ギリセーフ。何とか6月中に投稿出来た。
夢を、見た。
僕が初めてアルに会った時の事だ。
あの時は、今みたいにアルと仲が良かったわけじゃなかった。といっても僕の方が一方的に避けていただけだけど。それでも、アルは何故か僕ことを好んでくれていた。
『な、何で着いてくるんだよ!』
『うふふ、いいじゃないですか。それに―――』
『それに?』
『―――1人じゃ寂しいですからね?』
最初は何が何だが分からなかったからアルと距離を置いていた僕だけど、アルは―――アルセウスは僕と居てくれた。一緒に居た時間は本当に心地良かった。何だか心が落ち着いて、楽しかった。
でも、何時からだろうか。アルが変わってしまったのは。
知らない誰かが僕に近寄るのを嫌った。
僕が自分の視界外に居ることを嫌った。
僕以外のことに無関心になった。
僕の事だけを考えるようになった。
僕に嫌われることを何よりも恐れた。
重い、思い、想い、愛情。
だから、この手だけは離せなかった。離してはいけなかった。
『ねえ、僕は――――――』
◇◇◇
目が覚めた。何だか夢を見ていた気がするが何だか思い出せない。こう、思い出した方がいいような気がする。
そう思い、考えだそうとして頭を働かせると、何だか人並みに温かい気がする。
よく見れば、布団が不自然に盛り上がっている。非常に嫌な予感がして布団を引きはがす。
朝日に煌めく綺麗な白い髪、人形のように整っているその顔は僕が長年見てきた顔。ここまで言えば分かると思うけど、アルが僕をがっちり抱きしめて眠っていた。
「あ、アル!何してるの!」
「あふぅ、おはようございます」
「あ、おはよう。......ってそうじゃなくて!何で布団の中に入ってるのさ!」
「昨晩は少し肌寒い夜でしたので、私がマスターを洗ってあげようと思いまして~、えへへ」
「っ......!」
ニヘラと笑うアル。不覚にもときめいてしまった。多分、今顔が赤くなっている。
恥ずかしさから思わず顔を背けてしまう。すると、背けた視線の先に空のボールとカタカタと不機嫌さを表すように小刻みに揺れている2つのボールがある。心なしかボールに罅が入っている気がする。
「むふぅ~ますた~」
寝ぼけているのか、わざとなのか、アルがそのスタイルの良い体を更に密着させてくる。
ボールが更に大きく揺れる。今度は黒いオーラが溢れ出ている。その無駄肉削いでやる。何て声、僕は聞いてない。うん、聞いてない。
「お、起きてアル!早く離して!じゃないと、あわわわ」
「ふぅ、どうしたんですか?ます、た......誰ですかその女」
「え、え?あ、アルがふ、2人?あ、ああ、も、もう!もう!どうなってんのさ!?」
◇◇◇
「で、アレはアルの‘みがわり‘でいいんだね?」
「はい、その通りです」
「もう、何で本人が忘れているのさ。後、勝手にボールから出てきちゃダメだって言ったよね?」
「それは......テヘ♪」
「反省してなさそうだし、プラス30分ね」
「......ふぁい」
アルがさっき持ってきてくれた朝食のパンを食べながら、話を聞く。
先程のアルはアルが使って‘みがわり‘で作り出した偽物で、本物は朝食を取りに行っていたみたい。そして帰ってきたアルが、僕に抱き着いている‘みがわり‘のアルを見つけて我を忘れたというわけだ。
暴れだしたのとその他諸々の罰としてアルは天井から逆さに縄でグルグル巻きにされて吊るしている。
『ねえねえ、コハク。今日はどうするの?』
ボールの中からセーレが聞いてくる。その問いに少しだけ悩んでから答える。
「そうだね、そろそろ家に帰ろうかと思ってる。ガンテツさんの所は、ん~、今日も居なかったら書置きを置いていこう。皆もそれでいいかな?」
『ご主人様がいいなら』
『コハクの言うことならいいよ!』
「マスターが言うならば、私は何も言うことはありません。何処までも着いていくだけです」
「あはは、ありがとう。それじゃあ、行こうか」
残っていたパンの残りを口に放り込み、立ち上がる。荷物をまとめる僕を見てアルが焦りだす。
「まま、待ってください!これを外してからにしてくださ~い!」
勿論、冗談である。ちゃんとアルの縄を解いてから部屋を出た。
ポケモンセンターを出た僕達はそのままガンテツさんの家に向かう。といってもテレポートで一瞬なんだけど。
「居る?」
「ん、居ない」
「そっか、挨拶したかったけど、仕方ない。行こうか」
フィーに家の中の気配を調べてもらい、誰も居ないことを確認してから、書置きをポストの中に入れて置き、最後に頭を下げてから歩き出す。
「アル、‘テレポート‘」
「はい」
そうして僕達はヒワダタウンを旅立った。
