1
「大丈夫……。ジョ〇ョ7部にマ〇バオー、さらに頭〇字Dに湾岸ミッ〇ナイトも読んだんだ。イケる! って、ニャァァァァァアッ!」
「…………」
「ミギャァァァァアッ!? イッテぇ……受身したからいいけどよ。もう一回だ。キョァァァァア!!」
「「…………」」
「こんのクソ馬……! 人間様を嘗めんなァァァッッ! キャオラァァァアッ!」
『…………』
「ギャァァッ!? どこ行くんだよコイツはァッ!? ああ、クソッ! 足が引っかかって……! 擦れる擦れるスレル! 熱いッ! ハゲるっ!」
『………………』
「ウググググ……! 無理ぃ! もう無理っ! 馬なんて乗れるかァ!」
『ハァっ……』
何度も馬に飛びつき、乗ろうとしたけどコレは無理だ。
乗ると何度でも暴れて、振り落とされる。更に落ちた時、鞍に足が引っかかり地面と擦れる。
乗り方は何度か説明されたけど、それをやって実践できるかはまた別だ。
「……下手糞」
「下手糞だねぇ……」
「うるせえ仁! 慶もだ! 何でお前等は普通に乗れたんだよ!?」
「習ったことがある」
「厳顔って人から、習ったことあるんでね」
俺が苦戦する中、何故かこの二人は簡単に乗りこなしていた。
それ見て、コイツらに出来るのなら、俺にも出来るんじゃないかと思って頑張った。
だけど、現実は非情だった。
乗ったら振り落とされ、走らせたらワケのわからん方に走る。そして落とされる。その繰り返し。
「……仙ちー、馬乗るのヘッタくそやなぁ……。さっき説明したやろ?」
「説明されたけどよォ! できないんだよ!!」
「そんなやけくそにならないで、もう一度、やってみたらどうでしょうか?」
「無駄よ、月。コイツもう、才能がないもの」
うん、それには気付いている。
だけど、不思議なことに、はっきり言われるとむかつく。
スゲーむかつく。
「この眼鏡ェ! 一言で片づけんな!」
「眼鏡!? ボクの名前は賈駆って言ってるでしょ!? 真名も詠って言ったわよね!?」
「いいだろうが! もう、眼鏡って印象しかないんだよ! 他に特徴あると思っているのか!!」
「あるわよ! あるに決まっているでしょ!!」
「じゃあなんだ!? 眼鏡が本体だろうが! お前は眼鏡のス〇ンドだろうが!! もしくは生命力の像だろうが!」
「〇たんどって何なのよ!? ていうか、ボクの命を眼鏡にする気!?」
『ハァ……っ』
気付いたら、眼鏡とギャーギャー言い合っていた。
……それを見ている周りの人に、溜息を吐かれた気がした。
「へぅ……。詠ちゃん落ち着いて。仙刀さんも」
「ボクは落ち着いているわよ!! 騒いでいるのはソイツよ!」
「黙れこのダボ! 眼鏡割るぞ!」
「ダ……ダダダ、ダボ!? アンタに言われたくないわよ! あんたは頭の中、何もないでしょ!」
「言ったな、このアマっ!」
「仙刀、落ち着けと言っている。さっさと馬に乗れ」
詠と口喧嘩していたら、仁が俺の頭に空手チョップをした。……若干、仁の顔に血管が浮かんでいる気がした。
はぁ~あ。“さっさと馬に乗れ”って言ってもな。
「って言ってもよぉ。乗り方って『馬に跨ったら、腹を叩く』だろ? そうしても暴れるからダメなんだよ」
「強く叩き過ぎとちゃうの?」
「普通のつもりだけどなぁ……。他にコツってあるのか?」
「ないで」
霞はキッパリ言い切った。
「ハァ!?」
「だって、そうすれば普通に乗れるんやから」
「乗れねえんだよ!? その“やればできる”理論止めてくれよォ~!」
「まぁまぁ。いったん乗ってみいや」
霞は、俺がさっきまで乗っていた馬を引っ張ってきた。
さっきまで暴れ馬だったその馬は今、とても大人しくしている。……さっきと大違いじゃねえか。
「……何でソイツ、今はそんなに大人しいんだよ。……ま、乗ればいいんだろ?」
