魔法科高校の武器商人<修正版>   作:akito324

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39話です!
入学編もとうとうクライマックス!
長かったですね。
文才無くて申し訳ない。
でもバトルを中心に楽しめていただけたらと思います!

前回までのあらすじ!
学校でブランシュがテロを決行!いたる所で戦いが起こる。そんな中、清夜達は図書館でCIAに襲われ絶体絶命に。達也達は無事逃げ出せたが囮になった清夜は追い詰められ・・・復讐鬼として覚醒した。


39話 戦いは悪意と狂気のなかに・・

2095年 4月22日 警視庁 公安本部

 

「メンバー全員死亡とはどういうことだ!」

 

公安部長は声を荒げる。

目の前に映るモニターにはブランシュ対策チームの遺体の姿

 

「突如、映像と通信が途切れて復旧した時には・・・幸い、学校にいた小野遥は無事でしたが他は・・・それとつい先ほど軍情報部の姿が確認されました。」

 

「情報部だと!?あいつら我々に黙って・・・!身柄を横取りするつもりか!クソ!捕まえるためなら彼らも殺すというのか!・・」

 

「いえ、それが・・・」

 

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2095年 4月22日 国防軍 情報本部

 

時を同じくして

 

「なっ!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・つまり第三者に両チームとも殺されたと?・・・」

 

公安とは逆に絶句する情報部の指揮官。

部隊の全滅と公安部の存在の報告を受けて公安が捕縛チームを殺したものだと思ったが公安も全滅。

何がなんだか分からない。

 

「いえ、どちらが先に仕掛けたかは分かりませんが()()()()の人間が互いを殺しあったものと思われます。」

 

「それは少しおかしいと思わんか?いくら文官と我々武官に対立があれぞ会った瞬間に殺し合うか?それに『ほとんど』とはどういうことだ?」

 

「はい、実はストーカー5とストーカー7はストーカー3に殺されたものと思われます。つまりは・・」

 

「同士討ち!?まさか噂されている司一の『邪眼』か?」

 

副官と思われる男はリモコンを操作して画面を変えた。

 

「洗脳の線も考えたのですがストーカー9は心臓麻痺で死んでいます。司一の『邪眼』は人を洗脳させる魔法であり心臓麻痺を引き起こすことは不可能です。」

 

「・・・公安の死体は?」

 

「似たような状況です。同士討ち、心臓麻痺で死んだものもいます。」

 

「・・・原因が分からない以上、上は公安のせいにして公安を追及するつもりだろう。恐らく公安も逆のことをする。」

 

「もし大佐が最初に言ったようこれがブランシュ以外の第三者によるものならそういった対立も考慮した行動と思われます。」

 

「ちくしょう、我々は一体何と戦っているんだ!?」

 

結局、双方とも本当の敵の尻尾すら掴めないのだった。

 

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2095年 4月22日 東京 廃工場

 

日暮れまで残り僅かとなった頃

ブランシュの前線基地であるこの工場に2台のハンヴィーが門を突き破って現れた。

 

「レオ、ご苦労さん」

 

「・・・何のちょろいぜ」

 

「無理しなくていいわよ。走ってる車全体に硬化魔法かけるなんて至難の技なんだから」

 

ハンヴィーから降りてきたのは達也、深雪、清夜、アルテミシア、レオ、エリカ、克人、そして最後に剣術部2年の桐原だった。

保健室にいなかった桐原だがどこかで話を聞きつけたらしく克人を説得してこの戦いに参加することになったのだ。

克人は達也に指示を仰ぐ。

 

「司波。お前が考えた作戦だ。お前が指示を出せ」

 

「レオ、お前はここで退路の確保。エリカはそのアシストと逃げ出そうとする奴を仕留めろ。」

 

「捕まえなくていいの?」

 

「ああ、安全確実にやってくれ。会頭と桐原先輩は左手から回って裏口から入ってください。清夜とアシュクロフト先輩は右手から回って上のルートから・・」

 

「待って!」

 

達也を止めたのは了承したはずのエリカだった。

 

「それならあたしが清夜君の代わりに行く。あたしの方が強いわけだし。それがダメなら私が先輩と代わるというのもいいでしょう?」

 

「確かにな、なんなら俺が代わってやってもいいぜ。」

 

「うっ、否定できないけどさ・・・」

 

(森崎のは不意打ちだったし、図書館のも逃げ回っただけって言っちゃったから信用はされてないか。いや、むしろ無害をアピールするならこれがいいのか。)

 

清夜はバツの悪そうな演技をする。

しかし達也はエリカの意見をバッサリ切り捨てる。

 

「大丈夫だ。清夜ならやれる。それは俺が保障する。」

 

「でも・・・」

 

「大丈夫、千葉さん。()()()()()()()()()()()。」

 

「っ!・・・」

 

「強い」を敢えて強調するアルテミシア。

その意味に気付いたのかエリカは眉間にしわを寄せ、アルテミシアを見つめるがそれ以上何も言えなかった。

 

「というか俺達どうやって上に登るの?外階段とかなさそうだけど。」

 

「ふっ、勧誘期間にお姫様抱っこした時の魔法があるだろ?」

 

「「!?」」

 

剣道場の時と同じようにエリカは真っ赤に、清夜は逆に真っ青になる。

幸い、克人達には魔法の使用がバレなかったがアルテミシアには分かっていた。

 

「あら私、男の人に抱き上げられるの初めてだからよろしくね清夜君」

 

「は、はい・・・」

 

「よかったな式。今の話聞いたら俺以外の剣術部男子は特に可愛がってくれんだろうよ」

 

桐原はそう言うが裏があるのは確実だった。

だんだん緩んだ話しになっているため克人が止めに入った。

 

「そこまでにしろ。ここは敵地だ。いつ敵が来てもおかしくない。」

 

「そうですね。では今の作戦通りに、俺と深雪は正面から行きます」

 

