ダンジョンでスタイリッシュさを求めるのは間違っているだろうか   作:宇佐木時麻

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(まあどうせ暫く投稿してなかったしバレないだろう……)


第二章
遭遇 -encounter-


 ダンジョン十七階層。『中層』と呼ばれる冒険者にとって新人(ルーキー)強者(ベテラン)の一つの境目とされている階層で、バージルは独りで黙々と歩みを進めていた。

 四方を一定の距離で岩に囲われた道は洞窟のようで、光源の乏しい道は冒険者でなければ足下に躓きまともに進むことも出来ないだろう。しかしそのような不安定な足場でもバージルの歩みはいつものように力強く、蒼いコートの上に羽織っている擦り切れた灰色の外套のフードから覗く双眼は蒼白く闇を射抜いていた。

 コツコツとバージルの足音だけが洞窟状の通路に響く。だがふと、バージルの歩みが止まった。それと同時に聞こえてきたのは、彼の足音以外の音。

 

『フゥー、フゥー……!』

 

 まるで獣のような鼻息。否、それは正真正銘獣であった。

 正面の通路の逸れ道。枝分かれした通路から巨大な手の平が曲道の壁を掴み、ゆっくりとその姿を顕にする。

 現れたのはバージルの二倍近い巨体の怪物。筋骨隆々の体格だが、その貌は人間とはかけ離れていた。その面はまさに虎、人と虎が合体したようなモンスター、『ライガーファング』は唸り声を上げながらバージルと対峙した。

 

「………」

 

 正面から鼻息を荒げて対峙するライガーファングに対し、バージルはただじっとモンスターを見詰めながら静止する。もしこの光景を彼の知り合いが見たならば思わず首を傾げただろう。

 バージル・クラネルはLv.6だ。本来ならば中層で出てくるモンスターなど歯牙にもかけず殲滅でき、普段のバージルならばわざわざ敵の前で静止するなど在り得ない。そして何より同じファミリアの仲間が見て驚くとすれば、今のバージルの気配は信じられないほどに希薄な事だろう。

 普段彼が発している強者の覇気が、微塵も感じられない。まるでそこいらにいる冒険者と同類だ。ライガーファングがバージルの前に現れたのも、その覇気を感じなかった為かもしれない。

 

『オオオオオッ!』

 

 対峙しても微動だにしないバージルを見て、痺れを切らしたライガーファングが突進する。その巨体を駆使した突撃はそれだけでも立派な武器だ。

 地面を踏み砕く勢いで肉薄するライガーファングに対し、それでもバージルは静の姿勢を崩さない。距離は次第に狭まっていき、振り上げられた拳が踏み込みと同時に渾身の勢いで振り下ろされる。

 迫る巨大な拳。睥睨した双眸でそれを見つめ、顔面に激突する寸前でバージルは灰色の外套から籠手付きの右腕を引き抜き、肉薄する拳を受け止めた。

 刹那、激しい衝撃音が洞窟状の通路に木霊する。轟音に相応しい衝撃が彼等の間を伝達し、衝撃で灰色の外套が宙に舞う。衝撃は突風のように通り過ぎると、辺りに静寂が戻った。

 微動だにしない両者。やがて灰色の外套が彼の上に被さり―――ゆっくりと、ライガーファングは仰向けに倒れていった。

 殴ったのはライガーファングで在ったにも関わらず、倒れたのはバージルではなくライガーファング。その矛盾を言及するように倒れたモンスターはどういう訳か白目を向き舌をだらしなく伸ばしながら絶命していた。そして何より奇妙なのが、殴り付けたモンスターの右腕。それは骨格から歪み、まるで内部から弾けたように骨が内側から突き出ていた。

 バージルは被さった外套を羽織り直すと、ふとライガーファングの一撃を受け止めた右腕を見つめた。獣の爪牙を連想させる籠手に覆われた腕には、微かだが衝撃が残っていた。

 

「……愚かな」

 

