本日は有給を取ったので昼間に執筆しました。
というか有給とってまでやるべき用事が、当日ドタキャンになったという説も(泣)
さて、今回のエピソードは……カオスです(笑)
宴がだんだんわけのわからない方向に疾走します(^^
そんな雰囲気を楽しんでもらえれば嬉しいですよ♪
さて、なにやら”ダンジョン遠征慰労会”という当初のお題目からかけ離れた内容な気がするロキ・ファミリア+ハデス・ファミリアの合同宴は、ここオラリオ西メインストリートにある
主催者のロキの音頭に始まり、それぞれの自己紹介ステージ。
ロキから時計回りに始まったそれは、ファミリア幹部の中でも事実上最高意思決定機関であるリヴェリア・リヨス・アールヴ、ガレス・ランドロック、フィン・ディムナの古参年長三人組、誰が呼んだか通称”
ともかく、フィンが女神の一柱にして冥府の女王(現在、休職中だが)のハデスより『過分なまでの褒賞言質』を取り付けるという大殊勲をあげ、さらにはハデスを膝に乗せた兎の少年と意気投合するという微笑ましい風景を見せた。
物知り婆や豊かな方のアマゾネスや、元悪神や銀髪ウェイトレスがそれぞれ微妙に意味が異なる熱っぽい視線を向けていたが……それはあえて詮索すまい。世の中には知らないほうが幸せなことはごまんとある。
さて、次はいよいよ
「”ティオネ・ヒリュテ”です。種族はアマゾネスで、二つ隣に座るティオナの姉でもあります。簡単に言えば『アマゾネス姉妹、ないしヒリュテ姉妹の姉のほう』と覚えてくだされば。以後、よろしくお願いします。神ハデス、ベル君」
フィンの横の席をゲットした、最近は一部から『ティオ
そしてターンは、その隣のベートに移るのだが、
「……”ベート・ローガ”だ」
当たり障りもないではなく味も素っ気もない、「本当に自己紹介なのか?」と疑いたくなるようなベートだったが、彼のキャラを考えればむしろ上出来に思えるのは何故だろうか?
「”ティオナ・ヒリュテ”だよ♪ さっきの姉さんの言葉を借りるなら『アマゾネス姉妹、ないしヒリュテ姉妹の妹のほう』だね。ハデス様、”ラッセルボック”君!」
いかにも快活という健康美溢れた魅力のティオナに、ベルは思わずきょとんとして、
「”ラッセルボック”? 僕のことですか?」
ティオナはうんうん♪と頷き、
「メジャーじゃないけど、どこかの寓話に出てくる『牡鹿のツノを持った兎』のことだよ♪ 君はなんとなく白兎に似てるし、アイズにきいたけどミノタウロスとサシで張り合えるくらいに槍が使えるんでしょ? ツノを槍に
『なるほど。上手い事を言う』という様子でポンと手を打ち笑うベルに、ハデスも小さく笑んで、
「ティオナ。ベルくんに素敵な愛称をつけてくれて……ありがとう♪」
「いえいえ、どういたしまして♪ ハデス様にお気に召してもらえるのなら、私もつけた甲斐がありました♪」
何やらロキ、フィンに続きティオナもハデスの好感度、別名”ハデス・ポイント(?)”のゲットに成功したようだ。
ちなみにこのポイントが溜まると出番が増えたり、死後に優先的に自称ハデス軍へ参加できる得点がある……かもしれない。いや冗談だが。
***
何やらティオナが妙な存在感を見せ付けたが、席次的に次はレフィーヤ・ウィリディスの番だ。
「”レフィーヤ・ウィリディス”です。種族は見ての通りエルフで、Lv.3の冒険者です。神ハデス、クラネルさん、以後お見知りおきを」
と極めて無難に、どちらかと言えば無愛想に纏めた。
ややベートの路線に近いが……無論、彼女に他意や含むとこあってのことでなく、やや人見知りのケがあるレフィーヤはこういう場に慣れておらず、単に緊張のあまりいっぱいいっぱいで気の利いたことが言えなかっただけなのであろう。
それがわかってるファミリアの面々はむしろ生暖かい視線を彼女に向けていたし、ハデスとベルも気にした様子はない。
そしていよいよお待ちかね、ベルの横に座るアイズ・ヴァレンシュタインの番となるのだが……
「はじめまして。ハデス様。”アイズ・ヴァレンシュタイン”と申します」
