インフィニット・ストラトス~やさしい世界で《さいこう》目指す~ 作:星屑英雄
それでは、良ければ見て言ってください。
~side央樹~
「ヤバイ、ヤバス、ヤバイッス!!」
俺は、IS学園の廊下を全力疾走していた。なぜ、俺が全力疾走をしているのか?
それは――――
一言で言っちゃうと遅刻だ。
朝、早めに起きたので、アリーナの調整室でISのトレーニングと軽いメンテナンスをしていたのが駄目だった。自分でできる軽いメンテナンスなので油断していたら、思ったより時間がかかってしまった。
「やばい、やばい、具体的に何がやばいって? ああ!! それって、出席簿?」
正確には、織斑先生の出席簿から繰り出される脳天への破壊の一撃だ。主に脳細胞的に。脳細胞がトップデッドだぜ!! ……冗談抜きで、あれはマジでヤバイ……ヤバイとしか言えないヤバイ。ヤーババイ、ヤーババイ、ヤ―バーバーヤイヤイヤイ……
「(俺の言い訳を)聞いて!! 織斑せんせぇぇぇぇ!!」
「きゃっ!!」
「うおっ!!」
しまった!! 誰もいないと思い、大声で叫びながら走っていたせいで角を曲がって来ていた女子生徒とぶつかってしまった。なんとかスピードを緩める事には成功したが、ぶつかり、小さく悲鳴を上げた女子生徒は尻餅をついてしまった。
すぐに俺は駆け寄り、手を差し出す。
「ご、ごめん!! 急いでて、見えてなかった!!」
「…い、いえ、私もボーっとしてて、ごめんなさい」
「あ、そうだ、怪我はないですか?」
言って一度よくその女子生徒の姿を見た。
白いIS学園の学生服、水色の綺麗な髪、赤い瞳、メガネ……うん、美少女だ。そして、その子が持っていた物に俺は釘づけになる。
「そ、それはッ……!?」
「……?」
「ドラゴンフルーツエ○ジーロックシードッ!!!!!!!」
「えっ!?」
間違いない、仮面ライダー鎧武の劇場版で登場し、プレ○ン限定で販売されたロックシード……っく、予約していなかったことが悔やまれる……
俺はその女子生徒に聞いてみる。
「あの、もしかして貴女は仮面ライダーファンですか?」
「……はい?」
「やっぱり!! 俺もそうなんすよ!!」
「きゃっ!?」
「おっと」
俺は思わずその少女の手を握ってしまう。小さく悲鳴を上げたのを聞いて、我に返りパッと手を放した。よく聞いたら、疑問形だったのでいきなりの事に驚いていただけだろう。
やってしまった……と思いながら、謝りつつ自己紹介をする。
「あっ、ごめん。俺は一年一組の陣野央樹といいます!! よろしく!!」
「え? ……えっと……更識簪」
「そっか、更識さんか!!」
そうか、更識……ん? なんだか聞いたことがあるような……? そうだ、この子は確かISのヒロインの一人だ!! なーんだ、だから知ってたのか……
あれ? それだけじゃないな、俺はこの子とどこかで……
「ねぇ? 君、俺と何処かであった事ありませんか?」
「ッ!? ……う、ううんないと思う……」
なにか、ビクッ、と肩を揺らした気がしたが……まあ、どうやら俺の気のせいだったらしい。
「更識さん」
「……簪でいい、あまり、更識は好きじゃないから」
「そう、なら簪さん。もう一度聞くけど仮面ライダー好きなの?」
もう一度、今度はゆっくりと問いかけてみる。すると、戸惑いながらも、ゆっくりと首を縦に振ってくれる。
お、おお……やっと、やっと会えた……!!
