魔法科高校の武器商人<修正版>   作:akito324

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お久しぶりです。
就活活動の移動の合間に書いたら入学編が書き終わりました。
まぁ、就活終わってないんですけどね。はいw
息抜き感覚の投稿です。

というよりSS買って読みましたけどレオめっちゃ羨ま・・・ゲフンゲフンけしからん。
エリカの話は面白かったけど読んでて「レオこの野郎っ!」と言ったり言わなかったり

前回までのあらすじ!
伊万里VS達也の戦いが勃発!お互い一歩引かない展開だったが公安0課の乱入で決着がつかず。その翌日、放送室占拠事件発生。達也、清夜の活躍で警察沙汰にならずに済んだが火種は未だ消えずに燻っていた。


37話 清夜の謎2

2095年 4月21日 第一高校 放送室前

 

立てこもり事件の早期解決に貢献した清夜。

 

「で、説明してもらおうか清夜君?」

 

「式君、説明をお願いします。ことと場合によっては処分があるのであしからず。」

 

した・・・はずなんだが何故か摩利と鈴音による取り調べが行われていた。

清夜としては今すぐ逃げたいのだが任意ではなく強制。拒否権などなかった

 

「えと・・何のことでしょうか?」

 

「無論、扉を開けた仕掛けです。」

 

「魔法でも使ったのか?」

 

克人やアルテミシア、司波兄妹も摩利達ほどではないが気になっていた。

 

「あ〜それですか。そんなことはしてませんよ。これを使ったんです。」

 

清夜はポケットから小さいブロックのような物を取り出した。

それは銀色の特に変わったところがない鉄の塊

 

「なんだこれは?」

 

「ただの鉄のブロックですよ。これをボルトロックが入る穴に入れただけです。」

 

「それだけで何故扉が開くのでしょう?もう少し詳しくお願いします式君」

 

「これはこの会社製の扉で起こる抜け道ですが・・・。まぁ、やりながらの方がいいでしょう。少しこっちを見ないでくください。」

 

〜10秒後〜

 

「出来ました。では渡辺先輩、そのままドアを開けてください。」

 

「おいおい、私をバカにしているのか?lockと表示されるじゃないか、こんなもの開くわけが・・・」

 

ガラッ!

 

「「「開いた!?」」」

 

「・・・そうか」

 

達也はドアの縁の穴を除いた。

 

「ボルトロックが入る穴の中にブロックを入れたのか。」

 

「その通り、その状態でも扉は閉まるけど鍵はブロックにつっかえて掛らないんだ。けどこの扉のシステムだと扉が閉まっていて遠隔操作や自動施錠で鍵を掛ける動作さえ行えば鍵が掛かってなくともlockと表示されるんです。」

 

ほとんどの者が呆然として何も言えない。

そんな中、アルテミシアは思い出したかのように質問した。

 

「じゃあ、風紀委員に誘われたときの脱出も・・・」

 

「そうです。最初に顔を出した時にこれを入れて出るときに回収したってことです。要はlockと表示されているけど鍵なんて最初から掛かってなかったってことです。」

 

「ま、前から思っていたが君は魔法師というより詐欺師とかマジシャンだな・・・」

 

摩利は呆れたという感じだが納得し、これで取り調べが終了した。

皆、なんだ〜って表情で解散していくがただ一人、達也だけが違う視点で考えていた。

 

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2095年 4月22日 Deus Ex Machina Industry 本社

 

放送室立てこもり事件から1日が過ぎた日の夜。

清夜・・いやアイクはDEMの本社にあるブリーフィングルームに部下を集めた。

このブリーフィングルームは俗に言う隠し部屋であって会社の会議室というわけではない。

部屋には本拠地の軍司令室で使われるような最新設備がずらりと並んでおり、機密性にも優れていた。

そんな部屋に部屋の雰囲気に合わない感じの少女が三人入ってきた。

 

「セシル・オブライエン。ただいま参りました。」

 

「アシュリー・シンクレア参上!」

 

「レ、レオノーラ・シアーズ・・・と、到着しました。」

 

「ん、三人ともご苦労様。これで全員かなエレン?」

 

「はい。エコー、アーキン、ホウには別任務のため来れません。」

 

