上空から見下ろすジョウト地方は中々の景色だと思う。
「待って!待って!降ろして!」
「大丈夫です!マスター!安心してください!」
「安心出来ないって!」
‘へんしん‘を解き、元の姿(萌えもん)に戻ったアルは僕をお姫様だっこで、32番道路らしき上空を飛んでいる。
どうやらアルは‘リフレクター‘や‘しんぴのベール‘等を使って、僕達の姿が見えないようにしてるみたいだ。しかも、誰にも見えないということで色々と僕に仕掛けてきている。
現に今も、
「グヘヘ、マスタぁー」
「ひゃうあ!...アル!」
「すいませんマスター。ついバランスが崩れて、偶然にも、そう、偶然にもマスターの耳に息を吹きかけてしまっただけです。...フヘヘ」
絶対嘘だ。フヘヘとか言ってしまってるし。しかも、わざと遅めに進んでる。アルなら飛行機並み、いやそれより早くヒワダタウンに着けるはずだ。
このままじゃまずい。何とかしないと!
―――エヘヘ。なら、私が助けてあげる。
「......へ?」
「これは......」
あ...ありのまま、今、起こった事を話すぜ!僕はアルにお姫様だっこで32番道路を飛んでいたと思っていたら、いつの間にかヒワダタウンについて居たんだ。......何を言っているのか、分からないと思うが、僕も何をされたか分からない。‘さいみんじゅつ‘とか‘テレポート‘だとか、そんなチャチャなもんじゃねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。
僕がポルナレフ状態になるくらい何も分からなかったのだが、アルは何か気付いたようで。
「私とマスターのイチャイチャタイムをっ!」
「いや、イチャイチャしてないから」
アルが冗談じゃないくらい激オコなので、頭を撫でて機嫌をとっておく。
「ふぁ、ますたぁ」
「はいはい。いい子だからねえ、大人しくしようね?」
「ふぁい、ますたぁ」
一体何があったのか、気になるんだけど。...助けてくれてありがとう!
―――えへへ、コハクに感謝された~。
何処からか声が聞こえた気がした。
◇◇◇
「えっと、ガンテツさんの所は何処だろう?」
「えっと、あっちです!マスター!」
昨日、寝るまでずっとアルのご機嫌取りに費やした甲斐があったようで、僕の腕にくっつきながらニコニコしている。
「この家です!」
「ありがとう、アル」
お礼に頭を撫でてあげると、アルはえへへ、と笑う。ずっとこのままだったら可愛いのにとは口には出さない。
「すいませ~ん。ウツギ博士から頼まれたものですけど~」
「お、もう来たのか。わしがガンテツだ」
「僕はコハクです。...それでこれが例のものです」
リュックの中からジーエスボールを取り出す。
「ほう、見たこと無いボールだな。......いや、これはボールとは別の道具みたいだ。一日待ってくれ。調べておこう」
「ありがとうございます。明日また見に来ます」
「おう」
僕からボールを受け取ったガンテツさんは、すでに職人モードになり見て分かるほど集中し始めた。
「さて、どうする?一日も時間が出来ちゃったし、何かしようか」
「私はマスターと一緒なら何処までも着いて行きます!」
「はは、ありがとう」
こういう好意は素直に嬉しい。とはいえ、何処に行こう。
「あ、そうだ。確かウバメの森で変な噂があるんだって」
「変な噂、ですか?」
「そうそう。前にラジオでやっててね。何でも誰も居ないのに声が聞こえたり、風も無いのに木々が揺れたり」
「や、やめてください」
伝説の威厳は何処にいったのか、怖い話でガクブル震えるアルの姿がそこにあった。
「そんなに怖くないでしょ?」
僕がそう聞くと、震えてた体をピタッと止めて、真顔になり言う。
「気弱系って萌え萌えってこないですか?」
「こない」
即答で答えると、何だか「マスターには気弱ではダメ、ならば...」とか言ってる気がする。気がするだけであってほしい。
「それじゃあ、行こうか」
「はい、マスター」
―――コハクが来てくれるんだ~嬉しいな~。
「......ん?」
「どうしましたか、マスター?」
「いや、声が聞こえたような...」
「......そう、ですか」
「ま、気のせいだよ」
「行こうか、アル」
「はい!マスター!」
「噂って本当なのかな~」
「......誰だ。我とマスターの邪魔をするのはッ」
「ん?何か言った?」
「いえ、何も言っていませんよ。...はっ!私がマスターペロペロしたいというのが漏れてましたか!?」
「何考えてるのさ!全く!行くよ!」
照れくさくなって早足で歩いた僕に、立ち止まったアルの言葉は聞こえなかった。
「―――マスターは私の。―――絶対に、―――絶対に渡さない」
完全体アルセウスの特技その二
‘しんぴのベール‘‘リフレクター‘は防御だけじゃありませんよ。これでどこでもマスターと...ウフフ。
謎の這いよる幻
名状しがたい緑色でザ・ワールドを使える。
これからやって来るであろうロケット団
壊滅寸前