やはり捻くれボッチの青春は大学生活でも続いていく。   作:武田ひんげん

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亀更新すみません。半年以上ぶりに続きです。


第七話

イギリスでの大学生活にもだいぶ慣れてきて英語もかなり上達して来た頃、サークル仲間であるジェームズがテンション高めに、

 

「ハチマン、もうすぐ長期休暇だな!」

「ああ...もうそんな時期か」

 

大学生活が充実していたから気づかなかったが、もうそんな時期か。まあ確かに話を更新してなかった7ヵ月ちょいくらい経てばそうなるか……おっと、メタだな。

そういえば、陽乃が次の長期休暇も日本に帰るとかなんとか言ってたな。それから俺も……

 

「どうした?顔色が悪そうだが?」

「ん?いや何でもねーよ」

 

いかんいかん、あの母親に会わないといけないって考えた途端にこうなっては話にならない。

俺はジェームズと別れると真っ直ぐ寮に帰った。

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえり八幡♡」

 

部屋に帰るといつものように陽乃のお出迎え。ピンクのシンプルなデザインのエプロンもまた似合うなぁ。あぁ、この為に頑張れるわぁー。あー幸せ噛みしめてます……

 

今日も陽乃のメチャ美味しいご飯を食べていると、ふと陽乃がやや暗い表情で、

 

「また休みに日本に戻るのか……」

「まあ、今回は俺も行くし心配すんな」

「うーん、でもなあ……」

「今更そんなことで遠慮すんなよ。悩むことでもないぞ?俺達は今までも2人で困難を乗り越えてきたじゃねーか」

「……うん。そうだね、私達は私達だもんね!」

 

お、ようやく陽乃の表情が冴えだした。やっぱり日本に帰ってあの母親と対面するのはさすがの陽乃でもきついんだな。てか、外見だけしか知らなかったら絶対気づかなったよなこれ。中身まで知った俺だからわかるわけで、そういう関係になれたことも俺は嬉しいわけで……。

 

「ねえ八幡……」

「ん、わかってるよ」

 

何となくいい雰囲気になってきて、陽乃のおねだりがはじまった。今日もいつものようにキスをおねだりのようだ。最近いつも夕食を食べたあといい雰囲気になったらこんな感じになる。ほんと、陽乃は世界一可愛いな。

そうしてお互いの顔が近づいて――――。

 

ピロロロロロ

 

「……ん?」

 

リビングで鳴り響いた電話の着信音。それは俺達のいい雰囲気をぶち壊すには十分な音だった。

若干イライラしながら俺は電話に出た。

 

「もしもし」

「もしもし、比企谷くんかしら?」

「……ん?」

 

あれ、この声ってたしか……

 

「あの時ぶりね。お元気かしら」

 

そう、電話から聞こえてくるのは、陽乃のお母さんの声だった。

 

「あ、はい」

 

やばい、なんかやっぱり緊張するな。

 

「陽乃はそちらにいるかしら?さっき陽乃の電話にかけたのだけど、出なくて…」

「ああ、ええ、い、いますよ……」

 

俺はチラリと陽乃の方に目配せをした。陽乃はどうやら俺のその表情などから電話の向こうにいるのが誰なのか分かったようだ。

 

「そう……、ならいいわ」

「は、はぁ」

 

俺は一体なんで陽乃のお母さんが電話をわざわざ俺の元にかけてきたのか非常に疑問に感じた。今までそんなことなかったし、陽乃からも電話がかかってきたなんてそんな話聞いたことない。一体何が目的なんだ?

というか、相手は陽乃のお母さんなのに相手の意図を読むだとかそういうレベルの思考を陽乃母相手に抱いてしまうあたり、俺達はよほど陽乃母に警戒心を抱いているのだと自覚した。そして俺はその警戒心を悟られないように電話の応対をしている。

 

「ちょうどいいわ、陽乃に…いや、あなた達に大事な話があるの。その為にそろそろ来る長期休暇に日本に2人で帰ってきて欲しいという話は陽乃から聞いてる?」

「ええ、聞いてます」

「なら話が早いわね。じゃ日本に帰ってくる時は全ての

荷物をまとめて帰ってきなさい」

「……はい?」

 

ん?今なんていった?すべての荷物をまとめて帰ってこい?え?どういうことだ?

俺の頭の上にハテナマークが沢山ついていることもお構い無しに陽乃母は続ける。

 

「もう貴方達もイギリスという異国の地でしっかりと学べたことでしょう。言語も文化も違うその国でギャップに苦しみながらもいろんなことを学べているということは前回に陽乃が帰ってきた時に聞いているわ。もうそろそろ潮時でしょう」

「え、えーと、それは一体……?」

 

俺は陽乃母が言っていることがよく理解出来ない。 な、何を言っているんだ?そろそろ潮時?え?それってなにをいっているんだ?

 

すると陽乃母はとんでもないことを口にした。

 

「貴方達はもう充分学べれるものは学べたと判断しました。なので、次の学年からは日本の大学に戻りなさい」

「……」

 

……え?なんやて?それってつまり……

 

「えーと、それは留学は終了ということで?」

「ええ、その通りです」

 

……なんてことだ。俺はてっきり卒業までイギリスにいるものだと思っていた。その為の覚悟も決めていた。なのに、ここで…終了?日本に帰る?それを勝手に陽乃母に決められた?