部屋にはアイク(清夜)と到着した三人以外にアルテミシア、エレン、翠、藍がいた。

念のために言っておくが決してハーレムを楽しもうとかそういうのはない。

アイク(清夜)はスクリーンを起動して話を始めた。

 

「じゃあ始めようか。今回、集まってもらったのは他でもない。この前のブランシュに関することだ。まずは私の学校の身の回りで起きていることを話そう。アルテミシア、頼む。」

 

「はい、まず私とマスターが通っている第一高校は3年ほど前からブランシュの下部組織に侵食されています。正直、去年まで大して目立った活動はしてなかったんですが今年から急激に活動が活発、エスカレートし、とうとう昨日には立てこもりという犯罪を犯しました。事件自体はマスターと会長の活躍で警察沙汰にならず翌日に会長一人vs同盟メンバー数人の公開討論会をすることで決着がついたのですが・・・」

 

「司甲を通じてブランシュ日本支部リーダーと直接つながっている組織である以上、穏便に公開討論会が終わるわけないと・・・」

 

「元々は大亜連合、ましてはCIAが黒幕ですから建前が差別撤廃でも本当に差別撤廃してしまえば工作活動ができなくなります。その上でやるのですから何か仕掛けてくる可能性は高い。」

 

藍と翠は胡散臭いと言わんばかり呟いた。

確かにブランシュは魔法による差別撤廃をかがけている。

だが実際は魔法が使えないという劣等感を煽り、日本の力を削ぐことを目的としたテロ組織。

その劣等感が討論会による学校改善でなくなってしまえば組織は根底から崩れていってしまう。

しかも先日の襲撃で一高での目的は司甲を使った魔法研究の強奪、魔法師の殺害と幹部が言っていたのだ。

それなのにやることは討論会・・・あきらかに裏がある話だ。

アシュリーは小学生のように手を挙げて質問した。

 

「はいは〜いマスター。言いたいことは分かるけどよ、そう確信するには少し根拠が弱くないか?」

 

「確かにこれだけだったら君達を集めて作戦会議はしないね。実はね、それに合わせるかのようにブランシュ日本支部リーダー司一が第一高校近くの廃工場で目撃されている。となると何か仕掛けるのは間違いないだろうってこと。」

 

「それでマスター、私たちは一体何をするのでしょう?」

 

淑女の微笑みを浮かべるセシル。

彼女の糸目が赤く光った・・・・気がした。

他の皆も目的はわからずとも、やることは薄々と勘付いているようだ。

 

「悪は基本殲滅だけど別に学校を守ろうというわけでも、正義の味方をしようというわけでもないさ。私は超がつくほどの悪党だからね。私の目的は戦いのどさくさに紛れて司一を誘拐すること。そもそもボロを出さないために動いてきたが公安も軍も十師族もテロを止められそうにない。ならこの状況を精一杯利用させてもらおうというわけさ。日本支部のリーダーってことはスポンサーの大亜連合、それも有力者との直接つながりがあるだろう?もしかしたら復讐に関することで何か知ってるかもしれない。」

 

「そうですね・・・少し行き詰ってるといえなくもないですし。謎の軍人を経由せずに直接アイクの敵が分かるなら手っ取り早いです。私も賛成ですアイク。」

 

「「申し訳ありません御主人様・・・」」

 

「行き詰ってる」というワードに反応したのか翠と藍は少し表情を暗くし謝罪した。

事実として二人をスカウトして3年経った今でも候補は絞れても3人の軍人の詳細は掴めていない。

そもそも家族(本人は思っていない)の清夜すら全く覚えておらず、元妻でさえ夫から詳しい話は聞いていないのだ。

候補を少し絞れただけでも、そこらの刑事や探偵より優秀なのはあきらかだった。

 

「いやいや、君達を責めているつもりはない。私が頼んだ仕事をこなしながら候補を絞れたんだ。十分に役立っている。元より期限を設けるつもりもないんだ。じっくりやってくれ。焦って違う首持ってきても困るしね。 」

 

「「かしこまりました」」

 

「あ、あの〜それでマスター。具体的な作戦はどうするのでしょう?ま、まさか自爆特攻とかですか!?ふぇぇぇ・・・勘弁してください。」

 