そうして各々配置に向かう。

皆を見送った後、何か言いたげなエリカにレオが声をかけた。

 

「どうしたエリカ?」

 

「なんでもないわよ。あ〜あ、よりにもよってあんたと待機なんてねー」

 

「んだと!?」

 

そう言ってレオを揶揄うことでエリカは気分を紛らわした。

 

(私、なんであんなに・・)

 

だが何故そこまで彼に気遣うのかエリカ自身分からなかった。

 

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2095年 4月22日 廃工場右手

 

清夜とアルテミシアは工場の外を駆ける

 

『俺達の組み合わせ、どう思う?知っててワザとかな?』

 

『意図したものとはいえ、私達の関係がバレたわけではないかと。仲が良いという知っていて組まれたのでは?』

 

『それはそれで問題だと思うんだが・・・まぁいい、都合がいいのは変わらないんだ。』

 

なんて会話をしているとアルテミシアは思考通信を切ってピタリと止まった。

 

「じゃ、お願いね?お姫様抱っこ♪」

 

「おい、アルだってあの魔法出来るだろ?」

 

「いいえ〜今の私は清夜君の先輩だから。これは命令♪私、嫉妬してるんだから」

 

「恋人ぽい言い方するな。・・・分かりました。でも終わったら冗談はなしですよ先輩。登ってからは仕事をしてもらいます」

 

そういって清夜はアルテミシアを持ち上げると を発動し窒素の階段を登る。

その時のアルテミシアは幸せではあったが半分心配でもあった。

 

(いつもと同じように見えるけど・・・違う・・・纏う雰囲気が変わってる。先週の保健室の時と同じ雰囲気・・・)

 

アルテミシアもエリカと同様、無意識に強く抱きしめていた。

 

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2095年 4月22日 廃棄工場 内部

 

『私が中を見よう。アルテミシアは周囲を警戒』

 

上に上がる頃にはアルテミシアと話す口調までもがアイザック・ウェストコットに戻っていた。

清夜とアルテミシアが着いたのは廊下のような所だった。

正確にはそこの窓の外の足場に身を潜めている状態だ。

目の前には拳銃で武装した男が一人。

近くにはドアが開いた無人の部屋がある。

清夜はハンドシグナルを交えて思考通信した。

 

『見える限り警戒しながら歩くの男が一人。他にもいるだろうけど、まずはあれから抑える。私に続いてくれ』

 

『了解』

 

清夜は軽やかに、しかし魔法でそっと中に入り込み、男の背後に立った。

 

「こっちに敵はいな・・・ムグッ!」

 

ガシッ!

 

相手の首を締めた清夜。

そのまま、有無を物理的に言わせず転がり込む形で部屋に連れ込んだ。

男は必死にもがくが清夜の締め技からは逃げられない。

 

「んぐぐ・・んー!」

 

「9・・・10」

 

抵抗虚しく清夜の10カウント目で男は気絶した。

アルテミシアも続いて部屋に入った。

 

『廊下、敵影未だありませんマスター。』

 

『戦力は下に集中させているんだろうね。でもまだ10人以上はこの階にいるはずだ。()()の作戦のためにも手っ取り早く細工を施そう。』

 

バチバチッ・・・

 

清夜の手に電気が走った。

 

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2095年 4月22日 廃工場 一階フロアA

 

司一を最初に見つけたのは達也達だった。

達也は遮蔽物の確保など気にせず進み、敵もホール状のフロアに隠れもせず整列していたからだ。

 

「ようこそ、初めまして司波達也君!そして傍にいるのは妹の深雪君かな?」

 

「そういうお前はブランシュのリーダーだな?」

 

手を広げて歓迎の意を示す男。

背後には銃火器で武装した男達が二十人以上。

達也は冷めた視線で質問を質問で返した。

 

「おっと、これは失敬。私がブランシュ日本支部のリーダー、司一だ。」

 

その男は学者のような白衣に眼鏡を掛けた格好をしており、いかにも知的な、そして自信に満ちたアピールをしている。

あきらかに自分に酔っている。

口調や仕草からしても命令することに慣れている人間。

人の心と命を弄ぶテロのリーダーという意味ならぴったりの男だ。

深雪の目にも司一の本質、心が見えていた。

 

(濁った紫色・・・この男、狂っている・・・)

 

「そうか、一応投降勧告をしておく。武装を解除し両手を頭の後ろで組め」

 

達也は二つ持っているシルバーホーンの一つを司一に向けた。

それでも司一は薄ら笑いを浮かべる。

 

「ふむ、それはCADだね。劣等生の君は魔法が得意ではないはず。その自信の源はなんだい?」

 

司一が右手を挙げると後ろにいた男達は一斉に銃を構えた。

 

「司波君、我々の仲間になりたまえ。アンティナイトを使わない君のキャスト・ジャミングは実に興味深い。今回の作戦はかなりコストが掛かっている。それを台無しにしたことは忌々しいが君が仲間になってくれるなら全て水に流そうじゃないか。」

 

「やはりそれが目的か。壬生先輩の接触も司甲に俺を襲わせたのも同じ目的だな?」

 

「ふ、そこまで分かっていてやって来るとは所詮、子供だね。」

 

「それがどうした。言っておくが答えは最初からNOだ。」

 

「ふむ、なら・・こうしよう!」

 

その仕草は学者というよりはマジシャンだった。

司一は眼鏡を外して上に大きく投げ上げる。

 

「司波達也!我らが下僕になれ!」

 

瞬間、司一の眼が怪しく光った。

すると達也はダラんと腕を下ろし脱力してしまった。

その表情はいつも以上に無表情だった。

 

「・・・お、お兄様?」

 

「ふははは!これで君は我々の仲間だ!」

 

逆に司一は大きく高笑いした。

喜びというよりは狂気を曝け出した、そんな表情だ。

 

「では手始めに共に歩いてきた君の妹さんを手に掛けてもらおうか。」

 