「簪さん、突然だけど俺と友達になりませんか!?」
「っへ……?」
「俺さ、この学園で初めて話の合いそうな奴と会ったんだ!! だから、俺と友達になってくれ!!」
「……姉さんの差し金?」
先程までの困惑の表情とは違い、一瞬で冷めたような顔をした。
俺は本当に覚えがないので、首をひねるしかない。
「姉さん? 誰? 簪さん、姉がいるの?」
「……なんでもない」
「? それないらいいけど? あ、そうそうこの間の仮面ライダーさ……」
何でもないなら何でもないのだろう。俺は気にせず、簪さんに仮面ライダーの話題をふってみると、簪さんは面白いほど食いついてきた。
「あの話は……うん、あれは……」
「へー、こっちのこれは……」
「あっ、それにはそんな意味が……」
俺はそのまま簪さんと井戸端会議よろしく、話を始めた。
~side陽~
私こと立花陽は、あまりにも授業が始まっているというのに来ない央樹を探すため廊下を走っていた。織斑先生に探してくるように言われ、教室を出たのが十分前。手伝ってくれているメルアル姉妹とセシリアとは手分けして探そうということで先ほど別かれたのだが……結構簡単に見つけた、見つけてしまった。
「ならさ、今度俺の部屋に来いよ。仮面ライダーならDVDは揃ってるぜ?」
「本当? 行きたいな、龍騎の劇場版は昔借りたままだったからもう一度見たくて……」
「おう、あるぜ!! 来いよ! 俺の部屋は寮の10……」
茶色に近い黒の髪の天パの男が少女をナンパしている…
と、言うか央樹だった…
「何しとんじゃ、われぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「タジャドルっ!?!?」
助走をつけた跳び蹴りが央樹に炸裂した。央樹は変な声を上げながらぶっ飛んでいった。
……ふぅ、悪は去った……
満足して、跳び蹴りの体制から一回転し着地する。目の前にいたナンパされていた少女は目を丸くしていた。とりあえず少女の無事を確認する。
「あなた大丈夫?」
「は、はいぃぃ……」
ほ、なんとか無事みたいね…
「お、お前は俺を何だと思ってやがるんだ……」
「ナンパ男」
「ンナヅェダァ……」
何かナンパ男が言っているが無視だ、無視。
今は目の前の少女に謝る。
「ごめんなさいねぇ…ウチの子が…」
「息子っ!?」
「お前は俺のオカンか!?」
「私はオカンではない」
容赦のない、倒れているところに無言の腹蹴りが央樹を襲う。……やってるの私だけどネ。
「グハァ…ル…リ…」
「……あの、そろそろ許してあげてください」
見ているのがつらそうなので、腹蹴りを一旦止める。
央樹はヨロヨロと立ち上がると私に文句を言ってくる。
「酷いじゃないか!! いきなり蹴って!!」
「はぁ……ねぇ、央樹。今、何時だと思ってるの?」
「何時って、は!? 九時四十分すぎてる!?」
「で、私はここに何しに来たと思う?」
「……トイレ?」
「はっ倒すぞ、この≪ピー≫野郎!!」
「申し訳ございません(^U^)」
ふざけた野郎には仕置きが必要……無言のアイアンクローを喰らえ!!
私はゆっくりと、しかし確実に力を込めていく。メキメキと気持ちのいい音が頭からなっているが気にしてはだめだ。
「ぎゃあああああああ!!!! お前の細腕に何でこんな力がっ!? ヤバイって、頭がギシギシ逝ってるよォ!? マジでごめん、だから手を、手をォォォォォォォ!!!!」
「……あ、力加減が」
「ふごっ!! ガクッ……」
あ、死んだ。
~しばらくお待ちください~
「悪いな、簪。引き留めて……」
死の淵から甦って、央樹が少女に謝る。……頭は変形し、歪なまま。
「…ううん、別にいいよ。私も楽しかったから」
「そうか、んじゃ、また!」
少女は引き気味に早足で去っていった。
それを見送った央樹は私に頭を下げる。……やっぱり歪な頭だ。
「悪かったな、探しに来てくれたんだろ?」
「……うん、まあ、いいわよ別に。それに私も、ごめん」
「なんで謝るんだよ?」
「えっ……ゆ、歪んでるから……」
「ゑ?」
「はいっ」
そう言って、私は手鏡を渡す。
央樹はじっと自分の頭を見た後……
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?なんか手の形に頭が変形してるぅぅぅぅ!!!!」
「……大丈夫、すぐ戻してあげるから」
「え? 戻すってどうやって……頭に、陽の手を、乗せて、思いっ切りつかんでででで!?」
頭を掴み、更に力強く締め上げる。
数分後、なんと完全に元通りになった央樹の姿が!!
