喫茶店経営している場合じゃねえ   作:気宇

39 / 44
ギリギリの所を生きてきた凡夫ですよー。お久しぶりです。
とりあえず一つだけ言わせて頂きたい。


自分でハードルを上げるような馬鹿な真似はやめろ(戒め)


湯けむり

古今東西、人類史と隣には必ず"風呂"があった。紀元前からそれにより近い紀元後は大衆に開かれた風呂屋として、近代に近づけば近づく程個人邸宅に風呂が備えられる文化が世界各国で発展し、それは絶えず姿と役割を変えながら人類を支えて来た。

それはあるいは"沐浴"とも呼ばれる。この言葉は位の高い者を指す事が多い。例えば沐浴場などと聞けば、一国を治める王の妃の為だけに用意された、無駄とも呼べる広さの物を想像するだろう。

 

 

さて、何故この様な切り口なのか。解は明瞭。空白鏡夜以下一行は皇帝ネロ・クラウディウスの好意に甘え、彼女の沐浴場を貸し切る事になった。ネロ自身の風呂好きの一面を押し付けられたと解釈も出来るが、特に女性陣は男性陣よりもニオイに敏感な為にネロの提案は天恵に等しかった。つまりは二つ返事だ。

その様な経歴を辿った為、この広い女性用沐浴場にはジャンヌ・ダルク、クロ、モードレッド、アサシン、遠坂凛の計五名が集約している。サーヴァントであるクロ、モードレッド、アサシンは入浴を必要としないのだが「折角だから」と言う事でそれを共にした。アサシンはともかくモードレッドは単なる好奇心のみの行動だろうが。

 

 

一行は男風呂と女風呂に分けられ同時に入浴している。星がよく見える、露天風呂である。壁を一つ挟んで男風呂と繋がっている為、時々男性陣の声が聞こえて来る。本当に時々な為、重たい雰囲気になっていないかジャンヌは心配した。

しかし思考を振り解く。休める時に休めとは彼の言葉だ。料理好き、世話焼きなど共通点がある彼らなら最終的には上手くやるだろう。そう信じて、ジャンヌは率直な感想を述べた。

 

 

「広いですねえ」

 

そう、広い。現代にあるスーパー銭湯に勝るとも劣らない坪数が割かれたこの空間は心にもゆとりを持たせてくれる。

 

 

「まるで温泉みたい。良いなあこんなに家が大きくて」

 

と、凛は呟きを零す。直後、モードレッドがそれに対して切り返した。

 

 

「お前ん()も十分デケェじゃねえかよ」

「それアンタが言うとかなりイヤミなるから気を付けなさいモードレッド」

 

凛の切り返しも速い。

恐らくモードレッドは自身の出自をすっかりと忘れているのだろう。その近くでアルトリアが大変苦い表情を浮かべている。まるで何か嫌な過去を思い出したかの様な、それの表情だ。

それに気が付いたモードレッドは父アルトリアに疑問を投げる。アルトリアは軽く溜息を吐いた後、呪詛を吐く勢いで内心にふつふつと湧いた過去をモードレッドに突き付けた。

 

 

「家が大きいで思い出しましたよモードレッド。夜のキャメロット城の窓ガラスをヒャッハーしながら破った事を」

「うぇ⁉︎な、何の事かな父上様……?」

「忘れたとは言わせません。盗んだ名馬で走り出したり、私がマーリンから永遠に借りた砂糖菓子を盗み食いしたり、あまつさえ王剣クラレントを勝手に持ち出したり……!」

「ちょ、ちょっとセイバー落ち着きましょう?ね?」

 

 

まるで上司の愚痴を同僚にぶつけるサラリーマンの様な勢いである。真横で湯に浸かっていた凛が彼女を諭した為に渋々納得したらしいが、この場にストッパーの役割を果たす人物がいなければどうなっていたか。恨み辛みをモードレッドは長時間ぶつけられていただろう。かつてとある騎士は「王は人の心が分からない」と言い放ったらしいが、現実王はかなり人間臭い。

 

 

「申し訳ありませんリン。取り乱してしまった」

「貴女も苦労してるのねえセイバー」

 

珍しくクロが他人を労った。お湯に浸かり蕩けた顔をしているクロをジャンヌは見つめながら、明日天変地異でも起こるのかと不安になった。

 

「クロはいつでも能天気……」

 

 

脈絡無くアサシンがポツリと呟いた。確かに、クロは能天気では無いにせよ、フランス帰還後から今回の特異点跳躍まではグダグダと過ごしていた事は認められる。しかしクロに言わせれば毎日パフェを鏡夜に作らせているアサシンに言われたくは無い、と言った辺りだ。

少しだけむすっとしたクロは両手でお湯を掬い上げ、それを少し離れたアサシンの顔めがけて思い切り投げ掛けた。数多の滴を周囲360℃に撒き散らしながら、クロの手によって形成された湯の弾丸は綺麗に、アサシンの顔に直撃した。

 

 

「アハハ!我ながらナイスコントロールね」

「………」

「クロ!私達の被害を考えなさい!」

 

 

ジャンヌが抗議の声を上げるが、クロはそれを軽くあしらった。彼女に言わせれば、ついでに白い方にも攻撃出来てラッキーなのだ。

 

 

「いいですか(ワタシ)、私は私が良ければそれで良いのです」

「ジャイアニズム極めてるわね……どこの金ぴかよアンタ……」

「リン、それ以上はやめてください思い出したくない」

「なー、金ぴかって誰だよ?」

「モードレッド、世の中には知らない方が幸せな事もあるのですよ」

 

 

