真・恋姫†無双~南北コンビの三国志~   作:クーロン

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馬乗り

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「大丈夫……。ジョ〇ョ7部にマ〇バオー、さらに頭〇字Dに湾岸ミッ〇ナイトも読んだんだ。イケる! って、ニャァァァァァアッ!」

「…………」

「ミギャァァァァアッ!? イッテぇ……受身したからいいけどよ。もう一回だ。キョァァァァア!!」

「「…………」」

「こんのクソ馬……! 人間様を嘗めんなァァァッッ! キャオラァァァアッ!」

『…………』

「ギャァァッ!? どこ行くんだよコイツはァッ!? ああ、クソッ! 足が引っかかって……! 擦れる擦れるスレル! 熱いッ! ハゲるっ!」

『………………』

「ウググググ……! 無理ぃ! もう無理っ! 馬なんて乗れるかァ!」

『ハァっ……』

 

 何度も馬に飛びつき、乗ろうとしたけどコレは無理だ。

 乗ると何度でも暴れて、振り落とされる。更に落ちた時、鞍に足が引っかかり地面と擦れる。

 乗り方は何度か説明されたけど、それをやって実践できるかはまた別だ。

 

「……下手糞」

「下手糞だねぇ……」

「うるせえ仁! 慶もだ! 何でお前等は普通に乗れたんだよ!?」

「習ったことがある」

「厳顔って人から、習ったことあるんでね」

 

 俺が苦戦する中、何故かこの二人は簡単に乗りこなしていた。

 それ見て、コイツらに出来るのなら、俺にも出来るんじゃないかと思って頑張った。

 だけど、現実は非情だった。

 乗ったら振り落とされ、走らせたらワケのわからん方に走る。そして落とされる。その繰り返し。

 

「……仙ちー、馬乗るのヘッタくそやなぁ……。さっき説明したやろ?」

「説明されたけどよォ! できないんだよ!!」

「そんなやけくそにならないで、もう一度、やってみたらどうでしょうか?」

「無駄よ、月。コイツもう、才能がないもの」

 

 うん、それには気付いている。

 だけど、不思議なことに、はっきり言われるとむかつく。

 スゲーむかつく。

 

「この眼鏡ェ! 一言で片づけんな!」

「眼鏡!? ボクの名前は賈駆って言ってるでしょ!? 真名も詠って言ったわよね!?」

「いいだろうが! もう、眼鏡って印象しかないんだよ! 他に特徴あると思っているのか!!」

「あるわよ! あるに決まっているでしょ!!」

「じゃあなんだ!? 眼鏡が本体だろうが! お前は眼鏡のス〇ンドだろうが!! もしくは生命力の像だろうが!」

「〇たんどって何なのよ!? ていうか、ボクの命を眼鏡にする気!?」

『ハァ……っ』

 

 気付いたら、眼鏡とギャーギャー言い合っていた。

 ……それを見ている周りの人に、溜息を吐かれた気がした。

 

「へぅ……。詠ちゃん落ち着いて。仙刀さんも」

「ボクは落ち着いているわよ!! 騒いでいるのはソイツよ!」

「黙れこのダボ! 眼鏡割るぞ!」

「ダ……ダダダ、ダボ!? アンタに言われたくないわよ! あんたは頭の中、何もないでしょ!」

「言ったな、このアマっ!」

「仙刀、落ち着けと言っている。さっさと馬に乗れ」

 

 詠と口喧嘩していたら、仁が俺の頭に空手チョップをした。……若干、仁の顔に血管が浮かんでいる気がした。

 はぁ~あ。“さっさと馬に乗れ”って言ってもな。

 

「って言ってもよぉ。乗り方って『馬に跨ったら、腹を叩く』だろ? そうしても暴れるからダメなんだよ」

「強く叩き過ぎとちゃうの?」

「普通のつもりだけどなぁ……。他にコツってあるのか?」

「ないで」

 

 霞はキッパリ言い切った。

 

「ハァ!?」

「だって、そうすれば普通に乗れるんやから」

「乗れねえんだよ!? その“やればできる”理論止めてくれよォ~!」

「まぁまぁ。いったん乗ってみいや」

 

 霞は、俺がさっきまで乗っていた馬を引っ張ってきた。

 さっきまで暴れ馬だったその馬は今、とても大人しくしている。……さっきと大違いじゃねえか。

 

「……何でソイツ、今はそんなに大人しいんだよ。……ま、乗ればいいんだろ?」

 

 俺は馬の背に手を置き、右足から跨った。

 よし、ここまではオッケー。

 

