「此処がウバメの森か~」
薄暗く、光の届かないような森に僕とアルは居た。
「ほら、怖くないですか?私に抱きつきたくないですか?押し倒したくないですか?私はいつでもカモンですよ」
「うん。今ので怖くなくなったよ」
アルの見えそうで見えない扇情的なポーズを見て、何故か怖くなった。ふしぎだなー、今なら何でも出来そうだ。
「さあ、行こう」
「マスターが何時になく凛々しい!かっこいいです!」
「ははは、そうでも無いさ」
―――今日は紫か
この前もあったような足軽さで森を進む。
―――むう。デレデレして~!......邪魔だな、あいつ。
「......!」
「どうしたの、アル?」
「いえ、何も。それより~怖くて~(ちっ逃げたか)」
―――あ、危ないな~!やっぱりあんな奴がコハクの傍に居るなんて許せない!
「何か修羅場ってる気がする」
「マスター?」
◇◇◇
「さて、此処が噂をされているほこらだね」
「これがですか?」
「そう、え~と何だっけ、確か...」
ザワザワ、ザワザワ
風も無いのに、不自然に木々が揺れる。
「え~と、悪ふざけはやめようよ」
「あの、私じゃないです」
「「・・・・」」
「そ、そそそ、それでこの後はどうするんですか!?」
「そ、そうだね!えっと、手を3回叩いて『神様、森の神様遊びましょう』って言うと―――」
―――は~あいっ。
「ひやぁ!」
「ま、マスター!」
何ともみっともない声を出してしまったが、しょうがない。
「あ、アル!もう行こう!早く帰ろう!」
―――え~、もう帰るの~?
「早く!ハリー!ハリー!ハリィー!!」
「ま、マスター!?どうしよう、マスターがご乱心だ!」
「あああ!......きゅう」
「マスタァァァアア!!」
―――あはは、やっぱりコハクは面白いな~
コハクが完全に気絶し、意識が無いのかを確認したアルは虚空に向かって話しかける。
「......これ以上マスターに近づくな、塵芥」
―――誰に言ってるのかな、このメスは?
「貴様が、我とマスターの時間を邪魔をしたのだ、殺されても文句ないだろう。マスターも許してくれるだろう」
―――何言ってるの?コハクが嫌がってたから、助けただけだよ。むしろ貴方がコハクに迷惑をかけてるんじゃないの?
「ふざけるな!!貴様に何が分かる!」
―――分かるよ。だって私はコハクをずっと見てきたもん。ずっと、―――ずっと。
声の主が愛おしいような声で呟いた、その時―――
「うぅ、頭がガンガンするぅ」
「マスター!大丈夫ですか!?」
―――ちっ、......まあ、いいや!またね、コハク!
「あれ?誰か居たの?」
「いえ、居ませんでしたよ?」
「そ、そう。そ、それよりも早く戻ろう?」
「いやん、もう!マスター、可愛いです!」
「か、可愛いって何さ!」
◇◇◇
「はあ~、何だか今日は疲れたな」
「マスター、マスター。そんなにお疲れでしたら、私がマッサージでもしましょうか?」
「嫌だ。絶対変な所触るじゃん」
「そんな真似しませんよ~、えへへ」
「そういうセリフは目を見て言おうね」
あれから急いでポケモンセンターに戻った僕達は、部屋を一室借りて引きこもり、謎の超常現象は収まったのだが、今度はアルからの誘惑が酷くなった。狭い個室の中では逃げる場所もなく、どんどん追い詰められているわけだ。
「ねえ、近くない?」
「いいえ、近くありません。この距離がいいんです」
とか、
「はい、マスター。あ~ん」
「いや、恥ずかしいから...」
とか、もう恥ずかしくて、恥ずかしくて。
でも油断は出来ない。アルがいつスイッチが入るか、僕でも分からないんだから。
「ねえ、マスター?」
来た!このドヨンとした暗い空気。泣きそうなアル。そしてハイライトがなく、一切の希望を感じられないような目。完全にスイッチが入ってる。
「ど、どうしたの?」
少しどもりながら、慎重に僕はアルに話しかける。
「マスターは私を捨てないですよね?マスターは私をもう1人にしませんよね?マスターは私を嫌いにならないですよね?」
唐突に始まるのがこの状態のアルだ。全く話が分からない。それにしても、かなりゾクッと来た。
「ますたぁ、ますたぁ」
「あ、ああ。大丈夫、大丈夫だから」
僕に抱きついてくる―――依存してくる。それを僕は抱き寄せる。
「ますたぁ!ますたぁ!」
「大丈夫、大丈夫だから」
アルが僕を泣き叫びながら、抱きついてくる。それを宥め、僕は思う。
ああ、歪んでる。何でこうなった。と
コハク13歳
白より紫
修羅場
幻vs伝説の精神口撃
ヤンデレモード
アル=依存系