喫茶店経営している場合じゃねえ   作:気宇

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式さん引いたぜうぇぇぇぇぇい‼︎(狂喜乱舞)



願いの対峙

「はぁ……、はぁ…」

 

 

鏡夜は日本刀の柄を咥え、空いた手で左胸に手を当てた。別段痛みや持病がある訳でも無い。しかし何故か、心臓を抑えると言う行為で気を紛らわせたかった。自分を安心させたかった。

 

───何だこの感覚

 

ひたすら気持ちが悪かった、苦しかった。何かが自分の中に入り、奥底にある禁忌を刺激する。それに引っ張られる様に、自分でも分かる程思考回路が滅茶滅茶になっていた。「なるべく敵兵を殺さない様にしよう」と言い出したのは自分のはずなのに、今ではそれを破ろうとしている自分がいる。敵兵の命がどうでもよくなっている。この自分が自分なくなる様な感覚がひたすら嫌だった。

日本刀を手に取り、後めたいものを振り払う様に怪物へ剣を振り続ける。直線移動で自分を捉える矢を墜とし、日本刀と西洋剣の交互の斬撃。狙うのは肩や膝などの局部。一々破壊していたらキリが無い。

それでも、自分を押す衝動は消えない。いや、秒を刻む毎に強くなっている様に感じる。唐竹、上から下の斬撃。骨を砕く。すかさず両手を外に押し出す形で剣を振る。水平斬。接近していた骨を壊す。両腕を胴体の正面に戻し並行突。同時に眼前の骨を潰す。

 

「ようやく目に見えて数が減って来たな……。よし、クロ‼︎」

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

「よく来たな」

 

 

士郎、凛と先で合流したアルトリア、モードレッド、アーチャー、そしてネロを待ち受けていたのは一人の剣士だった。体格はふくよか、しかし放つ気は間違い無く高貴な人間のそれ。所謂皇帝の風格。

彼の背後には無数の兵士達が直立不動の姿勢を保っている。仕掛けて来ないと言うのは彼にそう命令されたからだろうか。それにしても、不気味だ。

彼はーー武装からセイバーだろうーー士郎達一人一人を観察する様な眼で見る。特にアルトリアとモードレッド、ネロをみるときの眼の光は強かった。前者二人は同クラスのライバル心か。ならば後者は自分の跡継ぎに当たるであろう彼女を本格的に"鑑定"しているのかも知れない。

 

 

「私の名はガイウス・ユリウス・カエサル。この名に覚えはあるな?赤い女───今代の皇帝よ」

 

 

士郎と凛は戦慄を覚えた。ガイウス・ユリウス・カエサル。古代ローマ最大の英雄の一人。皇帝の地位が発足する以前にローマを支配した扇動の天才。ヴィーナスの末裔。

いやしかし、その様な大英雄にも等しい英霊が立ち塞がるとは。指揮が本分とは聞くが、おそらくは武芸にも優れているはずだ。アルトリア、モードレッド、アーチャーの三名で掛かればそれ程苦戦はしないだろうが、それを背後の山の数の兵士達が許す訳が無い。彼らはカエサルの為なら喜んで特攻を仕掛けて来るだろう。いくらアルトリア達でもある種の強化が施された無数の兵士を相手取るのは厳しい。おまけに良心からの殺傷制限もかけているのだ。尚更だろう。

アルトリアはネロに視線を流す。不敵な彼女でもこれは堪えたのか、思い詰めた表情を見せている。そんな彼女を汲んでか、アーチャーが口を開いた。

 

 

「ガイウス・ユリウス・カエサルよ。貴様はローマの皇帝だった人物だ。何故その者が他でも無いローマに牙を剥く?」

 

 

尤もだ。彼らは連合ローマを名乗っているが真のローマはこちらである事は不動。寧ろ彼らはローマを騙る侵略者。あの土地を踏み躙る悪徳だ。そんな者に何故か皇帝が加担するのか。

カエサルは答えを返す。それはサーヴァントとしてなら当然な理由だった。

 

「私も聖杯が欲しいのでな。それだけだ」

 

すると、ネロが首を上げた。

 

「たったそれだけで裏切るか。良いだろう、ガイウス・ユリウス・カエサル。貴様は余の……ローマの敵だ!」

 

 

ネロは許せなかった。仮にもローマを統べた人物が私欲に囚われローマを蹂躙する姿勢が。そう、"それだけで"ネロがカエサルを敵とみなすには十分だ。もう何も感じ無い。恐れも無い。奴は"統治者ガイウス・ユリウス・カエサルの姿をした悪魔"だ。

カエサルはふぅんと声を漏らした。その無意識の呟きには嘲笑などは無く、寧ろ感心などが含まれている様に思えた。

 

