのポケットに入れられた手に気が集まっていく。返答次第では攻撃も辞さないってことですか。敵じゃないことは伝えておかないと。

 

「いえ、すみません。少し考え事をしてました。麻帆良学園本校初等部三年、如月堅一です。魔法生徒なんているんですね」

 

「明日菜くんから聞いた名前だな……。ふむ。勧誘に洩れがあったのかな。それにしても初等部にして無詠唱呪文を使えるのか。凄いな」

 

 感心したように話す渋めのおじさん。無詠唱呪文とやらじゃないんだけど、それで納得してるならこのまま話を合わせておいた方がいいかな。下手に能力のことは言いたくないし。あ、でもそれだとカモフラージュとして始動キーは必須だな。考えとこう。

 

「あ、僕は別に怪しいものじゃないよ。タカミチ・T・高畑。麻帆良学園本校女子中等部で教師をやっているんだ。会うことはあまり無いかもしれないけど、よろしくね」

 

 俺の沈黙を警戒していると思ったのか、笑顔で自己紹介をしてくれた渋めのおじさん改め、高畑さん。真ん中のTは何の略だろう。さりげなくさっき神楽坂の名前が出てきたが、噂の保護者かな。この高畑さんと神楽坂の関係って聞いたら地雷なんだろうな。きっと。

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 とりあえず、当たり障りのない挨拶。処世術というやつです。

 

「この後、ちょっと時間あるかい?少し付き合って欲しいところがあるんだけど」

 

「時間は大丈夫ですけど……」

 

「ははっ、不安に思うかも知れないけど大丈夫だよ。麻帆良にいる魔法使いを纏める立場にいる人物に会いにいくだけだからさ」

 

 いやいやいや。普通の八歳児ならその表情で安心するかも知れませんけど、俺にとっては今の知らせで安心する要素ないですよ。麻帆良の魔法使いを纏める立場の人に会うなんて、不安を抱く事しか出来ない。

 拒否権ないだろうな。流れ的に。

 

「わかりました。ついて行きます」

 

 こうして俺は、麻帆良のトップと会うことになってしまった。恨みますよマクダウェルさん。

 余談になるが、能力を解き茶髪、茶眼になった際、高畑さんを少しばかり驚かせてしまったが、体質だと頑張って誤魔化した。

 

◇◇◇

 

 高畑さんに案内され、連れてこられたのは意外にも麻帆良本校女子中等部の校舎であった。なんでも学園を統括する学園長でもあるらしいのだけど、なぜ奥の方にある女子高エリアに学園長室を作ったのか一時間ほど問い詰めたい。

 魔法。

 地球より規模の大きな魔法世界があるにも関わらず、秘匿されている技術。世界樹を中心に張り巡らされている認識阻害の結界があることから、魔法のことをバラす結果になった際、ただでは済まないことは容易に想像できるが、魔帆良にいる魔法使いを纏める立場についている人が、学園長という表の立場を持つなんて、堂々としすぎだと思うのは俺だけだろうか?いざという時に動きにくいだろうに。認識阻害の結界を過信しているか、二重三重と策を巡らせているか。出来れば俺としては後者希望だな。勝手なイメージなんだけど、過信するやつに碌なのいないだろうし。

 

「ここだよ」

 

「はあ」

 

 ここに来るまでに沢山の女子生徒の視線に晒され、若干疲れ気味な俺。好奇な視線にはこの容姿になったことにより嫌でもなれたけど、なんで男の格好してるんだろう?てか、転校生かな?可愛いとか、負けた。とかいう反応はさすがに堪えたよ。一緒に居た高畑さんに至ってはずっと苦笑いだったし。

 

「学園長、如月くんをお連れしました」

 

「失礼します」

 

 ノックをして先に入室した高畑さん。それに続き、俺も学園長室に脚を踏み入れる。

 そこで俺の目に映ったのは非常に非常識な存在だった。明らかに人間ではない後頭部。

 妖怪ぬらりひょんが当然のように、学園長の席に座り、湯のみを傾けている。

 

 おちつけ俺。

 始めて見た本物の妖怪だが、パニックになることは許されない。こんな者のところに案内されたということは、今俺はマクダウェルさんに襲われた時以上のピンチに陥ってるんだろう。

 そう考えを纏め、俺はこの状況を打開するため、ゆっくり両手を上げていく。

 掌の上で躍らせているつもりなのか、眼前の妖怪は微笑ましそうな顔で俺の行動を見守っていた。

 親指と親指、人差し指と人差し指を合わせ歪な四角を作る。能力を使える程度の能力を使用しようとしているために、髪と瞳の色が変わったのだろう。座っていた目標の表情から驚いているのが見て取れるが、俺は手を下ろしたりはしない。