「で、馬の腹を叩くんだろ?」

「弱く叩くんやで」

「分かってオォォォオォ!? 何でだよ!? まだ叩いていないのに! 勝手に走り出したぞ!? ギョァァァァア!!」

 

 気が付けば振り落とされ、また地面に落ちていた。

 地面が草で、受身をとったから怪我はないけど、何回も落ちると流石に痛い。

 尻を叩いて、汚れを落とすのも何度目だか……。

 

「馬に嫌われたんやろ」

「……馬に嫌われてる」

「やっぱり……?」

 

 ……起き上がったところで追い打ちされた。

 そう言われ、どうしたものかと思い、ボリボリと頭を掻いている時に、見覚えのない人と目があった。

 日に焼けた肌に、赤い髪の少女だ。物静かな雰囲気だけど、何でか、コイツはヤバい(・・・・・・・)という直感がある。

 

「なぁ、霞……。誰?」

 

 霞の肩をポンと叩いて聞いた。

 霞は、あぁと言って紹介した。

 

「恋……って、真名はあかんか。呂布っていうんや」

「……霞、真名預けたの?」

「まぁ、月があずけとるしなぁ」

 

 呂布、ねぇ。

 ……………………。

 

「おい、仙刀ォ。何考えているんだい?」

「呂布ってのと、()りてぇなぁと思ってな」

「勇ましいねぇ。だけど、そいつは後にしな。まずは馬だ」

 

 確かにそうだ。速く乗れるようにならないと。

 いざとなったら、馬に二人乗りって一瞬だけ考えたけど、自転車(チャリ)ならとにかく、馬に二尻なんてするのはキツそうだ。

 そう思っていると、月がおずおずとしながら、一つ提案してきた。

 

「あの……仙刀さん、あまり馬に慣れていませんよね……?」

「……見たとおりですよ」

「なら、老馬がいいと思うんです」

「老婆ァ? ババアに乗るって……冗談キッツイな、月」

「そ、そうじゃなくて! 経験豊富で大人しい馬に乗るのが良いと思うんです」

「あ、それええなぁ。変に若い馬に乗って、扱いきれず危ないところで落馬、なんてしよったらオダブツやし」

 

 そういう意味で、老馬がいいってことか……。納得のいく話だ。

 

「月、ここに老馬を連れて来たらいいのね?」

「うん。詠ちゃん、お願いね」

 

 月に頼まれた詠は、すぐに目的の馬を連れてきた。

 馬の判別って、見ただけで分かるモノなのか……?

 

「で、これに乗るのか?」

「そうよ。さっさと乗りなさい」

「へーへー」

 

 生返事をして、馬の背に跨る。ここまではいい。乗るまではいい。

 問題はここからだ。

 

「で、腹を叩くと動き出すんだろ? よっ」

 

 仙刀はポンと足で馬を叩いた!

 老馬は逃げ出した!

 仙刀は振り落とされてしまった!

 

「何も変わらねえぇぇぇー!」

「大人しい老馬に……ぷぷっ……すぐに落とされ……ぷぷっ……」

「笑うな霞ァ!」

「いや~仙ちー、落ちるの慣れてんなぁ」

「うるせぇ! そんなにキレイだったか? 俺の落ちっぷりはよォ!」

「それはもう。こう……」

「見せなくていい! って、うぉマジでそんな? 本当にキレイだ」

 

 ひかえ目に言っても、ミケランジェロの彫刻のようにってか。

 って、霞。受身まで再現する必要はないだろ。

 

「貴様はさっさと馬に乗れ!」

「アンタはさっさと馬に乗れ!」

「怒られてもうたなぁ」

 

 仁と慶に怒鳴られ、背中を蹴られた。本当にこいつ等、遠慮なくなってきたな……。

 多分、喜んでいいのだろうけど。

 

「さて……と」

「…………」

 

 馬に跨ったところで、道着のズボンの裾をクイクイ引っ張られた。

 さっきの赤毛……呂布だったっけ。

 

「どうした?」

「……強く蹴っちゃダメ。……嫌がっている」

「強くって言っても普通にポン、とやってるだけだけど?」

「……撫でる」

「足でか?」

 

 俺がそう言うと、呂布は無言でうなずいた。

 ……ものは試しだ。一回、やってみるか。

 足で撫でる……っと。

 

「お! 歩いた!」

『おぉ~!』

 

 さっきまでとは違う出だし。

 あとは、蹴れば走るのか?

