やはり捻くれボッチの青春は大学生活でも続いていく。 作:武田ひんげん
今日は俺も陽乃も一日中何もない日だったので、デートにいくことになった。
イギリスの大学というのは、授業が行われているあいだは忙しく、入学後ということでこういった一日中のんびりできる日は初めてだった。
その時間を利用して初めてのイギリスでのデートをしようと陽乃が言ってきたので、俺もその案に乗ることにした。
今は部屋で陽乃が来るのを待っている。いやー、隣同士というのはいいねー。
陽乃はというと、女の子には色々準備とかがあるとかで少し時間がかかるということだった。
今8時か。さて、気長に待ちますかネ。
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時間は10時。俺と陽乃はロンドン市街地を歩いていた。
シティオブロンドンというところらしい。そこには近未来的な建物や、ビルが立ち並んでいる場所だった。
そこに腕を組んで歩く俺達。さすがにもうなれたけどね。
日本の時は陽乃の美しさに道行く人々が振り返る情景が定番だったが、ここロンドンではあまりなかった。
しかし、振りまく強烈なオーラに振り返る人はいたが。
しかし、やはりどこの国にも差別はあるようだ。俺たちが街を歩いていると全員というわけではないが、チラチラとこちらを怪訝な目で見ている人がいる。俺のサークル仲間のイギリス人ジェームズも言っていたが、やはりこの国でも有色人種に対する差別があると。しかしこれは予想ができたことだ。日本でもそういうのがやはりあるしな。悲しいことに。
さすがの陽乃もあまり気分は良さそうに歩いていない。俺は日本でいろんな悲しい経験をしているからこの視線にも耐えれるが、陽乃はあまり差別的な扱いは受けなれていないから、どう対処すればいいかよくわからないのだろう。
俺たちは大学構内と外は違うというのを改めて実感していた。
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最初の方は陽乃と俺の服を買うためにショッピングをすることになった。
「あ、これなんか八幡に似合うんじゃないかな?」
「やだよ。なんでこんな派手なの着ないといけないんだよ」
「冗談だよー。からかっただけー♪」
服選びだけでもいわゆるイチャイチャと言うやつを俺たちはずっとしていた。いやー、今までの俺なら呪う側だったから今の状況をいまいち飲み込めてない限りである。
あ、ちなみに陽乃の今の格好は黄緑のカーディガンと白い長めのスカートを着ている。これは一年ほど前に陽乃と日本でショッピングをした時に買ったやつだ。正直めっちゃにあってる。読者の方々覚えてるかな?…誰に言ってるんだよ。
「これは…結構いいんじゃない?」
「ん?」
陽乃が見せてきたのは、黒の薄手の服だった。今まで見せてきた黄色だとか、ライトグリーンだとかではなく、おれにほんとに似合うやつだった。
「…いいんじゃないか?」
「そうと決まったら着てきてー!」
「え?やだよ。めんどくさい」
「むー、連れないなー」
お、素直に引いてくれたか。これで少しは安心…
「じゃ八幡、こっちのジーンズ着てきてー」
「…は?」
結局この後試着室で着させられました。…全部。
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ショッピングも終わり、今はランチを取るためレストランに来ていた。
海外に来たらその国の料理を食べたりするものなのだが、前にテレビでイギリス料理は美味しくないと聞いていたし、ジェームズにも慣れるけど、そこまで好んで食べるものではない、と言われていたので、ふるさとを思い出すため日本料理専門店に来ていた。
ここはジェームズが教えてくれた店で、結構美味しいらしい。
さっそく店の中に入ると、テーブルが5つほどある小さめの店だった。店内は、あたり一面が和、という雰囲気だった。店の証明は少し暗めで、テーブルは焦げ茶色の木のテーブル。そして竹の装飾品が各テーブルに飾られている、和をイメージした店だった。
さっそく席に座ってメニューを見ると、筑前煮やら、煮魚やら和食でも、郷土料理的な親しみのある料理がメニューに書かれていた。
俺達はそれぞれのメニューを決めると、店員を呼んだ。
「すみません」
「はい、お待たせしました。ご注文をどうぞ」
「えーと、このカレイの煮魚を二つ」
「かしこまりました」
ちなみにもちろん店内の会話は英語である。
しばらくすると、醤油の美味しそうな匂いがしてきた。あーなんか懐かしいわー。
「いただきます」
「いただきまーす」
パクリと口に入れると、うまい!そして懐かしい!たった1ヶ月くらいしか離れてないけど、それでも懐かしいと感じた。
「日本を思い出すねー」
「ああ。懐かしいな」
陽乃も同じ心境のようだ。離れてみてわかったけど、やっぱり故郷っていうのは落ち着くんだなと。日本では辛いことだらけだったけど、それでも日本は特別なんだなと思っている。
「ねえ八幡」
「なんだ?」
「はい、あーん」
「…へ?」
陽乃は煮魚を箸で掴むと、俺の口の前に持ってきた。
…え?ここですんの?