 大妖怪ぬらりひょん。人間の足掻きを見るがいい。

 

「恋符・マスタースパーク!」

 

「ちょっ、いきなりなんじゃ!」

 

「如月くん!?」

 

 キーワードと共に、指によって作られた四角から、砲撃と表現するのが相応しい七色の光の塊が目標へと向かうも、妖怪ぬらりひょんは軽快な動きでそれを避け、放った砲撃は轟音をたて、壁を砕くと外へと消えていく。 やはり高畑さんは妖怪の味方のようで、俺に対し警戒し始めた。

 一日に一回放てるようになったボムが避けられたことに少しばかりショックを受けるが、今は気にしている余裕はない。マスタースパークにより、ぬらりひょんにダメージを与えることが出来なかったので、現状は二対一。今の動きから、ぬらりひょんも相当腕が立つと予想できる。

 

「妖怪ぬらりひょん。今のは、あなたの思い道理にはならないという俺の意思表示です。負けるにしても簡単に負けるつもりはありません。高畑さん。マクダウェルさんを止めてくれた時には良い人だと思いましたが、まんまと騙されてしまいました。まさか妖怪の手先だったなんて」

 

 俺の言葉をうけた高畑さんは警戒を解き、額に手をあてると溜息をついた。なんだろうどこか疲れた表情でぬらりひょんを見ている。

 

「わし、そんなに人外に見えるかのう」

 

「あははは、確かにそう見えないことも無いんだけどね」

 

 ぬらりひょんの悲しそうな呟きと、乾いた笑いを浮かべた高畑さんの言葉が重なる。

 

 おかしい。依然、戦闘態勢を崩さない俺にたいし、高畑さんもぬらりひょんも、魔法やら妖術やらを使う素振りを一切見せない。高畑さんがその気になれば、簡単に俺なんか抑えられるはずなのに。

 

「あの……もしかして」

 

 間違ってたらいいなと希望的観測を胸に抱き、恐る恐る確認のために口を開いた俺だったが、最後まで言葉を発することはできなかった。なぜなら、言葉の途中で学園長室の扉が勢いよく開かれ、見なれた黒髪美少女が入室してきたからだ。

 

「おじいちゃん、今の音なんえ?ん、あれ、けんくんやんか。その髪どうしたん?それに、おじいちゃん後ろの大穴なんなん?学園長室でやんちゃしたらあかんよ」

 

 入ってきたのは、いつも一緒にいるメンバーの一人、近衛木乃香。

 

「木乃香か。そういえば、用事が合って呼んどったの。これはじゃな。高畑くん任せた」

 

「ここで僕に振りますか。えっと、これはだね」

 

「ん。なんなん?」

 

 予想外の人物の登場。予想外だったのは俺だけでは無いらしく、ぬらりひょんと高畑さんが慌てた様子で誤魔化している。

 近衛の発言を信じるなら、あの人はぬらりひょんに見えるだけで、人間であるらしい。学園長ってことも真実のようだ。近衛、おじいちゃんに似なくてよかったな。

 その様な事を考えていると、答えに詰まった高畑さんがこちらにチラチラと視線を向けてきた。どうやら助けを求められているらしい。無視したいという気持ちが俺の中で膨らむが、さすがに原因を作ってしまったという自覚はあるので、助け船を出しておこう。後で質問攻めとか厳しいし。それに近衛一人ならなんとか誤魔化せるだろう。

 

「近衛、この状況は仕方のないことなんだ!俺が高畑さんと一緒に学園長室へ来たところから話そう」

 

「うん。頼むわ」

 

「信じられないと思うが、俺たち三人がここで話していたところ、ドアを開けて一頭の巨大なイノシシが学園長に突っ込んでいったんだ。学園長はなんとかそのイノシシの突進を避ける事に成功し、俺と高畑さんが壁に当たり勢いを殺したイノシシを捕獲しようと構えていたら、そのイノシシは壁をぶち破って逃走。そして、俺たちがその光景に唖然としているところに近衛が現れたんだ」

 

 声に抑揚をつけ、出来るだけ大げさに聞こえるようにし、両手足をも使っていかに大変だったかをアピールする俺。そんな俺の様子に絶句している高畑さんと学園長の両名。二人とも頭に手をやり、やっちゃったよ。みたいな表情で俺の行動を見ていた。

 ムムムと考え込むような顔をし、俺の話を聞いていた近衛は俺の肩を労うかのようにポンポンと叩き、口を開いた。

 

「そうなんか。大変やったんやな。んで、その髪と眼はどないしたん?」

 

 ……前々から天然だ。天然だ。と思ってはいたが、こんなに簡単に信じてくれるとは、騙している方なのに、俺はこの子の将来が若干心配になってしまった。俺の目の届く範囲に居る間は、悪い奴に騙されたりしないよう目を光らせておこう。

 

「イノシシの行動に驚きすぎて変わったみたいだ。たぶんしばらくしたら戻ると思う」

 

 ありえないぐらい苦しい言い訳。

 

「早く戻るとええなー。なんか困るようやったら、うちに言ってなー?おじいちゃんも高畑センせもお疲れ様」

 

 信じただと……。近衛の天然度合いは底なしか!