質問したのに何故か被害妄想をして泣き始めるレオノーラ。

すると翠と藍以外の人間から「あ〜あ」と言わんばかり視線が清夜に突き刺さる。

本当に見た目負けした性格なのだが、いつも非難されるのは彼女ではなく清夜だった。

 

「はい、そこイジメっ子を見る目で見ない・・・はぁ、なんで泣くんだよ?俺は一度も自爆特攻を無理強いさせらことないだろ?あ〜よしよし・・・いい子いい子」

 

アイク(清夜)は素の口調で話しながら彼女の頭を撫でて、袖で涙を拭き取った。

 

「グスンッ・・・そうでした。昔のこと思い出すちゃって・・・」

 

「うん、泣き止んだな。じゃあ説明するよ。部隊は学校にいる私とアルテミシアの学校チームと翠、藍の輸送チーム、エレンを隊長にしたそれ以外のチームに分ける。司一が学校に現れたら輸送チームには学校近くのゴミ捨て場に来てもらい私のチームが確保してゴミに紛れこませて引き渡す。一定時間経って現れなかったらエレンのチームが廃工場に突入、誘拐してくれ。その後、輸送チームに引き渡したらエレンたちは逃走してくれ。突入ルートなどの詳細は手元に置いてある資料に書かれている。」

 

肘掛についているテーブルには紙媒体の資料が置かれていた。

今では魔法同様、情報社会も発達しており資料は大抵データで扱われるものだが

『七賢人』というあらゆるデータをセキュリティレベル関係なく覗き見できる存在がいては

機密度が高い情報ほど紙媒体で扱わざるをえない。

資料を確認した翠が手を挙げた。

 

「私たち輸送チームのゴールは?」

 

「DEMの秘密施設ならどこでもいい、君たちの家でも、私のセーフハウスでも。本社から推奨ルートなどの情報サポートはあるが逃走のルート選定、方法などは君たちに一任する。車など必要な物は今日中にエレンか俺に申請してくれ。あと現段階における予定ルートの選定も忘れずに」

 

「かしこまりました。では我々はさっそく」

 

「すぐに提出しますのでここで失礼します。」

 

「君たちが今回の作戦の鍵だ。頑張ってくれ」

 

二人は主人に一礼して部屋を去った。

その姿を見送った清夜はくるりと回り、今度はアルテミシア達を見た。

 

「さて、次は君達だ。今回は誘拐が目的だが殺し合いは必至だろうね。だから拒否権を使うのも構わない。さぁ、どうする?」

 

「やるぜマスター!」

 

「私もです。ゴミ処理を断る理由はありません。」

 

「わ、私もやります・・・わ、わわわ私だってマスターの役に立ちたい!!」

 

アシュリー、セシル、レオノーラは迷いのない、絶大な信頼の眼差しで答える。

しかし清夜の気分はいいものでなかった。

アイク(清夜)はかつて『give and takeの絆を作り、それを超えた先にある忠誠心を求めたい』と言った。

この眼差しはまさに清夜が求めるものなのだが結果やらせているのはただの人殺し。

悪党として戦う覚悟があるのに復讐のために仲間を・・・特に翠、藍、アルテミシア、アシュリー、セシル、レオノーラのような子供達を戦わせるのに一瞬の躊躇いがあるのだ。

 

 

ここにも『矛盾』という言葉が生まれた。

 

 

以前ならこんなことはなかった。

そう、()()と再会するまでは・・・

 

(違う!違う!エリカは関係ない!そんなことで俺の復讐は揺らがない!)

 

頭では否定しているが

再会が壊れて消えたはずの”何か”を湧き上がらせて躊躇いを生んでいる.

そんな気がしてならなかった。

考えれば考えるほど迷いという名の沼にはまっていく。

清夜は考えを捨てアルテミシアに目を合わせた。

 

「・・・私も参加します。私たちはマスターについていきます。あなたの願い・・叶えてみせます。」

 

あきらかにそれだけではない目をアルテミシアはしていた。

アルテミシアの力強い眼差しが清夜の心をさらに抉る。

 

「・・・そうかい。では今日は解散にしよう。作戦開始前には指定ポイントで待機してね。」

 

清夜はそれをアイク(清夜)という結果至上主義者の仮面で隠した。

そんな心の機微に気づくわけでもなくアシュリー達は笑顔で部屋から出た。

 

「じゃあなマスター!今度はこの前のサッカーゲームの決着をつけようぜ!」

 

