ソウルライブ!   作:ミカサ(打ち止め)

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初投稿です。よろしくお願いします。


op,1 君の知らない物語

“心が温かい”

“心に届く”

“心を開く”

“心が震える”

 

「慣用句は見えない物をウマく喩えるね」とか、多くのヤツはそう言う。けど、オレはそうは思わねェ。

 

だって、本当にそう見えんだから。

 

オレ、神峰翔太には産まれてから特別な目をもっている。文字通り、“心の形”が見えちまう。

“傷ついたり”“壊れたり”“押しつぶされたり”“絶望したり”するのを否応なしにだ。

それを助けようともした。でも、そんな事誰も信じねェし、心の状態をバラされた人はキレる。

そんなの、辛くて見てらんねェ。

 

この“目”に意味なんてない。一生これに苛まれ続けるんだ…。そう思っていた。

 

“あいつ”にあうまでは。

 

─お前はきっとあらゆる人の心に、音を届ける為に、音楽をやる為に生まれて来たんだ!!!─

 

─友達になりたい!!一緒に音楽をやりたい!!─

 

─ぼくらをまとめ導く、指揮者になってくれ!!─

 

そう、“あいつ”は言ってくれた。

 

生きる意味を見いだしたオレは、指揮者として鳴苑高校吹奏楽部に入り、多くの仲間たちや終生のライバルとの出会い、幾多の困難を乗り越えてきた。

 

“あいつ”が見たという、世界で戦うオレたちの未来のビジョンに向かって、真っ直ぐに突き進む。

 

今までも。そしてこれからも走り続けるんだ───。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

四月、神峰は春の訪れを感じさせる、穏やかな風を感じ、長い階段をながら、見事に咲き誇る桜並木を眺めていた。

 

昔は新しい出発、出会いの季節である春を象徴する桜が嫌いだった。

だけど、鳴苑の仲間たちに出会い変わることが出来た。

新しい出会いは不安だらけなのは変わらない。でも、今はそれ以上に新たな発見や出会いが楽しみなのだ。

 

『………とは言ったものの、やっぱツレェ!!』

 

全身から嫌な汗が滝のように溢れる。それもそのはず、今神峰には多くの“女子高生”の好奇の目に晒されているからである。ヒソヒソと囁く声、ジロジロと様子を窺う目等。様々な心の様子を“見せつけてくる”。

 

『前よりはマシになったけど、やっぱ突き刺さるような心はキツい…』

 

まあ、気持ちは解る。なんせ、“女子校”に男子生徒がいるからである。逆の立場だったら、自分も同じリアクションをしていただろう。

 

と、困った顔をしていた神峰の背後から、何やら慌ただしい足音が響いてきた。

 

「急いで急いで!あと五分でチャイムなっちゃうよ!」

「まってよ〜!ほのかちゃ〜ん!」

「穂乃果が忘れ物をしなければ走らなくてすみましたのに…」

 

神峰の横を、三人の女の子達が駆け抜けて行く。そんな彼女達を見て、思わず笑みを零した。

 

彼女達の姿と、去年までの自分の姿が重なったからだ。“あいつ”と共に駆け抜けた、慌ただしく、激しく、そして情熱的な日々を思い出す。

 

まさしくそれは、青春の輝きであった。

 

そして彼女達もまた、一瞬だが、確実に“心”に一生輝きを放つ、青春の輝きの中にいるのだろう。

 

そして、神峰翔太も新たな輝きの中に向かって一歩踏み出す。

 

ここ、『国立音ノ木坂学院』に───。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「ぐ、群馬の鳴苑高校から編入してきました、神峰翔太です。一年間だけですが、ど、どうかよろしくお願いします!!」

 

転校初日の、クラスメートたちへの自己紹介にて、緊張と不安を振り払うが如く、神峰は勢いよく頭を下げた。

 

多くの、しかも女子の視線を向けられ、萎縮する神峰。今では大分改善されたが、やはり好奇の目で見られるのは苦手だ。

 

「うん、よろしく〜」

「中々イケメンじゃん!」

「何!?グンマーからの侵略者!?」

「前の学校、何部?」

「彼女いるのー?」

 

「うおっ!?」

 

神峰の挨拶から1テンポ遅れて、堰を切ったように怒涛の質問が飛び交う。それもそのはず、女子校に男子生徒がやってきた。しかも中々の美形ときたものだ。女子高生に興奮するなという方が難しい。そんな彼女たちに、神峰はというと。

 

『な、なんだコレ!?まるで動物園の新しい動物見にきたみたいな心をしてやがる!』

 

“心”が見えるだけで、基本的に鈍感な神峰は彼女たちの思いが解らず、あたふたしていた。

 

クラスが混沌を極めている中、一人の少女が、バン!と机を叩き勢いよく立ち上がった。

 

「皆、静かにしなさい!神峰君が困ってるでしょ!」

 

