カルデアの日常 〜がんばれぐた男!応援してるぞ!〜 作:音尾素
先に言っておきます、続きなど無い。
今日も今日とて、少年の戦いは終わらない。
第三の特異点が見つからない今も、第一、第二の特異点に敵は攻め込んでくる。
だからこそ、日々のパトロールは欠かせない。
とはいえ、現れる敵はワイバーンや竜牙兵程度で、彼が従えるサーヴァントの敵では無い。
そう、敵では無い、筈だった。
誰が予想出来ただろうか。
第一の特異点、オルレアン。
かつてジャンヌ・オルタと死闘を繰り広げた場でもあるが、強敵は彼女一人では無かった。
ジャンヌ・オルタによって召喚された、強大なサーヴァントたち。
本来のクラスに加え、バーサーカーのクラスを与えられた彼らは、少年たちを大いに苦戦させた。
バーサーク・アサシン、カーミラ。
バーサーク・ランサー、ヴラド三世。
バーサーク・セイバー、シュバリエ・デオン。
バーサーク・ライダー、マルタ。
そして、今は少年に召喚され、彼のサーヴァントとなった、ランスロット、サンソン。
いずれも劣らぬ強敵だったが、彼ら以外にも、少年を苦しめた敵がいた。
かの“竜殺し”ジークフリートの手を借りる事ができなければ、勝利を手にすることが出来たか、否か。
そう、“邪竜”ファヴニール。
あらゆる竜種の頂点に立つ、“真の竜種”。
「ガァァァアアァアアアァアアァアアアアア!!!!」
ファヴニールが吼える。
そう、ただ吼えただけにも関わらず、大地が、空気が震える。
オルレアンで対峙したときよりも、彼のサーヴァントたちも更に力を付けている筈なのに、ファヴニールの威圧感は些かも衰えていない。
「...............強いな」
自然と口から言葉が零れた。
「下がれ、マスター。あいつは本気で相手をしなければ死ぬぞ」
「aaaaa...............!!!!」
「難関を乗り越えてこそアイドル、ってことかしらね?」
オルタに油断は無く、ランスロットは警戒を怠らず、エリザは戦意を漲らせている。
だが正直に言えば、少々分が悪いと言わざるを得ない。
前回の戦いは、ギリギリの所で何とか勝ちを拾い上げたが、それはジークフリートの力に寄る所が大きい。
彼の宝具、“幻想大剣・天魔失墜《バルムンク》”の一撃を以って打ち倒した訳だが、今回はそうも行かない。
“幻想大剣・天魔失墜”は伝承に於いてファヴニールを打ち滅ぼしたとされる剣であり、即ち強力な竜殺しの属性を持つ剣と言う事であり、当然ながら、その伝承で“幻想大剣・天魔失墜”によって斃されたファヴニールに対して、これ以上ないほどに有効な宝具だ。
今回はその力を借りる事が出来ないのだ。
純粋な威力で言えば、オルタの宝具“約束された勝利の剣《エクスカリバー・モルガン》”も同等の威力を誇るが、果たして通用するだろうか?
「何を怯えているのだ、マスター」
「...........ビビってねえよ」
「手が震えているぞ」
「武者震いだよ」
「................フ、ならそういう事にしておいてやる」
オルタは冷静だ。
一部の隙も無く剣を構えながらも、少年に話しかけて、僅かに微笑んだ。
「さあ、構えろ、マスター。相手は伝説の竜だ。相手にとって不足は有るまい」
「そうね、あたしのステージを盛り上げるにはピッタリだわ」
エリザは自分のペースを崩さない。
どれだけ強大な敵の前に有っても、彼女は常にアイドルである事を忘れない。
「..........ったく、マイペースな連中だな」
今回ばかりは、そこに救われたかも知れない。
少年は笑みを浮かべる。
それは、捕食者を前にした諦めの笑みでは無く、犬歯を剥き出しにした、餌を前にした肉食動物の如き、獰猛な笑み。
「OK、なら俺から言える事は一つだけだ」
彼の周りには、囲む様に三騎のサーヴァントがいる。
セイバーのサーヴァント、“堕ちた騎士王”、アルトリア・ペンドラゴン。
バーサーカーのサーヴァント、“湖の騎士”、ランスロット。
ランサーのサーヴァント、“荒れ狂う歌姫”エリザベート・バートリー。
彼女たちは、正しい英霊では無かったかも知れない。
だが、彼女たちはその行いを以って、“生きた証”を残した。
その“証”はいつしか人々から崇められ、或いは恐れられた。
その幾多の想いによって、彼女たちは“英霊の座”へと上り詰めたのだ。
この瞬間に於いて、善悪など関係は無い。
重要なのは、彼女たちは“英霊”であり、戦う力を持っているという事、ただ一つ。
「いいかお前らーーーー勝て」
対する返答は、シンプルだった。
「ふん.......言われるまでも無い!!」
「aaaaa...........!!!」
「当然じゃない!!」
正しき“英雄”による、誰もが耳にする様な“英雄譚”では無い。
誰もが知り得る様な、心踊るお伽話では無い。
それでも、今ここに、誰にも知られずに、新たな“竜殺し”の伝説が始まろうとしている。
もう一度言おう、続きなど無い。
気が向いたら書くかも知れませんけどね。
あと、前回はコメントありがとうございました。
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