喫茶店経営している場合じゃねえ   作:気宇

19 / 44
待たせたな。ここからは急展開だ、それこそ某カードアニメ並みの。




白と黒

ーーー街が、燃えている。

 

アサシンの報告を受け、全身全霊を持ってその街…ラ・シャリテに駆け付けたが時既に遅し。そこは死の街と化していた。

焼け焦げた住居、崩れた店の残骸。倒壊した建築物。何もかもが鏡夜達に現実を突き付ける。"間に合わなかった"

 

生存者は絶望的。否、いない。燃え尽きてニオイすらしないこの街で、どこかに誰かが潜んでいるなどあり得ない。そしてその現実を肯定する様に、アサシンの宝具瞑想神経(ザバーニーヤ)が"無"を知覚する。

 

 

「……胸糞悪ィ」

 

「同感だモード。ッ、ああクソッ‼︎」

 

「……そう自分を責める物ではありません。貴方が折れてしまう」

 

 

悔しいのはジャンヌも同様…いや、自分達以上だろう。本当なら今すぐにでも地に膝をつき、手を顔で隠しているはずだ。だが今の彼女は違う。それすら噛み殺し、主人である自分を気遣う言葉をかけてきた。何よりも鏡夜を優先した。

 

一払い、軽く自分の頬を叩く。何をしている、気合を入れろ。特異点を修復すれば全て元通りに還る。聖杯さえ手に入れれば、壊せば。全て世界の修正により元に戻るんだ。止まっている場合では無い。

 

 

「……!マスター、サーヴァントの気配です。戦闘準備を」

 

「ああ、分かった。放出、圧縮、形成(リブート)。強化全身へ…!」

 

 

先程の戦闘で起動していた魔術回路に熱を入れ、強化魔術を全身へ施す。何が来ようとも、その真意が理解(わか)り尽くし、懺悔すら吐かせぬ間で倒してやる。倒してやるんだ。

 

 

ーーーー

 

ーー

 

いやまさに、この邂逅は最悪の奇跡だろう。旗を背負い、先陣を切りこちらへ接近して来たのは他でも無い彼女。ジャンヌ・ダルクだった。

しかしその姿は黒く染まっており、纏う雰囲気は闇その物。まさか探していた黒ジャンヌとこの場所で、この様な形で出会ってしまうとは。

 

覚悟はしていた。だが、いざその時が来れば硬直してしまうのは回避出来ない。それは向こうも同じらしく…と言うより、向こうはこちらのジャンヌ・ダルクの存在を知らなかったのだろう。それこそ後頭部を殴られた様な顔をしている。

静寂は、黒の呟きによって無に帰された。

 

 

「なんて、こと。まさか、まさにこんな事が起きるなんて」

 

「ッ……!」

 

「ねえ。お願い、誰か私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気で頭がおかしくなりそうなの」

 

 

おそらく互いが互いにとって一番会いたくない人物だろう。方や全てを否定する黒。方や憎むべき愚者だった過去。そんな嫌悪や否定の間を与えず、黒の言葉は続く。

 

 

「だってそれぐらいしないと、あんまりにも滑稽で笑い死んでしまいそう!」

 

 

黒は腹を抱えて笑い出す。その背後に立っていたサーヴァント達もくすくすと、釣られる様に小さな笑い声を上げてみせた。黒は必死に笑いを抑えて、白を嘲笑う。

 

 

「ほら、見てよジル!あの哀れな小娘を!なにあれ羽虫?ミミズ?ネズミ?どれにしたって同じ事ね!ちっぽけ過ぎて同情すら無いわ‼︎」

 

 

黒はまさに心の底から、生前の写しである白を侮辱する。ひたすらわらい、笑い、嗤い。たまらなく面白い物を見た時と同じ、変わらない反応を示している。

 

 

「ああ本当、こんな小娘(わたし)にすがるしか無かった国とか、ネズミの国にも劣っていたのね!」

 

 

そして過去の所業を嗤い、助けたかった国を嗤い。徹底的なまでに侮辱の限りを尽くす。

 

 

「誰だよ、お前」

 

 

モードレッドが強い口調で問いただした。いや彼女の名前は知っている。聞きたい事はそれでは無い。貴様は何者だ。何故友人と同じ顔をしている。何故自身の過去の行いを嗤う。何故自身を嗤う。今眼前で嗤う彼女は最早、ジャンヌ・ダルクの高潔さの面影すら残していない。

それは彼女の暗黒面だろうか。それとも隠し持っていた副人格なのだろうか。疑問は尽きないが、それすら彼女は嘲笑うかの様に腹を抱え続ける。

 

 

