麻帆良の炎髪灼眼   作:rain-c

6 / 6
いまいち納得はできてないので、あとあと訂正はいるかもです。


友達×ドーナツ

「はあ。ったく、らしくないことしたな」

 

 一人の少女が自室のベッドに仰向けに横たわり、ああ、本当にらしくない事をしたと左手で顔を覆い隠して自分の行動に呆れていた。部屋着に着替える事無く、彼女の通う学校の制服を着たまま横たわっていることからも、如何に少女が自分の行動に対し呆れているか見て取れる。

 

「それにしても、我ながらあの発言は酷いと思う」

 

 横たわる少女、長谷川千雨は、自分のした発言を思い出し、その台詞を聞いた少年と少女の反応を思い浮かべ苦笑する。少女、近衛木乃香の方は何を言ってるのかわかっていない様子だったが、少年、如月堅一の方は確実に千雨の言った言葉を理解していた様子だった。走り去ってから次からどういう顔をして会えばいいか悩み、次の日学校で会った後も行動をともにする事の多い人間から距離をとり数日が経ち、いっそこのまま避け続け、関係を断ってしまうかとまで真剣に千雨が考えていたところで、爛れた関係を構築していると、情報をくれた新聞部の上級生を引き連れてやってきた堅一は、新聞部の女性に謝罪をさせ、気にしてないし、忘れるから長谷川も忘れてくれと声をかけてくれた。おかげで、千雨は大切な友達との関係を切るとるという最悪な事態は避けられたのだが。

 

「あいつは本当に同い年には思えないな」

 

 自分も他の生徒にとってはそうかと苦笑しつつ、顔を覆っていた手を部屋を照らす照明にかざす。指の隙間から差し込む光に目を細め、思ったことを口に出す千雨。実際、堅一は転生者なので千雨の言ったことは間違いではないが、千雨にそのことを教えることのできるものはいない。

 

「それにしても」

 

 うつ伏せとへと体勢をかえ、溜息をついた千雨は枕を抱き足をバタつかせると、アーと声を上げる。暴走していたとは言え、爛れた関係を友人が構築していると聞き、その友人を呼び出した。普通なら、その考えを正すのが友人としての役目だろう。しかし、千雨は上級生の変わりにその関係に加わるという提案をした。冷静になった今では、どうしてそんな提案をしたんだろうと考えて見るも、わからなかった。

 如月堅一、今のところ麻帆良の異常性を共感できるただ一人の友人。

 

「ああもう」

 

 心の中にもやっとしたしたものを感じ、千雨は足を激しくバタつかせる。盛大にスカートがめくりあがり時折薄いピンク色の布が顔を覗かせるが、今はそれに目を奪われる者も、その行動を咎めるものもその場には居ない。そのため、千雨は心いくまで足をバタつかせ息が乱れるまで続けたところで、その奇行をやめ抱いた枕に顔を埋める。

 もし、その場に他の人間がいたなら、恋に落ちているのだと指摘するであろう行動をとっている千雨なのだが、大人びてはいるが彼女の年齢は八歳。恋というにはあまりにも淡い気持ちであり、当の本人には恋ではないかと気づくことはなかった。千雨にとっての堅一の認識は、今はまだ大切な友達でしかない。

 

「……寝よ」

 

 パンクしそうな思考を放棄した千雨は、制服のままであるにもかかわらず、目を閉じると体の力を抜きベッドに身を任せた。精神的に疲れていたためか、数分もすると規則正しい寝息が聞こえ始める。

 八歳という幼い年齢の為、彼女が恋をしているか、はっきりと論ずることは出来ないが、この先もどうなのかは神のみぞ知るといったところか。

 そんな風に淡い気持ちを向けられていることを知らない堅一はというと、今現在二人の美少女と遭遇しようとしているのだが、寝ている千雨にそれを知る術はない。

 

◇◇◇

 

 第一次長谷川暴走事件をうまく収めることが出来た記念に、久しぶりに駄菓子でも買おうかなと考えた俺は、駄菓子やへと向かい歩いていた。少しばかり自宅から離れているのだが、駄菓子を専門に扱っているまほら堂には、コンビ二ではお目にかかることの出来ない駄菓子が売っている。ちなみにお気に入りの駄菓子はミニドーナツと、米っぽいやつだ。

