立ち並ぶ木々を抜け、出て来たのは城下町である
盛んなこの街の中心にある城、あそこに馬鹿王様事マリア王がいる
今回はその王様に何故俺がまだ剣聖なのかを聞きにきた次第だ
出来るなら俺の剣聖という称号を破棄してもらいたい、俺以上に強い奴なんてすでに何人もいる筈だ、そっちに譲ってほしいものだ
「確か、ここらへんで届くと思うんだけどな」
俺は直接あの城に赴くわけではない
幾ら王が認めた剣聖といえど王と会うことには許可を得なければならいのだ
そこで王が剣聖達や国の有力者たちと情報を交換するため、を理由にただ暇なときに喋りたくて作った魔装通信装置を授かっているのだ
ただ俺の学校には魔封石という読んで字の如く魔力を封じる石の力によりこれが使えないのだ
まあ通常の石とは違いあそこにあるのは抑制する石なのでジャミングのような働きをしているというのが本当の理由だ
「王様、返事してください」
『お、その声はカイくんじゃないかい?』
「五分沙汰ですね」
『ああ!君と喋るのが久しぶり過ぎて今とても嬉しい!』
これが王様である二代目マリア王、正式名はマリス・ガレイズ・ヴァーラ・フィアだ
「王様が俺みたいな奴と喋れてうれしいって……まあそれはよしとして、聞きたいことがあります」
『なんでも聞いてくれ!』
「なんで俺は剣聖のままなんですか?」
正直これは国家問題にも当たる大惨事である
剣聖として認められた者に与えられる使命、それは王の護衛である
そもそも5人しか居ない剣聖のうち1人が働きものにならないのではそれは王の護衛が一人いないのも同然であり、今の俺がそれに当たるのだ
今敵対している両国の王、こちらは和平を要求しているものの、受け付けない相手側王国、セシリア国王が刺客として送りつけた略奪者にいつ襲われるかわからない状況でいまの状態は余りにもアウトなのだ
なのにこの国王ときたら、2年前から全く音沙汰なしだった俺を、今も剣聖として認め、自分の護衛と言う命を授けているのだ、しかもずっと無視、それどころか今だ剣聖である事を知らなかった俺にだ
『君はいつか戻ってくるとわかっていたからな。君は大切なものを護ることに全てを賭ける、それが例え自分の命だとしても、その時のためにもこの勲章は必要だろ?』
「……貴方は一体どこまで知っているんですか?」
まさか、俺の勝手な誓いを知っているのではないか?
俺がここ数年全て動かなかった理由を、知っているのではないか?
『さあ、どこまでだろうな?』
顔を見ていないのに、相手の顔が分かる
僅かに頬を緩ませ、口に三日月を描いている、少し笑っている
まるで親が子を見ているように、何もかもを見透かしているように
「貴方には叶いませんね。ですが覚えていてください、俺以上の剣聖の適合者がいることを」
「それはないな、だって君こそが……ん?』
バゴォォォォォンと後ろの方で爆音が聞こえる
ありえない、だって後ろは俺たちの学校の領土、立ち入りを許されているのは生徒と関係者のみ、それにあんな大きな爆発は略奪者の能力か魔軍しかありえない
だがそれも無理だ、だって魔封石のせいであれほど大きな力の行使は出来ないはずだ
『何!?天使が現れただと!?』
王様が叫ぶ
今言ったことが本当なら、この状況は最悪だ
なにせ中立を保っていた天使がいま攻めてきたのだから
明らかに先ほどの爆発は宣戦布告ととってもいいだろう、その宣戦布告の後に取る行動なんて一つしかない
俺は通信を切って爆発の中心地にへと走り出す
森中が燃え上がり黒い煙を天に送り続ける中、木と木の間を走り抜ける
今一番近い位置にいる俺が、今この状況を悪化させないようにしないといけない
せめて学校の略奪者たちがここに来るまでの間の時間稼ぎをしないといけない
中心地まであと少し、その間を一気に詰めるように加速し、そして俺は中心地にへと突入する
そこでみたものは、絶景だった
「貴方が、オリムラ・カイですか」
地面から立ち上がる炎を物ともしない純白の翼に火を帯びた、正に紅蓮の翼を持つ美しい天使の姿が、そこにはあった