 

「ああ、ありがとう。近衛」

 

「ええよ。困った時はお互い様や」

 

 俺の言い訳を聞き、乾いた笑いをする高畑さん。孫の残念さにがっくしと肩を落とす学園長。そして、誤魔化せたことに安心し、ほっと息をつく俺。そんな俺達三人の様子を不思議そうに見てはいるが、質問を重ねることはなかった。

 

「木乃香、これから少し大事な話をするんじゃ。悪いんじゃが、また後で来てくれんかの?」

 

「ん。りょーかいや。けんくんまたなー」

 

 学園長のお願いに笑顔で答えた近衛は、俺に背を向けると扉に向かい歩いて行ったのだが、近衛が扉を開けようとする前に、学園長室の扉が開き、金髪美少女が現れる。

 

「そんな適当な話に騙されるな。こいつらは嘘を言っているぞ」

 

 突然現れるなり、意地の悪そうな笑みを浮かべ近衛に話しかけるマクダウェルさん。能力使用状態の俺の目に映るマクダウェルさんは薄い膜に被われ、不可視の紐でぐるぐる巻きにされているように見える。さらには背中には同じく不可視のランドセル。ランドセルは良くわからないが、紐と薄い膜は結界だろうか?

 扉の真ん前に立ち、近衛が部屋から出れないようにしているために、近衛は学園長室から出ることは出来ない。

 もしマクダウェルさんが魔法についてばらす気なら、さっきの俺の苦労が水の泡になる。

 

「嘘?どういうことなん?」

 

「そこの大穴は、そこの坊やが開けたんだよ。魔法によってな」

 

 うわっ。あっさり言ったよこの人。

 

「魔法?そんなんあるわけないやん」

 

 マクダウェルさんの言葉に笑いながら返答する近衛。

 まあ、普通信じないよな。

 言葉で言われただけで魔法の存在を信じてしまうんじゃないかと不安だったけど、冷静に考えてみれば、過剰反応だと思う。

 

「信じないか。当然の反応だと思うが、今から起こることを見てからも、そう言えるかな?」

 

 俺の方に視線をやりながら、マクダウェルさんは懐に手をいれると、小さなフラスコを取り出しにやりと笑う。

 

「女子供の命は奪わん。脱がすだけだ。同年代の男がいるが、許せよ?」

 

 そんなことを言うと、近衛に向かいフラスコを放り投げる。

 

「エヴァ!やめろ!」

 

「なにやってるんだよ!」

 

 急いでフラスコの軌道上に、境界を操る程度の能力を使用し、スキマを開く。フラスコは引き寄せられる様に、スキマに入りこの世界から消えた。

 近衛にフラスコが当たるのを防いだ俺だったが、スキマを開いた瞬間、マクダウェルさんの笑みが深まっていた。

 

「こうも思い通りに動いてくれるとはな」

 

 マクダウェルさんの面白くて仕方ないといった声が耳に届き、俺は現状の確認。まずこの場にいるのは、学園長、高畑先生、マクダウェルさん。この三人はいい。

 問題は、スキマが閉じていくのを口を大きく開けキラキラした目で見つめている近衛だ。本家のスキマとは違い、星空のような空間が広がる俺のスキマが閉じるのを、名残惜しそうに見届けていた。

 

「い、いまのなんなん!?」

 

 同じ位の身長のマクダウェルさんの肩を両手で掴み、がくがくと揺さぶる近衛。

 

「ちょっ、待て、落ち着け。今のは、私じゃない!あいつだ、あいつ」

 

 激しく揺さぶられながらも俺のことを指差すマクダウェルさん。大人しく揺さぶられていればいいものを、なんで俺だってバラすんだよ。マクダウェルさんの肩から手を放し、俺のところにやはり恐るべき速度で走りよってくる近衛。

 

「なあなあ、今のなんなん?急に割れたと思ったら、すっごい綺麗なんが見えたで!」

 