アルトリアはモードレッドの両肩を掴み、ずいっと顔を近づけてそう言った。人の嫌な思い出を掘り返すのは例え悪意無き純粋な好奇心からでも遠慮すべき事柄である。

 

 

「(父上の顔……ニヘラ)」

お叱りを受けた当の本人モードレッドは全く別の事を考えている事はご愛嬌だ。

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

モードレッドがアルトリアと密着し満足している側で、そう言えば、と凛は思い出した。先程湯を掛けられたアサシンが何も行動を起こしていない。付き合いこそ数日なものの、彼女の性格の大方は掴めている。「やられたらやり返す」、それを地で行く彼女がこのまま沈黙を貫くとは到底思え無い。

何か嫌な予感がする。凛がそう思ったまさしくその瞬間、アサシンは本日二度目の宝具無駄打ちを敢行するのだった。

 

 

妄想心音(ザバーニーヤ)…!」

 

 

背中から芽生える様にその姿を現したシャイターンの双腕をアサシンは器用に操る。左腕でクロを拘束し、右手を直進させ、自己主張の激しい双丘(胸部)の右側を掴んだ。

 

 

「ひゃいっ⁉︎」

 

 

ーーむにっ。

クロが素っ頓狂な声を発する。どうにか逃れようにも、生憎身体をシャイターンの左腕にガッチリと掴まれてしまっている為、それも叶わない。

 

 

「お返し…」

 

 

むにむにっ。

 

 

「こ、このっ!離しなさい!ひゃっ⁉︎」

 

 

もにゅもにゅ。鎌首をもたげたアサシンの優しい拷問はこの先が本番だ。風呂場と言うある程度融通の利く空間であるからこそ、それなりに無茶をしても許される。

 

 

「や、やめ……な!んっ……、…さいよ!はぅ…!」

「遊んだしもう一回身体洗おうぜ」

 

モードレッドは立ち上がり、そのまま振り返らず洗い場を目指した。

 

「賛成ですね。たまにはモードレッドも良い事を言います」

「早速レッツゴーです。後は若い二人のお楽しみと言う事で」

「そうね、そうしましょう」

 

アルトリア、ジャンヌ、凛もモードレッドの背中を追う。その顔には僅かな気まずさが見て取れた。

 

 

「あっ…!ちょっと待って!逃げない……っでぇ!」

 

 

次々と自分に背を向ける彼女達を、クロは目尻に涙を溜めながら見送る他に無い。

 

 

ーーーー

 

ーー

 

 

「なあ鏡夜、アーチャー」

「どうした小僧」

「どうしたんだよ士郎」

 

 

同刻、士郎は非常にモヤモヤとした感情を内に孕んでいた。その内訳こそかれすらも知り得ないのだが、彼は今取り返しのつかない過ちを犯している様な感覚に襲われている。別にやましい事も妄想もしていない。正義に泥を塗る行為など考え付いた事も無い。それでも何故か、士郎はこの状況を後悔していた。

右に空白鏡夜、日はそこまで深くは無いものの、互いの夢や理想を隠す事無く話せる親友。左にアーチャー、真名エミヤシロウ。衛宮士郎の一つの可能性。正義の殉職者。

 

はっとする。思考回路を冷やし、前提条件から階段の段差を踏みしめる様に現状全てを考察すると、士郎はモヤモヤの正体を掴んだ。そうだ、面子がおかしい。

解決すれば話したくなるものである。士郎は組み上がった思考回路を破棄し、一先ずの疑問を音にし発した。

 

 

「何でこんな面子なんだ……?」

「同感だな小僧。丁度私も同じ事を考えていた」

「奇遇だなお前ら。俺もだ」

 

 

立て続けに二人が同意する。そうだ、おかしい。英霊一人、魔術師一人、魔術使い一人。お世辞にも一般人とは呼べない、尚且つ約一名は人から昇華した存在が、仲良く広い湯船で肩を並べているのだ。これを奇妙と呼ばずに何と呼ぶのだ。しかも全員頭にタオルを乗せて。

 

 

「アーチャー、お前風呂入る必要無いんじゃないのか?」

「気まぐれだ」

 

 

士郎は一瞬、自分が噴き出しそうになったのを理解した。捻くれ者が真顔で「気まぐれだ」何て呟いたら笑わない方が無理がある。

 

 

「小僧」

 

 

ふと、アーチャーが士郎を呼んだ。士郎はそれに少しそっけなく、なんだよ、と返事した。アーチャーはそれを気に留めず、士郎を挟んで向こう側にいる鏡夜に指を指す。

 

 

「何故奴はキュウリを食べているのだ……?」

「あー……、鏡夜曰く「食ったら血行が良くなる」とか何とか…」

「ん?食うかーーー?」

 

 

おそらく即興品であろう、木の枝を荒削りして作られた爪楊枝らしき物の先端にキュウリを刺し、鏡夜はそれを士郎とアーチャーに向けた。

士郎とアーチャーは同時に一呼吸置く。彼の問いに対する回答はすでに決まっている。

 

 

「「食うかーーー!」」




やりました…… やったんですよ! 必死にッ!!
その結果がこれなんですよ!
キーボードを手元に置いて、キーを打って!何十回分もボツにして!
今はこうして光の無い目で起きててる!
これ以上何をどうしろって言うんです!
何を描写しろって言うんですかッ!!(バナージ君並感)

すまない、正直壁だった。富士山レベルに高い壁だった。
凡夫の性別の都合上何を書けば良いか分かりませんでしたハイ。しばらくはほんの僅かのクロのサービスでご容赦を。あれ以上やるとR-15の警告に全力で唾を吐きかける事になるのです。


あ、本日中にもう一度お会いする事になるかも知れません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。