「貴女がアイズ、だね? お話はベルくんから聞いてる……ベルくんを助けてくれて、本当にありがとう」
ふわりと微笑む自分の魅力に無自覚の冥府の女王に、
「と、とんでもないです。あの一件は元々私達の不手際ですから」
珍しく顔を赤らめどもるアイズ。
いずれにせよレアな情景ではある。
「それでも、だよ……? どんな理由であれ、アイズはベルくんを助けてくれた……命は大事だから、ね?」
その真っ直ぐな金色の瞳に、アイズは吸い込まれそうな感覚を覚える。
死者の国を統べる彼女より聞く命の意味は、なぜだかひどく重い気がした。
しかし、それをかみ締めるように考えるのは後回しにしようと決めたアイズは今度はベルを見やり、
「”ベル”には自己紹介……いる?」
小首をかしげるアイズにベルは苦笑しながら、ただし名を呼び捨てにされたこともスルーして、
「今更じゃないですか? ヴァレンシュタインさん」
「むー」
するとアイズは何やら不満顔で、
「私はベルをベルと呼んでる。みんなは私を”アイズ”って呼んでる」
「つまり僕に貴女のことを”アイズ”と呼べと?」
コクリと頷くアイズ&ロキを除きなにやら興味津々に見るベートとレフィーヤを除くファミリアの面々。
「しかし、かの”剣姫”を呼び捨てにするのも中々ハードルが高いといいますか……」
困り顔のベルにアイズは顔を近づけ、
「アイズ。それに敬語禁止」
「またハードルが上がった!?」
ベルは周囲を見回す。ロキ・ファミリアの面々は約二名を除いて意味ありげに微笑むばかり。
ちなみアイズの顔が眼前にあるためにアイズの横に座ってるはずのレフィーヤの顔は見えず、なんとなくこういう場合は頼りになりそうなベートは、どういうわけか左右を挟むヒリュテ姉妹から揃って口の中に骨付き肉を唐突に突っ込まれるという『
要するにロキ・ファミリアの中に援軍の兆しはなかった。
ならばと膝に座るハデスに目を向ければ、彼女は母性と慈愛の表情で告げる。
「ベルくん、女の子に恥をかかせたら……駄目、だよ?」
”はふぅ~”
ベルは深々と諦めの溜息を突いた。
彼の崇め奉る主神に、何より世界で一番大切な女の子にこうまで言われたら、もはや逃げ道なんてない。
「降参」
ベルはおどけた様子で両手を挙げて、
「わかったよ、”アイズ”。僕の負けだ」
「……勝利♪」
グッと小さくガッツポーズをとるアイズにベルは柔らかく苦笑いし、ロキは萌え悶え、レフィーヤはちょっと嫉妬心を感じる表情を作り、ベートは左右のわき腹に同時に喰らった褐色の肘打に悶絶し、残る面々は非常に和んだという。
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さて一部を除き初顔合わせ&自己紹介も無事に終わり、飲めや歌えやの大宴会のスタート!
「なあなあ、ベルやん。ウチもハデスたんを膝の上に乗っけて抱っこしてええか?」
いい感じに酔いが回り始めた頃、このタイミングを待っていたとばかりロキが攻勢をかけるが……いきなり付けられた珍妙な呼び方にも動じないベルは、
「ハデス様がかまわないというのならいいですが……」
と口では言いながら、視線はハデスでなくリヴェリアに向いていた。
どうやらベルは想像以上に賢明な少年らしく、既にロキ・ファミリアの力関係やら立ち位置やら立ち回りやら役回りやらをある程度は把握していたようだ。
その視線と意味に気が付いたリヴェリアは鷹揚に頷き、
「わかってるさ。我が駄神がハデス様に不埒な真似をするというのなら、このリヴェリア・リヨス・アールヴが副団長の義務として、何故私が【
「ひどっ!? というか駄神言うなやっ!」
リヴェリアの言質をとったせいかはわからぬが、
「いいよ」
ハデスとぴょんとベルの膝から飛び降りて……
「よいしょ」
”ちょこん”
無警戒にロキの膝に鎮座。
そして振り向きながら、
「これで……いい?」
”ブバッ!!”
その瞬間、限界まで体内圧力を高めた鼻血がロキから盛大に迸る!