「ん?そんなん見えたか?俺には何も見えなかったぞ。気のせいじゃないな?」

 

「誤魔化すつもりなら、次は私が魔法を見せようか?」

 

 笑みを絶やさず言うマクダウェルさん。今の彼女になら、ささやかな復讐としてスカートを捲ったりしても許されると俺は思う。

 

「如月くんや、もう誤魔化さなくていいぞい。無理に誤魔化そうとしても、実際に見てしまった今となっては幾ら口で説明したところで、木乃香は納得しないじゃろう。それに中途半端に知るより、きちんと教えた方が木乃香の身の為じゃ」

 

 やってしまうか。

 半ば本気でそう思い、マクダウェルさんの方へ歩こうとしたところで、学園長が口を開いた。学園長に助けられたな、マクダウェルさん。

 それはそうと今、学園長の言葉には気になる単語があったな。身の為ってどういうことだろう。

 

「なあなあ、おじいちゃん。身の為ってどういうことなん?」

 

 どうやら近衛も同じ疑問を抱いたようで、俺の肩から手を離すと体を学園長の方へ向け疑問を投げかけた。

 

「魔法大戦を終戦に導いた英雄サウザンド・マスターことナギ・スプリングフィールドが率いた紅き翼。そこに所属していた凄腕剣士。近衛詠春さん、そんな人の娘さんが強大な魔力を持っている。それがどういうことかわかるかな?」

 

 答えは学園長からではなく、今まで黙っていた高畑さんから返されたのだが、高畑さんの話を聞いても近衛にはきちんと伝わらなかったらしい。どういうこと?といった感じに俺に視線を向けてきている。

 

「つまり、魔法を知ってしまったって事は、狙われたり利用されたりするかも知れないって事だよ。有名人の娘なだけでも利用価値は充分にあるのに、それに加え近衛は膨大な魔力を持っているからな。一般人だったら狙われる可能性は低いかも知れないけど」

 

「如月くんの言うとおりじゃ。世の中には悲しいことに他人の気持ちなど考えもせず、ただ自分の欲望を満たす為だけに行動する者もいる。中には木乃香の意思を無視し魔力だけを利用しようとするものもいるだろう。木乃香に選んで欲しいんじゃが、どうする?魔法を忘れて護られる側となるか、魔法を学び最低限自分の身を守れるようになるか、選んで欲しい」

 

 俺が噛み砕いて近衛へと説明すると、。凄い真剣な表情を浮かべた学園長が、俺があえて言わなかったことを話し、木乃香へと選択を迫った。

 凄い真面目な話をしているのだが、学園長の見た目がすべてを台無しにしている気がする。

 

「うちは……」

 

 そういうと俯く近衛。今まで普通に生きてきた八歳の子供に投げかけるには重い質問だ。告げられたことへの恐怖からか、近衛の体はかすかに震えている。

 そのまま五分ほどその姿勢のまま近衛は俯いていたのだが、俺が助け舟を出そうとしたところで、近衛は恐怖を振り払うように首を激しく左右に振ると、両手で自分の頬をパンパンと二度叩き、まっすぐと学園長の顔を見つめた。

 

「うちは、護られるだけはいやや!」 

 

「くっくっく、良い啖呵だ小娘。これでお前もこっち側だな」

 

 今まで数えるほどしか見せたことのない真剣な表情を浮かべる近衛。そして、そんな近衛の様子を見て、なぜか楽しそうな表情を浮かべるマクダウェルさん。

 

「……学園長、エヴァにはもちろんペナルティーを与えますよね?」

 

 気分よさげに笑っていたマクダウェルさんの表情が、高畑さんの発現により凍りついた。まあ、当然だよな。俺の能力バレを含め、すべての現況はこの人だし。人の秘密をさらけ出させておいて、何も無しはさすがにないわ。

 

「おい、こら、タカミチ!余計なことを言うんじゃない!今は小娘の決意を褒める時だろうが!」

 

「もちろんじゃとも」

 

「なっ、じじい!」

 

 うろたえるマクダウェルさん。予想外の事態には弱いのかね。

 面白い、ここは追撃しておこう。

 

「魔法を一般人に教える。六百年も生きているんですし、それがいけないことだなんて知らないわけがないですよね?ペナルティーがあって当然ですよ。魔法をバラした魔法使いって確かオコジョにされるんでしたよね?学園長」

 

「本来ならそうなっておるが、木乃香の魔法の先生を任せようかとおもっとる」

 

「じじい共で教えればいいだろうが!なんでこの私がっ」

 

 学園長の話に食って掛かるマクダウェルさん。もともとの原因が自分だということを、忘れている気がするのは気のせいだろうか?