「元通りになったのは……人体の神秘ですな? 議長」
「はぁい……って、無茶し過ぎィ!?」
「ま、とにかく授業に急ごう?」
「急だな!?」
渋々と言った感じで、央樹はついてくるのだった。
~side央樹~
俺は教室に入って困惑した。
だって……
「俺は、俺は央樹が大好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一夏の魂(?)の叫びが聞こえたのだった。
どういう…ことだ……!?
一から説明しよう。俺たちはメルアル姉妹とセシリアと合流した時には、一時間目の授業終了の鐘が鳴ってしまった。三人……いや、陽を合わせて四人に全力で頭を下げつつ、一限目ブッチしちゃったし織斑先生が怖いなぁ、と思いながら教室に入った直後、このセリフが聞こえてきたのである。ちなみに今の発言で「一×央キタ――(゚∀゚)――!!」と言いながら、天空に鼻血のアークを描き倒れ伏した人が数名いた。
なので―――――――
「まるで意味が解らんぞ!?」
「……どういう状況?」
俺の頭の処理メーターが振り切るぜっ!! だったので、陽が冷静に状況確認をしようとしていた。
クラスメイトの、えーと、相川さん(だったかな?)が、教えてくれる。
聞いて理解した。なぜこんな状況になったのかを一言で言うと……
しかしそこではツインテールが大活躍をしていた!
この一言に尽きる。
そう、さっきから俺を射殺すように睨み付けてくる、小柄なツインテール少女がこの悲劇(?)を引き起こした張本人である。
今回のクラス代表戦について話している時に、この少女が来て俺と一夏の関係について問いだしたらしい。それが何の因果か、運命か。一夏は鈍感スキルで、話がこじれにこじれ、ややこしいことになりこの発言に至ったのだと言う。
……なぁにそれぇ?
とにかく、これ以上話をややこしくしないためにその話に入っていくことにした。
「あーもー、とりあえず二人とも落ち着いて……」
「これが落ち着いていられますかっ!! って、このホモ野郎!! よくも!! よくも、私の一夏を汚したわね!!」
「俺はお前のものじゃねえよ!?」
「そうだそうだ、一夏は私のものだ!!」
「箒さん!? ナニイッテルンディス!?」
「……一夏、お前何言った?」
まさか、ホモ野郎なんて言われることになろうとは……
それにしてもなんで俺に向かって「ホモ野郎!!」なんだよ!? この子の俺の評価はどうなっているんだ!! 多分、一夏の発言のせいだろうと予想はつくが。
俺は一夏に何を言ったかを聞いてみる。
「一夏、怒らないから正直に迅速に即座に言いなさい。何を言った?」
「えっ、俺はただ訓練したことと、兄のような人物だって言っただけだぜ?」
「ならこの子のホモ発言は何だ? それとさっきのお前の発言は?」
「えっ、聞かれていたのか? なんか、恥ずかしいな……」
「男の赤面とか誰得だよ。良いから話せ」
「えっと、コイツ
oh……orz
さっきの叫びは「俺は、俺は央樹が(仲間として)大好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」だったのかよ……紛らわしい言い方すんなよ!! 周りからの俺への視線を考えろ!!
