ソウルライブ!   作:ミカサ(打ち止め)

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なるべく3000文字前後にしようとしてますけど、なかなか上手くいかないなあ。


op,2 出会いはいつも突発的に

音ノ木坂学院の理事長は、その端正な顔を曇らせ、今日何度目か解らない溜め息を着く。いや、正確には、今年に入ってからもずっと、溜め息は止まらなかった。

 

『国立音ノ木坂学院』。

 

東京都千代田区神田に位置する由緒正しき女子校であり、古い歴史を持つ伝統校である。

 

尚、全て“過去形”であるが。

 

近年の生徒の減少により、来年の募集人員を下回った場合、統廃合を余儀なくされたのだ。

 

無論、彼女もただ指を加えて見るだけでなく、様々な対策を行った。しかし、どれも思うような成果を挙げられず、最後の手段である、“女子校”の廃止、そして、“共学化”へと踏み切ったのである。

 

無論、OG達からのバッシングも凄まじいものであった。

 

何故、誇りを棄てたのか。

 

理事長自身も、この学院の卒業生であるから、そう叫ぶ声も理解できた。しかし、彼女はOGであると同時に、現理事長でもある。

先輩方も勿論、今この学院にいる後輩達に、母校を失う悲しみを味あわせる訳にはいかなかったのだ。

 

どんな手段も使って、自分一人が泥を被ればいい。そんな覚悟を持って、今回の策を実行したのだが。

 

結果は、惨敗。男子は一人、しかも今年卒業する三年に編入しただけであった。

 

その知らせを聴いた時、彼女は自室で一人、涙を流した。

 

悲しみ、悔しさ、怒り、様々な感情が彼女を飲み込んだ。自分のしていた事は何だったのだろう、と。

 

しかし、このまま何もしない訳にはいかない。まだ一年間あるのだ。まだやれることはある。次なる対策を練る必要がある。泣くのは全てが終わった時にする。そう心に誓い、彼女は立ち上がった。

 

そんな時だった。娘のことりとその友人達が“スクールアイドル”になると言い出したのは。

 

昨今、スクールアイドルの人気は侮れない。何の変哲もない、ただの女の子達が、夢に向かって輝く。そんな姿に憧れて学校に入学するという話も聴いたことがあった。実際にA-RISEなど、有名なスクールアイドルが所属している学校は年々入学者が増加されているのも、身を持って知っている。現実にスクールアイドルも悪い案ではないと思った。

 

しかし、だからこそ情けなくなった。

 

本来、自分が何とかしなければならない問題なのに、生徒に、ましてや自分の娘とその友人に問題を背負って貰えればと、そう考えてしまう自分自身に。

 

理事長室から窓を眺める。放課後というのに、あまり声が聞こえない。自分が通っていた頃は、生徒達の部活に打ち込む声が毎日響いていたとうのに。

 

「はぁ…」

 

今日一番の溜め息が、響く。

静かな学園では、その声もよく響いた─。

 

この時、理事長の机に一枚の紙が置いてあった。

その紙には、ある“編入生”のプロフィールが記載されていた。

その人物が、今後の学園を救う者達を“導く者”になるとは、この時彼女は、予想だにしていなかった───。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

高坂穂乃果はこの音ノ木坂学院が大好きだ。

 

祖母の代から自分まで、全員音ノ木坂に通っている。

 

もしも学院が無くなったら、きっと皆悲しむ。それは嫌だ。

 

だから、廃校になるのを何とかしたい、そう思った。 

 

そして、彼女は運命に導かれ、“スクールアイドル”と邂逅する。

 

皆を夢中にし、輝く姿に惹かれ、“心”を奪われてしまった。

 

そうなった彼女は誰にも止められない。幼なじみである園田海未と南ことりを巻き込み“スクールアイドル”の世界へ、何の躊躇もなく、飛び込んだのだ。

 

そして、今目の前にいる少年との出会いが、彼女の二度目の転機であり、“分岐点”となった───。

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◆

 

