ーーー街が、燃えている。
アサシンの報告を受け、全身全霊を持ってその街…ラ・シャリテに駆け付けたが時既に遅し。そこは死の街と化していた。
焼け焦げた住居、崩れた店の残骸。倒壊した建築物。何もかもが鏡夜達に現実を突き付ける。"間に合わなかった"
生存者は絶望的。否、いない。燃え尽きてニオイすらしないこの街で、どこかに誰かが潜んでいるなどあり得ない。そしてその現実を肯定する様に、アサシンの宝具
「……胸糞悪ィ」
「同感だモード。ッ、ああクソッ‼︎」
「……そう自分を責める物ではありません。貴方が折れてしまう」
悔しいのはジャンヌも同様…いや、自分達以上だろう。本当なら今すぐにでも地に膝をつき、手を顔で隠しているはずだ。だが今の彼女は違う。それすら噛み殺し、主人である自分を気遣う言葉をかけてきた。何よりも鏡夜を優先した。
一払い、軽く自分の頬を叩く。何をしている、気合を入れろ。特異点を修復すれば全て元通りに還る。聖杯さえ手に入れれば、壊せば。全て世界の修正により元に戻るんだ。止まっている場合では無い。
「……!マスター、サーヴァントの気配です。戦闘準備を」
「ああ、分かった。
先程の戦闘で起動していた魔術回路に熱を入れ、強化魔術を全身へ施す。何が来ようとも、その真意が
ーーーー
ーー
いやまさに、この邂逅は最悪の奇跡だろう。旗を背負い、先陣を切りこちらへ接近して来たのは他でも無い彼女。ジャンヌ・ダルクだった。
しかしその姿は黒く染まっており、纏う雰囲気は闇その物。まさか探していた黒ジャンヌとこの場所で、この様な形で出会ってしまうとは。
覚悟はしていた。だが、いざその時が来れば硬直してしまうのは回避出来ない。それは向こうも同じらしく…と言うより、向こうはこちらのジャンヌ・ダルクの存在を知らなかったのだろう。それこそ後頭部を殴られた様な顔をしている。
静寂は、黒の呟きによって無に帰された。
「なんて、こと。まさか、まさにこんな事が起きるなんて」
「ッ……!」
「ねえ。お願い、誰か私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気で頭がおかしくなりそうなの」
おそらく互いが互いにとって一番会いたくない人物だろう。方や全てを否定する黒。方や憎むべき愚者だった過去。そんな嫌悪や否定の間を与えず、黒の言葉は続く。
「だってそれぐらいしないと、あんまりにも滑稽で笑い死んでしまいそう!」
黒は腹を抱えて笑い出す。その背後に立っていたサーヴァント達もくすくすと、釣られる様に小さな笑い声を上げてみせた。黒は必死に笑いを抑えて、白を嘲笑う。
「ほら、見てよジル!あの哀れな小娘を!なにあれ羽虫?ミミズ?ネズミ?どれにしたって同じ事ね!ちっぽけ過ぎて同情すら無いわ‼︎」
黒はまさに心の底から、生前の写しである白を侮辱する。ひたすらわらい、笑い、嗤い。たまらなく面白い物を見た時と同じ、変わらない反応を示している。
「ああ本当、こんな
そして過去の所業を嗤い、助けたかった国を嗤い。徹底的なまでに侮辱の限りを尽くす。
「誰だよ、お前」
モードレッドが強い口調で問いただした。いや彼女の名前は知っている。聞きたい事はそれでは無い。貴様は何者だ。何故友人と同じ顔をしている。何故自身の過去の行いを嗤う。何故自身を嗤う。今眼前で嗤う彼女は最早、ジャンヌ・ダルクの高潔さの面影すら残していない。
それは彼女の暗黒面だろうか。それとも隠し持っていた副人格なのだろうか。疑問は尽きないが、それすら彼女は嘲笑うかの様に腹を抱え続ける。
「私?私はジャンヌ・ダルク。蘇った救国の聖女です」