 

「エヴァはそんなにオコジョになりたいのかい?」

 

「そんなわけあるか!」

 

「なら決まりじゃな。木乃香、よかったな」

 

「くっ、仕方が無い。小娘、光栄に思うがいい、最強の悪の魔法使いエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに魔法を教わることを」

 

「よろしくなー、エヴァちゃん」

 

 魔法の存在を知った上で、自称とはいえ、悪の魔法使いを名乗る年上の少女をあっさりとちゃん付けでよび始める近衛。将来は大物になる予感がする。

 

「んじゃ、話は纏まったみたいなので、俺は失礼します」

 

 学園長との面会という当初の目的は果たされていた為、面倒ごとに巻き込まれる前に早々と立ち去ろうとした俺だったが、高畑さんが俺の前に立つ。

 どうやら俺は高畑さんの行く手を遮ってしまったようだ。道を譲るろうと、壁際に移動すると高畑さんも壁際に移動。良くあるお見合いというやつだ。さらに反対側に移動しようとすると高畑さんも同じように移動する。

 

「如月くん、もう少しゆっくりしていきなよ。聞きたいことがあるからさ」

 

 また移動しようとしたところで高畑さんに声をかけられた。逃がさないための通せんぼだったんかい。

 

「……なんでしょう?」

 

「君が使ったのは魔法ではないね?」

 

 ああ、これだとマクダウェルさんへの復讐はスカート捲りだけじゃ足りないかな。

 

「……魔法ですよ?」

 

「それなら、使った魔法の名前を教えてくれるかな?あんな魔法は見たこと無くてね」

 

 ああ、積んだ。そんな咄嗟に適当な魔法名が浮かぶなら、近衛にイノシシが飛び込んできたなんて下手な嘘を言う訳がないじゃないか。

 

「どうした?言えないのかい坊や?」

 

 標的が俺に移った途端生き生きとしだすマクダウェルさん。この人の内面がちょっと判った気がする。うたれ弱いSだなきっと。

 思考が逸れた。誤魔化せないなら俺に残された手は一つしかないよな。下手に隠し事をしてマークされても嫌だし。敵対することになったら目も当てられない。

 

「俺の負けですね。確かに魔法じゃないですよ。異能が一番近いと思います。あ、一応言っておきますけど、人間ですからね」

 

「ふむ。予想外に素直に答えるのう」

 

「下手な誤魔化しは通じないだろうし、別に敵対したいわけじゃないので」

 

「八歳とは思えんほどに聡いのう。」

 

「異能があるだけで、どこにでもいる八歳ですよ」

 

 前世の記憶もありますけど、と口には出さず心の中で付け足しておく。ダイオラマ神球内で過ごした時間もいれると、今の年齢プラス前世の年齢プラスαといったところだろう。もしかしたら高畑さんより年齢いってるかもな。

 

「なあ、結局けんくんの力ってなんなん?」

 

「魔法っぽいことが出来るだけだよ。あと、さっき髪と眼の色のこと聞いてきたけど、もちろんびっくりして色が変わったのは嘘で、本当は異能を使用すると勝手にこの色に変わっちゃうんだ」

 

「なんか変身みたいでかっこええなー。うちもそういうのしたいわ」

 

「これはこれで不便なんだぞ?両親と一緒に暮らしてた時なんかは、ひやひやしながら使いこなせるよう修行してたし」

 

「ふむ。なら、如月くんの異能とやらは最近身につけたものではないようじゃな。それに両親には秘密か。のう、木乃香」

 

 俺と近衛の何気ない会話からも情報を仕入れる学園長。中々抜け目の無い性格のようだ。

 

「ん?」

 

「如月くんの戦う姿、見てみたくはないかのう?」

 

「見てみたいとは思うけど……けんくん、ええの?」

 

 上目使いで俺を見る近衛と、見た目といいマクダウェルさんよりよっぽど悪の魔法使いという言葉が似合う学園長がにやりと笑いこちらを見ている。学園長はどうでもいいけど、近衛という美少女の上目使いのお願い。断りづらいな。

 

「相手は私がしてやろう。悩むこと無いだろう坊や。友達に本物の魔法使いの戦いを見せてやるよ。それに坊や自身も経験を積める。悪くない経験になると思うが?」

 

 たった一回の攻防で、マクダウェルさんには俺が対人戦の経験が少ないことに気づいたらしい。さすが、自称とはいえ、最強の悪の魔法使いを名乗るだけのことはある。

 

「ええ、その話受けます」

 

「楽しませてくれよ?」

 

 死亡フラグ立った気がしないでもないが、気のせいだよな? 

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