「それではマスター。あっ、そうそう今回の報酬はいらないので今度、4人でマスターの家に引越させてもらいますね。」

 

「わ、私は・・な、ナデナデしてくれるだけで・・・・で、ではお疲れ様でした!!」

 

「・・ああ、お疲れ様・・・って待てセシル!?引っ越すってなんだ!?」

 

セシルの何気ない一言に遅れて気づき、アイク(清夜)はあわてて部屋をでるが彼女達はもういなかった。

アイク(清夜)はヤレヤレという表情をしてからまたシリアスな気持ちになる。

思わず小声で呟く程に・・・

 

「分かっている・・・やってることは元父親と同じってことも、殺すべきは自分自身ということも・・・それでも」

 

Pラボの時に現れた幻の自分が言ったことを思い出した。

親にすら拒絶されるほどだ。子供に殺しを命じているのだからなおさら。

自分がこの世に存在すること自体許されないのは理解していた。

しかし、それを否定するものもいる。

例えば後ろから追いかけてきた二人。

 

「死なせません。私が・・・必ずお守りしますマスター。」

 

「そうですね。少なくとも世界最強の魔法師である私がいる限り、アイクに最終的な敗北、死はあり得ません。」

 

「アル・・・エレン・・・聞いてたのか。まぁ、何が起きようと死ぬつもりも立ち止まるつもりもない。頼りにしてるよ二人と・・・覗きは良くないな、おしおきだ。」

 

「「!?」」

 

言葉途中でアイク(清夜)は冷徹な口調で左斜め下方向に手を伸ばす。

そして突然のことで驚く二人を尻目に無媒体で精神系干渉魔法『ルナ・ストライク』を発動した。

 

「アイク、一体何が?」

 

「ここから二つ下の階に盗撮、または盗聴用の精霊を感じた。おそらく窓に張り付いているんだろう。精霊は殺して、術者にも致死レベルの精神系干渉魔法をうった。念のためすぐにこのビル全体をチェック、呪符の類が貼り付けられてる可能性もある。」

 

「了解しました!すぐに知覚系の魔法師、並びに西洋、東洋の古式術者を手配して調べさせます。」

 

エレンはデバイスを取り出しながら駆け足でアイク(清夜)の元から離れた。

残されたアルテミシアは未だ驚きを隠せずに聞く。

 

「サイオンを感じるだけで起動式の内容を8割の確率で当てるとは聞きましたが精霊まで感じ取れましたか・・・」

 

「ここ最近84%にアップしたけどね。でも精霊を感じ取ったのは初めてだ。明日は作戦があるが君にも一応警戒してもらおう。ここから1階までDSSの警備員と共に侵入者がいないかチェックしてくれ。」

 

「了解!」

 

アルテミシアも駆け足で去っていく。

とうとう一人なったアイク(清夜)は窓から夜空を見上げた。

 

「何があろうと止まるわけにはいかない・・・明日もこの先も・・・冬華がいなくなったあの日から救いなんてないのだから」

 

そしてアイク(清夜)は武器商人として振舞う。

 

「平和な学園が明日反転する。さぁ、控えろ人類。戦争の開幕だ!」

 

星は雲に隠れて見えない。

まるで彼の心を隠す仮面のように・・・

 

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2095年 4月22日 九重寺

 

清夜がブリーフィングを始めたころ達也も自宅ではなく師匠がいる寺を妹と訪ねていた。

しかし寺に明かりはついていない。

不在かと思ったが母屋のほうに向かうと呪具などが散乱(?)した縁側に八雲はいた

 

「こんばんわ、師匠。もしかしてお邪魔でしたか?」

 

「こんばんわ二人とも、それはまさかだ。これらの道具は調査のための術の準備だ。」

 

「先生、それこそ私たちが見ては不味いものでは?」

 

明かりがないのも気になるが、それよりも術の興味が上回る二人。

術を教えてもらうことができない二人にとっては不味いとわかっていても気になるのだ。

そんな葛藤に八雲は気づいていたが普通に答えた。

 

「いや、今回は君たちに関係する調査でね。準備してたら、ちょうど君たちから電話をもらったってわけさ。それは後にしといて今日は何の用かな?もしかして殺し屋の件?残念ながらそっちの成果はないんだ。まるで忍者だよね。」

