デート・ア・ライブ〜破壊の精霊〜   作:瑠夏

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第2話 告白

 

 

暫くして宵待月乃は泣き止んだ。異性に泣き顔を見られて恥ずかしかったのか顔を赤くしている。零夜は、声が出ない月乃に紙とペンを用意した。これなら宵待月乃との会話が成立するだろう。

 

紙とペンを見ていた月乃はやがてそれをとり、紙に何かを書き始める。

 

《先ほどはすみません。わたしは宵待月乃です。私も月乃でいいです》

と、紙に書かれた文字を零夜に見せた。

「いいや、別に気にしてない。それより、どうしてこんな所に来たんだ?」

零夜の質問を聞いた月乃は体をビクッと震わせた。それに気付いた零夜は気軽に踏み込んでいいものではないと悟り、追求しなかった。

 

しかし、宵待月乃はまた何かを紙に書き始めた。そして、零夜はその内容を見せてもらうと、

 

「………………は?」

と、間抜けな声を上げた。何故なら、月乃がここに来た理由が、

 

 

《自殺するため》だったからだ。

 

「え……?何で?自殺…?」

何故。月乃が自殺を考えたのか零夜には全く想像もつかなかった。しかし、次に書いてくれた、自殺を考えた理由を知って、怒りがふつふつと煮えくり返るのが感じられた。

 

「なんっ……だよ、それ!」

「ッ…………!」

月乃がまたも何かに怯えているのが目に入り、怒るより先に宵待月乃の自殺を止めるのが先だと思った零夜は即座に月乃へ向き直った。

 

 

月乃は何故自殺の理由を教えているのか自分でもわからなかった。その前の自分が嫌っていた男に抱きついて泣いたこと自体信じられなかった。しかし、泣き顔を見られたのは恥ずかしかったが、あまり悪い気はしていない自分がいるのに気付いた。この男は他の男とは違う。そう月乃は感じていた。

 

「なん……だよ、それ!」

「ッ…………!」

月乃が書いた自殺の経緯を見た零夜の顔が憎悪に染まる。月乃はこのことを知って零夜が前のファン見たいに裏切られるかもしれないと、目を強く瞑った。零夜は強く激怒している様子がうかがえる。やっぱりこの人も他のみんなと同じなんだ、と、思うと月乃は今度こそ全てを捨てようと決意した。しかし、零夜の次の言葉にその決意があっという間に崩れ去った。

 

「捏造のスキャンダルを載せたヤツもそう指示したヤツも殺したいほどウザいが、一番はそんな捏造を信じて、ファンをやめ、その上罵詈雑言を吐くだと?そいつらが一番ゆるせねぇ!!」

月乃は零夜も元ファンと同じように罵ると思っていた。しかし、彼は月乃に起こるのではなく、ファンに対して怒っていた。それが不思議に感じられ、月乃は紙に書いた。

 

《あなたは、本当の事だとは思わないんですか?》

月乃の見せた内容を見た零夜はさっきまでの怒った顔を引っ込めて、言った。

 

「へ?そんなもん思うわけないだろ?そうじゃないと、そんな辛い顔はしないと思うからな」

一拍置いて、

「それに、さっきもいっただろ?俺は宵待月乃の大ファンだ。どんなことがあったって、一生宵待月乃のファンはやめないさ!」

 

それを聞いた月乃はその場で崩れ、せっかく泣き止んだのにまた涙を流した。男の目の前で泣いているが、そんなの御構い無しに月乃は涙を流した。

 

 

 

 

零夜と月乃はあれから打ち解けた。自殺を考えようとしていた月乃は既にそんな考えを持っていない。アイドルの活動を完全に止め、今は今までに稼いだお金で生活していた。ちなみに零夜も自分の全財産をこの生活費に回した。

何故そのことを零夜が知っているのかというと、零夜は今、月乃と一緒に暮らしているからだ。

 

 

これは月乃からの提案だった。あの日以来、月乃が零夜の家を毎日訪れるようになった。だが、女の子が一人であんな荒地を訪れるのは危険だ。そう言ったところで、一緒に暮らさないか?と言う提案をされたのだ。零夜は当たり前だが断った。大ファンのアイドルと暮そうと言われひとり、興奮していたが、仲が良くなったからといって一緒に暮らすのはやっぱり危険だ。何が起こるかわからないからだ。零夜の理性が持たないかもしれない。そして何より、零夜は自分の正体を知っているため一緒にいる訳にはいかないことを知っている。さすがに理由は言えなかったが、やんわりと断ろうとしたら、《あなたが一緒にいてくれないなら死にます!》と、紙に書かれ、どうしようもなくなった。少し前まで本当に自殺をしようとしていた人に言われるとそんな馬鹿なと、無視することはできなかった。

 

『そうは言ってるけど実際は嬉しすぎてテンションだだ上がりじゃないの……』

『そりゃあ、あの宵待月乃と同棲だぞ?大ファンのアイドルと一緒に暮らせるんだぞ?テンション上がるに決まってんだろ!』

『零夜は私だけといればいいじゃない……、最近私とも構ってくれないし…………私だけじゃあ不満なの?』

『不満なわけないだろ?俺は百里といれて幸せだぜ?……それと、拗ねた百里、やっぱり可愛いわ』

『なっ………!?』

 