己が権威を疑わぬ表情で司一は命令する。

 

「はぁ、猿芝居はいい加減によせ。見ているこっちが恥ずかしくなる。」

 

「な!?」

 

しかし、その表情は達也の言葉によって一瞬で氷ついた。

 

「意識干渉型と称しているが、正体は催眠効果を持つ光信号を相手の網膜に投射する光波振動系。単なる魔法を使った催眠術だ。旧ベラルーシが研究していた手品だったな。」

 

「お兄様、まさか!?」

 

眼を見開いて問いかける深雪に達也は答えた。

 

「あぁ、壬生先輩の不自然なまでの記憶違いはこいつの魔法のせいだ。」

 

「この下衆どもッ・・」

 

深雪は静かな怒気を目の前の下衆に向けた。

その熱にあてられ氷が解けたのか。

 

「な、なぜ?」

 

司一は呻く。

薄ら笑いすらできない。

 

「眼鏡を外す右手に注意を惹きつけ、左手で隠し持ってたCADを操作を操作する。そんな小細工が俺に通用するか。起動式の一部を抹消すればお前の魔法など意味のない只の光信号だ。同じ視線誘導の手品でも清夜のほうが100倍見抜くのが難しいぞ。」

 

タネの割れた手品にそれ以上の興味は出てこなかった。

 

「貴様一体・・・」

 

「二人称は”君”のはずだったが?大物ぶってた化けの皮が剥がれているぞ」

 

(こ、この眼・・・こいつ私のことを人間として見ていない!?敵か障害物ぐらいにしか見ていない!)

 

ざわざわ・・・

 

”催眠”や司一の態度にブランシュのメンバーがザワつき始めた。

”もしかして自分も?”、”実は操られていた?”・・・そんな疑いの眼差しだ。

だがそんな視線よりも目の前にいる化物に対する恐怖が司一の心を支配していた。

 

「う、撃て!撃て撃て!!」

 

威厳を取り繕う余裕すらない。

本能的な恐怖に駆られ司一は射殺を命じた。

 

しかし・・

 

バラッ!

 

「「「な、銃が!?」」」

 

弾丸は一発も出なかった。

代わりに達也の『分解』によってバラバラになった銃の部品が一斉に床に落ちた。

男たちの混乱が場を満たした。

そのパニックの中、司一は鎮めることなく一目散に逃げ始める。

 

「ひ、ひぃぃぃ!!」

 

「お兄様、追ってください。ここは私が」

 

「任せた。」

 

達也は追いかけようと駆け出す。

残された男たちは自然と道を開けた。

そのまま通していればよかった

 

「こ、このーー!」

 

なのに男の一人がナイフで達也の背中を刺そうとした。

 

「愚か者」

 

しかし、それは間違いだった。

冷たい声色とともに男は氷付いた。

比喩ではない

男の全身は霜で覆われて動かなくなっていた。

 

「ほどほどにな」

 

「はい、お兄様」

 

達也は男たちに声を掛けることなくフロアを出た。

追いかけるものはいない。

行けばすぐにでも同じ末路を辿ると分かっているから。

 

「お前たちは運が悪い。お兄様に手出しをしなければ命だけは助かるものを・・」

 

氷の女王が顕現した。

冗談でもバカにするでもなく畏怖の意味で、そう認識した。

 

「ま、まさか・・」

 

冷気が男たちの全身を侵食していく。

体の芯から冷えていく。

そして顔が絶望に染め上がる。

 

「この魔法h・・・」

 

「私はお兄様ほど慈悲深くはない。祈るがいい。せめて命があることを」

 

 

 

白い霧の中、深雪以外の全てが静止した。

 

 

 

「・・・」

 

もう動くことはない男たちに深雪は未だ侮蔑の目を向け続けている。

そこに一つの足音がこっちに向かってきた。

 

タッタッタッ・・・

 

「ものすごいサイオンを感じたけど無・・!・・こ、これは・・・!!」

 

現れたのは清夜だった。

そこには何故かアルテミシアがいないのだが今はそれどころではない。

清夜の登場に深雪は正気に戻る。

 

「し、清夜君・・・これは・・・その・・」

 

正気に戻った深雪にあったのは後悔。

こらしめたことにではない。

使った魔法の威力が高すぎたことに後悔していた。

その魔法は・・・

 

「振動減速系広域魔法・・・『ニブルヘイム』・・・」

 

清夜は驚きながらそう呟く。

知られてしまった。

リスクを負う必要はないと達也から言われてるとしても

やりすぎている。

正当防衛の域を超えている。

 

「わ、わたしは・・・わたしは・・・」

 

このままでは『大量殺人者』のレッテルを貼られ、せっかく出来た友人達も離れてしまう。

いや、それだけでなく自分のせいで兄からも友人達が離れてしまう。

だけど言い訳が出てこない。

予想される未来に苦しむ深雪に清夜は重い口を開けた。

 

「・・・達也は?」

 

「お、お兄様は司一を追って奥に・・・」

 

「そう、じゃあ俺は行くね・・・それと俺はここで何も見なかった。いいね?」

 

深雪に恐怖した声色ではなかった。

むしろ優しく諭すような普段の声色。

今度は深雪が驚いた。

 

「え、えあ、その・・・」

 

「言わないさ。君のことだ、達也が殺されかけたんだろう?言ったじゃないか『大事な家族を守るためならどんな事でもすべきだ』って。それに言いふらそうとすれば、殺されるのがオチだろうし。俺は利益がないことはしないよ。それじゃ」

 

嘘だ。

言いふらしても()()()()()()()()()()()()()()()()()と深雪は分かった。

だからこそ、そんな言い方でも嫌悪はなかった。

 

「本当に・・・ありがとう・・・グスッ・・・ありがとう・・・ございます」

 

その言葉を言った時にはもう清夜はいなかった。

 

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2095年 4月22日 廃工場 通路

 

 

 

「くっ、くそ!」

 

「待て!」

 

複雑な迷路のような通路で一人、達也は司一を追っていた。

小物ほど逃げ足が速いというのは相場通りなのだろう。

中々、捕まらない司一に達也は魔法を行使しようとした。

 

「司様は渡さない!」

 

しかし、突如として現れた男に達也は驚く。

ただの敵ならば警戒せずとも軽くあしらえるがこの男はそうじゃない。

手榴弾を片手にピンを引っ張りながら突っ込んできた。

つまりは・・・

 

「っ!?自爆特攻・・」

 

「そ、そうだいけ!命に代えても足止めしろ!」

 

(分解をつか・・・)

 

「司波君!後ろに下がって!」

 

「!」

 

ドカーン!!

