すまない。気ノリノリでUBW Extendedを流しながら執筆してたら描写が増えてた。纏められ無かった。本当にすまない。
店長vs黒ジャンヌ。やっぱり彼が主人公なのでカードはこっちにしました。保護者対決よりも映えますです。
やたら本文が長くなりましたが、それではどうぞ。
ーー正直、ここまで恐れが充満した空間だとは思っていなかった。
中には低級のモンスター。所謂スケルトンやゾンビだったりとが徘徊している。一つ一つどころか徒党を組んで来ても取るに足りないのだが、いかんせん魔力の無駄使いは避けたい。
残量を数値化すると残り六割半、と言った所だ。聖杯が無ければ今頃干からびているだろう。やはり過去の行いは間違っていなかった、と無駄な思考をしつつ、ジャンヌの手を引き前へ前へと進み続ける。
濃厚な殺意が肌を刺激する。上の階層から、まさかここまで届く程の憎悪の結晶。黒い彼女を彼女たらしめる、人間の本質。並の人間ならばそれだけで死に至る程の鋭利さ、圧力。冷や汗が頬を伝っているのは、言うまでも無い。
それでも、その殺意の吹雪の中を一歩一歩確実に進む。無謀な冒険者、武器は勇敢さのみ。誇り高き勇者でも無ければ、大英雄でも無いこの身。なおも足取りが確実な物なのは、彼を彼たらしめる夢があるからだろう。歪な形の、最初で最後の夢。
階段を上る。更に殺気が濃厚で粘り気を増し、全身へ絡み付く。まるで身体を蝕む呪いや毒の様に、この身を這う。肉体では無く、精神を削る心の刃。必死に意識を繋ぎ、辿り着いた大扉に手をかける。
「鏡夜君。この先に進めばもう戻る事は出来ません。準備と覚悟は?」
「ああ。問題無い。行くぞーーー」
ギィィ……と古びた木が擦れ合う音が厭に響く。
ーーーー
ーー
「ーーー何だ、また貴方」
「ーーーヘッ、また俺だ」
山を、越えた。
彼女は最初の邂逅の時の変わらずの、忌々しげな、気怠そうな表情を見せている。その背後には狂ってしまった元帥。ようやく、ようやく役者が揃った。
嗚呼、嗚呼。救うべき彼女は眼前にいる。後はこの身の出方次第。絶対、何て言葉は使わない。ーー彼女を救う。
「まさか、ね。大将が直々に攻め込んで来るなんて。貴方、馬鹿?」
「さあな。少なくとも頭は悪いさ」
黒は全てが理解出来なかった。何故わざわざ出て来たのか。何故これ程の恐れと殺気の前でも余裕を保っていられるのか。何故、何故。彼の顔が脳裏から離れ無いのか。
ーーーまあ良い。前回は不覚を取ったが、此度はそうは行かせない。炎が無効化されるのならばこの手で心臓を抉り出せば終わる話。彼は人間、この身はサーヴァント。溝は深海の如く深い。何が起きても、こちらが近接戦で遅れを取る事はあり得ない。今度こそは起き得ないのだ。
元帥を制止する。彼を屠るのは自分の仕事、決して手を出すなと。それは鏡夜も同じだった。白いジャンヌに一言、手を出すなと告げる。一対一、文字通り最終決戦の土俵は完成した。
黒は右手に竜の旗を顕現させ、眼力で射殺す如くの牙を剥く。対して鏡夜は短刀を引き抜き、柔らかな表情を硬化させる。その眼は何か強い物を孕んでおり、こちらを殺すと言うよりはこちらを停止させる、に力を注いでいるに見受けられる。
発足。焦点を鏡夜の心臓に当て、虚空を割く矢の様に直進する。先ずは先手を打つ。凡その戦いでは先手を取った方に軍配が上がりやすい。
鏡夜は動揺せず、無感情のままに詠唱、得意の魔弾を生成する。属性も概念も付与されていない、無色透明の弾丸。迎え討つ、そのまま屠り返す、と言わんばかりの気を纏い黒へ飛翔する。槍を模った、乳白色の即席の武器。
無論、それは承知の上。こんなつまらない攻撃が彼女に通るはずも無い。現実、黒は憎悪の旗を振い、弾を墜とす。……止まらないーー!