 その呟きは、誰に向けられたものだったのか。衝撃を掻き消すように強く拳を握り締めると、灰色のフードを眼深に被り直し再び歩み出す。その途中、前方で死に絶え横たわるライガーファングの死体を一瞥し、その心中の怒りを隠し切れないように魔石を踏み潰した。

 モンスターの中枢である魔石を砕かれ塵も残さず灰と化すその末路を見るまでもなく、バージルはただひたすら前へと進み続ける。その胸に抱く衝動は、彼以外に分かるはずもなかった。

 

(うおおおおおおロイヤルガードブロック全然上手く出来ねええええええええええええッ!! タイミングが少しズレてダメージが僅かに残っちまう! こんなんじゃ全然ダメだ、もっとパーフェクトに! そしてスタイリッシュにッ!! やれるできる気持ちの問題だ今こそ限界を超える時! ネバーギブアップッッッ!!)

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 ―――四〇〇〇万ヴァリス。

 それが先日の『怪物祭(モンスターフィリア)』の際に渡された代剣を壊してしまいアイズが弁償することになった借金の金額である。

 四○○○万ヴァリスもあれば万能薬であるエリクサーが八〇本も買えてしまう金額。もっとも、代剣にも関わらず無茶をやらかして壊してしまったので非はアイズの方にあるが。

 そのため借金返済のためにダンジョンに潜ることにしたアイズだったが、話を訊いたティオナの誘いで他にもティオネ、レフィーヤ、リヴェリア、フィンも同行する事となった。

 準備を終え、アイズ達御一行はダンジョンに潜ったのだったが、

 

「もぉ~~っ! どうして一匹もモンスターが現れないのさ――!!」

 

 気付けば、ダンジョンの中層である十七階層にアイズ達はモンスターと一度も遭遇することなく辿り着いてしまっていた。

 せっかく二代目大双刃の切れ味を確かめたかったのに~と、以前遠征の際にモンスターによって溶かされた大双刃の新品を不満気に振り回しながら、ティオナは頬を膨らませて文句を口にする。

 

「文句言ってるんじゃないわよ。どうせ楽できるなら越したことはないじゃない」

「で、でもアイズさんの借金返済のためにも魔石を集めないといけませんし……」

「どうせこんな中層で集めても大した額にはならないわよ。……って団長? どうかしましたか?」

「いや、ちょっとね」

 

 ブーブーと不貞腐れるティオナを慰めるアイズ達からフィンは一人離れて膝を着き地面を掬う。目を細めて注意深く観察すると、そこには地面の瓦礫と同化してしまっていた砕かれて価値の無くなった魔石(・・・・・・・・・・・・・・)が転がっていた。

 

「リヴェリア。ちょっとこれを見てくれ」

「何? ……なるほど、そういう事か」

 

 まるで中心を細剣で貫かれたような壊れ方をしている魔石を見て、リヴェリアはやれやれと嘆息し、それにつられるようにフィンも苦笑いを浮かべた。

 魔石はモンスターにとって生命そのものと言っても過言ではない。心臓や頭部を破壊されても生きているモンスターは存在するが、どんなモンスターでも魔石を破壊されてしまえば死は免れない。

 だからこそお金よりも命を選んだ冒険者がモンスターを斃す際に破壊した魔石の可能性もあったが、彼らはそうではないと確信していた。

 何故なら、身内にいるからだ。魔石を回収せず奥地へ向かう彼にそれは他の冒険者達へのルール違反になると注意したところ、『ならば回収しても意味がなければ問題あるまい』と告げて魔石を粉砕した時と同じ壊れ方をしているのだから、見間違えるはずがない。

 

「相変わらず誰にも言わずに一人で、か」

「ハハハ、でもこれで僕等がモンスターに遭わなかった理由が分かった訳だ。さて、と。それじゃあ皆、ちょっと急ぐよ!」

 

 声を掛けて、フィンとリヴェリアが少々駆け足で走り出す。それに釣られて、会話を続けていたアイズ達が慌てて追うように走り出す。

 

