冷やし中華、始めましたの汎用性の高さは異常。
ワイバーン、幻想種。所謂ドラゴンの仲間。過去の英雄の記録を漁れば、ドラゴンを鎮めた…やドラゴンを恋に落とした…などが複数出て来るが、この1400年代にそれが目撃されたと言う物は、少なくとも歴史上には記録されていない。
ならばきっとこれは聖杯、ひいては人類滅亡の影響だろう。本来存在しないはずのワイバーンがこちらへ飛翔しているのも、大方聖杯を悪用する者の手段の一つ。この国を完全な焦土に変える手法だ、と推測出来る。
兵達の士気は最低。まともに取り合う事なく、これを死のお告げとして受け入れるに違いない。…ああそうさ、それは許容できぬ案件だ。ならば我らが立ち上がるまで。
「ルーラー、セイバー、アサシン。やるぞ」
彼女らをクラス名で呼ぶ行為が、スイッチの切り替えの合図。ワイバーンの到着まで、推測残り十数秒。それだけあれば迎撃の準備は整う。
鏡夜が出来る事は少ない。ならばその少ない事に全力を尽くせば良い。魔術回路に火をいれ、唸らせ、十二指腸から小指の爪先までに魔力を流す。単純な散弾による妨害と援護。自慢では無いが、これはかなりありがたいとジャンヌの談だ。
ーー視認。数は三。ワイバーンの実力がいかなる物かは知りはしないが、おおよそ負ける気配は無い。そして勝利を決定付けるのはアサシンの戦闘能力次第だろう。
「ヘッ、ワイバーンか。この前ドラクエで狩り尽くしたオレにはタイムリーだぜ」
「まるでゲームの世界…と言っている場合ではありませんね。覚悟なさい!」
「敵発見…店長さんに危害を加えると断定。排除する…」
先行して飛び出したのはアサシン。全身を包む黒いローブが風ではためく。まるで宙を自在に飛ぶかの様にワイバーンの一頭へ飛翔したアサシンは、身を翻しその個体へ踵を落とした。
着地。ローブの中から黒塗りのダークを両手分計8本を取り出し、投擲。何事かを把握していない先程の個体の目に突き刺した。ワイバーンは高音の悲鳴を上げ、敵と断定したアサシンへ火炎の火球を吐く。
が、それはアサシンには通用しない。正確に言えば命中しないのだ。火球はかなりの速度を誇るが、それ以上にアサシンの思考能力と実行能力が高い。火球が到達するまでにアサシンは回避ルートを導いしまうのだ。そこに自身の敏捷が加われば、余程で無い限り彼女を捉える事は困難を極める。
アサシンは宙を地の代替とするが如く跳ね回り、ワイバーンを殴る、蹴る。その戦闘方式は
アサシンには決定的となる武器が存在しない。持ち得るのは精々暗殺用の黒い投擲剣。モードレッドの
ーーー
「
触れた敵の疑似心臓を作り出し、それを握り潰して呪殺する、呪腕のハサンの業。再現するは呪われたシャイターンの腕。
肉体を変質させ、背部から仮想の腕を顕にする。軽くアサシンの身長に匹敵する程の全長を誇る呪腕。唸り声が聞こえて来そうな程けたたましく天へ伸びた腕は、アサシンのワイバーンへの接近と同時にその腹部を貫いた。
ーーいくらワイバーンとは言え、その生命活動を心臓を核にし存続しているのならば、心音の呪いからは免れぬ。
アサシンは掴んだ鏡面心臓を興味深く見つめた後、それを勢い良く握り潰した。
…一頭のワイバーンが、力無く重力に惹かれて落ちた。
「任務完了…。後で店長さんに美味しい物を貰う…」
「オラァ‼︎」
幾つもの戦場を越えたモードレッドからしても、此度の戦場は心踊る物だった。まさかの邂逅。火を吐く最強の爬虫類との対峙。それだけでも彼女に火をつける。
彼女の戦闘スタイルは常識に囚われない物。例え宙を飛ぼうが剣を投げ付けようが、最終的に自身が勝利していればそれで良いのだ。
今回もそう。最早高潔さなど欠片も感じられない程乱雑に、それでいて計算された何かが宿された、本能的な手数と技法で王剣を文字通り、ぶん回す。
皮膚を裂き、肉に傷を穿つ。…だがやはり幻想種。これしきの損傷では止まってはくれない様だ。
耳障りな雄叫びと共に、モードレッドが対峙した個体は火球を彼女へ吐き付ける。さながらゲームと酷似している光景に多少なり驚愕を覚えたものの、即座に本能が身体を横に跳ばした。すなわち、火球は彼女がいた座標を捉えて爆発、消える。その光景を見たモードレッドは、自身がRPGの主人公になった様な気分になり、余計に楽しくなった。