 

男は盛大に自爆した。

思ったより爆発が大きかったのは他にも手榴弾を装備していたからだろう。

そして達也はというとほぼ無傷だった。

目の前には熱と衝撃を()()させる魔法障壁。

完全に防ぎきれたわけじゃないがそれでも怪我と呼べない程度に防げていた。

もし耐熱、衝撃を()()魔法障壁なら破られてお陀仏だった。

 

「とっさに緩和を選べるなんて流石ですね。助かりましたアシュクロフト先輩」

 

「ありがとう、そっちも無事でよかったわ」

 

本当なら分解で防げていたが達也はあえて言わず状況を確認する。

 

「それで上の状況は?あと清夜は?」

 

「俺はここだよ。」

 

後ろを振り向くとこちらに向かってくる清夜の姿が見えた。

 

「とりあえず、追いながら確認しましょう。司波君、司一はどこに?」

 

「こちらです。ついてきてください」

 

達也は司一の逃げた方に駆け出し、二人もついていく。

 

「上は敵がいたんだけど全員手榴弾持って下に降りてったんだ。」

 

「ということは・・」

 

「ええ、さっき自爆したのは上にいた奴ら。まだいるは・・」

 

「「うぉぉぉ!!」」

 

示し合わせたかのように後ろから手榴弾片手に自爆特攻する男がまた、今度は二人も現れた。

 

「自爆で死ぬなら君達だけに・・してくれよっ!」

 

「「うぐっ!」」

 

ドガーン!ドカーン!

 

敵がピンを引き抜く直前、清夜は移動魔法「ランチャー」で敵を吹き飛ばし爆発の直撃を防いだ。

単純な魔法だが自爆のタイミングを見極めるのは度胸のいることだ。

達也は清夜について、そう評価を改めた。

 

「なんなんだい彼ら!?自爆にためらないがない。」

 

「さっき分かったことだが司一は光波振動系「邪眼」を使った催眠術で人を操っている。たぶん自爆も催眠術によるものだ。」

 

「それでサヤは・・許せない!」

 

アルテミシアは図書館の時ほどではないが怒っている。

対して達也は自分で言ったことに疑問を感じていた。

 

(操られていたとはいえ奴らは狂信者だ。たが奴らの死に際の目は狂気というより、むしろ()()だったような・・)

 

その疑問に答えは出ず、ただ司一を追うのだった。

 

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2095年 4月22日 廃工場 一階フロアB手前

 

達也達はその後、何度も自爆特攻してくる輩をあしらいつつ追いかけた。

そして司一が右手の部屋に逃げていくのを見た。

 

「逃げてる道々にも部屋があったのに、迷わずあの部屋に逃げ込むってことは」

 

「待ち伏せ・・ね」

 

「さすがに戦力を散らばらせるほど馬鹿じゃないということだろう。ここは俺に任せてくれ。」

 

達也はCADを逃げた先の部屋に向けた。

魔法に障害物は意味をなさない。

しかし、それは対象の座標が分かっているというのが前提だ。

だから壁で視界が遮られているこの状態では魔法の発動は無理に近い。

それでも達也は構わず引き金を引く。

 

「「な、なんだ!?」」

 

すると壁の向こう側からそんな狼狽の声が聞こえた。

あちらで何が起きているか分からないが清夜は気づいた。

 

「知覚系魔法・・・君はそんなレア魔法も使えるのかい?」

 

「実技の成績には関係しないがな。それよりも今はあっちだ。」

 

部屋に入る三人。

それを出迎えたのは銃弾ではなく魔法師が嫌う騒音だった。

 

キィィィィィィィィィィィィ!!

 

「「っ!?」」

 

「どうだい魔法師、本物のキャスト・ジャミングのご感想は?」

 

聞こえたのは哀れな男の笑い声。

しかし見えたのは大量の、しかも高純度のアンティナイト。

そして兵士30人。

ただ不思議なことに銃はパーツレベルでバラバラになっていたが笑い声を演出するには充分な戦力だった。

アルテミシアは表情を強張らせる。

清夜はというと表情が崩れることはないが手を握りしめる力は強くなっている。

その中でただ一人、達也だけは顔色ひとつ変えず淡々と述べた。

 

「パトロンはウクライナ・ベラルーシ再分離独立派。さらにその後ろは大亜連合か。」

 

(高山型古代文明の跡地しか出てこないアンティナイトの産出地から推理したか。たいしたもんだ。)

 

ブランシュの動揺が伝わって来た。

三流にもほどがある。

 

「やれ!相手は魔法が使えないガキ三人だ!」

 

達也は面倒臭そうにCADの引き金を引いた。

このキャストジャミングの嵐の中で魔法を使うのは高ランクの魔法師でも難しい。

それなのにCADの射線上の人間が太ももから血を吹き出して倒れた。

銃やレーザーの類ではない。

 

(何だこの魔法は?早すぎてニューロ・リンカーの解析も間に合わない・・・それに魔法発動と同時にサイオン波が細波に変わった?)

