「貴方が、オリムラ・カイですか?」
紅蓮の翼をはためかせる天使は俺に言う。
なぜ相手は俺の事を知っている?
確かに俺はあの学校ではある意味有名人ではあるがそれが天界まで届く可能性はまずないはずだ。
なのにあの天使は俺の名前を知っている? しかも俺に用がある感じだ。
まさか俺が何かした? だが天使に危害を加えるようなことなんて俺はしていない。
なら、一体相手は何が目的だ?
「……貴方の目的はなんだ。俺に何の用があって下界にまで降りてきた」
「目的、あえて言うなら譲渡しに来た、とでも言っておきましょう」
「譲渡? 天使が人類に何を渡そうと言うんですか?」
天使、しいては神々は人間に略奪という能力を与えている。
それは最早最高のプレゼントであり、逆に言えば至高であるがゆえこれ以上は無い事を意味している。
なのにこれ以上、人間に何を渡す気だ? これ以上人間を強くして何になる? これ以上に
「人類というのは少し違います。人類ではなく
「俺に?」
「そう。貴方という存在に、天使である私の能力を」
そういうと彼女は自らの胸の前に手を持ってきて、そっと触れた。
その瞬間、彼女の手に暖かな光を放つ赤い光の玉が現れ俺に差し出した。
「さあ、受け取ってください。私の能力の全てが、ここにあります」
「能力の全て? 待って、と言うことは貴方は……」
譲渡なんて言い方をしているがこれは一種の略奪だ。
つまり彼女の能力を受け取った途端、彼女の中から力はすべて消えて、
彼女とて十分承知済みなはずだ、なのになんでそんなことをする?
「気にしないでください、私の能力は消えるわけではありません。それに譲渡と言っても戦争が終われば能力は元に戻ります」
「それでも! 天使の力が無くなったら!」
「大丈夫です、さあ」
お受け取りください。
微笑んだ後、彼女はその綺麗な声で譲渡のための言葉を紡ぎ始めた。
「我が力は汝がために、汝が力は我が力なり。古の契約の元、我は汝を認め自らの力を消失せん。満たせ満たせ満たせ、世の断りを持って汝を満たすは我が力なり。汝が我が力を持って魔を討ち払わん事をここに願おう」
光は徐々に大きくなっていき、彼女の手を離れると、極光を放った。
その中に消えていく彼女は、最後まで笑っていた。
「待って!」
手を伸ばすも極光が消える頃には残っていたのは焼け跡だけ、彼女がここに落ちた時に発生した炎さえも、今は消えてしまっていた。
問おう、貴方が望むものは?
ーーーあの人が守ろうとしたものを守り切ることのできる力。
問おう、貴方が守る理由を。
ーーーあの人に憧れたから。
ならば、貴方の進む未来は?
きっと、喜ばれた道ではないだろう。