悪魔=勇者   作:鉄少女(男)

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牡羊の悪魔

 

 

「ハァッ、ハァッ」

 

まさか、本当に存在したなんて……!

十二星座……牡羊座の悪魔!

 

「……うっわ、強そうだなぁ」

 

「えっ!?」

 

そこに現れたのは、腰に剣を携えた私と同い年くらいの少年。

その少年は、私が口を開く間も無く、悪魔に向かっていった。

 

「フッ!」

 

少年が剣を鞘から抜き放ち、悪魔の胸の真ん中目掛けて剣を振った。

 

イケブギドレニ(欠伸が出るな)

 

しかし、その剣は右足の蹄により止められ、甲高い音を鳴らした。

が、少年は右に回り、剣を悪魔の脇に滑り込ませた。

 

ノベタケヒキリヂヌヲレウダ(寝不足は体に悪いぞ)

 

悪魔語を話しながら、少年は悪魔の右腕を斬り落とした。

その鮮血は、常識とは裏腹に白い。

 

ウトォニ(痛ぇな)……クシミ(貴様)カロギ(俺が)アリエスナステトニサエバエキ(と知っての行動か)?』

 

カテナ(おっと)タウテヒスリニキテチニ(そいつは知らなかったな)キクョエイケミキナカヤテチラ(下級悪魔かと思ったよ)

 

マエ(ほう)……ズュイムソトユワエキ(じゃあ見せてやろうか)カロハマガク(俺の本気)

 

アリエスの腕が再生した。

悪魔は心臓を潰さなければ死なない。

四肢を失おうが、頭を潰されようが。

体の血が無くなろうが、死なない。

 

「……!?」

 

ウケダカリィ(行くぞオラァ)ナモトムワ(止めてみろ)!』

 

アリエスの脚の筋肉が、皮膚を突き破るまで肥大化した。

脚の関節を全て限界まで曲げていて、骨が軋むような音まで聞こえてくる。

アリエスの能力は突進。

しかし、侮ってはいけない。

その突進には雷の魔力が籠っている。

その昔、6000kmの壁の中にいる人間を喰らうために、突進一つで壁を紙のように突き破ったという。

 

そして、伝説通り。

アリエスの身体が、徐々に雷を帯びていった。

最後には、アリエスの体毛が全て逆立ち、自身も雷へと変化していった。

 

ニレマバ(なるほど)ミテサエスラエベキ(真っ向勝負か)

 

それでも少年は退かない。

口元に不敵な笑みを浮かべて、剣を構える。

 

「……闇雷(ユムニル)

 

少年がそう呟くと、中指の皮膚が剥がれ、中から脱皮したように黒いギザギザとした中指が出現した。

それが剣に触れると、途端に紫の雷が剣を渦巻いた。

よほど強力なのか、剣を持っている右腕の袖は消し飛んでいる。

 

『サラフネスハキムニルキ(の雷か)……?』

 

タエヂ(そうだ)……タハテハスカテトユレラ(そのツノへし折ってやるよ)

 

少年はその剣の切っ先をアリエスに向けたまま、自分の顔の左へと持っていった。

刺突の構えだ。

 

壊壁進(キウホクスガ)!』

 

「ハァッ!」

 

二つの突撃が重なった。

雷と雷の衝突。

辺りの木々は一瞬にして横倒しになり、私も勇者でなければ死んでいるだろう。

それほどの衝撃が、大地を揺るがしている。

 

ヨエスュハベガジウド(勇者の分際で)カロンナモレニ(俺を止めるな)!』

 

エレソォ(うるせぇ)イケミギヨエスュヌチトテケニ(悪魔が勇者に楯突くな)!」

 

 

 

ピキ……

 

 

 

『……!?』

 

「……マリ(ほら)––––––」

 

 

 

バキィィ……!

 

 

 

「––––––カロチダ(折れたぞ)

 

アリエスの片方のツノが地面へと落ち、突き刺さった。

アリエス本体は後方に吹き飛び、ぶつかった大木を片っ端から折りながら、川の淵で停止した。

 

「『一刀突(ウテナエナテ)闇雷(ユムニル)』」

 

ケタギ(クソが)……! ヌガゴガザナクヌ(人間ごときに)……! ……!?』

 

倒れ込んでいるアリエスに、少年が近づいていく。

 

「……『闇火(ユムフ)』」

 

そう言うと中指が元に戻り、代わりに親指が黒く変化した。

その指で剣に触れると、触れられた剣には雷では無く、火が渦巻いた。

火の剣を振り上げた少年は、そのままノーフェイクで振り下ろす。

確実にアリエスに当たると思っていた剣。

しかし、外れた。

入墨が入った白い腕が、川の中にアリエスを引きずり込んでいったのだ。

 

「……『一刀落(ウテナエリケ)闇火(ユムフ)』。決めようと思ったのに……ケタギ(クソが)……!」

 

そう悔しがる少年。

剣を包んでいた火は、鞘に納めると同時に消えた。

 

「……あぁ、俺はヴルタヴ=サターニア。ケガは無いか?」

 

自己紹介と共に心配までされて、自分があんぐり口を開けて、座り込んでいることに気が付いた。

すぐに口を閉じて立ち上がり、土を払う。

 

「だ、大丈夫よ。私はアリア=トレイフィール。助けてくれてありがとう」

 

しっかりと礼を言う。

命を救ってもらうなんて、勇者も落ちぶれたわね……。

 

「どういたしまして。あ、俺サーマルヘンドに行きたいんだけど……金貸してくんない?」

 

「え、私も今からサーマルヘンドに戻るとこなんだけど……」

 

依頼主に報酬を貰いに行かなければならない。

ここから徒歩だと若干遠い。

 

「おぉ、マジか。なら案内してくれれば助かる」

 

「もちろん。……それなら、しばらく一緒に行動する?」

 

「ん? あぁ、頼むよ」

 

こうして、私の旅に、とてつもないパートナーができた。

 

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