 

「いえ、そちらも気になりますが、追加で師匠の力で調べていただきたくて。実は学校にエガリテがいて、そのメンバーと思しき司甲という男がブランシュと強く関係していると自分は考えています。司甲を通じてブランシュが何をしようとしているのか調べてもらえませんか」

 

「それぐらいなら調べられるけど・・・見当がつくなら風間くん達に頼んだほうがいいんじゃないのかな?」

 

「少佐に頼むのは・・・」

 

達也は苦い顔で話すが最後まで喋らなかった。

いや八雲によって遮られたのだ

 

「叔母君達がいい顔しないか。それなら仕方ない」

 

達也は気を遣わせたことに対し無言で頭を下げ謝罪した。

実際は元気がない叔母にこの程度の案件を調べさせるのは気苦労になるだろうと思ってだが八雲は彼らの事情を正しくは知らない。

「気にする必要はない」と手を振って合図した八雲は前置きなしに語り始めた。

 

「司甲。旧姓、鴨野甲。普通の家庭出身だけど実は古式の名家『加茂』家の遠い傍系だ。甲君は霊子放射光過敏症なんだけど一種の先祖返りなんだろうね〜。旧姓というのは親が再婚していてね。その再婚相手の連れ子がブランシュのリーダーをしている。表向きにも裏の仕事的にも・・・ね。目的は分からないけど何かを目論んでいるのは間違いないだろうね〜」

 

そういえばと達也は思い出す。

今日の放課後、隠れていた同盟メンバーが大量に現れ討論会に向けた勧誘をしていた時に司甲は美月を霊子放射光過敏症の悩みを抱えたメンバーによるサークルに誘っていた。実際はエガリテの勧誘なのだろうが本人も霊子放射光過敏症なのだろう。

と、その前におかしいことがある、

 

「参考にはなりましたが・・俺が調査をお願いするのを予見していたのですか?」

 

「いや、僕は忍びだからね。それとは関係なく縁が結ばれた場所で問題になりそうな曰くをもつ人物は一通り調べることにしているんだ。」

 

達也はわずかに目を細めた。

 

「それは俺たちもですか?」

 

「いや、調べようとした時は分からなかった。君たちに関する情報操作は完璧だ。」

 

達也と八雲からきな臭い空気が流れ始める。

一触即発とは言わないもののそれに近い感じの空気だ。

それに気づいた深雪は慌てて口を挿んだ。

 

「そ、それで先生。前にお願いした清夜君のことは?・・・」

 

「うん、問題の『式 清夜』君に関することね。ある程度は調べられたよ。といっても君たちでどうするかもう決めてしまったように見えるけど」

 

「随分長かったんですね師匠。」

 

「まぁね。なにせ僕の記憶通りなら世界最強の魔法師にして世界最恐の武器商人『アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット』と縁が繋がっているのだから。どこに”デウス教”の信者が分からない以上、慎重にいくしかないさ。それに彼の日本における経歴の裏は取れたけど海外の経歴は裏が取れなかったし、この前の黒いアレも分からずじまいだ。」

 

深雪は『アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット』と『デウス教』いう名に反応しゴクンと息を飲んだ。

二人ともその意味はよく理解していた。

 

「元々大きい企業だったとはいえ倒産の危機からたった5年で世界トップクラスの企業に成り上がったDEM・・・その秘密に通じる門の門番が『デウス教』・・お母様が昔、そう教えてくださいました。」

 

「本家が確認した限り戦略級魔法師が少なくとも二人、真相はさだかではないがアイザック・ウェストコット自身も含めれば三人もいる。それだけでなくSFのような最先端兵器を沢山所持している。海外からも人材を引っ張るから高ランク魔法師も『七草』以上に抱えている。純粋な暴力だけで見てもすでに十師族と張り合えるといえるだろうな。しかし師匠、『デウス教』は噂程度だと認識していましたが・・・」

 

「それは少し情報が古いよ達也君。何かしらの確信があるんだろうね。公安や軍の情報部はすでに信者の探り出しを始めている。君たちの実家も動き出しているだろう。といっても、どの組織も確証を得られた人物はまだ一人もいないんだけどね。隠れキリシタンより見つけるのは難しいよ。規模や人数もわからないんだから。」