 

伝説や御伽噺の産物でもなく現実の技術。

達也は『分解』で射線上のあらゆる細胞組織を分子レベルに分解して穿ったのだ。

キャスト・ジャミングも同様に『分解』することでサイオンノイズをただのサイオンの細波に変えてしまった。

 

「な、なぜだ!?なぜキャスト・ジャミングのなかで魔法が使える!?」

 

達也に答える義理はない。

代わりに司一の後ろで細かく煌めく銀光が現れた。

 

ギィィィィィィン!!

 

「なななな、何だ!?」

 

突如、壁から突き出たのは刃引きされた刀。

この刀に斬れ味はないはずだがそれを可能にしたのは魔法『高周波ブレード』

刀は特有の不快音をたてながら、そのまま壁を文字通り壁を斬り開いた。

 

「よぉ、三人共。これをやったのはお前らか?」

 

その開いた壁から出てきたのは桐原武明。

当事者の代わりに清夜が答えた。

 

「いえ、正確には達也一人で倒してしまいました。」

 

「やるじゃねぇか、司波兄。んでコイツは?」

 

怯えた顔で張り付く男を蔑みの目で桐原は指した。

達也は同じ眼差しで答えた。

 

「それが司一です。」

 

「こいつが?・・・」

 

変化は一瞬。

桐原の中で()()()スイッチが入った。

 

「こいつか!壬生を誑かしたのは!!」

 

「「「!?」」」

 

怒気ではない。

()()だ。

達也ですらたじろくほどの殺意が桐原の全身から放たれた。

 

「ひ、ひぃぃっぁぁ!!」

 

「しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

桐原は司一の頭目掛けて刀を振り下ろそうとした。

その時。

 

ドガッ

 

「やめてください先輩!!殺しても壬生先輩は喜びませんよ!!」

 

清夜が桐原目掛けてタックルをしかけた。

もし魔法で止めようとしたら展開している間に司一は真っ二つだっただろう。

 

「離せ!!こいつを殺さなきゃ俺は!!」

 

ものすごい力で清夜を引き剥がそうとする桐原。

達也とアルテミシアも止めるのに加わろうと思ったがそこで達也は気づいた。

 

「清夜!!左だ!!」

 

「!?」

 

「司様!外に車を用意しています!」

 

「お逃げください!ここは俺たちが命に代えても!」

 

達也に倒されたはずの男達全員が清夜に向かいながら手榴弾のピンを引き抜こうとしていた。

彼らの目に迷いはない。

達也はもう一度CADを数人に向け人体の急所を穿つ。

しかし誰も倒れない。

 

(人体の急所を穿ったんだぞ!?なぜ気絶しない!?)

 

「っ!!逃げろぉぉぉぉ!」

 

「清夜君!!」

 

ドカーーーーーーーン!!

 

二人の叫びは爆発音の中に消えた。

爆発特有の煙がたちこもり視界には人はおろか前に何があるのかもわからない。

そんな中、一人の声が響いた。

 

「司波!アシュクロフト!無事か!」

 

収束魔法により煙が一つの球体に収束された。

晴れた視界に見えたのは屋根が吹き飛び、穴がいくつか開いた部屋。

その奥に清夜と桐原を守る最強の障壁、それを操る大男の姿があった。

 

「十文字先輩!!」

 

「死ぬかと思った・・・これが『ファランクス』。熱も衝撃も完璧に防ぐなんて・・・」

 

『ファランクス』

4系統8種全て含む魔法で物理障壁はもちろんのこと、他に音、熱すらも完璧に防ぐ多重障壁魔法。

世界最高峰の防御力ゆえ十文字家は『鉄壁』という異名で呼ばれている。

しかし死傷者は0でも負傷者は0ではなかった

 

「おい!桐原!」

 

「桐原先輩!」

 

「式君、桐原君は!?」

 

「大丈夫、先輩は気絶しているだけです。恐らく爆発の音で気絶したものかと・・・」

 

「む、少し音の防御をぬかっていたか」

 

清夜は桐原をそっと優しく壁にもたれさせた。

気絶したせいか桐原には先ほどのような殺意は見えず、おだやかな表情で寝ていた。

 

「・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・」

 

「ん?何か言ったか式?」

 

「いえ、司一はどこかと思いまして」

 

見渡すが部屋には司一の姿は見当たらない。

ならばと達也は密かに『精霊の目』で司一の姿を追った

 

「そこ開いたの穴から出て門の方に向かったようです。」

 

「どうしましょう十文字先輩?」

 

「ここの指揮は司波だ。司波の指示通りに動こう。」

 

視線が達也に集まる。

責任を投げているのではない。

信頼しているからこそ託しているのだ。

達也もその意味は分かっていた。

 

「では2手に別れましょう。アシュクロフト先輩は桐原先輩の介抱を、会頭と清夜は俺と一緒に穴から出て門へ」

 

全員、頷いて動き始めた。

各々が司一を捕らえるために

 

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2095年 4月22日 廃工場 門

 

ブランシュのメンバーが一斉に自爆する少し前。

エリカとレオは逃げてきた男達を縛りあげていた。

 

「ねぇ、さっきから色んな所で爆発してるけど応援に行かなくていいの?」

 

「心配っちゃ心配だけど達也や会頭なら大丈夫だろうよ。」

 

本人が聞いたならばその期待、信頼は否定していただろう。

レオは「それにな」と続けた。

 

「達也は俺達を信じて任せたんぜ。ここを。なら期待に応えねーとな。」

 

「・・・そうね」

 

「ブフッ、清夜が心配ならそう言えばいいのによ。」

 

初めてレオがエリカを揶揄えた。

その証拠にエリカはCADを伸ばして警棒状態にした。

 

「っ!!そんなん・・」

 

ドカァァァァァァン!