「私?私はジャンヌ・ダルク。蘇った救国の聖女です」

 

「聖女?貴女が?違う、私も貴女も聖女では無い。……いえ、過ぎた事は語りません。何故この街を襲ったのか、聞かせなさい」

 

 

黒はその表情を変えない。あくまでこちらを、引いては白いジャンヌ・ダルクを嘲笑う姿勢を変える事は無い。

 

 

「何故かって?まさかここまで鈍いとは。馬鹿馬鹿しい、至極簡単な事ですよ。"この国を滅ぼす為"です。政治的とか、経済的とか。そんな回りくどい方法よりも、単に壊した方が単純明快でしょう?つまりはそう言う事ですよ、もう一人の私」

 

 

戦慄が走る。余程の事は想定していたが、ここまで歪んでいるとは。しかも"簡単だから"と言う理由で殺戮を行なう彼女の精神が、理解出来なかった。元は同じ聖女なのに、どうしてここまで人命を軽視出来るのか。

一体ナニをマゼレば、彼女はカノジョになってしまうのか。一体何が、何の事故が。何をどうすれば救国の聖女は破国の魔女へ変わってしまうのか。…信じたくなかった。

 

 

「バカな事を…!」

 

 

白の全てを超越した、簡潔な義憤すら黒はバカにする。そして黒の語りは続く。

 

 

「バカな事?愚かなのは私達でしょう、ジャンヌ・ダルク。何故この国を救おうとしたのです?何故こんな愚者を救おうとしたのです?…裏切り、唾を吐いた人間達だと知りながら‼︎」

 

 

おそらくは彼女のその物であろう、憎悪の結晶がこちらを捉えた。生の人間の鏡夜や、かつて憎悪したモードレッドでさえも、黒の憎しみは他の単純な憎しみと一線を画す物だと感じた。それはまるで燃え滾る炎。いや、燃え滾る炎は彼女の憎悪の具現化なのだろう。そしてこの街を燃やしたものまた、彼女の憎悪。

 

 

「私はもう騙されない。裏切りを許さない。そもそも、主の声すら聞こえない。つまりは主はこの国に愛想をつかしたと言う事。だから刈り取るのですよジャンヌ・ダルク。悪意の種全てをね」

 

 

止まらない。彼女の全てが止まらない。

 

「このフランスを沈黙する死者の国に作り変える。それが死んで変わった私の救済。まあ貴女には理解出来ないでしょうね、お綺麗な聖処女様には。私達と私達の国が間違っていた事はね‼︎」

 

 

ーーー理解(わか)った。ああそうだ、それがお前の正しい感情なのだろう。

…助けてやれないのだろうか。

 

 

鏡夜が一歩前に踏み出したと同時に、今度はこちらのジャンヌが口を開いた。

 

 

「貴女は…、本当に"私"…?」

 

「……ハッ、呆れた。バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン。この田舎娘を始末しなさい。雑魚ばかりでは飽きたでしょう?彼らは強敵です。存分に屠りなさい。血に飢えた獣達よ」

 

 

黒の背後から二人のサーヴァントが躍り出る。どちらとも有無を言わせずの殺戮の重圧を放つ、化け物。全身に血の臭いを纏わせ、ジャンヌ・ダルクをエサを見る目で見つめる悪魔。

ランサーにはどこか高貴さを感じるが、それすら彼の血に飢えた獣の本能が掻き消してしまう。二人はジャンヌ・ダルクの血を飲む時を今か今かと待ちわび、それぞれの得物を光らせる。

 

 

「取り分を決めましょう王様。彼女の血肉と腸は私に下さいな」

 

「強欲な奴め。では魂は私が頂くとしよう」

 

「構いませんわ。さあ王様、お食事の時間です!」

 

 

こちらへ飛びかかって来た二人のサーヴァント。ランサーはモードレッドが、アサシンは同じアサシンがそれぞれの愛武器を携えて迎える。ただ一人ジャンヌは、奥にいる黒を見つめていた。

 

 

ーーーー

 

ーー

 

 

モードレッドが対峙するランサーは、彼女が危機感を抱く程に強敵だった。"バーサーク"の単語から少なからず狂化を付与されている事が伺える。言語を司っている所から察するにE~Cまでだろう。それでも狂化はその者の思考を混沌に落とし、動きを単調にしてしまう節がある。

 

だが目の前のランサーはどうか。まるで単調さの無い、品のある槍捌き。こちらのフェイントとフェイクにも対応してくる複雑な行動。まさしくランサーの名に恥じない槍使いだ。

 

 