 

「桜子頑張れ!」

 

「にゃはは、私に任せてくれたまえ。くぎみーくん」

 

「くぎみー言うな!」

 

 まほら堂に近づくにつれ、にぎやかな声が聞こえ、店先で当たりつきクジらしきものを引いている二人の少女が視界に映った。一人は黒い髪をショートカットに揃えた少女、もう一人は少しオレンジっぽい髪をし後ろ髪を編んでいる少女。オレンジっぽい髪の子は確か同じクラスの椎名なんとかだったはず、黒髪の方は見覚えがあるような無いようなという感じだ。

 この店で同級生、それも女子に遭遇する確率はかなり低い。駄菓子より洋菓子を好む傾向が強いし、麻帆良学園都市には小学生でも気軽に入れる安くて美味しい物を出すカフェが多く、わざわざ距離の離れたまほら堂に来るのは、男子が多い。

 

「お、きさにゃんじゃん。やっほー」

 

「お、おう。椎名」

 

 俺に気づいた椎名は、クジを引こうとしていた手をとめ、気さくに挨拶をしてくれたのだが、きさにゃんとフレンドリーに呼ばれるのは、今のが初めてだし、学校でも挨拶を交わす程度の仲。もう少し近づいたら軽く挨拶でもしておくかと考えていた俺は、椎名のテンションの高さに軽く動揺してしまった。少しばかり恥ずかしい。

 

「はじめまして。釘宮円です。桜子、この可愛い子は同じクラス?」

 

「どうも。如月堅一です。こちらこそよろしく」

 

 椎名の挨拶により、俺の存在に気づいた黒髪の少女、釘宮は椎名のテンションの高さに引っ張られることなく、歳の割にしっかりした挨拶をしてくれた後、椎名に質問をぶつける。釘宮が椎名にぶつけた質問の中に気になる言葉があったので、俺は名前を強調して自己紹介を行う。

 

「あー、くぎみー。残念だけど、きさにゃんは男の子だよ?」

 

「嘘だっ!!こんな可愛いのに」

 

 見開きアンドカラーで描かれた某鉈少女のようなリアクションをする釘宮。落ち着いた様子に見えていたのだが、認識を改める必要がありそうだ。

 

「わかる!わかるよくぎみー。私だって信じたくないよ!でも、それでも、きさにゃんが男の子だってのは真実なんだよ……」

 

「……そんな」

 

 手足全部を使い大げさな表現をする椎名。その言葉を聞いてがっくりと肩を落とす釘宮。俺の話をしているのに、俺に一切話を振ってこないのは何故だろう。真剣な表情で語っていた椎名が、肩を落とす釘宮を見て笑うのを堪えている様子から、釘宮のことをからかい遊んでいるというのは判るんだが、釘宮は俺が男だと知って本気で落ち込んでる。

 

「初対面の人の慰め方なんか知らんから、思ったこというけどさ。釘宮は十分女の子らしいから落ち込む必要ないと思うよ」

 

「ふふふ。きさにゃんはくぎみーみたいな子が良いんだね。にゃはは、よかったねくぎみー。どうするの?きさにゃんにこのまま口説かれちゃうの!?」

 

 俺の言葉を聞いても俯いたまま、ぶつぶつと自分を卑下する釘宮の顔を下から覗き込みながら、俺の言葉を誇張する椎名。俺は、客観的な意見を述べただけで、釘宮を口説いているつもりはないんだが。

 

「えっ、えっ、えええええ」

 

 椎名の言ったことを間に受け、顔を上げ大声を出した釘宮は顔を真っ赤にし、先程とは違う理由で顔を俯かせてしまった。素直なのは良いことだと思うのだが、人を疑わな過ぎるだろ。それに確かに可愛いとは思うのだが、一目惚れするほど俺は精神的に若くはない。というか、前世の記憶があるためか、今のところ同年代に恋愛感情を抱いた事はない。

 