ん?じゃあ……
「ホモ発言はどっから来た?」
「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」
「えー……」
ちらりと、ツインテールの方を見ると小声で何か言っていた。
「…だって、昨日……想い人がホモだなんて思いたくないし…」
なるほど―――大体わかった。
彼女は誤解している。恐らく昨日、ホモと誤解するようなところを見たんだ。例えば、グラウンドでの帰りとか。ならば、誤解を解いてやればいい。
「凰鈴音…だっけ? 君は勘違いしている。恐らく、昨日グラウンド帰りに見たことは誤解だ」
「……本当?」
「ああ、俺達はクラスの腐の付く方々の喜ぶような関係じゃないよ」
「よかったぁ……」
ホッと、胸を撫でおろす鈴音さん。こらそこ、撫でおろす胸ねえだろ、なんて言っちゃいけない。
クラスの皆さんは色々騒ぎ出す。
「よかった~、織斑君や央樹君がホモじゃなくて」
「うんうん」
「なんだ、ホモはいねぇのか……てっきり私はクラスの一大事かと……全くいいクラスだった!! ガクッ」
「じょ、城之内ぃ!! え、嘘だろ……こいつ息してないぜ!?」
「そんなにショックだったのね……次回、城之内死す!!」
「死んじゃダメでしょ……」
母さん、今日もクラスは混沌としています。
と、思っているとチャイムが鳴り休み時間が終わった。
「と、とにかく、ホモ野郎は勘違いだったけど、対抗戦は負けないわ!! ば、バイバイキーン」
そう言って、走って自分のクラスに帰る鈴音さん。バイバイキンって……
「あいつはバイキンマンか何かなのか、一夏?」
「いや?知ら管」
「お前ら授業を始める、さっさと席につけ。……あと、陣野は後で職員室に来い。みっちり絞ってやる」
額に青筋を立てた織斑先生はそう言って教壇に立つ。あ、俺\(^o^)/オワタ。
授業が終わり、放課後、罰として書類の整理を手伝わされた俺は寮に向かって歩いていた。
「ふぃ~、やっと解放された…っと?」
俺の部屋のドアの前で、一人の少女―――簪が立っている。
簪は深呼吸してから、ドアを叩くようなふりをし―――やっぱりやめる。もう一度深呼吸して、ドアを―――叩かない。そして、何度か挑戦し諦めるを繰り返す。あたふたあたふたしている簪があまりに可愛かったのでしばらく見つめていると、何度目かの挑戦の後、肩を落とし帰っていこうとするので、出ていくことにする。
「あれ? 簪? 来てくれたのか? いやぁ~嬉しいなぁ」
私は何も存じ上げておりません、たった今来ました。という風に装いながら話しかける。
「あ、う、うん……」
「ささ、入って入って」
肩を押しながら部屋に入る。まだ、同室の三人は帰ってきていないようで、好都合だ。
「え~、と、龍騎のDVDはこれだな。あ、そこのベッドにでも座ってて、あと飲み物とか何がいいかな?」
「え、え、あ、コーラで」
「りょーかい!!」
ササッと、コーラとお菓子を持ち簪のところに戻る。お菓子と飲み物を簪に預け、俺はDVDをセットする。
「んじゃ、始めるぜ。あ、あとお菓子勝手につまんでていいぜ」
再生ボタンを押し、簪が座るベッドの近くにあった椅子に腰を下ろし映画を視聴する。映画の要所々々でお互いに声を漏らし、クライマックスでお互いのテンションのボルテージが最高潮になった。
と、まあ、そんなこんなで映画視聴が終わり、そのまま仮面ライダーやらウルトラマンやら特撮、アニメの話をした。話の途中で俺は気になったことを聞いてみた。
「そうそう、朝は本当にごめんな?」
「大丈夫、一限目は遅れるかもって先生に許可を取っていたから……。央樹こそ大丈夫だった?」
「あ、あはははは……」
「……駄目だったんだ」
「ま、まあな。と、そう言えば、簪さ、なんで朝あそこに居たんだ?」
「アリーナに居たこと?」
「そう、一限目遅れるって申請してたんだろ? だから気になってさ」
簪は、少し悩むようなそぶりを見せたが、理由を教えてくれた。
いわく、自分は日本の代表候補生なのだが、専用機の開発をする会社が一夏の白式と同じ会社だったそうだ。なので、白式を作るために人員が回されてしまい、完成が遅れるとのことだったので自分が預かって完成させようとしているところだったらしい。
「ほえ~、自分で完成させようとするなんてすごいな!!」
「ううん、全く進んで無いの。……やっぱり私には無理だったのかな……」
そう言った、簪の目は悲しみの色が映っていた。そして、目を伏せてしまう。