だがそれで恐るモードレッドでは無い。こちらへ振り下ろされる槍を見据え、それを叩き落とすかの様に、弧の軌道で王剣を廻す。

甲高い金属音が鳴り、槍の軌道が逸れる。ランサーは眉をひそめ、小さく不満の声を上げた。対してモードレッドはニィと笑い、ランサーの腹を蹴り飛ばす。

 

ーーー魔力放出。王剣の一閃は、ランサーの身体を割いた。肩から胴にかけ大きな傷が付き、血が溢れ出す。

 

 

「ヘッ!吸血鬼が血を流すとは、皮肉だな!」

 

「おのれ…‼︎」

 

 

"吸血鬼"が彼の逆鱗に触れたのだろう。傷を癒す事無く、ランサーはモードレッドへ飛びかかる。血肉を屠らんと、我欲を剥き出しにし、鮮血が滴る得物と一突した。

 

何とか攻撃を王剣で遮り、得意の体術から繰り出される蹴りをランサーに飛ばす。それをランサーは、同じく回し蹴りで相殺。どうにもモードレッドにはそれが捌けなかった。

 

 

悪寒の走る様な笑みを浮かべ、ランサーはモードレッドの心臓めがけて得物を突いた。

…頂いた。そう確信したランサーは、待ち受ける食事への興奮を胸に、彼女の臓を貫く。

 

…いや、その瞬間は来なかった。彼女の背後から飛ばされた魔力塊の弾丸。それが自身の眼前で弾けたおかげで、ランサーは攻撃を中止せざるを得なかった。

 

 

「信じてたぜマスター!」

 

 

そう告げたモードレッドは王剣をこれでもかと身体の中に入れ、回転斬りの要領でランサーを斬った。

 

 

 

 

「この……!」

 

「アサシンにしては単調過ぎる。お前、アサシンに向いてない」

 

 

杖の先から魔弾を飛ばすバーサーク・アサシンと、宝具の利と気配遮断の利を活かす無銘のアサシン。バーサークの魔弾の合間を縫い、アサシンは黒塗りのダークを投擲する。

 

ーーー相性が悪い。

 

「ちょこまかと…!鬱陶しいですわね‼︎」

 

「対応出来ないお前が悪い…」

 

 

半ばヤケになり、魔弾のサイズを引き上げ、所構わずにアサシンが居るであろうと推測出来る座標へ飛ばす。これはアサシンも全て回避し切れないと判断し、宝具の一部を解放した。

 

ーーー断想体温(ザバーニーヤ)

己が全身を硬質化させる、長の一人の業。それは何物よりも柔らかく、何物よりも硬い。水晶の如き柔剛さ。

 

タネも仕掛けも無いただの魔弾など、水晶皮膚に傷を付ける事は叶わない。出来る限り回避し、間に合わないならばその皮膚で相殺する。

 

ダークの残量も底をつきかけ今、そのウチの一つがバーサーク・アサシンの太ももを捉えた。彼女はよろめいたが、杖を支えにし立ち姿勢を保つ。左太ももを抉ったダークを無理矢理に引き抜き、報復せんと更に魔弾を飛ばした。

 

拮抗は続く。バーサーク・アサシンは苛立ちを募らせ、無銘のアサシンは妄想心音(ザバーニーヤ)を解放しようか否か、踏ん切りが付かないでいた。いくら聖杯一つ分の魔力タンクを有しているとは言え、先刻から瞑想神経(ザバーニーヤ)断想体温(ザバーニーヤ)、そして二人のサーヴァントの過激な戦闘。これ以上は鏡夜に負担をかける可能性がある。

 

 

 

…いや、これは天の恵みだろうか。アサシンは敵意の無い気配を感知した。数は二人。高速で此方へ接近して来る。アサシンが振り返った先、一人の女性が高度から何かを投げつけた。

ガラスの薔薇。黒いジャンヌ達の前にそれが突き刺さる。風に乗った花の様に柔らかく着地した女性は、黒いジャンヌ達へその指を向けた。

 

 

「はい貴女達!優雅じゃないわ!」

 

 

何を言い出すかと思えば。彼女は振り返り、今度はこちらを指差す。

 

 

「貴女達!とても優雅で格好良いです!と言う訳で手助けします。アマデウス!」

 

「人使いが荒いよ全く。死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)‼︎」

 

 

ーーー重圧が、鳴り響く。




店長揺れるママママインドフェイズ突入。

マリーさん来た!これで(ギャグに突入)出来る!後はすまないさんとゲオル先生を拾って、たまたま訪れた街でCCC48と清姫ちゃん拾えば完壁。

冬木パ組もうにもアチャ枠がどっちも無い模様。つぎのエミヤんのピックアップはいつですかね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。