俺は馬の背に手を置き、右足から跨った。
よし、ここまではオッケー。
「で、馬の腹を叩くんだろ?」
「弱く叩くんやで」
「分かってオォォォオォ!? 何でだよ!? まだ叩いていないのに! 勝手に走り出したぞ!? ギョァァァァア!!」
気が付けば振り落とされ、また地面に落ちていた。
地面が草で、受身をとったから怪我はないけど、何回も落ちると流石に痛い。
尻を叩いて、汚れを落とすのも何度目だか……。
「馬に嫌われたんやろ」
「……馬に嫌われてる」
「やっぱり……?」
……起き上がったところで追い打ちされた。
そう言われ、どうしたものかと思い、ボリボリと頭を掻いている時に、見覚えのない人と目があった。
日に焼けた肌に、赤い髪の少女だ。物静かな雰囲気だけど、何でか、
「なぁ、霞……。誰?」
霞の肩をポンと叩いて聞いた。
霞は、あぁと言って紹介した。
「恋……って、真名はあかんか。呂布っていうんや」
「……霞、真名預けたの?」
「まぁ、月があずけとるしなぁ」
呂布、ねぇ。
……………………。
「おい、仙刀ォ。何考えているんだい?」
「呂布ってのと、
「勇ましいねぇ。だけど、そいつは後にしな。まずは馬だ」
確かにそうだ。速く乗れるようにならないと。
いざとなったら、馬に二人乗りって一瞬だけ考えたけど、
そう思っていると、月がおずおずとしながら、一つ提案してきた。
「あの……仙刀さん、あまり馬に慣れていませんよね……?」
「……見たとおりですよ」
「なら、老馬がいいと思うんです」
「老婆ァ? ババアに乗るって……冗談キッツイな、月」
「そ、そうじゃなくて! 経験豊富で大人しい馬に乗るのが良いと思うんです」
「あ、それええなぁ。変に若い馬に乗って、扱いきれず危ないところで落馬、なんてしよったらオダブツやし」
そういう意味で、老馬がいいってことか……。納得のいく話だ。
「月、ここに老馬を連れて来たらいいのね?」
「うん。詠ちゃん、お願いね」
月に頼まれた詠は、すぐに目的の馬を連れてきた。
馬の判別って、見ただけで分かるモノなのか……?
「で、これに乗るのか?」
「そうよ。さっさと乗りなさい」
「へーへー」
生返事をして、馬の背に跨る。ここまではいい。乗るまではいい。
問題はここからだ。
「で、腹を叩くと動き出すんだろ? よっ」
仙刀はポンと足で馬を叩いた!
老馬は逃げ出した!
仙刀は振り落とされてしまった!
「何も変わらねえぇぇぇー!」
「大人しい老馬に……ぷぷっ……すぐに落とされ……ぷぷっ……」
「笑うな霞ァ!」
「いや~仙ちー、落ちるの慣れてんなぁ」
「うるせぇ! そんなにキレイだったか? 俺の落ちっぷりはよォ!」
「それはもう。こう……」
「見せなくていい! って、うぉマジでそんな? 本当にキレイだ」
ひかえ目に言っても、ミケランジェロの彫刻のようにってか。
って、霞。受身まで再現する必要はないだろ。
「貴様はさっさと馬に乗れ!」
「アンタはさっさと馬に乗れ!」
「怒られてもうたなぁ」
仁と慶に怒鳴られ、背中を蹴られた。本当にこいつ等、遠慮なくなってきたな……。
多分、喜んでいいのだろうけど。
「さて……と」
「…………」
馬に跨ったところで、道着のズボンの裾をクイクイ引っ張られた。
さっきの赤毛……呂布だったっけ。
「どうした?」
「……強く蹴っちゃダメ。……嫌がっている」
「強くって言っても普通にポン、とやってるだけだけど?」
「……撫でる」
「足でか?」
俺がそう言うと、呂布は無言でうなずいた。
……ものは試しだ。一回、やってみるか。
足で撫でる……っと。
「お! 歩いた!」
『おぉ~!』
さっきまでとは違う出だし。
あとは、蹴れば走るのか?