……なんだろうか、その姿を見た俺はほっとけなかった。しかし、ISのこととなると俺に出来る事は少ないだろう。なので、俺はもっと詳しく事情を聴くことにした。
「なぁ、どうしてISを自分で完成させようと思ったんだ? 待っていたら遅くなるけどちゃんとしたものが送られてくるんだろう?」
いくら初の男性IS操縦者のISの製作とはいえ、会社なのだ。その会社が依頼された業務をほっぽりだすという事はあり得ない。と言うか、あっちゃいけないだろう。なので、待ってさえいれば完成されたものが来るはずだ。
なのに、簪は自分で組もうとしている。確かに、自分で組んだ方が自分にあった者が出来ると言うメリットもある。しかし、本来IS開発とは大の大人が何人も集まって出来上がるものだ。一人で組み立てるには荷が重いと思う。
あの束でさえ、うちの会社で何人もの人と共にISを開発しているのだ。……まあ、別にあいつは一人でも超高性能のができそうだが……。
「それは……姉がISを一人で組み立てたから……」
「なるほど、姉への対抗心か……。なるほど、なあ……」
思い出したことだが、簪には姉がいて、確か……更識たてなっしー……だったか? いや楯無だったな。そうだ、そうだ、確か原作では簪は姉にコンプレックスを抱いていたのだった。しかし、当の姉本人は一人ではなく、友達に手伝ってもらっていたはずだ。
よし、ここは……
「あのさ、よかったらだけど俺も手伝っていいか?」
「え?」
「俺はISのことについてはあんまり役に立たないけど、一応一通りの知識は持ってる。それに、こう見えて俺、『ダディ』の社長の息子なんだ」
「えっ!? あの『ダディ』の!?」
「うん、まあな」
「それなら……っ!」
簪は一瞬、俺の提案に乗りかけたが、姉への対抗心か首を縦には振ってくれない。
ならば、と俺は攻め方を変えてみることにした。
「ほんとに君の姉は一人でISを組んでたのか?」
「……どういう意味?」
「いやな、ISを組み立てるってかなり大変なことなんだよな、それこそ会社みたいなとこで何人かの大人たちが頭ひねって作ってるくらい」
「そんなことは知ってる……」
「で、だ。どんな天才でも一人でやるには相当時間がかかる。ちゃんとした物を作るには付きっきりにならなくちゃいけない位に」
ま、束は自分で補助ツールを作ってやってるから、かなり早く組み上がるけど。
とにかく、一人で組むには膨大な時間がかかることは間違いない。
「君の姉は、そんなに暇人なのか? 学生なんだろ?」
「うん、今2年生。ISは私と同じ1年のころに組んだって聞いてる」
「聞いてみればいいと思うぞ? 姉が無理なら、姉の近くにいる人とか」
「……わかった。聞いてみる」
すぐに思い当たったみたいで、タブレットを取り出しメールを送る。数分後、メールが返って来た。
俺はチラッと、画面を盗み見る。……マナー違反だが、今回は見逃してほしい。何々……。
『おじょーさまのIS? お姉ちゃん達や先輩みんなに手伝ってもらって完成させたみたいだよ~。かんちゃんもIS作ってるみたいだし、私も手伝うから言ってね~ 本音』
本音……のほほんさんか、そういえば付き人だったな。俺の記憶もあまりあてにならなくなってる。そりゃ、色々原作と違う事もあるし、記憶が劣化してるのもあるからなぁ。
「お姉ちゃん、一人で組んだんじゃなかったんだ……」
「なっ? 言ったろ? だからさ、一人で抱え込まなくたっていいんだぜ? 誰かが誰かを助ける。そうやって、世界は回ってるんだ。だから、お前も誰かを助けてあげなさい。……俺の父親の言葉さ」
「ッ!!」
俺がそう言った瞬間、簪の目から涙があふれ出した。そして、そのままその場に泣き崩れてしまった。
え? えー? 俺なんか悪いこと言っちゃった? もしかしなくても、余計だったか……。
俺は、目の前で泣く簪を前にあたふたすることしかできなかった。
あっ、とりあえず……
「えっと……はいこれ。ハンカチ」
俺はタンスから引っ張り出したハンカチで簪の涙をふき、簪に渡す。
簪はハンカチをギュッと握ったまま、涙を流し続けた。
「落ち着いた?」
「う、うん……」
涙を流すこと10分間、やっと泣き止んでくれた。大変だった……やっぱり、慣れないことをいうもんじゃないな……泣かすつもりはなったんだが……。
「なんか余計なこと言っちゃったかな?」
「……ううん……ありがとう、手伝い、頼んでもいいかな?」
「ああ!! まかしてOK!! じゃなくて、任せてくれ」