「へ?じゃないよー。ほら、あーん」
「だってここ店の中だし…」
「ほかにお客さんいないからいいじゃーん!ほら、あーん」
「あ、あーん…」
恥ずかしさをこらえながら一口。…あれ?なんか自分で食べるより美味しいような…。そうだ、これは餌付けだ。だから美味しいと感じるんだ。…だがやっぱり恥ずかしい…。
「じゃ、私にも。ほら、あーん」
「へ?」
今度は陽乃が口をあけてきた。え?俺もやるの?
「ほらほら私にも、あーん」
「…」
このまま陽乃は引き下がりそうにないので、仕方ないから煮魚を箸で掴んで陽乃の口の中まで持っていった。
「んー、やっぱりあーんだと美味しいよ、八幡」
「お、おう」
陽乃は小悪魔めいた笑顔を見せてきた。…ちょっと、ここ店の中ですよ?そんなところでそんな笑顔見せないでよ。可愛くて顔赤くなっちゃうよ。
陽乃はそんな俺の様子をみて喜んでいるようだ。…この悪魔め…。
「はい、あーん」
「…あーん」
「わたしにもー、あーん」
「…あーん…」
「ん…おいしい。はい、あーん」
「…あーん」
「ほらほら私にもあーん」
「…あーん」
結局残りをすべて交互にあーんで食べた。恥ずかしいわ時間かかるわで結局煮魚を1時間以上かけて食べた。
――――――――――――
日本料理を立ち去り、俺達は再びデートに戻った。
といってもここからは観光兼任でだが。
「ここら辺は歴史を感じるねー」
「ああ」
俺達が歩いているのは、18世紀や19世紀のヨーロッパの建物が立ち並ぶ場所を歩いている。
「…俺結構好きだなここ」
「私も。なんかヨーロッパの建物って綺麗よねー」
日本のお寺とかとはまた違ったヨーロッパの建物は、普段から見慣れていないだけあって、すごく美しくみえた。
「いつか時間があったらヨーロッパのほかの国も回ってみたいねー」
「そうだな」
俺たちはもちろん腕を組みながら歩いていった。
――――――――――――
あたりも暗くなってきた頃、俺達はウェストミンスター宮殿が見える場所に来ていた。
歴史を感じる美しい宮殿はライトアップされていて、幻想的な雰囲気もだしていた。
「綺麗だな」
「うん」
俺達は向かい合った。どうやらなんらかの魔法に掛かったのかもしれない。それだけ宮殿の破壊力は強かった。
「八幡…」
「陽乃…」
互いの唇が近づいていって――――――。
「んっ」
陽乃の柔らかい、瑞々しい唇が俺の唇と重なった。
薄く目をあけて陽乃をみると、陽乃は目を閉じていて、長いまつ毛が陽乃の全体をもり立てていた。
俺達は名残惜しさを残しながら唇をはなした。
「はあ、八幡…周り見て」
「ん?」
周りを見渡すと、俺達と同じように互いの愛を確かめ合っている人達が何人かいた。やっぱりこの場所にはなにか不思議な雰囲気があるんだな。これがカップルの聖地とでもいうのかな?
「ねえ八幡…私…」
「わかってる」
そして俺達はもう一度、唇を重ねた。そしてもう一度…今度は互いを貪るように。
そしてもう一度――――――。
――――――――――――
宮殿を離れ、俺達は自分達の学生寮に戻ってきた。
「それじゃ八幡、また明日迎えに来るからね」
「はいよ」
隣同士だが、それぞれ自分の家に帰っていった。
自分の部屋に入るなり、俺はベッドにどさりと倒れ込んだ。
明日は陽乃と一緒に大学行けるんだ。明日のセミナーは気分よく受けられるな。
ちなみに、互いに同じ時間にセミナーが始まる日は二人で大学に行くことになっている。俺はその日が楽しみになってたりしている。
それにしても今日は疲れたけど楽しかったなー。陽乃とも一日中居れたし、こっちに来て初めてだもんな。
でも本当に俺は陽乃の存在が日に日に大きくなっていってるな。それは日本を離れて同胞が陽乃くらいだからなのか。いや、そんなことはないな。単純に陽乃のことをもっと好きになっていってるだけだとおもう。それだけ陽乃のことが…。
去年の今頃だったかな?陽乃と出会ったのは。そうだ、あの作文のことで平塚先生に呼ばれたから、あの時陽乃がたまたまあの場に来たから、そして俺の作文を読んだから、こうして陽乃と出会うことができたんだな。人生って何が起きるかわからないもんだ。もしあの時作文のことで呼ばれていなかったら、今頃日本でボッチ生活を満喫してるんだろうな。そういう面では平塚先生に感謝しよう。あとは平塚先生も幸せになれたらいいのにな…。
続く
お待たせしました第二話ですね。
今回はデート回ということにさせていただきました。
しかしあれですね、海外が舞台だとなかなか書くのが難しいですね。所々おかしな点があるかもしれません。
僕自身もヨーロッパにいつかは行ってみたいなー。アメリカよりはヨーロッパに行きたい。そしてオールドトラッフォードに行きたいですね。
あとはヨーロッパ各国を回ってみたいなー。とにかくヨーロッパに行きたいんです!まあ、叶うかはわかりませんけどね笑
それでは今後ともこの作品をよろしくおねがいします。