黒は優雅に舞い上がり、狂の笑みを伴いつつ穂先の剣を鏡夜に穿たんと両手を突き出す。防具の類を一切身に付けていない鏡夜。仮にも強化魔術で強度を上げているものの、万物に適当される落下速度x体重の式を加算されたアレを喰らえば、最悪死に至る。
故に回避運動を起こした。小規模の魔弾を眼前で爆発させ、僅かな時だが彼女の気を逸らす。跳躍、背後への宙返りを決め、両手をついて着地。刹那の間も入れず再度魔弾を生成する。ただし此度は、変化球ーーー。
直進、右廻り、左廻りの計三方面からの魔弾。確実に認識した時には手遅れ一歩手前までアレらはこちらまで距離を詰めていた。撃墜は、不可能。
ならばと高く跳躍する。足元で三つの魔弾が衝突し合い、互いを攻撃し爆発。同じ術者から生成されたある意味の仲間が互いを殺したのはたまらなく愉快だが、それに興じる余裕は無かった。
ーーー滑空。即ち、隙あり。
地上から足が離れると、途端に回避が困難になる。そう、今は彼女が隙を晒してしまっている。
鏡夜は少し口角を釣り上げた後、まさにこの瞬間を待っていたかの様に高速詠唱。形状を槍から何物でも無い球体に変化させ、容赦無く放出する。それはまさに、対空砲…!
サーヴァント、ジャンヌ・ダルクが保有するスキルの中に対魔力:EXと言う物がある。現代魔術師の簡素な攻撃魔術だろうが、神代の高度な攻撃魔術だろうが、神霊の魔術だろうが全てを"そらしてしまう"スキル。しかしそれはあくまで"魔術"に反応する物であり、詠唱を挟んでいるとは言え"ただの放出"の域を出ない純粋な魔力塊はその効果の対象外。故に、直撃すればダメージを受ける。対魔力を突破する唯一の方法。
ーーーだがそうはさせない
よく目には目を、歯には歯をと言う。なればこそこちらも、弾を飛ばす意趣返しを。黒の宝具は全てを焼く憎悪の炎。真名解放すれば発展した街すら呑み込む。ーー逆説的。その手順を破棄すれば、簡素な火炎弾を生成可能なのだ。
皮肉気な顔付きを顕にし、解放を棄却。中規模の火炎弾を対空砲向けて撃ち出す。それぞれが互いの敵と衝突し、爆散。見事黒はダメージを回避して見せた。
鏡夜は驚愕の意の隠蔽に失敗した。宝具の簡略化など最早可能性すら思考に無かった。詠唱を続ける口が停滞し、刹那的に呆気に取られる。今度は彼が隙を見せる番。
黒は深い一歩を踏み出し、低姿勢のまま彼へ文字通り突っ込む。頂く……!槍を突き出す真似事で、旗を押し出した。
慌てて鏡夜は短刀の刀身で剣を受け止める。刀身から柄を伝い、彼女の力が右手を痺れさせる。どうにか、咄嗟の判断で旗を蹴り、多少冷静さを欠いた挙動で後方へ退く。
既に鏡夜の息は切れかけていた。魔力残量は残り六割。いよいよ時間をかけていられない状態を形成してしまう。治療魔術で疲労を誤魔化そうとも、それは一時の自己催眠に過ぎぬ。その本質は、疲労は、消失する事は決して起きはしない。
激動する心の臓の音色が、脈打つ血管が、清明に耳を抜ける。荒い呼吸を整えんと深く大気中の酸素を体内に吸収し、その反動…二酸化炭素を排出する。思考回路を、魔術回路を、肉体を。好転させ様にも上手くは行かぬ話。疲労とは人間最大の敵。病魔と肩を並べる、永遠にその縁が続くであろう概念。その点、サーヴァントに疲労は無い。いや、魔力を消費すれば怠惰を認識し回復を要求するだろうが、それらは人間の疲労とは根本的に相違の存在。故に彼女は、疲れてはいない。
それ以上に決定的な差を下す概念があろうか。半永久的に活動を、生殺を継続出来る彼女と、体力が底をつけば終幕を迎える人間では、致命的に格差が現れる。真の意味での体力を回復させる魔術も概念が付与された道具も無い。否、存在するのだろうが今の鏡夜には持ち得ぬ物。摂理に従い時流が前進し続けるのならば、反比例的に鏡夜の体力は磨耗し、戦闘能力も低迷する。
彼女は加虐的な意思をこの上無く空間に解き放ち、先刻と同型の火炎弾を定感覚で召喚。
それらに呼応するかの如く、彼女の殺意が抱え込めない物にまで膨張を開始した。
ーーー
受け止める。彼女の憎悪を、その殺意を、全てを受け止める。毅然たる決意を言語として発し、祖母が遺した彼だけの三種の神器、それに属する鏡を再度展開。
サーヴァントの宝具の大半も魔力により成立している。例えば聖剣、そして彼女の炎もまた、魔力を素材としてこそ成立する物。故にこの鏡で対応可能。
忌々しさを欠片も隠さない貌を認めた。有効範囲が一体を守護するに僅かながら届き得ない程多層魔力機能反射鏡は小さい。あたかもSF作品の無線誘導兵器の如く、過敏な神経に通す命令を直に鏡に流す。
「成る程……。さしずめ魔力をゼロに還す鏡…と言った所でしょうか。真名解放型の宝具はその際に魔力が必要。ええ、人の身の貴方が我々サーヴァントに対抗出来る数少ない手段でしょう」
ーーー勘付かれたか
顔を歪曲させる。タネもシカケも彼女が仮定したそれと究極的に同義。寧ろ模範解答を見て口にしたのでは無いかと錯覚する程、言い当てたそれは正確無比の物だった。
そうなると突破方法を模索されてしまう。この鏡ともう一つのアレはサーヴァント、魔術師、神秘への対抗手段。それらを失えばこの身に勝機は無い。
「それなら……、これはどうでしょうか?」
火球が集合する。精々顔面程度の規模だった火球だが、見る見る内に膨れ上がる。単純に表せば、人の身を軽く飲み込む程の大きさ。ーー鏡では吸収出来ない…!