「よく言った今代の皇帝。そうだ、名を名乗ってみろ。後ろに控えるお前達もな」

「ネロ・クラウディウス。それが余の名前だ」

 

高らかにネロが名乗る。士郎達がそれに続く。

 

「アルトリア・ペンドラゴンだ」

「オレはモードレッド」

「私に銘は無い。強いて名乗るなら……エミヤ」

「俺は士郎、衛宮士郎」

「遠坂凛よ」

 

覚悟の決まった眼でカエサルを見る。

 

「ふむ、エミヤ、エミヤシロウ、トオサカリン……珍しい響きだな。異国の者か。まあ良い。ではエミヤ…ややこしいな、アーチャーか。モードレッド、エミヤシロウとトオサカリンには後ろの者達の相手をして貰おう。二人はかかって来い」

カエサルの兵達が雄叫びを上げる。士郎は干将・莫耶を、アーチャーは黒塗の弓と螺旋の矢を投影。凛はポケットから宝石を取り出す。

 

「では始めようか今代の皇帝。そして異国の王よ。同じ統治者として剣を交えよう」

 

大地に突き立ていた黄金の剣を引き抜き、カエサルはアルトリアとネロを見据えた。

 

 

ーーー

 

 

───強い

 

騎士王であるアルトリアと、皇帝であるネロをして、カエサルはその様な評価を受けていた。

既に剣戟を交えてから数十分が経過しているが、二対一と言う差を持ってしても、未だカエサルを倒すまでには至っていなかった。

 

サーヴァントであるアルトリアはともかく、まだ人の身であるネロには体力の減少が見える。悟らせまいと背筋を伸ばしているが、その顔には苦悶があった。

 

 

ネロには誇りがある。それにかけて、ローマを裏切った統治者擬きを立たせている訳にはいかなかった。

息を深く吸う。自らが鍛え上げた深紅の剣を握り、右足で大地を踏みしめて駆け出した。

跳躍。原初の火を自身と垂直になる様に構え、それを落下速度の後押しを乗せて突き出した。その様は牙の如く。切先はカエサルの腹を捉えている。

命中の直前。カエサルは跳んだ。

 

行き場を失った原初の火は大地を抉った。手ごたえの無さをネロは認める。

 

「まだやれるか。人の身でありながら中々にやる」

「後ろかっ!」

 

即座に視線を後方へ移す。高く跳んだカエサルは獰猛な視線をネロへと固定し、剣を両手で持った。

 

「ここは私に!」

 

迎撃か回避かの判断を迫られていたネロの隣を、アルトリアが駆け抜ける。

風王結界。聖剣を隠す風の結界。それは間合いを測らせない事にも貢献する。アルトリアは透明と化している星の聖剣を持って、カエサルの黄金剣を叩いた。

 

硬い金属同士の衝突音が耳を穿つ。忌々しげなカエサルとは対照的に、アルトリアは僅かな安堵を覚えていた。

両者は着地。アルトリアはネロの手を引き後退した。

 

「しかし厄介だな、その得物。アルトリア・ペンドラゴンと言ったな?その得物……剣か?槍か?」

 

カエサルもアルトリアがセイバーだとは見抜いているが、それのみで彼女の得物を剣と断定する真似はしなかった。何事にも例外はある。例えば弓兵(アーチャー)を名乗っておきながら主兵装が双剣の男とか。

 

「どうかな?剣かも知れないし、槍かもしれ知れないし、斧かも知れない」

「面倒な得物を誇るセイバーだ」

 

そう吐いたカエサルは、狙いをアルトリアに迫撃をかけた。

 

風の結界と黄金の剣が拮抗する。得物同士の格ではアルトリアが勝っているが、ステータス面ではカエサルに軍配が上がる。その両者の差し引きの結果、アルトリアがカエサルを圧倒する事もその逆も無く、互いの剣は押しては押されを繰り返していた。

そこへ割り込むのはネロだ。星の聖剣エクスカリバー、黄金の剣クロケア・モルスと比較すると劣るが、それでも携える原初の火は一級品以外の何者でも無い。カエサルの真横を支配し、赤き切先でその横腹を斬った。

 

「ぬ…ぅ!」

 

流れがアルトリアに傾く。バランスを崩した黄金の剣は聖剣に押し負け、護るべき主への道を開けてしまった。

 

そこへ、アルトリアとネロの渾身の一撃───無駄無き唐竹割りの一手が刻まれた。

 

 

歩兵達の咆哮が響く戦場。未だ、天秤は揺れている。




こんにちは。忘れた頃に蘇る私です。

やっぱりアニメとかの参考資料が無いとGO初登場キャラを動かすのは難しいですね。カエサルを汎用モーションにした運営は絶許。

vsカエサル戦は後半に続きます。それではまた次回にお会いしましょう。
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