「おお、俯いてるくぎみーに熱い視線を送るきさにゃん。これはもしかして……」

 

 俯いている釘宮に視線をやっていた俺を見た椎名は、口元に手をあてにししと言いそうな表情で楽しそうに笑った。読唇術など使えないが、さすがに今現在椎名が考えそうなことは用意に想像できる。

 

「はあ、あのな椎名。からかうのが楽しいのはわかるが、その辺りでやめとこうな。椎名が考えているようなことはないし、釘宮がテンパリだしてんぞ。こういうのは後で喧嘩になりやすい。ちゃんとこの場で謝っとけ」

 

 椎名の頭にコツンと拳を下ろす。よく人を弄る俺だが、さすがに恋愛ごとを絡めてからかったりはしない。恋愛ごとが絡むと話が拗れやすいというのは嫌というほど前世で学んでいる。

 

「あう。ごめんね。くぎみー」

 

「突然すぎて焦っちゃったけど、ま、いいよ。……てかっ、謝る時ぐらいくぎみーって呼ぶなー!」

 

「バレちゃった。きさにゃん助けてー!」

 

 一回納得しかけた釘宮だったが、椎名のくぎみー発言を聞き逃すことは無く、しっかり腕を振り上げ抗議していた。余計な心配だったみたいだな。この様子なら変に拗れることも無さそうだ。抗議をうけた椎名はというと、俺の背に隠れ釘宮の手を交わす。釘宮は俺に触れないように椎名を捕まえようと手を伸ばすが、掠りもしていない。

 というか、なんで俺を挟んでやるんだろうか。ただ俺は駄菓子を買いに来ただけなのに。あまり話したことのない女子に急にフレンドリーに話しかけられ、あまつさえ、その女子と友達のじゃれ合いに完璧に巻き込まれている。

 

「ああっ、ひどいよ」

 

「とりあえず落ち着け。そしてこれがもっとも重要なことなんだが、俺に駄菓子を買いに行かせてくれ」

 

 俺の腰の辺りからひょこっと顔を出していた椎名の首を掴み、椎名を釘宮に引き渡す。釘宮は、あははと引きつった笑みを浮かべながらも、椎名の身柄を引き取る。

 

「あはは。ごめんね。如月くん」

 

「えー、もっとかまちょだよ。きさにゃん」

 

「いや、釘宮のせいじゃないから気にすんな。問題はこいつだこいつ。初めて会話した相手とこんな濃厚に絡んでおいて、椎名はどこが不満なんだ?」

 

 申し訳なさそうに話す釘宮にフォローをいれ、俺は頬を軽く膨らませ不満そうな顔をする椎名のほっぺを抓み、両手でゆっくりと伸ばす。

 

「私だって普段からこんなノリで初めて話したりはしないよ。なんかね、さっき顔見た時に、きさにゃんと仲良くなったらそのうち面白くなりそうだって感じたんだよね。私としてはまだ十分仲良くなってない気がするから、もっと話したいなーと思って」 

 

「同じクラスなんだから気軽に話しかけてくれればいいよ。今、俺にとって何より重要なのはミニドーナツを入手することだから」

 

 釘宮に服を掴まれ、ほっぺたを俺に抓まれながらもサムズアップで答える椎名。そしてほっぺたを抓んだ手を離さずに返答する俺。ここから見たら確実に女の子をいじめるなと怒られそうな光景だな。

 それにしても、感だけでそれ程親しくない人に話しかけられるのはある意味で才能だと俺は思う。無邪気な子供のうちだけかも知れないが、俺にはその社交性が少しばかり羨ましかった。

 

「うし、わかったよ。きさにゃんいってらっしゃい。私達その間にクジ引いとくから、途中まで一緒に帰ろ。くぎみーもいいよね?」

 

「くぎみーって呼ばないでくれるなら、なんでもいいよ」

 

「ありがとう。くぎみー」

 

「はぁ」

 

 溜息をして何かを諦めたように遠くを見つめる釘宮。

 ごめんな、なんとかしてやりたいんだけど、俺にはどうしようもない。でも、くぎみーって呼ばれ方は合っているから、そこまで気にしなくてもいいと思う。

 