 

『デウス教』・・・規模も教えも分からないが噂としては存在していた。

曰く、アイザック・ウェストコットの魔法による洗脳された人たち

曰く、世界征服を目論むテロ組織

曰く、外国の諜報組織が公安等の注意をDEMに向かせるためにでっちあげた虚実の組織

などなど・・・・

なにが本当なのか、正直ネットで生まれたデマとしか思えない内容

だがどれも共通として言われているのが『政財界、魔法界だけでなく、ありとあらゆる組織に存在し、DEMの秘密を知ろうとするものがいないか監視している』ということ。

 

「もし本当なら恐ろしいですけど・・・それで清夜は一体何者だったんですか?」

 

「結論から言うと僕の記憶通り、『式海運』の式一正の息子だった。」

 

「ですが先生、その息子さんは無能と呼ばれるほどで魔法の才能もないとおっしゃっていたではありませんか?贔屓目でなしでも清夜君はかなり優秀ですよ。」

 

授業などでは目立ったことはないものの達也も深雪も清夜の有能さは認めていた。

八雲もそれが面白いのか楽しそうに話を続けた。

 

「まさにそれだよ。僕も最初は信じられなかったけど調べていくうちに理由が見えてきた。」

 

「理由ですか?」

 

「そうなんだけど、まずは彼の生い立ちから話していこう。彼は式 一正と黒川春奈の間に生まれた。最初こそ御曹司として扱われていたんだ。だが育っていくうちに運動も勉学も魔法も才能がないと分かり、ぞんざいに扱われ始め、後継者は妹に変わり、最終的には戸籍も式海運の富と権力によって変えられ同じ家に住んでいるのに縁も所縁もない赤の他人にされてしまったのさ。つまりはいない子扱い。だから式 一正に息子がいるなんて知っているのは殆どいなかったんだ。」

 

深雪は誰にもぶつけられない怒りで何も言えなかった。

兄も実家では使用人や分家に似たような扱いを受けていてるから深雪はこのような仕打ちが嫌いだった。

達也はそれに気付き深雪の肩を抱きながら質問することで続きを促した。

 

「母親は?」

 

「彼が6歳の頃に離婚、そのまま捨ててった。彼女は魔法師嫌いでね。彼に魔法の才能はないと言ったが使えないわけじゃない。だけど逆にそれが彼女の気に触ってね「化け物」と呼んで拒絶していた。少し不思議なんだけど魔法の才能がある妹以上に嫌っていたらしい。」

 

「ひ、酷い・・・自分の子を」

 

深雪が必死に絞りだせたのはそれだけだった。

言ったところで所詮同情や哀れみでしかないが、それでも言わずにはいられなかった。

 

「でも妹の冬華さんとは仲が良かったようだよ。妹さんもむしろ彼だけが家族だと思っているらしい。彼女に関しては前回話した通り、まごうことなき天才。魔法師の才能も一流と言っていい。現在はスキップしてケンブリッジ大で経営学を学んでいるとか。」

 

「その大学についても裏は取れてないんですね?」

 

「うん。大学のデータベースには載っているから嘘ってことはないと思うけど。」

 

「それで赤の他人にされてから何があったんですか?」

 

「ああ、そうだったね。それで彼が10歳の頃に父親をなくしてね。富だけは残ったんだけど本来、妹さんが受け継ぐはずの会社をアイザック・ウェストコットに乗っ取られたんだ。当時の会社幹部たちもその時にバッサリとクビを切られて奪い返すチャンスさえ潰されたんだ。」

 

「先生?”富だけは”といっても赤の他人の清夜君は受け取れないんじゃ・・・」

 

「たぶん妹さんが配慮してくれたんだろう。それだけ大事だったんじゃないかな?そしてそこから信じられないぐらいの成長が始まったんだ。彼は必死に勉学を打ち込み、遺産を使いスキップでマサチューセッツ工科大に入学、次席で卒業。それだけでなく空手、ブラジリアン柔術、ムエタイ、中国拳法、剣道、フェンシングにも取り組み今の強さを手に入れたんだ。その強さは身を持って思い知らされてるよね?」

 