 

「これで腹を蹴ればいいのかー!?」

「加速に気をつけなァ!」

「変に蹴ると振り落とそうとするで!」 

「頑張って下さーい」

「気をつけないと、また落ちるわよ!」

 

 ワイワイと声援が聞こえる。その中には、アドバイスもある。

 その通りに……上手く……。

 

「おっ? おっ! 走った走った! で、曲がるのは!?」

「体重を行きたい方へ傾けろ」

「あんがと、仁!」

 

 よしっ! 本当に曲がった! 上手く、Uターン……できた。さて、元の位置に戻るか。

 

「さっきまであんな落ちてたとは思えんなぁ」

「月の提案が大当たりしたわね」

「南郷さ~ん! 今度は止めて下さ~い」

「分かってる! 確か……」

 

 ……あ。ヤバい。乗る事だけ考えて、一つすっかり忘れた。

 

「なあ……止めるのって、どうやんだ……?」

『バカーーー!!』

 

 全員(俺以外)の声が綺麗に揃った。

 

「るっせえ! 仕方ねえだろ! 止め方を忘れたんだから!」

「仙ちー、ホンマもんのアホやなぁ!」

「さっさと飛び降りろ仙刀(バカ)!」

「すぐにおりなさい! 月が巻き込まれるわ!」

「速いから恐いッ!」

「貴様は……! さっきまでで、何回落ちたと思っている! 今更問題ないっ!」

「それでも恐いんだよォゥ!」

「月と詠はこっち来なァ! もうここは危ねえ!」

「えっ!? キャアッ!」

「慶! ちょっと無理やりすぎよ!」

 

 慶は月と詠を抱えて、俺が通るであろう場所を離脱した。

 仁と霞は自力でよけた。だけど……。まだ呂布が残っていやがる!

 

「呂布ゥ~~! どけぇええぇ!」

 

 俺は、力一杯叫んだ。それでも、呂布は動かない。

 せめて、少しでも道をずらそうと、俺は左に傾けた。

 

「……止まって。……よしよし」

 

 呂布は一言だけ呟くと、馬は止まった。

 大統領命令ですよ、あれじゃ。止まりましたもん。ピタって。

 

「止まっ……た……? なぁ、呂布。どうやった?」

「……頼んだ。あと……恋でいい。……月達もあずけている」

「分かった。俺には真名ってものないから、仙刀でいい」

「……仙ちぃじゃないの? ……霞がそう呼んでた」

「それでいいよ……。とにかく、この馬止めてくれてありがと」

 

 今度はしっかりと足から降りる。

 で、これを自力で出来ないとダメなんだよな……。恋から馬の止め方でも習っておくか。

 

「なぁ、恋。どうやって馬止めたんだ?」

「……頼んだ」

「いや、そうじゃなく」

「………………?」

 

 恋は不思議そうに首をかしげた。

 ……いや、なんで動物に頼めるんだよ。こりゃ、参考にならねえな。

 

「恋、他にもうちょいコツみたいなのを……」

「……他?」

「ちんきゅ~~きぃぃっく!」

「うぉっ!? 危ねえぞ、おい」

「お前~! 恋殿の真名を……!」

 

 恋と話していると、後頭部から変な殺気を感じた。

 ひょいっと躱し、飛んできたのを掴んだ。どうやら、上手いこと足を掴んだみたいだ。

 蹴ってきたのは、薄緑の髪の子だ。

 

「いや、真名は預けられたし。てか、お前誰?」

「お前なんかに答えないのです!」

「ふ~ん」

 

 俺はコイツの両足を掴み、逆さづりにした。そして、ぶらぶらと左右に振る。気分悪くなるぞ~コレは。

 

「貴様~! 止めるのです!」

「はいはい」

「べぶっ! 落とせとは言ってないのです!」

「で、恋。コイツ誰?」

「……ちんきゅ」

 

 ちんきゅ、ね。

 まぁ、もう友好的に握手なんて無理だろうけど。

 

「がるるるる~」

 

 ……唸っているし。

 

「まぁ、取り敢えず扱えるようになったな。行くぞ」

「え?」

 

 仁はいつの間にか、馬に荷物を載せていた。

 “行く”ってどこにだよ。

 

「『え?』ではない。旅を続けるぞ」

「あ~そういうこと。もう行く? あと少しダラダラしてても……」

「貴様の旅だろうがっ! 一泊の時間でも惜しいのだ。さっさと行くぞ」

「俺の準備も終わったぜ」

 

 そうか。もう行くのか……。

 

「仕方ねえ。行くか! 月、詠、霞、恋、珍。世話になった!」

「そんなに急ぐ旅ですか……」

「おお。じゃあな」




ネタが浮かばない……。再投稿前ってどんな感じだったか、すっかり忘れています。
まあ、あの頃は頭完全におかしくなっている頃でしたが……

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