「じゃあ、行ってくるわ」

 

 今日知り合ったばかりの俺が、似合ってるとか、可愛いと思うとフォローをしても釘宮を混乱させ、椎名にネタを提供することになってしまうと判断した俺は、思ったことを口に出さずに、その場を後にしまほら堂へと足を踏み入れた。俺の愛してやまない目当てのミニドーナッツは店に入ってすぐ右手側。

 

「一等賞ゲットー」

 

「さすが桜子!」

 

 ミニドーナッツを取ろうと手を伸ばしていた時に聞こえた椎名の声。その声に、案外彼女の感は侮れないものなのかもしれない。

 

◇◇◇

 

 椎名、釘宮と別れ、家に着いた俺はダイオラマ神球に手をあて能力を使用。一瞬で目の前に広がる景色が草原へと変わる。今日のマクダウェルさんとの修行は午後七時から、現在の時刻は午後五時半。少しばかり時間があったため、俺はダイオラマ神球で修行を行うことにした。最初の模擬戦以降、マクダウェルさんには西洋魔術を学び、締めに模擬戦を行うという形式で修行しているのだが、目に見える進歩は少し西洋魔術が使えるようになった程度。能力を使う程度の能力の特性上、一気に強くなれる筈もなく、模擬戦では常にボコボコにやられている。

 幾ら精神年齢が高いとは言っても俺も男だ。女性に負けるのは悔しい。

 そんな思いから、暇さえあればダイオラマ神球にこもり、長い道のりを地道に進んでいるところだ。能力の取得条件は簡単な割に、熟練度が溜まりにくいのは、あの神様の嫌がらせと考えてしまったこともあるが、俺の能力は数が多すぎて、熟練度が溜まりにくいじゃないのか?とマクダウェルさんに言われ、それに納得できたので今は嫌がらせいう考えは捨てた。

 それに俺の能力は融通がきく。そのことに気付いたのはまったくの偶然で、マクダウェルさんとの会話からだった。近衛に魔法がバレた時に、マクダウェルさんのフラスコを飲み込んだスキマをどうやって作ったのかと聞かれ、境界を操る程度の能力を使ってとその時は答えた。

 そして、簡単に次元を割るなと殴られた。

 その日の帰り道にふと思い出したのだが、スキマは境界を操る程度の能力の本来の持ち主であるスキマ妖怪特有の能力だった気がする。そもそもの知識が怪しいために断言はできないのだが、種族スキマ妖怪だし、もしかしたら境界を操る程度の能力を使用する際、無意識にその境界を曖昧にして使用していたのかもしれない。俺の中では境界を操る程度の能力=スキマって考えだったし。

 それによくよく考えてみれば、剣術を扱う程度の能力が発動した時もおかしかった。新聞紙を丸めてチャンバラごっこ。剣術とは刀剣を用いて戦う武術。チャンバラなんて新聞紙を丸めてやるものだ。かすりもしていないにも関わらず、俺はチャンバラ中に能力を得た。

 長々と説明をしたが様は、よく言えば柔軟、悪く言えば適当。それが俺の能力を使う程度の能力。

 それに気づいた俺はあることを試しているのだが、今のところ熟練度不足で成功していないため、現在はとにかく能力を使用し、熟練度を貯めているところである。

 

「さてと、今日も頑張りますかね」

 

 脳内でラジオ体操第一を流し、音楽に沿って身体を動かす。途中、両手を広げて飛び跳ねる体操の時におっきなひよこがぴよぴよ鳴きながら跳んでいるのを妄想しつつ、俺は身体を解していく。ラジオ体操第一を終わらせ身体を温めた後、本格的な能力使用へと移行する。といっても、一人で出来ることなど限られているため、基本的には、身体強化系の能力を使用してのトレーニングが多い。時折、リアルダンジョンとかしている城に挑んだりするが、出現する化物を相手どるのは精神的にも肉体的にも辛いので、あまり行かない。武術の型の稽古でもしたいところだが、あいにく俺に武術の心得などない。なので近接戦闘の練習は、闇を操る程度の能力やら雷を操る程度の能力やらを使用し、刀剣の形をしたものを作ったり、リアルダンジョンとなっていた城の玉座と思わしき場所、そこに突き立てられていた緋想の剣を用いて、剣術を扱う程度の能力を使用し漫画などで読んだ技を練習していたりする。簡単な技なら、すぐに形には為るのだが、複雑な技や単純に技術が必要な技の再現度は結構低めで要練習といったところだ。