零夜はそこで百里との会話を強制的に終わらせ、隣を歩く月乃を見た。ここは少し前まで零夜が住んでいた荒地。アイドルとの同棲に浮かれていた零夜は携帯を荒地の家へ忘れてきたのを思い出し、取りに行っている途中なのだ。月乃はついてこなくても良かったが、今は零夜と一時も離れたくないらしく、ついてくることになった。

 

「お、あったあった」

テーブルにポツンと携帯が置いてあった。零夜はそれをポケットに入れて部屋を出ようとした。

 

刹那ーーーー

 

「ッ…………!?」

上空から殺気が感じられた。零夜は咄嗟に扉の近くにいる月乃を抱きかかえ家を出た。すると、

 

家の中に、ミサイルの雨が降り注いだ。

 

「くそッ!なんだよ」

「ーーーッ!」

零夜は空を見上げる。そこには何十人もの女性が空に浮かんでいた。女性たちは体に機械のようなものを着ている。そして、全員が銃やら、光で構成された剣を持っていた。

 

「隊長!精霊が現れました。それと、腕には人間の女の子を抱えています!」

「なっ……!人質にとられたの!?……くっ!卑怯者め!」

 

上空でなにやら話し合いをしている間に、零夜は月乃を少し離れた場所に避難させた。腕から降ろされた彼女の顔は抱き上げられたことによる羞恥と、いきなりミサイルを撃たれたことによる混乱で、複雑な顔をしていた。

 

「取り敢えずここに居て、ここに居たら安全だから。そして、あいつらを排除してくるから」

「ーーッ!……ッ!!」

何かを伝えようとしている月乃を零夜は振り切り、地を蹴り駆けた。

 

「精霊が女の子を離して戻ってきました!」

「わかったわ!これで心置きなく殺れるわね。全員、攻撃開始!」

 

零夜に向かってミサイル、銃弾を連発する。

しかし、

 

「下らんな。こんなものが俺に通用するわけがないだろう」

零夜は右手をミサイルや銃弾が飛んでくる方へ翳す。零夜の右手から黒いオーラが放たれた瞬間。

 

ドオオォォオオオン!!!!

 

零夜に向かっていたものが全てを黒い雷で撃ち落とした。

 

「嘘でしょ!?」

「今の一瞬に何があったのよ!」

「総員慌てるな!相手は精霊だ!こちらの常識なんて当たらないぞ!」

「そうよ!こいつらはばけもーーキヤァァァアアア!!」

「なに………!?」

いつの間にか背後に回り込んでいた零夜に女性は吹っ飛ばされた。

 

「さあ、次は誰が殺られたい?」

零夜は少し殺気を放つ。

「「「「「……ヒッ!」」」」」

ただそれだけで、実力差がわかったのか、全員が後ずさる。零夜はこのまま帰って欲しいと思っていたが、そういうわけにもいかず、女性たちは零夜を囲むようにして陣形を取る。

 

 

「隊長、あれを使いましょう」

「…………そうね。この精霊相手に出し惜しみなんてしてたらいつ殺されるかわからないものね」

 

隊長と呼ばれている女性は腰から武器を取り出した。それは刀の柄のようなもので、柄の先からは、超高エネルギーの光の剣が出現した。

 

「これで切られたら流石の精霊も死ぬでしょ?」

どこか勝ち誇ったような顔をして言う。

 

『馬鹿ね、あんなもの当たるわけないじゃないの』

頭に百里の声が届く。

「まったくだ。勝ち誇るのはそれを俺に当ててからにしなよ」

「舐めるな!」

零夜の挑発に乗り、切りかかってくる。

零夜はここら一帯を雷で埋め尽くす。

 

「うっ……!」

「か、体が……!」

 

零夜は雷の威力をさらに上げ、十数人の人間を気絶させた。

 

「ふぅ〜、終わった終わった〜」

『終わったのはいいけど、あの子にはどうやって説明するの?』

「……あ」

『………はぁー、本当にどこか抜けてるわね』

百里が呆れたようにため息をついた。

「どうしようか…………ッ!」

と、零夜が頭を抱えていると、背後に……正確には月乃がいたあたりから強い精霊の反応を感知した。

 

零夜は振り向き、その場所に目を向ける。

が、そのため、なんとか意識があった、隊長と呼ばれていた女性がブレードを投げているのに気づくのが遅れた。

 

即座に振り向くと目の前に超高エネルギーの光の剣が迫っているのが目に入った。

 

「しまっーー」

超高圧ブレードが零夜のお腹に刺さろうとした瞬間。

 

「ーーーーあ!!!」

そんな誰かの声とともに高圧ブレードが零夜の目の前で、何かに遮られたように止まっていた。

 

「なんだ………?これ……」

零夜がそんな疑問に囚われたとき、声の障壁を張った本人であろう者が現れた。

 