神峰は三人のダンスが終わると同時に拍手を贈る。お世辞などではなく、純粋に良い物を見せて貰った讃辞であり、無意識の行動であった。

 

「へ?」

 

突然の拍手に思わず驚く三人。知らない男がいる事や、誰も見てないと思っていた、単純に誉めてくれた事、同じ驚くにも三人とも違う内容という事に個性を感じる。

 

「わりィ、盗み見するつもりはなかったけど、良かったから見入っちまった」

 

「い、いえ!そんな…!」

 

黒髪の少女は顔と“心”を真っ赤になって言った。何だかその所作が初々しく、神峰は笑みを零す。

 

「オレは、神峰翔太。今日編入してきたんだ。よろしく」

 

神峰が軽い自己紹介すると、彼女達も自己紹介を始めた。

 

「高坂穂乃果です!よろしくお願いします!」

「そ、園田海未と申します…。どうぞよろしくお願いします」

「南ことりです♪よろしくお願いしますね、神峰先輩♪」

 

「此方こそ編入したばかりで、この学院のことかよく解んねェから、よろしく頼むわ」

 

大なり小なり多少の緊張はあるものの、概ね警戒心は無く、“心”もニュートラルのようだ。

 

「そういや、こんなトコで何やってんだ?ダンス部とかだったら体育館とか講堂とかでやるんじゃないのか?」

 

固いアスファルトでは転んだりしたらどうしても危ない。神峰の質問は至極当然だが、彼女らは顔を見合わせ苦笑いを浮かべる。

 

そして、高坂が一歩神峰の前に立つ。

 

「ダンス部じゃないんです」

「え?」

 

やけに力強い言葉に、若干戸惑う神峰だが、それをよそに、高坂はとびきりの笑顔でこう答えた。

 

「私たち、“スクールアイドル”なんです!!」

 

キラキラとした満面の笑みで詰め寄られ、神峰はたじろぐ。

 

そして、それ以上に目を疑った。

 

高坂穂乃果の“心の形”に。

 

『この娘の心の形、“彼女自身”だ!彼女が笑えば心が笑い、彼女の心が悲しめば彼女自身が悲しむ!』

 

今まで神峰は多くの人と心を見てきた。そのどれもに共通する事は、心と体のバランスがある事だ。

身体を酷使すると、精神が警鐘を鳴らし、精神が限界に達すると、身体が拒否する。

そういった防波堤が誰にでも存在する。

 

だが、彼女には恐らくそれがない。

 

身体が心を後押しし、心が身体を引っ張り上げる。時にそれは大きな爆発力を生み出すだろう。

 

だが、本当に“取り返しの付かない出来事”が起こった時の事を考えると、冷や汗が止まらない。

 

神峰は、屈託の無い顔で笑う目の前の少女に、危機感を抱かずにはいられなかった。

 

「ちょっと穂乃果!」

『ハッ!?』

「ほえ?」

 

神峰は園田の怒声で我に帰る。高坂自身も、間の抜けた表情で園田の方へ振り返る。

 

「そんなに詰め寄ったら、神峰先輩に迷惑でしょ!!」

「うぅ〜、だって〜」

「だってもありません!」

「ま、まあまあ海未ちゃん、ほのかちゃんも悪気があった訳じゃないから落ち着いて」

 

園田に怒られ、不満げに唇を尖らせる高坂。そして、二人をフォローする南。

 

そんな三人を見て、先程までの考えが杞憂だったと、神峰は安心する。

 

『この二人がいれば大丈夫だろう…。園田さんが防波堤になり、南さんがクッションになれば、高坂さんもきっと、大丈夫だ』

 

と、そこで神峰は話の根本を思い出す。

 

「ところで、スクールアイドルってなんだ?」

 

「「「え?」」」

 

「え?」

 

夕暮れの屋上で、何とも情けない四つの声が木霊した。

 




次回からは穂乃果攻略編です。
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