「ちょっとフィンー! いきなりどうしたのさーッ!」

「行けば分かるよ。もしかしたら―――」

 

 走りながら顔だけ振り返り浮かべる笑みは、少年のようで、されど悪戯好きな大人のようで。思わず見惚れてしまう魅惑の笑みでウインクをしながら言った。

 

「僕等以外にも、同行者が一人増えるかもしれないからね」

 

 その言葉に互いに見つめ合って首を傾げるアイズとティオナ。そしてフィンのウインクを見て悶絶し鼻血()を迸らせて倒れるティオネを慌てて看病するレフィーヤ。中々に混沌(カオス)な光景が広がっていた。

 そして駆け足で走り出して暫くすると、ふと第一級冒険者としての強化された聴覚が音を拾う。戦闘の開始を告げるようなモンスターの怒号に、衝突し合う金属音。その直後、モンスターの咆哮が止む。

 それは即ち、戦闘が一瞬の間に終了しているという事を示す。中層のモンスターを瞬殺できるという事は少なくとも第二級冒険者、もしくはアイズ達同様の第一級冒険者だという事に他ならない。

 そして何より、彼らはその気配に覚えがあった。

 

「……!」

「あっ、待ってよアイズ――!」

 

 いち早くその気配に気づいたアイズが集団からひと足先に抜け出し、後を追う形でティオナも集団から抜ける。

 通路の曲がり角。全速力で駆け抜け曲がり開けた視界で、その後ろ姿を捉えるのと同時にカチンッ、と鯉口が鳴りモンスターが塵と化す。

 灰色の外套の下から覗かせる蒼のコートと、腰に下げられた刀の鞘。その見慣れた服装を眼にして、ティオナはその人物の名前を叫んだ。

 

「あァ――!! バージルだぁ――!?」

「………」

 

 後方から聞こえてきた叫び声に、騒々しいと普段より二割増しで皺の寄った眉間で灰色の外套を羽織った人物――バージルは振り返る。

 

「ねえねえバージルはいつから潜ってたのさー! 行くならあたし等も誘ってくれればいいのにもーうッ!!」

 

 突撃と言わんばかりの速度で突っ込んでくるティオナに対し、バージルはスッと右腕を持ち上げ、

 

「―――黙れ」

「て痛たたたた!? ちょっ、バージル締まってる!? このままだとあたしの頭潰れちゃうからああああ!?」

「………」

「無視ッ!?」

 

 突っ込んできた際に迷うことなくバージルはティオナの頭を掴み持ち上げる。それは俗にアイアンクローと呼ばれる技であったが、第一級冒険者であるバージルが行えばそれはもはや殺人級の威力を誇るのだった。

 激痛に悶えるティオナを脇に、追い付いたアイズが口を開く。

 

「バージルはいつから潜ってたの?」

 

 不満気に言う彼女の瞳は、暗に何故言ってくれなかったのかと非難しているが、バージルは気にも止めず否定する。

 

「何故貴様に言わねばならん」

「………」

「あのー二人共ー? できれば降ろして欲しいなー、なんてー……」

 

 暫くの間無言で見つめ合う二人。片や感情を映さない無感の蒼銀の瞳、片や僅かに細められ非難の色を映した金色の瞳。同じ無表情でありながら、その瞳はどこまでも違っていた。

 

「……ふん」

「あイタッ!?」

 

 どれほど見つめ合っていたのか。ふとバージルは握力を緩め、握り締められて空中にぶら下がっていたティオナは重力に伴い受け身を取る間もなく尻を地面へ激突させる。

 自身の尻を抑えて痛がるティオナを無視してバージルは視線を切ると、短く告げる。

 

「早朝からだ。用件はそれだけか? ならば俺は先を急ぐ」

「おっと、ちょっと待ってくれないかい、バージル」

 