 

「「!?」」

 

ムキになって引っ叩こうとした所で今日一番の爆音が鳴り響いた。

外からでも天井が吹き飛んでるのが見えるほどだ。

二人はおふざけを止めて向き合う。

 

「レオ、何時でも車出せるようにして。エンジンくらいなら掛けられるでしょ?」

 

「ああ、分かった。お前はどうすんだ?」

 

「私はあっちに行って様子を見てくる。」

 

「いや、だったら防御できる俺の方が」

 

言葉途中で黙るレオ。

エリカはすぐにその理由が分かった。

 

「エンジン音・・か?」

 

「こっちに向かってる!レオ構えて!」

 

そう言った数秒後。

正門から一台の車がエリカ達に突撃してきた。

二人は余裕を持って躱し、距離を取る。

 

「あっぶね!轢き殺す気満々だな。何者だ?」

 

「少なくても味方じゃないわね。」

 

降りてきたのは学校にいたブランシュメンバーと同じツナギ姿の女2人。

一人は茶髪、もう一人は黒髪。

黒髪の女は出てくると同時にアサルトライフルについたグレネードランチャーを発射した。

狙いはエリカ達ではない。

 

「エリカ!車から離れろ!」

 

「!」

 

ドカァァァン!ドカァァァン!

 

二台の車は盛大に爆発し、ドアまで外れて吹き飛んだ。

 

「こんの・・!、ちっ!」

 

パンパンパンッ!

 

エリカは自己加速術式で距離を詰めようとした寸前で止め、もう一人からの攻撃を避けた。

学校にいたような奴らなら避けながら詰めることが出来た。

でも彼女達相手にそれは出来なかった。

 

「エリカ」

 

「分かってる。こいつらレベルが段違いよ。たぶん図書館にいた女と同じくらい強い。」

 

かと言って怖じ気づく二人ではない。

エリカは右からレオは左から攻める。

 

「行くわよ!」

 

「うぉぉぉ!パァンツァー!」

 

硬化魔法をかけたレオ、自己加速術式をかけたエリカ。

そこらの連中ならばこれで終わりだがエリカが言うように敵は今までとは段違いだ。

 

「悪くない手だが我々には通用しない。特にそのレベルの一芸ではな。」

 

パンパンパンッ!

 

「ぐっ!」

 

茶髪の女はレオの膝に弾を叩き込んだ。

すると硬化魔法をかけているはずのレオが痛みに膝をついた。

何故か。

硬化魔法相手では貫通させることは出来ない。

しかし、衝撃は残るのだ。

それがほぼ同じ場所に連続して当たり衝撃が積み重なれば、いくらレオでも痛みに耐えられなくなる。

茶髪の女は射撃精度という意味でも段違いだった。

エリカの相手も同様に段違いだ。

 

パパンッ!パパンッ!パパンッ!

 

「っ!、こっ!んのっ!っ!」

 

小刻みに連射する黒髪の女。

エリカは近づくことも出来ずに後ろと横に回避するだけ。

 

(こいつ!さっきもそうだけど、あたしが移動する軌道線上に弾を当ててくるから思うように踏み込めない。せめて・・)

 

「せめて間合いが詰められれば?詰めさせるわけないでしょ」

 

パパンッ!パパンッ!

 

「人の心を読んでんじゃないわよ!」

 

叫んだところで距離を詰めることは出来ない。

エリカとレオは近場にあった遮蔽物に飛び込んだ。

 

「強すぎだろ。あいつら!」

 

「でも攻め込んで来ないわね。もしかして時間稼ぎが目的?なら・・」

 

「ん?あれはもしかして」

 

レオの視界の先には司一の姿があった。

無様にも命からがら逃げているような様子だ。

 

「ひっ、ひっ、ひっ!」

 

「司様!こちらです!」

 

「急いでください!」

 

黒髪の女が手をあげ、茶髪の女がドアを開けた。

 

「間違いない!あいつらボスを逃すつもりね。」

 

「ちっ、どうにか止めねぇと・・・あれは!」

 

レオが周りを見渡しある物に気付いた。

作戦も思いつくがあと少しで逃げられてしまう以上、作戦会議している暇はない。

 

「エリカ!俺の後に続け!」

 

「ちょっ、レオ!?・・そうか!」

 

「パァンツァー!」

 

レオはある物を持って硬化魔法をかけた。

それは吹き飛んだハンヴィーに元から備え付けられていた暴徒鎮圧用の盾。

レオは片手で持ち上げて突撃した。

アサルトライフルに対して暴徒鎮圧用では簡単に撃ち抜かれるが硬化魔法ならば問題無い。

そのことに気づいたエリカもレオの影に隠れて進む。

知り合って間もないとは思えない、けど思考が似通っているからこそ出来たコンビネーション。

 

「ふーん・・」

 

パンパンパンッ!キン!キン!キン!

 

「・・・」

 

パパンッ!パパンッ!パパンッ!キキン!キキン!キキン!

 

盾を使って距離を詰め、自己加速で盾から飛び出し敵を斬りつける。

敵の二人も素直に驚いたがそれが表情に出ることはない。

右か左か、どちらから出るのか。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

答えは上からだった。

エリカはレオの肩を踏み台に飛び上がり敵を斬りつけようとした。

作戦会議なしのとっさの判断にも関わらず息の合った攻撃かつ想像もつかない奇襲のはずだった。

 

ドガッ!

 

しかし相手のほうが一枚上手だった。

エリカは何かの力を受けて叩き落とされた。

 

「エリカ!!」

 

「ぐっ!?こ、これはまさか・・・加重系・・っ!」

 

「・・・」

 

黒髪の女は何も言わず銃口をエリカに向けた。

司一と茶髪の女はすでに車に乗り込んでいる。

敗北、そして死をエリカは予感した。

次の瞬間、エリカに見えたのは何かのビジョンだった。

 

それは血まみれになった少年と自分。

 

(え、誰あなた?なんで泣いてるの?あたし何で血まみ・・・)

 

「間に合ええぇぇぇぇ!」

 

「!」

 

記憶にない走馬灯を見ていたエリカは

男の叫び声で目を覚ました。

 

ドバッ!