達也は二つの意味で驚いた。

一つは成長。努力すれば必ず報われるというが現実にはそうはならないし、長続きさせるのも10歳の子には難しい話だ。それだけの原動力がなんだったのか気になるところだ。

もう一つは剣道とフェンシング。強さこそこの前の戦いで痛感している。問題は何故剣術、リーブルエペーでないのか。現在でもやっているところは沢山あるが以前エリカが言ったように魔法師がやるとなると殆どの人が途中で魔法を交えた剣術、リーブルエペーに移ってしまう。それのにあえて剣道、フェンシングを続けるのは意外だった。

 

「なぜそこまでの努力を?それに日本に戻って魔法科高校に通う理由は?とても魔工師になるためとは思えない。」

 

「そこはちゃんと裏が取れた。彼はねアイザック・ウェストコットから会社を奪って妹さんに返すために努力し帰ってきたらしい。旧幹部との接触もあった。第一高校に通うのは十師族や百家とのパイプを築くためだろう。あそこが一番多く十師族、百家の直系が通っているからね」

 

「正直言って正気の沙汰とは思えません。それに十師族・・ですか」

 

達也と深雪は苦い顔をする。

なにせその序列1位の直系(・・・・・・・)なのだから。

自分達も無関係とは言えない。

 

「清夜の頭脳ならあながちそうとも言えないな。昨日の事件からしてみても予見する力が高いと言えるしな。」

 

「昨日のマジックのような解錠ですよね?あのトリックは驚きましたが・・」

 

「確かに昨日のドアを開けたのはトリックといえるものだ。だがあれは事前に鉄のブロックを入れなければならない。清夜が持っていたブロックは一つ。」

 

達也の言いたいことに理解した八雲が引き継いで説明する。

 

「なるほどね。彼は立て篭りが起こることを予想していた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)んだね。予知能力の類いでない限り普通はそんな予想出来ない。」

 

「はい、立て篭り犯と話していた俺でさえ事件を予想していませんでした。かたや若くして世界トップクラスの業績で武器、魔法を売り、世界最強の魔法師とまで呼ばれる天才。かたや大学をスキップするほどの頭脳を持ち観察眼、先見の眼

に優れ、深雪の魔法力を上回れる天才。信頼できる男ではありますが下手に踏み込みすぎてこの天才同士の戦いに巻き込まれたら・・」

 

それ以上達也は言わなかった。

だが深雪も想像は出来ていた。

達也は人の評価に関してはすごく辛口だ。(だからと言って楽観視するような無能ではないが)

その達也が天才と言うのだ。

例え、昔無能と言われていようと達也がそう言う以上、そういう目で見てしまう。

 

「そう、だから信じるとかは自由だけど深く入り込まないようにね。泥沼には気をつけること。」

 

「分かりました。それで・・結局その呪具はなんの調査で使うんですか?」

 

清夜に関係すること・・

話に出てきた妹のことだろうか?それとも家のことだろうか。それぐらいの程度で考えていた達也だが

八雲は飄々な顔から突然、真面目な顔になり準備を始めた。

 

「これからやるのはね視覚同調という術でね。精霊を通して遠くの場所の映像を見るんだ。いわば精霊の盗撮カメラかな?元々は吉田家の術法で本当は五感まで同調できるんだ。けどこれは亜流で視覚と聴覚だけ。これでアイザック・ウェストコットがいるDEMを調べようと思う。」

 

「危険です先生!もしバレたら殺されるかもしれないのですよ!?」

 

「『虎穴を入りずんば虎子を得ず』というだろう?縁が繋がってしまった以上調べとかないと”もしも”の時に困る。」

 

深雪の警告に飄々と答えるがそれは声だけ顔は真剣そのものだ。

達也としても調査するのは危険だと判断した。

 

「『ミイラ取りがミイラになる』って言葉もありますよ?」

 

「それにも考慮して弟子に協力してもらってるよ。何かがあった時にすぐ中止できるように。それじゃあ始めようか。」

 

八雲が言うといつの間にか弟子数名集まっていた。

呪符でやるというより数人で取り囲んで儀式で発動する感じだ。

術が始まり辺りはシンと静まり返る。

一見何もないように見えるが達也の眼には八雲の周りに複数の精霊が漂ってるのが見えた。

そしてどこか遠くからか管のようなものが八雲にくっつき繋がった。

 

八雲は集中し精霊の見ている景色を見ようとする。

 