マズい、急激に思考回路が冷静さを喪失する。あんな物をまともにぶつけられればほぼ確実に死に至る。かと言って規模から言えば鏡での対処は不可能。
ーーーやるしかない
あの特大の火球を斬る。
現実性が皆無であり、なおかつ選択可能な唯一の方法。確率を数値で表すのならばゼロ、コンマ十桁以下の成功率だろう。寧ろゼロと断定した方が聡明かも知れない。否、それでも実行するのみしか、勝利を手繰り寄せる術は在らず。
持ち得るのは愛用する短刀のみ。幼少の頃より、物心ついた時よりからこの腰に下げられていた、苦楽を共にした半身。亡命時にはこれで鬼門を裂き、暇潰しに研ぎ、手にすれば由来不明の安心感を与える白銀の刀身。サーヴァントの宝具を相手取っても刃毀れせぬ信頼性。ならば、ならばそれすら可能にするはず……!
この身には幻想は無い。騎士王の聖剣も、英雄王の原初の理も、コルキスの王女の契約破りの宝具も無い。あるのは何の伝承も持たぬ短剣と、三つの起源。そして夢。人の限界しか持ち得ぬ脆い存在。故に彼は、体内で神々しさを物体に凝縮したかの様な光を持つ聖杯に身を委ねる。どこか不思議に暖かい。
ーーー打ち砕く
意識を戻したときには既にその言葉を発し終えていた。刀身が薄ら茜を帯びた事は、この場に佇む誰もが知らぬ事実。
「ーーー
黒は吠える。憎悪を、悪徳を、絶望を。その全てをこの宝具の黒炎に変えて。今こそ全てを終幕に至らしめ、この地を死の国に変貌させる最後の過程を、あの男ごと白を無に帰さんと何もかもを圧縮する。旗はとっくに炎の指標以外の役割を失っている。敵を焼き尽くすだけの魔女の炎。鏡夜は目を閉じ、この身に付随する役割を思い出す。
それは悪魔の手解きか。はたまた世界の意思の情けか。それともその魂最後の抵抗か。忘却の彼方を揺蕩う気高き幻想の残照。その破片、心をカタチにした概念。激情と友愛の茜を帯びる白銀の世界の具現化。
今は無きその真価は、万物万人は知らぬ。
「ーーー
巻き上がる憤怒の嵐。カタチを得た彼女の心その物の炎。一寸の狂いも無く、我が身を滅ぼさんと空を割き続ける。その溝、僅か十数センチメートル。時に表して余裕はコンマ以下。
「愚ーーの……」
柄を両手で強く握り締め、質量を持たぬ嵐の先端部、まさに眼前に迫ったそこへ短刀をーーー穿つ。
その一点を起点とし、憎悪の嵐は奇麗に両断される。ーー否、まるで鏡夜を避ける様に、万物無い大広間の片隅へ逃げる。
まるで魔境を行く冒険者。まるで大波突破に挑戦するサーファー。その無謀の極みの勇気は一体、どこから来るのかーーー!