 と、脚を進めようとしたところ、今度は後ろから追い掛けて来ていたフィン達が合流し再び呼び止められる。苛立ちが更に上がったのか普段より五割増しに皺が寄る眉間のまま睨むバージルに対しフィンはまあまあと落ち着かせながら、

 

「どうせなら一緒に行かないかい? どうせ目的地は一緒なんだ、なら効率がいい方がいいだろう?」

「………」

 

 普通ならば仲間なのだから一緒に行動しようなどといった言い方で勧誘するのだが、バージルに関してはそれが当て嵌まらない。なのでフィンはバージルの好む言い方で誘い、それに対しバージルは思案するようにフィンから視線を外す。

 今この時、バージルの中ではメリットとデメリットの計算が行われているのだろう。暫くするとバージルはフィン達の方へ振り返り、

 

「いいだろう、貴様の案に乗ってやる。しかし―――」

 

 僅かに言葉を区切った刹那。

 

 ギュルンッ!! と虚空を螺子貫いて幻影剣が疾風迅雷の如き速度で飛翔し、レフィーヤの頬を掠めて飛んでいった。

 

 突然の事態に、悲鳴を上げる間もなく腰が抜けて尻もちを着くレフィーヤと、同時に金切り声の断末魔が彼女の背後の壁から響き渡る。レフィーヤが恐る恐る振り返ると、そこには壁から生まれた直後に魔石を砕かれて灰になろうとしているモンスターの死体が転がっていた。

 

「足手纏いになるのなら、斬り捨てるまでだ」

 

 謝罪の言葉もなく、バージルは正面に向き直ると先ほどまでと同様の速さで進みだす。それに遅れぬよう一度レフィーヤの安否を確認したあとフィン達は先を行く彼の後を追う。一方、腰の抜けたレフィーヤにアイズとリヴェリアが近寄っていった。

 

「まったく、相変わらず唐突な奴だ。レフィーヤ、怪我はないか?」

「……大丈夫?」

「あっ、はい! 私なら大丈夫ですリヴェリア様、アイズさん!」

 

 憧れの二人に心配され慌てて立ち上がるレフィーヤ。一応念を入れてリヴェリアはレフィーヤの身体を診断するが、異常無し。

 ふと、リヴェリアは顔を上げて壁を見つめる。そこには先ほど出現したモンスターの亡骸が存在し、砕かれた魔石を見て思わず呟いた。

 

「ふむ……また幻影剣の練成速度が増していたな。こと魔力操作に関しては私以上かもしれんな」

「え………?」

 

 リヴェリアの呟きに思わず首を傾げるアイズとレフィーヤ。その呟きの内容は信じられないものだったからだ。

 リヴェリアはオラリオ最強と言っても過言ではない魔導士だ。卓越した技術と洗練された魔力操作の極みは彼女から学んできたアイズ達だからこそ理解している。

 そのリヴェリア、以上の魔力操作?

 

「あ、あの、リヴェリア様!」

「ん? どうしたレフィーヤ」

「バージルさんの魔法って確か、【悪魔の引鉄(デビル・トリガー)】でしたよね? それなのにリヴェリア様以上の魔力操作を行うなんて……」

「……ふむ? そうか、おまえ達はそう思っているのか」

 

 レフィーヤの言葉にリヴェリアはふと思案するように顎に指を置くと、

 

「そうだな、おまえ達の疑問を解決するためにもここで少し“講義”を行うとしよう」

「……うぅっ」

 

 リヴェリアの言葉に、一瞬でアイズの表情に苦悶が浮かぶ。思い返されるは過去のトラウマ。二度と受けたくないスパルタな講義に感情を抑えることが出来なかった。

 そんな嫌そうな貌をするなと、リヴェリアはアイズの頭部を軽くチョップする。聞く姿勢になったのを見計らって、リヴェリアは口を開いた。

 