人目を引く金髪に、透き通った碧眼。日本人離れした整った出で立ちから、恐らくハーフかクォーターのどちらかだろう。

 

「そんな事いって絢瀬、ホントは神峰クンにいいカッコ見せたいんじゃないの〜♪」

「ヒュ~!絵里ちゃんだいた~ん!」

 

「なっ!?ち、違うわよ!」

 

絢瀬絵里と呼ばれた生徒は、クラスメートの思わぬ発言に、真っ赤になり否定する。だが、そこは女の子。その程度では収まる訳がない。喧騒が喧騒を呼び、更にカオスな状況になっていった。

 

一方、若干蚊帳の外にいる神峰は先程の絢瀬と呼ばれた生徒を“見て”内心驚いていた。

 

『絢瀬さん、だっけか…。何だかスゲェカッケェ“心”だな…』

 

絢瀬の心の形は、白銀の鎧を纏い、美しき装飾と輝きを放つ剣を携えた、凛とした佇まいをした騎士の姿をしていた。

 

『騎士…?いや、なんか姫サマが騎士やってんのがしっくりくるか…?』

 

皆にからかわれてはいるが、周囲の人達の心は彼女を慕っているようだ。皆を率いるカリスマ性、しかしそれに、驕らす自分を律する強さをしなやかさを持っていることを、神峰は彼女の心から理解出来た。

 

『皆に好かれてんだな。何か、邑楽先輩に似てんな…ん?』

 

喧騒の中にいる彼女を見つめていると、ふと違和感を抱いた。

 

彼女の心が、時折憂いを帯びた表情で剣を見つめているのだ。だが、すぐにハッとなり、元の凛とした表情に戻る。

 

『何だ…?今の?』

 

心が見える神峰でも、心自身が何を思っているかまでは解らない。

 

『何かを悲しんでる…。いや、どっちかつーとあれは─』

 

「はい!お喋りはおしまいにして、HRを終わるよ!」

 

今まで大目に見ていた女性の担任の一言で静まるクラス。それと同時に彼女の心も、静かに玉座に座し、目を閉じてしまった。どうやらこれ以上心を見るのも難しいようだ。

 

「よし、それじゃあ神峰君。君の席は窓際の一番後ろの席だ。東條、隣だから良く面倒見てやってくれ」

 

「は〜い♪」

 

担任の教師に指示された席に座り、先程の事を考えながらも、漸く一息つけると安堵したのであった。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

一息つけなかった。

 

休み時間になる度、クラス中の、それどころか立ち替わり立ち替わり学年問わず学院中の生徒がやってきて、神峰に質問したり、写メを撮ったり等、一日中針の筵状態であった。

 

そして、放課後。HR終了と同時にクラスを飛び出す。人付き合いの苦手な神峰は、もうこれ以上耐えられないと判断したからだ。

 

『ふう…。やっと逃げ切れたか…。だけど、このまま下駄箱に行ったらみつかっちまうし。ちょっと隠れとくか』

 

少し逡巡して、こういう人目から避けたい時は屋上だろうと結論付け、神峰は屋上に向かう。

 

階段を上り、扉を開けると、穏やかな日差しと、優しい風が神峰を出迎える。こういった事も、東京と遠く離れた群馬に違いはないと感じ、心が安心する。

 

『ってあれ?先客がいるぞ』

 

神峰の目線の先に、三人の女の子達がいた。

自分の緑と濃緑のストライプのネクタイとは違い、赤と群青色のリボンを身に付けている所から、一学年後輩のようである。

 

三人はダンスの練習中で、扉から少し離れていた事もあり、神峰の存在に気付いていないようだ。

 

最初、神峰も邪魔しちゃ悪いと思い、直ぐに立ち去ろうとするが、不意に何かに引き止められ、思わず足を止め、ダンスを見つめる。

 

『動きもあまり合ってないし、テンポもバラバラ…。とても稚拙だ…』

 

彼女たちのダンスは、ダンスについて何も知らない神峰でも、初心者のそれであると解った。だがしかし。

 

『…でも、心地いい』

 

神峰の心を掴んで離さなかった。

 

『非常に、魅力的だ…』

 

そして、物語の幕が上がる───。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

これが、心を掴む少年と音楽の女神達の最初の会合であった。

 

この物語は、『これから起こり得る物語』と『起こったかもしれない物語』、二つの意味合いを持つ。

 

本来の行き着く先と、この物語の行き先が同じという可能性は、恐らく無い。

 

当然、この物語の行き先は彼にも、彼女たちにも、誰にも解らない。

 

これは、そういった物語なのだから───。

 




自分の好きなソウルキャッチャーズとラブライブ!をクロスしました。
後者はともかく、前者はあまり馴染みがないかもしれませんが、とてもオススメします。
もし、この作品を読んで、興味が湧いてくれたら幸いです。
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