「聖女?貴女が?違う、私も貴女も聖女では無い。……いえ、過ぎた事は語りません。何故この街を襲ったのか、聞かせなさい」
黒はその表情を変えない。あくまでこちらを、引いては白いジャンヌ・ダルクを嘲笑う姿勢を変える事は無い。
「何故かって?まさかここまで鈍いとは。馬鹿馬鹿しい、至極簡単な事ですよ。"この国を滅ぼす為"です。政治的とか、経済的とか。そんな回りくどい方法よりも、単に壊した方が単純明快でしょう?つまりはそう言う事ですよ、もう一人の私」
戦慄が走る。余程の事は想定していたが、ここまで歪んでいるとは。しかも"簡単だから"と言う理由で殺戮を行なう彼女の精神が、理解出来なかった。元は同じ聖女なのに、どうしてここまで人命を軽視出来るのか。
一体ナニをマゼレば、彼女はカノジョになってしまうのか。一体何が、何の事故が。何をどうすれば救国の聖女は破国の魔女へ変わってしまうのか。…信じたくなかった。
「バカな事を…!」
白の全てを超越した、簡潔な義憤すら黒はバカにする。そして黒の語りは続く。
「バカな事?愚かなのは私達でしょう、ジャンヌ・ダルク。何故この国を救おうとしたのです?何故こんな愚者を救おうとしたのです?…裏切り、唾を吐いた人間達だと知りながら‼︎」
おそらくは彼女のその物であろう、憎悪の結晶がこちらを捉えた。生の人間の鏡夜や、かつて憎悪したモードレッドでさえも、黒の憎しみは他の単純な憎しみと一線を画す物だと感じた。それはまるで燃え滾る炎。いや、燃え滾る炎は彼女の憎悪の具現化なのだろう。そしてこの街を燃やしたものまた、彼女の憎悪。
「私はもう騙されない。裏切りを許さない。そもそも、主の声すら聞こえない。つまりは主はこの国に愛想をつかしたと言う事。だから刈り取るのですよジャンヌ・ダルク。悪意の種全てをね」
止まらない。彼女の全てが止まらない。
「このフランスを沈黙する死者の国に作り変える。それが死んで変わった私の救済。まあ貴女には理解出来ないでしょうね、お綺麗な聖処女様には。私達と私達の国が間違っていた事はね‼︎」
ーーー
…助けてやれないのだろうか。
鏡夜が一歩前に踏み出したと同時に、今度はこちらのジャンヌが口を開いた。
「貴女は…、本当に"私"…?」
「……ハッ、呆れた。バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン。この田舎娘を始末しなさい。雑魚ばかりでは飽きたでしょう?彼らは強敵です。存分に屠りなさい。血に飢えた獣達よ」
黒の背後から二人のサーヴァントが躍り出る。どちらとも有無を言わせずの殺戮の重圧を放つ、化け物。全身に血の臭いを纏わせ、ジャンヌ・ダルクをエサを見る目で見つめる悪魔。
ランサーにはどこか高貴さを感じるが、それすら彼の血に飢えた獣の本能が掻き消してしまう。二人はジャンヌ・ダルクの血を飲む時を今か今かと待ちわび、それぞれの得物を光らせる。
「取り分を決めましょう王様。彼女の血肉と腸は私に下さいな」
「強欲な奴め。では魂は私が頂くとしよう」
「構いませんわ。さあ王様、お食事の時間です!」
こちらへ飛びかかって来た二人のサーヴァント。ランサーはモードレッドが、アサシンは同じアサシンがそれぞれの愛武器を携えて迎える。ただ一人ジャンヌは、奥にいる黒を見つめていた。
ーーーー
ーー
モードレッドが対峙するランサーは、彼女が危機感を抱く程に強敵だった。"バーサーク"の単語から少なからず狂化を付与されている事が伺える。言語を司っている所から察するにE~Cまでだろう。それでも狂化はその者の思考を混沌に落とし、動きを単調にしてしまう節がある。