鏡夜は嵐を潜り抜ける。その身、その装いに火の傷は無い。何かの加護でも受けたかの様に、鏡夜から炎は遠ざかる。炎は逃げる。やがて収束したその地には、肩で息をする彼が立っていた。
ーーー最大の憎悪は、何者でも無い一人の青年すら、傷付ける事が叶わなかった。
「どうだジャンヌ・ダルクよ。俺は耐えた、貴様の憎悪を耐え切って見せたぞ」
息は絶えの域。気力はほぼ無。魔力は残り五割。そんな絶望的な状況下に陥ってなお、鏡夜の貌には僅かばかりの苦痛と悲観すら無かった。憎たらしい微笑を見せ、一部が白く色変わりした髪を掻き分け、あの短刀の切先を黒へ向ける。
「今度は俺の番だ。行くぞジャンヌ・ダルク。ーーー覚悟は出来ているな」
始走。愚直なまでに直線的に、鏡夜は黒へ詰め寄らんと一歩を深く踏み込む。人間にしては速度が出ている方だ。対する黒は、あらゆるもの屈辱から、正面切って彼を叩き潰す事を決意した。
黒は旗を捨て、腰に帯刀している
最後の剣戟。骨子同士が鬩ぎ合う独特の音が、虚しく響く。
ーーー間抜け…
互いに譲らない。弧を描く独特な機動を鏡夜が持ち込めば、黒は咄嗟に呼び出す小火球で撹乱し対処。黒が打突を起こせば、鏡夜はそれを逸らし空を突かせる。
ーーー間抜け
だがいつまででもその場に甘んじる彼らでは無い。互いが消耗を最低限にまで押さえ込み、敵を屠る/打破する術を思考する。どうすれば、どうすれば奴は殺せる/倒せるのか。
ーーー間抜けッ
ーーーもっと
瞬刻、鏡夜の肉体と精神が乖離する。
短刀の柄を口に咥え、鏡夜は踊る様に床に手をつき後転、黒の肘に当てられている鉄装甲を蹴り揺らす。蹴り上げられた衝撃が拳に直に伝わり、開いた手から幾分か柄が離れる。
この瞬間を待っていた。鏡夜はそこへ自身の短刀を投擲し、遥か天井まで短刀と黒の剣を、地上より昇華させる。
ーーー止まらぬ、まだ止まらぬ
鏡夜は宙を舞う鏡を踏み、高く高く跳躍した。まるで太陽に近づくイカロスの様に。まるで栄光を眼前に捉えた約束の勝者の如く。円に舞う二振りの剣を、その手に掴む。
嗚呼、あの姿は美しい。
元帥が、黒が、白が、頭痛を認めた。翼があれば大空へ飛び立ってしまうそうな勢いの彼を見て、何かを思い出した。
それは世界の闇に葬られた記憶。彼の時代、彼の戦場。イングランド兵から武器を奪い続け、無力化を図り続けた愚者の奥義。敵兵の戦力を我が物にする意地の汚い
「貴方……!」
「ヘッ!他のサーヴァントが相手ならこんなに上手くは立ち回れないさ!子供騙ししか持ち得ない人間が、座に至る名高い英霊に何を仕掛けようとも、それは児戯に等しい。だけどな、
着地、左足で床を踏みしめ、強靭に前へ進む。何があろうとも停滞しない。呼吸が切れようとも、半身が焼けようとも、ありとあらゆる最悪がこの身に降りかかろうとも…!
嗚呼、貴方は…!
「
旗が砕ける。柄は三分割され、竜の紋章が描かれた本体は二つに割かれ、最早武器にすら非ず。
「最終的に
右腕を伸ばす。彼女の心臓へ、その核へ。高速かつ確実に、その距離は埋まって行く。だがその切先は未来永劫、この瞬間も含めて、彼女を傷付ける事は無い。それは彼の意思。
「ーーー俺の勝ちだ、ジャンヌ・ダルク」
「ーーーええ、私の負けよ」
疲労困憊。意識を保つ事すら至難を極める中でも、彼は高らかにその勝利を宣言した。
その光景は過去と同じ。幾度と無く重ねられた訓練の風景。彼らの中の欠けたピースを埋めるには、十分過ぎただろう。
くぅ(ry
こんな事言っちゃいけないのかも知れませんが、今回の気合の入れっぷりはモーさんvsアルトリア以来です。と言うよりもしかすると一番気合を入れたかも。
さてさて、今回チラッと出て来て最大の活躍をした店長の短刀ですが、もしかすると彼の経歴から正体と能力がお分かりになるかも知れません。全貌の開帳は二章か三章のどちらかでやろうかなーと。
・神秘を反射する鏡
・魔力に逆工程をかける鏡
・???(クソッタレ)
・短刀(何か能力あり)
改めて見ると店長の所有物がカオス極まり無い件。
次回はまとめの回です。大方予想はついているかと思いますが、主に黒と旦那が弾けます。後店長も弾けます。それではまた次回。