 

「「!?」」

 

エリカと女の間に吹き上がった土砂が割りこむ。

エリカは知識として知っていた。

この魔法は移動系の「陸津波」だと。

エリカは知っていた。

その声の人物を。

 

「清夜君!」

 

「清夜!達也!会頭!」

 

二人の声に返す余裕はない。

車は黒髪の女を乗せてすでに走り出そうとしているのだから。

達也は駆けながら問う。

 

「会頭!ファランクスで止めることは?」

 

「ダメだ。遠すぎる!」

 

達也は仕方なしにCADを構えた。

そこにどこからか缶が達也達の目の前に投げ込まれた。

缶を見た途端、エリカは達也に制止の視線を送り叫ぶ

 

「フラッシュバン!?伏せて目と耳を塞いで!」

 

「「「「!!」」」」

 

バン!

 

強烈な閃光と音があたり一帯に広がった。

清夜は見えない視界の中、前に進む。

 

「くっ、くそ!司一は!?・・」

 

「うかつに動くな清夜!」

 

カランカランカラン・・・

 

達也が叫ぶと同時に今度は本物の自販機に売られているような缶が飛んできた。

しかし、それも細工された特殊な缶だった

 

シュゥゥゥゥ・・・

 

投げ込まれてすぐ缶は煙を巻き始めた。

 

「手製のスモーク!?」

 

充分に視界を潰しているのに何故ここまでやるのか分からない達也。

だがそれはすぐに身をもって理解することになった。

 

ドンッ!

 

「達也!?」

 

フラッシュバンで聴こえづらくなった耳でも聴こえる重い発砲音が響いた。

すると達也の体はバラバラ飛び散った。

声すらも出せなかった。

 

 

全身の体組織の破壊を確認

自己修復術式オートスタート

コア・エイドス・データ、バックアップよりリード

魔法式ロード・・・完了

自己修復・・・完了

 

 

刹那の時で血も服も体も元に戻った。

克人は叫ぶ

 

「アンチマテリアルライフル(対物ライフル)!全員ファランクスの後ろに集まれ!」

 

そう、その音は拳銃とかサブマシンガンのような甘いものじゃない。

対物ライフル。

本来、戦車や輸送機といった分厚い装甲を撃ち抜くためのライフル。

かするだけでも人は死ぬし、当たれば硬化魔法でも防げず木っ端微塵になる強力なライフルだ。

達也としては今更遅い注意だが当たったとは言えなかった。

 

「達也!達也!そっちの方で音がしたけど無事なのか!?」

 

「だ、大丈夫だ清夜。()()()()()()()()()驚いただけだ。それよりも自分の身を心配しろ。」

 

達也は「精霊の目」で狙撃手を探った。

飛んできた弾道を伝い過去のエイドスを調べれば狙撃手が分かる・・はずだった。

 

(いない!?弾の発射地点に誰もいない!ライフルさえ見当たらない!どこだ!?どこにいる!?)

 

いくら探れど敵のエイドスは見当たらない。

化かされてる気分だった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2095年 4月22日 ????

 

狙撃手がいたのは廃工場からほど近い山。

と言ってもそこから達也の位置まで直線距離でも800m

その距離から当てただけでも警察の対テロ部隊のスナイパーで通用するほどなのだが当の本人は気づいてなかった。

 

「あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「当てたと思ったんだけど当たってなかった・・・」

 

「珍しいわね。あなたが外すなんて。」

 

「うぅ、やっぱりエコーさん達に任せればよかった。マスターに怒られる・・アルテミシアも私達も捨てられちゃうよ・・・ふぇぇ・・」

 

「当てなくてもいいって言ってたじゃない。役目は果たしたんだから褒めてくれるわ。それよりも薬莢拾って逃げるわよ。」

 

「う、うん」

 

観測手の少女はスコープ機能で改めて確認する。

自分達の主、その将来の難敵の姿を

 

「あれがマスターを痛めつけた男・・・。」

 

無愛想というだけで見た目は普通の男。

とても強いとは思えない。

 

「それを言ったら、あの人こそ強そうには見えないわね。ふふふ、それでは第一高校の皆さん、御機嫌よう。次は()()()でお会いしましょう。」

 

二人はその場を後にした。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2095年 4月22日 ????

 

ちょうど同じ頃、廃工場とは違う場所でブランシュのメンバーは何者かに追い詰められていた。

 

「はぁ、はぁ、どうなってやがる!?10人もやられたっていうのに敵の姿がまるで見えねぇぞ!」

 

今回の作戦でブランシュが動員したのは学生を含め200名

学校に130名、廃工場に70名という割り振りだった。

そのうち廃工場で捕まったり死んだりしたのが合計58名。

残りの12名は達也やエリカ達から逃げおおせて近くの山に逃げ込んでいた。

だが彼らも鉄槌から逃げることは出来ない・・・

 

「バカ!大きい声を出すな!やられ・・」

 

ブスブスッ!!

 

「グボェッ!」

 

男の一人が頭を撃ち抜かれた。

これが初めてではない。

ある者は同じく撃ち殺されて、またある者は”見えない何か”で体を貫かれて・・・

男も女も容赦なくだ。

今ので殺されたのが11人目。

 

「ちくしょう、俺が最後かよ・・・」

 

こうしている今でも敵がどこにいるかわからない。

とりあえず男は大きな岩に飛び込み身を隠すが

 

「無駄だぜ」

 

口調こそ男っぽいが少女の声が聞こえた。

するとその瞬間・・・

 

ドォッブスッ!!

 

「グブォッ!!」

 

”見えない何か”が体を貫いた。

感触からすれば恐らく槍。

いや、それよりも異常なのは銃弾をも防げるような大きな硬い岩を貫いて男の体を刺したことだ。

男は『何故』とも言えぬまま息絶えた。

 

バシュッ!!