咄嗟に発動させたリヴェリアの防御魔法のおかげでハデスは、【ロキの
うん。たしかに言葉通り、【
「ハァハァ……ハデスたん、なんつー恐ろしい娘。まさか”
『お前はどこの”海のリハク”だ?』とツッコミを入れたくなるが……
「……とりあえず鼻血を拭け」
そうペーパーナプキンを差し出すリヴェリアに、
一方、店の別の場所では……
”ビキッ!”
『今度はトレイが真っ二つニャッ!?』
『シル……すまない。どうやら私は君の実力を見誤っていたようだ。上方修正をしておくよ』
『しなくていいからねっ!?』
……何やら大騒ぎのようだが、気にしてはいけないのだろう。きっと。
まあ、シル嬢(?)の手により今宵、店の備品がいくつスクラップヤード送りになるのか気になるといえば気になるが。
***
さて、ハデスがロキの膝に移ってぬいぐるみのように抱きしめられたところで、宴の本質は変わら……
「むぎゅう~♪」
「ロキ、ちょっと苦しい……」
”ゴイン☆”
「あいたぁ~っ!?」
「もう少し力を緩めんか。莫迦者」
「……なあ、リヴェリアのエモノて”
「フム……一説によればワンドとは元々”
大筋においては変わらない。言い切る。こういう場合は言い切った者勝ちだ。
だそくながらその一説を言ったのは、どこぞの赤毛のちみっ娘シスターではないのだろうか? ”
どうでもいいが
「あっ、これ美味しい!」
ベルが瞳を輝かせたのは『豊穣の女主人』でも定番人気メニューの一つ”仔牛の赤ワイン煮込み”だった。
ナイフを使わずともフォークでほろりと切れるまでじっくり煮込まれた仔牛は、ジューシーで柔らかく実に美味だ。
スパイスとハーブの塩梅も絶妙である。
「ベルくん、わたしにも一口」
「はい、ハデス様。あーん」
「あーん」
一口サイズにカットした仔牛の頬肉をフォークに刺し、それをハデスの口元にまで運ぶと、
”ぱくっ”
何やら小鳥が親鳥から受け取ったエサを啄ばむような雰囲気のモグモグしたハデスは、小さな笑みで、
「ん……おいし」
”ほわわぁ~~~~ん♪”
唐突に訪れた小動物系癒し空間に、宴会の空気が和み包まれる。
『人はここまで優しい気持ちになれるのか?』という哲学的探求ができそうなまでに緩んだ空気……
とここまではよかったのだが、
「あっ、本当においしそう……」
そう呟いたのは誰であろう、アイズ本人だった。
「じゃあ、アイズも食べてみる?」
「うん」
アイズの肯定の意を聞いたベルは、何の迷いも疑問もなくさっきの動きをリフレイン。
フォークで牛の脂とワインの香りが絶妙のハーモニーを奏でる仔牛肉を一口サイズに切り分けると、
「はい。アイズもあーん」
そう、ハデスと同じノリでアイズの口元に。
そこでアイズが拒絶すれば、ある意味話は丸く収まったのかもしれない。
だが……世界はいつだって気まぐれで、こんな筈じゃないことばかりなのだ。
彼女はちょっと逡巡しただけで、素直に口をあけると……
「あーん」
”ぱくり”
この日この時、『豊穣の女主人』では局所的に【
皆様、ご愛読ありがとうございました。
過去形にしないあたり、きっと次回も多分こんなノリです(^^
ハデス様、ロキへの浮気発覚(笑)
リヴェリア、ますますオカンぽくなる
ぱくっ&ぱくり(幸腹グラフティ風)
以上三本立てカオスで構成されたのが今回のエピソードというオチデシタ。
まあ、酒の席ですしね~。
いや、他にも散々なベートとか、抑止力(物理)なヒリュテ姉妹とか地味に目立つ(笑)ウエイトレスとか色々混沌要素は他にもありましたけど(汗)
実はこのエピソードの原点は、いつか「アイズに『あーん』をやらせたかった」というのは内緒です(爆!)
それにしても……アイズは当然としても、なんとなーくティオナがフラグをせっせと立ててた様な……?
果たしてこのノリがいつまで続くかわかりませんが……(えっ?)
それでは皆様、また次話にてお会いしましょう!