そして、
「帰ってきたね」
「そうですね」
3日振りにワカバタウンに帰ってきた。
◇◇◇
「まずは、ウツギ博士に報告に行こうか。セーレの事を説明しなきゃ」
「その前にお母様に挨拶しなくていいのですか?」
「うっ、あ、後でいいよ」
そう言って、少しだけ早く歩く。
別に恥ずかしいとじゃないし、少し離れてて寂しかったわけでもないし。と、誰に言い訳しているのだか。
『私......?』
「ッ!......分っていても黙っていてほしかったよ」
フィーに心の中を読まれ、かなり恥ずかしいが、何とか表情には出さない。
そのままやけくそ気味に研究所の扉を開ける。
「ただいま戻りましたぁ!」
「うわぁ、びっくりした。どうしたのそんな変な顔して。ああ、いやそれよりもおかえり、予想以上に早かったね」
「いえ、色々ありまして」
扉を開けるとウツギ博士が驚いた表情で此方を見ていた。
「聞きたい事はいっぱいあるんだけど、まずはボールのことを教えてくれるかい?」
「ああ、はい。そのことなんですが......」
「ん?もしかして、分からなかったのかい?」
「いや、そうじゃなくてですね」
「それなら、どういうことなんだい?」
僕はセーレのことについて話した。勿論、アルの事とか、恩返しとか、アルの事とかは隠したけど。
「いやはや、驚いた。まさか幻のポケモンに会えるとはね。いや、君だからかな」
「それで、ご相談があるんですが......」
「ああ、いいよ。そのボールは君にあげるよ」
「そうですよねダメですよね、でも僕は......え?」
無意識に強く握りしめていたGSボールを、思わず落としそうになる。
「い、いいんですか!?」
「ああ、君がセレビィの力を使って悪用なんかしないって僕は知っているからね。それに君の話を聞くと、セレビィは君になついているようだ。君と居る方がセレビィにとっても幸せだろう」
「ありがとうございます!」
「いや、お礼はいいよ。それより、他に話したいことがあるんだろう?」
ウツギ博士は僕にそう問いかけた。まさか、気付かれているとは思わなくて、言い淀む。実は、と説明をする。
「そうか―――」
◇◇◇
扉を開けると、台所の方からトントントンと、何かを切っている音が聞こえる。
「ただいま、母さん」
「おかえり、もう少しでご飯出来るから、手を洗ってきなさい」
「あ、うん」
荷物を自分の部屋に置いて、手を洗ってからリビングに行くと、テーブルに出来立ての料理が並べてある。
「アルちゃんは?」
「部屋で待っててもらった。ご飯もちゃんと渡してきたよ。......それで、話したいことが―――!」
「先に食べなさい。お腹減ってるでしょ?」
「......うん」
お互い口を開くことなく、食事を終える。
「ごちそうさま」
「......それで、話したいことって?」
「僕は―――」
―――旅に出ようと思ってる。
「そうか、君も旅に出るんだね」
「君、も?」
数十分前、ウツギ博士にも相談をした。
「ああ、ゴールド君もクリスちゃんも先に旅に出たよ。ゴールド君はポケモンマスターに、クリスちゃんもポケスロンに出るんだって」
「そっか、2人とももう旅に出たんだ」
2人が夢に向かって旅に出たことも話した。
「ああ、それと伝言を預かってるよ」
「伝言ですか」
「ゴールド君は『待ってるぜ』、クリスちゃんは『先に行くわ』だ、そうだよ」
「そう、ですか」
「それと、僕からはこれを」
「これは?」
「知り合いの博士から貰ったポケモン図鑑さ。きっと役に立つ」
博士に背中を押してもらった。
「だから、僕は旅に出るよ」
「そう......」
そのまま黙ってしまい、沈黙が続く。どれくらい時間がたったのか、不意に口を開いた。
「......勝手にしなさい」
そう言って、此方を一瞥することなく部屋を出て行ってしまった。
後ろを振り返る。生まれて過ごしてきた家。おそらく長い間帰ってくることは出来ないだろう。それでも、足を止めることはしない。
そして、そこに母親の姿はなかった。
「行ってきます」
腰につけた3つのボールの重みを感じながら、歩み始めた。その時、声が聞こえた。
―――行ってらっしゃい
その言葉に一瞬だけ立ち止まった。それでも後ろは振り返らなかった。
『あの、マスター』
「どうしたの、アル?」
『貴方は絶対に私が守りますから』
「―――ありがとう」
『ねえ、アルちゃん。私の息子をよろしくね』
‘みがわり‘
用途色々。ちなみにそれぞれ自我を持っている。伝説が作ったみがわりだからしゃーない。
罰【逆さ吊り】
スカート?......ご想像にお任せします。
居ないガンテツ
一応、生きてる。