そう言うと、落ち着かないみたいで、顔をさらに赤くし、話を切り上げるように早口で俺に一言う。
「えっと、これ……洗って返すから、じゃあまた!!」
「え、っちょ、ま」
そのまま、俺の静止もむなしく、ハンカチを握りしめて、走って出ていってしまった。
「やっぱり、まずかったか……」
俺のつぶやきは部屋にとけて消えた。
後日、俺の部屋から泣きはらして真っ赤に充血した目で走って出て来た女の子を目撃した、と噂になるのはまた別のお話。
~side簪~
「(あ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! やっちゃったぁぁぁぁぁあ!!)」
現在、私は顔を枕に押し付けて叫んでいた。私はあの後、「部屋まで送ろうか?」と、言ってくれた彼に断り、一人で部屋に戻って来たのだが、部屋に戻ってきた途端、彼の部屋であったことを思い出し、羞恥で叫びたくなってしまったのだ。
ひとしきり叫ぶと、顔から枕を放し、両手を頬にあてる。顔がものすごく熱くなっている。鏡を見るまでもなく、顔が赤くなっているのは自分でもわかる。
いくら友達になったとは言え、今朝知り合ったばっかりの人、しかも男の人の部屋で、思いっ切り泣いてしまった。
いや、今朝知り合った……じゃない、私は彼を知っていた。
陣野央樹……ううん、ジンお兄ちゃん……
最初に会った時から思っていた。けど、お姉ちゃんの姿が脳裏に浮かんだ瞬間よくわからなくなって、疑ってしまったのだ。
あの最後の言葉、お兄ちゃんのお父さんの言葉で確信出来た。あの言葉は昔もよく言っていた。だから、間違いない。
それなのに、なんで私知らないふりをしちゃったんだろ……?
はぁ……とにかく明日、また行ってみよう。
「(でも、明日から顔が合わせにくいなぁ……)」
「ただいま~、かんちゃ~ん」
本音が帰ってきてしまった。
……とりあえず、明日のことを考えるより、今はこの赤くなった頬をどう本音に言い訳するか考えよう。あと、照れくさいけど、本音にもISの組み立てを手伝ってもらえないか言ってみよう。
暗い部屋に複数のモニターばかりが煌々と光っていた。8つある内の一つ、一番大きなモニターに男の顔が映る。
『諸君、聞こえているかね』
『『『『『『はい、総帥』』』』』』
モニターの男―――総帥の呼びかけに6つの声が答える。モニターに6人の男女が映り、総帥に頭を下げる。
総帥は一つ何も映らないモニターを一瞥し、言葉をこぼす。
『む、また欠席か、NO.8は……』
『申し訳ありません、総帥。次回こそは、このNO.4が必ずや
『いやいや、このような色ボケ婆などではなく、
その総帥の様子を見た美形の女―――NO.4が名乗り上げるが、幼い少女―――NO.6がそれを遮り、ついでとばかりにNO.4を煽る。
『NO.6!! また私のことを色ボケ婆などと!! 私はまだ20代だ!!』
『えー、それ5年前も言ってなかったぁ~? しかもぉ、
『貴様ァ!!』
『君達、そこまでです』
『しかし、NO.2様!! 私をババアと……』
『NO.4、貴女が美しいのは分かっていることです。 ババアと言われたからなんですか、貴女は美しいのですからもっと胸を張りなさい!!』
『は、はい!!』
『NO.6、あなたもです! いくら総帥に褒めてもらいたいからと言って、仲間を貶めるような発言はやめなさい!!』
『ちぇ……わかりました』
総帥の前で喧嘩を始める二人を仲裁する人物が一人、音源のモニターには筋肉質の美形の青年が映っていた。NO.2、それが彼のコードネームであった。そう、ここにいるものは皆数字のコードネームで呼び合っているのだ。そのNO.2は喧嘩を始めたNO.4とNO.6を黙らせ、総帥に向き直る。
『総帥、お騒がせしました』
『いや、面白いものが見れただけでも良しとしよう。それではそろそろ、本題に入っていいかな?』
NO.2はそれに肯定するように、一度膝をつき礼をする。
静かになった所に総帥は一拍空け、こう切り出した。
『さて、それでは会議を開始する……機械による機械の世界のために!!』
『『『『『『機械による機械の世界のために!!』』』』』』
静かに、闇が動き出した―――――
随分と久しぶりの投稿になってしまいました。
……ほんと色んなことが起きますね。人生ってやつは。
これから、少しずつでも更新して行きたいと思っているので、これからもよろしくお願いします。
……誰か観想ください(切実)