なにか心の底からフツフツと湧き上がってくるものがあった。なぜだと。なぜたった一年ちょっとで日本にもどれと。しかも学べるものは学んだでしょうと一方的に言われて。そんなこと俺達にしかわからんだろうが。なんであの人はこう、自分の思うとおりに動かそうとするのか。

 

と、誰かが俺の手を握った。……あ、この部屋には陽乃しかいないのだから陽乃の手か。

陽乃は俺からそっと電話をとると、

 

「電話代わりました。陽乃です。お久しぶりです、お母さん。話は横で聞いていました。……ええ、その件の話もも―――――」

 

陽乃が俺に代わって電話応対を始めた。恐らくこのまま俺が応対していたら、俺が怒りを電話でぶつけてしまうと陽乃は思ったからだろう。実際俺ももうコンマ数秒遅かったら怒鳴っていただろう。それくらい危なかった。

ただ、陽乃はそれを恐れた。俺が怒鳴ることを。それはたとえ怒鳴っても何も変わらないことが見えているからだ。

陽乃母は身勝手で、自分の思うとおりに物事を動かしたい。そういう人にはたとえどう言おうともその人の考えは曲がらないことをわかっているからだ。俺もそれはわかってる。だけど、あんまりだろ、これは……。

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

「うん、うん。とりあえず、支度するね。じゃ」

 

ガチャンと電話を切るやいなや、陽乃はふうーと大きなため息をついた。

 

「そういうことになったから、明日から支度しようか」

「……ああ」

 

俺にとっては想定外だ。俺は本気で卒業までここに残るつもりだった。なのに道半ばで日本帰国だなんて……。

 

「八幡」

「なんだ?」

「やっぱり、八幡は卒業までここにいるつもりだったんだね」

「……ああ。俺は本気でここで卒業するつもりだった」

「……そう。理由を聞いてもいい?」

 

陽乃は若干遠慮がちに聞いてきた。別に遠慮なんかしなくてもいいのにな。

俺は努めて静かに話し始めた。

 

「……俺は、最初からここで卒業するつもりだったんだ。それはここの大学に合格が決まってからずっと決めていたことなんだ。たしかに形としては雪ノ下家に行かせてもらってる立場だ、表立ってそういうことは言えなかった。だけど心の中では決めてたことなんだ。イギリスという文化も言語も人種も何もかも違うこの国で、世界中の人が集うこの場所で、俺は正直にいえば苦しみたかったんだ。苦しんで苦しんで、そして何かを掴みたかった。その為にサークルにも入った。街にも積極的にも出かけた。今までの俺ならこんなことするなんて微塵も思わなかった。日本での俺は所詮インドアなボッチだ。俺はそんな俺から変わりたかったんだ。右も左もわからない異国の地でもし変われたとしたら、それは大きな自信になるんじゃないかと思った。そして、その異国で大学という過程を最後まで全うすることが出来たら、それもまた大きな自信に、そして大きな達成感を得られると思った。そして、そんな大きな自信と達成感を得た時、俺は……」

 

と、俺はそこで言葉を切った。陽乃も話の続きを待っている。ただ、俺はそこで言葉を失った。

……あれ?俺は自信を得てどうしたいんだ?脱ボッチ?脱インドア?いや違う、もっと違うことなんだ……。でも、言葉が出てこない。

 

「八幡?どうしたの?」

「いや、なんでもない……」

「そう……。でも八幡の気持ちは分かったわ。そういうことを考えてたのね」

「ああ……」

 

俺は若干の消化不良を感じながらも、思いを打ち明けた。

 

「ねえ、八幡 」

「なんだ?」

 

陽乃は俺の方を向くと、

 

「んっ」

 

軽くキスをしてきた。そして、天使が微笑むようにニコッと笑いながら

 

「私は八幡の味方だからね……。いつまでも、ずっと……」

 

そういいながらもう一度キスをしてきた―――――。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

陽乃が自室に帰っていき、俺は部屋にひとりになった。そんな俺は電話を手に取ってあるところにかけていた。

 

プルルルルル、プルルルルル、プルッ

 

「……もしもし、久しぶりだな。どうした?」

「お久しぶりです、平塚先生。元気ですか?」

「ああ、今ちょうどこってりラーメンを食べ終わったところでなー。で、どうしたんだ?」

 

俺は高校時代の恩師、平塚先生に電話をかけていた。そして先生に留学切り上げのことを話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

「……なるほどな。すべて分かったよ比企谷」

「はい。その、すいません」

「なぜ君が謝るんだよ。君は何も悪いことはしていない」

 

平塚先生はしっかりとすべてを聞いてくれた。そして卒業した生徒の相談も真摯に聞いてくれる。ああ、やっぱりこの人はいい人なんだなと再実感した。

 

「いえ、俺はあの卒業式の日、平塚先生にあんなにしっかり送り出されたのにこんなに早く帰っていいものかと思いまして……」

 

俺が平塚先生に電話をかけた一番の理由はこれだ。あんなにしっかり送り出されたのにこんなに早く日本に帰っていいものかと。平塚先生の期待を裏切ることになるんじゃないかと。

しかし、平塚先生は笑いながら、

 

「いやいや、そんなことはないぞ。大体君のけっていじゃないんだろ?なら責める資格はまったくないよ」

「いや、でも……」

「こら、それは君の悪いところだぞ。そういうのを見せられたら私は心配になるぞ 」

「すいません……」

「まあ、君らしいがね……」

 

平塚先生は優しい口調で俺に話してくれている。それだけで俺の心は少しずつ軽くなっていく。

そして平塚先生はさらに優しい口調でこういった。

 

「帰ってこい、比企谷。日本に」

「……はい!」

 

 

 

続く

 

 




長らくお待たせしてすみません。ようやく続きを書くことが出来ました。
過去最長をまたしても更新……。俺は死んでないで!

さて、今回の話は結構進展がありました。イギリス留学編は次でラストになります。
そして次の投稿がいつになるかわかりません。申し訳ない。リアルの方が色々忙しくて……。
ただ、精一杯努力していきます。応援よろしくお願いします!

それと、最近寒くなってきているので風邪やインフルエンザには気をつけましょう!
ではまた次回!
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