タッタッタッタッタッ……
「はぁっはぁっ………」
タッタッタッタッタッ……
……暗い森の中、足音と誰かの息遣い。
タッタッタッタッタッ……
「はぁっはぁっ………」
……いや、待てよ。後ろからなにか来る。
「ォォォォォォォオオ……」
……あれはなんだ?何か真っ黒なものがこちらを追いかけて来る。
「おい!まだなのかよ!」
「まだ…みたいですね」
「早くしろ!」
「俺に言われましても……」
……二人の男の声がする。
ピピピピッ!
「来た!」
「よし!一気に引き込め!」
……ボサボサの髪にボロボロの黒いコートの男がそういう。
……もう一人の男は……いや、俺は、その師匠と呼ばれていた男に従って更に森の奥へと進んでいった…
「これはいけますね!」
「まだだ。油断すんなよ!」
「分かってますって」
……その時、ガサッ!何かが森から飛び出てきた。そいつは俺に襲いかかる。
「なっ……!」
「!あのくそガキ!」
……俺をかばった師匠と呼ばれたその男は胸を切り裂かれ倒れた。
「師匠!?師匠!!」
「……………」
「嘘だ……俺のせいで……師匠おおおお!!」
バサッ!!
そして俺は目覚めた。
自室のベッドの上で。
「なんだ…夢か…」
見回して見るといつもの部屋だ。
「士貴〜!早く起きなさ〜い」
母の声が聞こえてきた。良かった。いつもの日常だ。でも…
「何だったんだ…あの夢は」
妙に現実味があって気味が悪い。
はっと思い時計を見てみると
2500. 9/1. 7:30
やばっ
「遅刻する!」
俺は急いで着替えて下に降りた。このままだと間違いなく遅刻する。「いってきます!」手早く朝ご飯を済ませて家を出た。急いで駅まで走る。
「やばいやばいやばい!」
『七番乗り場より列車が参ります』
「はぁ…はぁ…ギリギリセーフ…」
なんとか間に合った。そして電車に揺られること10分、電車から降りて学校まで15分歩く。俺はこの時間が好きだ。1人で様々なを考えられる。そして学校についた、『国立草吹高等学校』
草吹…と書いてくさふきと読む。
なんでもかなり有名な進学校らしい。なぜそんな他人行儀な言い方なのかというと、俺は孤児院で育ったからだ。今の母も里親だ。小中の学習は全て孤児院でやった。ここを選んだのは幼馴染みの三人がここに行くと言ったからである。校門に入り教室までいく。ドアを開けるとそこにはあいつはいた。
「おはよう、士貴。今日はずいぶんとギリギリじゃないか。」
「前の電車に乗り遅れてギリギリの時間のやつで来たんだよ。」
「それは災難だったね。」
「お前はいっつも優等生だよな、薫」
平等院薫… 俺の幼馴染みで親友だ。俺とその幼馴染みの三人は同じタイミングで里親に引き取られた。薫は大きな財閥の家に引き取られたそうだ。
「ところで、アーシャたちは?まだ来てないのか?」
「いや、さっきまでいたんだけど……あ、いたいた。アーシャ、ラフォリア」
「あ、士貴、今日は遅かったわね。」
ラフォリア・アルベロ…俺の幼馴染みの一人であり俺の彼女。
あいつは確か……そう、海外のある王国の貴族に引き取られたとか。でも日本から離れるつもりはないと頑なに里親の元に行くことを拒否してるって聞いたな。
「士貴、遅かったじゃない。遅刻したかと思った。」
「これは手厳しい。」
この素っ気ないやつがアイーシャ・トイフェル。幼馴染みの一人だ。愛称はアーシャ。俺ら以外とはほとんど話さない。俺達としてはもっと交友関係を広げて欲しいんだが……。
というわけで、これが俺の幼馴染み達。一緒に孤児院で育った家族のような存在だ。もう里親に引き取られたからいつも一緒というわけでもないが、学校ではいつも一緒。と、考えていると
「もうホームルームだぞ〜お前ら。さっさと座れ〜」
「は~い」
ガタガタガタッ
朝のホームルームが始まったようだ。さて、もう切り替えなければ。
「ふぅ〜。やっと昼か〜」
「さ、ご飯食べようか」
「そうね」
「ええ」
四人で集まってお昼ご飯。
と、その時、薫、アーシャ、ラフォリアの三人が突然難しい顔をした。一瞬だったが俺にはわかった。最近、三人が突然顔をしかめたり何か話したりしていることがある。確実になにか隠している。
でも俺に話さないってことは話せない事情があるんだろう。秘密にしたがっていることをわざわざ聞く必要は無い。
放課後。
「さて、帰るか。」
俺は薫に言った。そうすると
「ごめんね、今日はこれからアーシャとラフォリアと用事があって………」
怪しい。
「そうか。俺には話せないことなのか?」
「ごめん……でもこれは君のためでもあり孤児院の皆のためでもあることなんだ。」
「……ん、わかった。お前がそう言うのなら俺は信じる。……行ってこい」
「ありがとう。恩に着るよ。」
「気にするなよ。」
俺は得意げに言った。俺はいいやつだからな、うん。その時俺は薫が言ったかすかな声を聞き逃していた。
あの時この言葉を聞いていれば、これから起こることは変わっていたのかもしれない………
「君はこっち側に来ちゃダメなんだよ。汚れるのは僕達だけでいい。」
薫が去っていった後、俺は一人で下校することにした。いつもは薫と帰る道、でも一人も悪くない。
そう思っていたら、ふと視線を感じた。
「………ん?」
後ろを振り返ってみても何もいない。
「……気のせいか。」
そう思い前を振り向いた時、それはいた。
「グルルルルルル」
「ひっ」
そこには真っ黒な犬のような生き物がいた。いや、あれは生き物なのか?まるで……
「夢に出てきた……怪物!?」
そう、それは夢に出てきたあの怪物と同じような気配をまとっていた。夢の光景がフラッシュバックする。嘘みたいな光景だったが、なんとなく、嘘ではないと。そう直感的に思った。
……殺される!
そう思ってとっさに逃げようとしたが
「オオオオオオオオオン!」
後ろにもいた。同じようなやつが。
……あ、これ死んだな、俺。
そう思った。今にも怪物は襲いかからんとしている。最後に思い浮かんだのは薫、アーシャ、ラフォリアの顔。
「ごめんな。俺、こんな所で死んでしまうみたいだ……」
ああ……まだ生きたかったなあ…
「ガゥッ!!」
怪物が襲いかかってきた。俺は目をつぶってその時を待った。
………ん?
いつまでたっても意識がある。
ということは、生きている?
恐る恐る目を開けてみると、そこにその人は…いた。
ボサボサの黒い髪にボロボロの黒いコート……
その男の周りにはあの怪物が死んでいた。
その男は俺を見てニヤッと笑いながらこういった。
「大丈夫か?クソガキ」