ーーーー跳躍。魔力放出により強化されていた両脚によるそれは、モードレッドの身体をワイバーンよりも高度に運ぶのには十分過ぎる役割を果たした。
身体を一捻り、あたかも体操選手の様に綺麗な着地をワイバーンの背に決めたモードレッドは、一思いにそこへ王剣を突き穿った。
ワイバーンの悲鳴が木霊する。真近に居たモードレッドにはその雄叫びは酷く耳を痛くする物だった。それでも手を休め無いのは歴戦の経験からだろう。刺している王剣を、体重を乗せ後ろに引く。ワイバーンから鮮血が吹き抱した。
飛行能力と意識を失ったワイバーンはゆっくりと大地に引き付けられ、墜ちる。モードレッドはそこから飛び降り、興味本位にワイバーンの皮を剥いだ。
対してジャンヌにはあまり確実と呼べる戦闘スタイルが存在しない。元々彼女はただの村娘。従軍し、神の加護を得てイングランドと戦ったとは言え、戦闘訓練も十分に受けていなければ、血統から現れる才能も持ち合わせていない。
故にイレギュラー中のイレギュラーな事態にはどこか弱い節がある。特に対処の確立されていないワイバーンとの戦闘、勘と啓示が頼りだ。
それを補助するのは鏡夜。簡単な詠唱による魔力放出と圧縮。形成をステップを踏み魔力塊で構成されたランスを作り出し射出。ジャンヌが先回りしていた方角へワイバーンを誘導する。
聖旗の穂先の刃で一閃。続いて一突。間髪入れずの一斬。傷から血を流したワイバーンは激昂し、聖女へ反動を顧みない突進の攻撃を取った。
…が、それも男の手によって阻まれる。魔力弾による視界の阻害。合図によるジャンヌの跳躍。それでも獣の本能か、ワイバーンは大地との激突数十センチメートルの所で何とか静止した。
しかし、もう全てが遅い。身体を反転し移した視界の中は、聖女が迫っている光景でブラックアウト。その意識ごと闇に閉ざされた。
ふと鏡夜は、ワイバーンの亡骸の一つに触れ、小さく詠唱を唱えた。
脳裏にモヤがかかり、死したワイバーンの本能から全てを吸収し、理解する。
「……!」
ワイバーンを統率する、黒い巨大な影を見た。それでもその姿だけで、名と正体までは、理解出来なかった。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「ふう……どうにか務めを果たす事が出来ました」
「こんな時だけ聖女っぽく振舞うなよ」
「あら?ではモードレッドは普段の方が良いと?」
「まあ、そっちの方がやりやすいな」
「では……こほん。いやあ、強敵でしたね。ザキ唱えたくなりました」
先程の緊迫感はどこへやら、普段のテンションを取り戻したジャンヌ。鏡夜的には時代が時代だけに聖女っぽく振舞って欲しかったが、どうやらその願望も打ち砕かれた様だ。今のジャンヌは聖女ジャンヌでは無く、村娘Aのジャンヌである。
そう遠くない所から大数の咆哮が聞こえる。先程の自分達の戦闘を見ていた兵達に士気が戻ったのだろうか、それともただ単に興奮しただけなのか。どちらかは分からないが、前者ならとてもありがたい。
話を戻そう。砦では魔女の存在を知る事が出来た。おかげで当面の目標も定まる。次はその魔女に関する本格的な情報、例えばどこに出没するかなどが欲しい。つまりはこの砦を後にする必要がある。では、どこへ向かえば良いのだろうか。
ーー答えはオルレアン。ジャンヌ・ダルクの生まれた地。そこならば何かしらの情報が、あるいは魔女が潜んでいる可能性がある。例え魔女と呼ばれ復讐心を滾らせていても、帰巣本能は残っているはずだ。いや、自分が黒ジャンヌの立場ならば故郷を覗くだろう。
「と言う訳だ。ジャンヌ、覚えている範囲でオルレアンへの案内を頼む」
「お任せを。この一帯は生前の記憶があるので問題ありません」
今だけはジャンヌが物凄く頼りになる。そんな彼女を筆頭に、鏡夜達はオルレアンの地へ足を進め始めた。
日差しが強く照り付ける。鏡夜達を待ち受けるは希望か絶望か。それは誰にも知り得ない。それでも彼らは前へ進む。
どうもオケアノスはよ(ご挨拶の代わり)
風邪を引き熱が出て、学校を(半ばサボり)休んだ私でございまする。うん、熱が下がらないから明日も休めそうだ。よーし、しっかり書き溜めするぞー。なお木曜日は創立記念日の模様。三連休⁉︎やっ(ry
余談ですが、GOは弟に丸投げ。訓練された兵士ですぜあいつはァ…!
次回とうとう黒いあの人が登場。