「大丈夫でしたか!お怪我はありませんかー?」

透き通るような綺麗な声。声だけで全てを魅了するかの如く、美しい声。

 

「誰かわ知らんが助かっ………た……え?」

零夜は助けてもらった相手にお礼を言おうと振り向いた。しかし、振り向いた先にいた人物に体が固まってしまう。

 

「よかったですぅ。零夜さんに何かあったらわたし……」

「……ああ、月乃のお陰で大丈夫だ。心配かけてすまんなーーーじゃなくて!なんで月乃……それに、声も」

そう、月乃は声を取り戻していた。それ以外にも、さっきまでの服と全く違う、アイドルのステージ衣装のようなものに変わっていた。

 

「これですかー。これはさっき神様がわたしにくれたものなんですぅ」

「……神様?」

「はいー。さっき、突然私の目の前に現れて、一生零夜さんと一緒にいたくないか?と聞かれたので、うんと頷いたらこの最高の声とあなたと一緒にいるだけの力をもらいましたぁ」

 

月乃の話に、零夜は愕然とした。

 

だって今の話が本当なら………

 

零夜がそこまで考えたところで百里が頭に囁く。

『ええ。この子、“私たち”と同じ精霊になっているわ』

………やっぱりか。

 

『そんな事より、早くあの超高圧ブレード、なんとかしないと危険よ?』

『それもそうだな』

 

零夜は一旦考えるのをやめ、今まさに零夜を貫こうとした剣は未だに何かに阻まれたように止まっているが、よく見ると徐々にだが、前に進んでいた。

 

「月乃、あとで話し合おう」

零夜はそう言って、徐々に迫り来る刃を見た。

 

『なあ、百里』

『何度も言わせないで、この力は私のものでもあり、あなたのものでもある。だから気にせずあなたの力を使いなさい』

『サンキュー』

 

零夜の右手から、眩しいほどの輝きを放つ。そして、精霊をも殺せるといわれていた、超高圧ブレードに触れる。

 

「ちょっ!ちょっと、零夜さん!?」

月乃はそれに触れた零夜をギョッとした顔で止めに入る。

 

だが、すぐに輝きが刃から柄の部分まで全てが覆われた。

 

すると、

 

バキン!

と、音を立てて“破壊”された。

 

「これでも、ダメ、なの……?」

それを見ていた女性は顔を青くしてそう呟いた。

 

「右手、大丈夫なんですかぁ?」

すぐさま月乃は零夜の右手を取り怪我がないか確認する。そして、怪我が一つもないのを確認すると、安堵のため息をはいた。

 

「もう、あまり無茶なことはしないでください!」

「あははは……。ごめん」

今まで紙を使って会話を成立させていたためか、突然饒舌に話す月乃に、零夜は苦笑する。

「私のだーりんの体に傷がついたらいけないじゃないですかぁ」

「ははは。この程度じゃあ、俺に傷はーーーってだーりん!?」

零夜は月乃が言った言葉の中におかしな点に気づき、聞き返した。自分の空耳だと思いたい。零夜はそう思った。

 

「はい!あなたは私のだーりんです!」

そう言いながら、月乃は身を寄せる。今更だが、月乃は胸が他の人より大きい。そのため、身を寄せたとき、月乃の豊かなバストがむぎゅうと押し付けられた。

 

「ちょ……っ」

零夜は女性に対しての免疫がない。この日まで、会った女性が全員、零夜の命を狙う者ばかりだったからだ。

 

「うふふ、だーりんになら、胸を触られても平気ですよ?だってだーりんは特別ですからー。だーりんは自殺を考えるまで追い詰められた私を救ってくれました。どんなことがあろうと私のファンであり続けるって言ってくれましたぁ。あの言葉に私がどれほど救われたと思いますかぁ?」

「……………」

零夜は何も言わず、月乃の声に耳を傾け続けた。

「あの言葉はーー本当ですよね?」

「ああ、もちろんだ」

零夜は月乃の目を、ジッと見つめ、断言する。

 

それを聞いた月乃は零夜の顔を見つめながら屈託のない笑みを浮かべた。

 

月乃はその場でつま先立ちをし、零夜にちゅっと口づけをした。

 

「……っ!?」

突然のことに目を白黒させてしまう。が、月乃はがっしりと零夜の身体に抱きついたまま唇を離そうとしなかった。

 

「んく……」

「……んっ」

初めは目を白黒させるだけだったが、零夜も月乃の身体をしっかりと抱きしめ、自分の唇を月乃の唇に重ねる。

 

 

暫くの時間、キスをしていた二人はゆっくりと離れる。零夜は月乃と見つめ合う。月乃の頬は赤く染まっていた。零夜も同じくらい赤くなっているだろう。

 

「……だーりん。順番が逆になっちゃったんですけどー、私……、だーりんが大好きです。永遠に一緒にいたいですぅ!」

勇気を振り絞った告白。

 

「……ああ、俺もつきのーーー」

零夜が告白の返事を紡ごうとした瞬間。宵待月乃はこの場所から一瞬にして消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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