 ちなみに、緋想の剣には自動で相手の弱点属性になる気質を見極める程度の能力というものが備わっているのだが、十秒ほどしか発動できない上に、今の俺の剣術は未熟。さらに、同時に使用できる能力が二つなので、いまいち使えない能力である。色の変わるビームサーベルを早く使いこなせるようになりたいものだ。

 

「……もっと気楽な世界がよかったよ。神様」

 

 がっくりと肩を落とし愚痴る。マクダウェルさんとの修行が始まってから、なんでもっと普通の世界じゃなかったのかと思いもしたが。

 

「仕方ないか。自分の行動で世界の流れから外れたんだし」

 

 呟き、気持ちを入れ替え、俺は修行を続ける。力があっても使いこなせず死んだんじゃ笑い話にもなりゃしない。

 それに、この世界はそれなりに楽しい。簡単に終わるのはまっぴらごめんだ。

 

「当面の目標は、マクダウェルさんに一撃食らわせることだろうな」

 

 先は長そうだが、遣り甲斐はある目標だ。近衛も地道に修行を頑張っているんだし俺も負けないくらいは頑張らろう。気合をいれ、雷を操る程度の能力を使用。熟練度が低いからか、荒れ狂った雷は、俺の思い通りには飛ばず、買ってきたミニドーナツに直撃。

 

「まだ一つも食べてなかったのに」

 

 自身の能力により、俺は精神的ダメージを受けた。

 

◇◇◇

 

 六百年の時を生き、闇の福音、不死の魔法使い、人形使いなど様々な名で呼ばれ恐れられている吸血鬼の真祖の少女、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは戸惑っていた。彼女は今、自分の考えを曲げ少年と少女、二人の子供を鍛えているのだが、いつもなら彼女の放つ魔法に大げさに騒ぎながらも、彼女を倒そうと立ち向かってくる少年の様子がおかしかったからだ。

 まるで魂が抜けたかのように脱力し両手を広げた状態で床にうつ伏せでいる少年、如月堅一。その姿はどこかの垂れたパンダのようだ。

 

「おい。こいつに何があったんだ?」

 

 エヴァはテンションの低い少年をとりあえず放置することにし、彼女はこの場にいるもう一人の子供に聞いて見ることにした。問いかけられた少女は首を傾げると顎に手をあて、先程少年から聞いた言葉をそのまま口にする。

 

「あのな、お気に入りのお菓子を誤って自分で消し炭にしちゃったんやって」

 

「そんなことでここまでテンションが下がるのか、こいつは。一日経過したらさっさと買いにいかせろ」

 

 あまりにもくだらない理由だったことに、やはりこの学園は馬鹿ばっかりかと肩を落とし、少年に指示するエヴァ。この別荘は一度入ったら別荘内時間で一日、現実世界で一時間経過するまで出ることは出来ないので、妥当な指示といえよう。

 

「うちもな、エヴァちゃんが来る前にそういったんやけど……」

 

「なんだ?なにか問題でもあるのか」

 

 なんど言っても呼び方を変えない近衛に溜息を吐き、言いよどんだ内容を尋ねるエヴァ。

 

「そのけんくんが好きなドーナツの売ってるお店な。閉店時間が五時なんやって」

 

「もう知らん!そんな馬鹿ほうっておけ!」

 

 口ではそう言いつつも、折角の修行時間を無駄にするのを嫌ったエヴァは、城に居るチャチャゼロの姉妹人形に念話を飛ばし、ドーナツを作るように指示をだした。

 その後、チャチャゼロの姉妹人形に作らせたドーナツを食べ、一応復活した堅一にエヴァは普段よりきつめな修行を行った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。