(さてさて何が出てくるかな?アイザック・ウェストコット)

 

しかし

 

 

 

 

 

覗きは良くないな。おしおきだ。

 

 

 

 

 

何処からともなく声が聞こえると八雲達に魔法による何かしらの攻撃がきた。

 

「「「「ぐあっ!!」」」」

 

「師匠!?」

 

「先生!?」

 

複数の弟子が倒れ気絶する。

術者の八雲は気絶こそしてないがギリギリ耐えた感じだ。

 

「うっ・・・やられた。まさかこんな攻撃があるなんて・・・君達の言う通りもう少し注意するべきだった。」

 

達也と深雪は急いで弟子の容態を確認した。幸いにも気絶だけで命に別状はなかった。

深雪は近くにあった湯飲みに水を入れ八雲に手渡す。

 

「先生、一体何が?」

 

「ゴクゴク・・・はぁ・・はぁ。精霊で見ようとした瞬間、誰かに気付かれて致死レベルのルナ・ストライクを仕掛けられた。」

 

「ルナ・ストライク!?精神干渉系魔法じゃないですか!?それにどうやって遠くから師匠に攻撃を当てたんですか?」

 

八雲は縁側に寝そべり息を整えて答えた。

 

「それがなかなかのやり手でね。僕は精霊と管のようなもので繋がって見ようとしたわけだけど、相手は精霊を殺すと同時に逆にその管を伝い僕達にルナ・ストライクを仕掛けたんだ。ギリギリのところで僕が術を中止して管を切ったわけだが、あと数瞬遅かったら全員お陀仏だった。いやーまいったまいった。」

 

最後には元の飄々とした口調に戻ったが

その時、兄妹は初めて八雲の悔しそうな顔を見るのだった。

 

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2095年 4月22日 ????

 

とあるホテルの一室。

長期滞在なのか部屋はブックマンから電話が来た時と同じ状態だった。

ビッチそうな白人の女はデバイスを操作しながら隣でテレビを見ている少女に話しかける。

 

「おい紅雪。テレビばっか見てるけど明日の準備はいいのかよ。くたばるのは勝手だけどテメェの死体袋を担ぐのと上に怒られるのは嫌なんだよ私は」

 

「うるっせーなスクリーム!この紅雪様が銃のメンテもCADの調整もせずにテレビを見るわけないだろうが。というかテメェこそ私が着る制服さっさと用意しろよ!」

 

「たく、あー言えばこう言う。文句ばっか言いやがってテメェはアレか?3歳児辺りが好んで履く、歩くたびにヒップヒップ鳴く靴かっての!?ほらよ制服だ。たく国立の学校だからレプリカ手に入れるのに苦労したぜちくしょー」

 

今にも喧嘩しそうな勢いだがこれが二人の日常。これを毎日のように見ればホテルマンも慣れるというものだ。

そんな調子で少女はもう一つ不満を言った。

 

「てかよー平和ボケしたガキしかいないとこでどうして私がパラミリと組んで仕事しなきゃいけないの!?バカなの?死ぬの?」

 

「あ?ンなもん不安だからに決まってんだろ。カツト・ジュウモンジやマユミ・サエグサがいる学校だぞ?それにテメェじゃあクラッキングとか出来ねーだろうが!」

 

「うわ、ウゼーこのビッチ。婚期逃して死ぬな、間違いない。キッシシシ・・・まっ、せいぜい楽しませてくれよjapanese。」

 

その少女の白い頭とデザートイーグルがキラリと光った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 4月22日 第一高校

 

予測された日の放課後、話し合いの通りに討論会は始まる。

ほとんどの生徒は部活動を休んでまで参加、傍聴するようだ。

だがほとんどの生徒、いや深雪も達也もまだ知らない。

様々な思惑が孕んだ戦いになる事を・・・・




鍵穴のネタ元は『スパイラル 推理の絆』にあった話です。
現実にあんなことがあるのか分かりませんけどw
そこまで気にしないでください。


次回予告!
とうとう戦いの火蓋が切って落とされる。勝つのは一体誰か!?
そして戦いの中で清夜の心は大きく揺れ動き・・・

次回はなんと倍のニ万字越えです!
お気付きの方もいるかもしれませんがデストロのあのキャラも・・・
次回をお楽しみに!

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