「そうだな、おまえ達はバージルの【魔力放出(ダークスレイヤー)】に関してどれほど理解している?」

「えっと、確かバージルさんのスキルですよね? 魔力を自在に操作できるとしか……」

「魔力の剣を作ったりしてる……?」

「まあそんなところか。確かに【魔力放出(ダークスレイヤー)】はスキルの類に属しているが、正式に言うならばあれはアイズの【エアリエル】と同じ付与魔法(エンチャント)と同類だ。無属性の無詠唱のな」

 

 えっ、とアイズとレフィーヤの口から同時に間抜けな声が零れる。

 もしリヴェリアの言う事が真実だとすれば、バージルは今までずっと魔法を使用してきた事になる。しかも無詠唱ともなればアイズの【テンペスト】以上のものだ。

 

「もっとも、使い勝手はアイズの方が断トツだがな。よくスキルであそこまで使いこなしていると思うよ」

「え? それはどういう……」

「アイズ、お前は【テンペスト】を何かに付与させることは出来るか?」

「ううん、出来ないけど」

 

 アイズの魔法である【テンペスト】は、風属性を身体に付与させる魔法である。故に身体を覆ったり足場にすること、刀身に纏わせて斬撃を伸ばすことは可能だが、肉体から離れれば効力を失うのが当然だった。

 

「なら、お前はバージルの幻影剣のように風を圧縮させて射出することは出来るか?」

「……ッ!?」

 

 そう言われて、ようやく気づく。もしバージルの【魔力放出(ダークスレイヤー)】がアイズの【テンペスト】と同じ付与魔法ならば、彼が普段放っている魔力で練成された幻影剣が如何なモノなのかようやく理解した。

 

「あれは一種の魔法のようなものだ。まったく、魔法を自ら生み出すなど私でも出来んというのに。それに、ただ倒すのならば普通に近づいた方が何倍も効率がいいだろうが」

「………(こくん)」

 

 リヴェリアの溜息交じりの呟きにアイズは同意する。似た付与の魔法を持つアイズだからこそ、バージルが普段どれほど精神力を酷使しているか理解できた。

 バージルが普段している事は、言うなれば右手と左手でそれぞれ別の事をしつつ、頭の中で更に別の動作を右手左手に別れて行っているという事に近い。とてもではないが精神力が持たない。

 

「だというのに、アイツは更に厄介な事をしでかしているからな……」

「ま、まだあるんですかァッ!?」

 

 ただでさえお腹一杯だというのにと、悲鳴に近い叫び声をあげるレフィーヤ。まったくだと同意するように頷くが、リヴェリアは続きを告げる。

 

「レフィーヤ。お前はあいつが幻影剣を最高何本展開していたか覚えているか?」

「えっと、たしか―――……って、ま、待って下さい。確か、前に訓練所でアイズさん達と試合したとき最後、数十本以上も同時に展開していて……!?」

 

 レフィーヤの顔色が一気に蒼褪める。リヴェリアが言いたい事を理解したからだ。もしリヴェリアの言う通りだとすれば――

 

「バージルは、数十個の魔法を同時に展開できるという事になるな」

「無理ですッ!!」

 

 リヴェリアの声を遮るような怒号。その声音はもはや、そうであって欲しいという懇願に近かった。なまじ魔導士であるが故に理解できる分、レフィーヤにとってそれは悪夢以外の何物でもなかった。

 

「そ、そんなの出来るはずがありません! 『並行詠唱』だとか、そう言った次元じゃありません! そんな、そんなの……!?」

 

 ―――人間の思考では、ない。

 

「……まあ、全て私の憶測に過ぎない。もしかすれば感覚でやっているのかもしれんし、或いは予想以上に簡単な事かもしれんしな。さて、我々も急ぐとしよう」

「そ、そうですよね、あははは……」

「………」

 

 思わず不安な空気が流れ、その空気を切り替えるようにリヴェリアは咳払いをし、フィンやバージル達の後を追う。

 ふと、前方を歩いていたリヴェリアが無意識の内にポツリと零した。

 

「……もし、そんな事が行えるとすれば、超越した天才か―――」

 

 ―――生粋の狂人だろう。

 


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