だが目の前のランサーはどうか。まるで単調さの無い、品のある槍捌き。こちらのフェイントとフェイクにも対応してくる複雑な行動。まさしくランサーの名に恥じない槍使いだ。
だがそれで恐るモードレッドでは無い。こちらへ振り下ろされる槍を見据え、それを叩き落とすかの様に、弧の軌道で王剣を廻す。
甲高い金属音が鳴り、槍の軌道が逸れる。ランサーは眉をひそめ、小さく不満の声を上げた。対してモードレッドはニィと笑い、ランサーの腹を蹴り飛ばす。
ーーー魔力放出。王剣の一閃は、ランサーの身体を割いた。肩から胴にかけ大きな傷が付き、血が溢れ出す。
「ヘッ!吸血鬼が血を流すとは、皮肉だな!」
「おのれ…‼︎」
"吸血鬼"が彼の逆鱗に触れたのだろう。傷を癒す事無く、ランサーはモードレッドへ飛びかかる。血肉を屠らんと、我欲を剥き出しにし、鮮血が滴る得物と一突した。
何とか攻撃を王剣で遮り、得意の体術から繰り出される蹴りをランサーに飛ばす。それをランサーは、同じく回し蹴りで相殺。どうにもモードレッドにはそれが捌けなかった。
悪寒の走る様な笑みを浮かべ、ランサーはモードレッドの心臓めがけて得物を突いた。
…頂いた。そう確信したランサーは、待ち受ける食事への興奮を胸に、彼女の臓を貫く。
…いや、その瞬間は来なかった。彼女の背後から飛ばされた魔力塊の弾丸。それが自身の眼前で弾けたおかげで、ランサーは攻撃を中止せざるを得なかった。
「信じてたぜマスター!」
そう告げたモードレッドは王剣をこれでもかと身体の中に入れ、回転斬りの要領でランサーを斬った。
「この……!」
「アサシンにしては単調過ぎる。お前、アサシンに向いてない」
杖の先から魔弾を飛ばすバーサーク・アサシンと、宝具の利と気配遮断の利を活かす無銘のアサシン。バーサークの魔弾の合間を縫い、アサシンは黒塗りのダークを投擲する。
ーーー相性が悪い。
「ちょこまかと…!鬱陶しいですわね‼︎」
「対応出来ないお前が悪い…」
半ばヤケになり、魔弾のサイズを引き上げ、所構わずにアサシンが居るであろうと推測出来る座標へ飛ばす。これはアサシンも全て回避し切れないと判断し、宝具の一部を解放した。
ーーー
己が全身を硬質化させる、長の一人の業。それは何物よりも柔らかく、何物よりも硬い。水晶の如き柔剛さ。
タネも仕掛けも無いただの魔弾など、水晶皮膚に傷を付ける事は叶わない。出来る限り回避し、間に合わないならばその皮膚で相殺する。
ダークの残量も底をつきかけ今、そのウチの一つがバーサーク・アサシンの太ももを捉えた。彼女はよろめいたが、杖を支えにし立ち姿勢を保つ。左太ももを抉ったダークを無理矢理に引き抜き、報復せんと更に魔弾を飛ばした。
拮抗は続く。バーサーク・アサシンは苛立ちを募らせ、無銘のアサシンは
…いや、これは天の恵みだろうか。アサシンは敵意の無い気配を感知した。数は二人。高速で此方へ接近して来る。アサシンが振り返った先、一人の女性が高度から何かを投げつけた。
ガラスの薔薇。黒いジャンヌ達の前にそれが突き刺さる。風に乗った花の様に柔らかく着地した女性は、黒いジャンヌ達へその指を向けた。
「はい貴女達!優雅じゃないわ!」
何を言い出すかと思えば。彼女は振り返り、今度はこちらを指差す。
「貴女達!とても優雅で格好良いです!と言う訳で手助けします。アマデウス!」
「人使いが荒いよ全く。
ーーー重圧が、鳴り響く。
店長揺れるママママインドフェイズ突入。
マリーさん来た!これで(ギャグに突入)出来る!後はすまないさんとゲオル先生を拾って、たまたま訪れた街でCCC48と清姫ちゃん拾えば完壁。
冬木パ組もうにもアチャ枠がどっちも無い模様。つぎのエミヤんのピックアップはいつですかね?