「これで腹を蹴ればいいのかー!?」
「加速に気をつけなァ!」
「変に蹴ると振り落とそうとするで!」
「頑張って下さーい」
「気をつけないと、また落ちるわよ!」
ワイワイと声援が聞こえる。その中には、アドバイスもある。
その通りに……上手く……。
「おっ? おっ! 走った走った! で、曲がるのは!?」
「体重を行きたい方へ傾けろ」
「あんがと、仁!」
よしっ! 本当に曲がった! 上手く、Uターン……できた。さて、元の位置に戻るか。
「さっきまであんな落ちてたとは思えんなぁ」
「月の提案が大当たりしたわね」
「南郷さ~ん! 今度は止めて下さ~い」
「分かってる! 確か……」
……あ。ヤバい。乗る事だけ考えて、一つすっかり忘れた。
「なあ……止めるのって、どうやんだ……?」
『バカーーー!!』
全員(俺以外)の声が綺麗に揃った。
「るっせえ! 仕方ねえだろ! 止め方を忘れたんだから!」
「仙ちー、ホンマもんのアホやなぁ!」
「さっさと飛び降りろ
「すぐにおりなさい! 月が巻き込まれるわ!」
「速いから恐いッ!」
「貴様は……! さっきまでで、何回落ちたと思っている! 今更問題ないっ!」
「それでも恐いんだよォゥ!」
「月と詠はこっち来なァ! もうここは危ねえ!」
「えっ!? キャアッ!」
「慶! ちょっと無理やりすぎよ!」
慶は月と詠を抱えて、俺が通るであろう場所を離脱した。
仁と霞は自力でよけた。だけど……。まだ呂布が残っていやがる!
「呂布ゥ~~! どけぇええぇ!」
俺は、力一杯叫んだ。それでも、呂布は動かない。
せめて、少しでも道をずらそうと、俺は左に傾けた。
「……止まって。……よしよし」
呂布は一言だけ呟くと、馬は止まった。
大統領命令ですよ、あれじゃ。止まりましたもん。ピタって。
「止まっ……た……? なぁ、呂布。どうやった?」
「……頼んだ。あと……恋でいい。……月達もあずけている」
「分かった。俺には真名ってものないから、仙刀でいい」
「……仙ちぃじゃないの? ……霞がそう呼んでた」
「それでいいよ……。とにかく、この馬止めてくれてありがと」
今度はしっかりと足から降りる。
で、これを自力で出来ないとダメなんだよな……。恋から馬の止め方でも習っておくか。
「なぁ、恋。どうやって馬止めたんだ?」
「……頼んだ」
「いや、そうじゃなく」
「………………?」
恋は不思議そうに首をかしげた。
……いや、なんで動物に頼めるんだよ。こりゃ、参考にならねえな。
「恋、他にもうちょいコツみたいなのを……」
「……他?」
「ちんきゅ~~きぃぃっく!」
「うぉっ!? 危ねえぞ、おい」
「お前~! 恋殿の真名を……!」
恋と話していると、後頭部から変な殺気を感じた。
ひょいっと躱し、飛んできたのを掴んだ。どうやら、上手いこと足を掴んだみたいだ。
蹴ってきたのは、薄緑の髪の子だ。
「いや、真名は預けられたし。てか、お前誰?」
「お前なんかに答えないのです!」
「ふ~ん」
俺はコイツの両足を掴み、逆さづりにした。そして、ぶらぶらと左右に振る。気分悪くなるぞ~コレは。
「貴様~! 止めるのです!」
「はいはい」
「べぶっ! 落とせとは言ってないのです!」
「で、恋。コイツ誰?」
「……ちんきゅ」
ちんきゅ、ね。
まぁ、もう友好的に握手なんて無理だろうけど。
「がるるるる~」
……唸っているし。
「まぁ、取り敢えず扱えるようになったな。行くぞ」
「え?」
仁はいつの間にか、馬に荷物を載せていた。
“行く”ってどこにだよ。
「『え?』ではない。旅を続けるぞ」
「あ~そういうこと。もう行く? あと少しダラダラしてても……」
「貴様の旅だろうがっ! 一泊の時間でも惜しいのだ。さっさと行くぞ」
「俺の準備も終わったぜ」
そうか。もう行くのか……。
「仕方ねえ。行くか! 月、詠、霞、恋、珍。世話になった!」
「そんなに急ぐ旅ですか……」
「おお。じゃあな」
ネタが浮かばない……。再投稿前ってどんな感じだったか、すっかり忘れています。
まあ、あの頃は頭完全におかしくなっている頃でしたが……