 

「アタシの加速・加重系『ダブル・ブースト』は一方向のベクトルに対して速度と重さがそれぞれ二乗になる魔法だ。威力(運動量)の計算は基本、『1/2×重さ(正確には質量)[kg]×速さ^2[m/s]』だから二乗されたら結果的に威力は跳ね上がって岩をも貫くんだよ。」

 

空気が抜けるような音が響くと今まで誰もいなかった場所からフルフェイスヘルメットとアームスーツを付けた人間が二人現れた。

一人はベレッタ Px4 “ストーム” 、もう一人は少し細身な槍を装備していた。

 

「解説は結構ですがもう死んでますよ」

 

「えっ!?嘘ッ!?本当だ!」

 

「たく、あとは死体処理部隊に任せて離脱します。あまり勝手な行動をしないように。ただでさえ大幅な作戦変更が行われているんですから。これ以上のイレギュラーは困ります。」

 

「さっき許可なしに持ち場離れてマスターを助けに行ってたじゃん。助けたとはいえ、たぶん始末書ものだぜアレ」

 

「あ、揚げ足を取らなくていいんです!」

 

「は〜い」

 

バシュッ!!

 

また空気が抜けたような音が響くと二人の姿は影も形もなくなっていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2095年 4月22日 廃工場 門

 

警戒という沈黙の中、最初に声を上げたのはレオだった。

 

「第二射が・・・こない?」

 

「こない・・・わね。」

 

エリカも見渡すが何も変化はない。

清夜は悔しげに声を上げた。

 

「狙撃者にも逃げられたね・・・」

 

「あぁ・・・俺達の負けだ。」

 

追い詰めたと思ったが最後の最後でしてやられた。

エリカは落胆し、レオは拳を地面に叩きつけた。

 

「そ、そんな・・・」

 

「せっかく追い詰めたのに・・・くそ!」

 

達也も克人も清夜も二人にかけられる声はない。

 

(疑問と悔しさしか残らなかったが・・・せめて深雪のフォローはしておこう。)

 

カシッ・・・

 

達也がCADの引き金を引いて戦いの幕は閉じた。

ただ一人、薄ら笑みを浮かべながら・・・

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2095年 4月22日 逃走車 車内

 

司一を乗せた車は廃工場地帯を抜け、山道や裏道を走っていた。

警察などの追っ手は見えない。

司一は高笑いをしながら廃工場を見た。

 

「ふへへへ・・・あは、あははははは!!ざまぁみろ!私は捕まってない!お前らの負けだ!」

 

襲撃は失敗、廃工場の戦力も潰されてしまっては勝利とは言えない。

最早、ただの負け惜しみ。

子供が屁理屈言って勝ち誇るそれと同じだ。

しかし彼には忘れられない存在がいた。

 

「にしても、し、司波達也めぇぇ。彼奴さえいなければ・・・くそくそくそ!私を、ブランシュを敵に回したことを絶対に後悔させてやる!」

 

「司様、こちらを・・・」

 

隣に座っている黒髪の女がタオルを差し出した。

司一はそれを受け取り、顔を拭くと元の大物ぶった薄ら笑いに戻っていた。

 

「ふぅ、ありがとう。それでこの車はどこに向かっている?横浜、大阪?それとも福岡か?出来れば大都市の拠点がいいが都内だけは勘弁してくれよ。」

 

「そうですね。具体的には言えませんが強いて言うなら・・・”地獄”という表現が近いかと」

 

「は?」

 

『地獄』なんて地名、司一は聞いたことがなかった。

そもそも彼女たちがどこの所属かも知らない。

司一の表情が再び氷ついた。

 

「き、貴様ら、一体どこから来た?」

 

二人は答えない。

代わりに不気味な笑みを浮かべた。

 

「ひょひょひょ・・・」

 

「きょふふふふ・・・」

 

ここでやっと司一は確信した。

逃げたと思ったらもっとタチの悪い”何か”に捕まったことを・・・

 

「ま、ままままままさか、貴様ら!どこかの諜報機関から私を殺しにきた・・・」

 

「そう言うと思って、我らが御主人様からお前に伝言がある。」

 

運転手である茶髪の女の言葉を黒髪の女が引き継いだ。

 

「『我々は君とお話しがしたいだけ。殺すつもりはない・・・けど()()()()()()()()()。」

 

「そのやり口、言い方・・・はっ!?まさか・・・」

 

司一は”何か”の正体に気づいた。

だが、まだ伝言は終わっていない。

黒髪の女は背中から鉈を取り出した。

 

「『生かさず殺さず・・・悪意と野望で塗り固められた()()()()()()()()()()()()()()()』」

 

「く、くるなぁぁぁぁぁあああぁ!!」

 

司一は腕輪型のアンティナイトを黒髪の女に向けた。

その瞬間・・・

 

ズパァッ!!

 

「ぎいぃぃぃぃぃいいいいあああぁぁぁああ!!」

 

鉈で腕を一刀両断された。

そして司一の意識は闇に落ちていった。

悪夢の終わりではなく悪夢の始まりと知って。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

家族の生活を守るため、命を懸ける友のため、好きな人の無念を晴らすため、

勇気ある少年少女達が悪の組織と戦った。

結果は諸手を挙げて喜べるものではなかったが多くの生徒は彼らを賞賛するだろう。

 

 

 

 

しかし、彼らの中には人の皮を被った悪い狼が一匹紛れ込んでいる。

 

 

 

 




すいませんニ万字越えませんでした。それでも充分、話が長いですが

原作とは違う結末になりましたね。
達也に捕まらなかった司一の運命はいかに!?(扱いという意味でも原作より酷いことになるのは確定。)


次回予告!

戦いは納得のいかないまま終わりを迎える。
だが納得しようとしまいと次の嵐は彼らを待ってくれない。

次は伏線を多く用意する予定です!
次回をお楽しみに〜

「これはダメじゃない?」、「これだと運営に取り締まられるんじゃない?」という場合には是非、メッセージなり感想なりで報告をお願いします。感想、誤字脱字、評価、アドバイスもジャンジャンお待ちしております。
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