皆さん最新刊の試し読みしましたか?
私も今日読んだのですが・・・
イギリスが消滅しているの!?と思いました。
次の話はもう出来ていたのに・・・
オリジナル要素でイギリス要素も入れたらこのザマです。
もしかしたら書き直しで次回遅れるかもしれません。
前回までのあらすじ!!
アイクとエレンは武器の納品のためにロアナプラに降り立つ。しかし武器取引後、ホテルモスクワに襲われることに。しかもUSNAのスターズとフォースリーコンにまで襲撃を受け、事態は一刻と危なくなっていた。
2095年 5月3日 タイ ロアナプラ 市内 路地
USNAの一団はアイク達に逃げられたもののまだ追撃出来る範囲内だった。
その中でもこのチームγは一番に標的と接触した。
『こちらチームマーキュリー!すまない、逃げられた。』
「大丈夫だブラザー。こちらで標的を発見した攻撃を開始する!海兵の意地を見せろよお前ら!」
「「「「Yes, Sir!」」」」
ググッ!バババババッ!
一人が加重系魔法で足止め、残りの4名は一斉射撃を仕掛けた。
この連携はよく見られるもので
加重系魔法で敵の足止め→移動系魔法で敵の盾を排除→残りの人間で集中射撃
というのが基本的な戦術だ。
今回、移動系魔法を使わないのはアイク達が盾を持っていないからだが
彼らは一つ勘違いをしていた。
それは
「おっと!」
すべての弾はその手前でその運動量を失い、その場で静止した。
これはお得意の『磁力返し』による磁力の盾であったが端から見れば別の魔法のように見える。
「障壁魔法かクソ!このタイミングで間に合わせやがった。」
「それに見ろよ。あいつら情報強化が強すぎて加重系がピクリとも効かねぇぜ」
キャーーーー!!
遅れて娼婦の悲鳴が一帯に響いた。
「今度は弾を魔法で加速させて障壁を打ち破る!火力を極力一点集中!・・・」
撃ち方用意と言おうとした瞬間、仲間の一人が気づいた。
「隊長!5時の方向!所属不明の武装勢力!」
「なんだと!?」
振り向くと武装した男達がこちらに向かって走っている。
アイクもそれを確認すると大きな声で呼んだ。
「ここは任せる!皆殺しにしろ!」
「ちぃっ!!DEMの増援かよ!!」
予想外の展開に彼らの中で自然と焦りが高まる。
だがそこは百戦錬磨の特殊部隊員。
数多の死地を経験した彼らはもたつくこともなく銃口を増援に向けた。
「迎撃しろ!」
バババッ!ババババババッ!!
隊長の掛け声と同時に撃ち合いが始まった。
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2095年 5月3日 タイ ロアナプラ
チームγがアイクを見つける少し前のこと。
ホテルの一室に仮設司令室をおいたUSNA指揮官達は地図を広げ戦況を確認していた。
部屋にはフォースリーコンの指揮官と副官、それとスターズの『一等星級』と呼ばれる最上位魔法師が三人。
「さすが『全員がライフルマン』と言われる海兵隊。皆、見事に鍛え上げられてますねマークス中佐」
その中でも一際目立つのはスターズの仮面をつけた赤髪の女性だ。
赤髪と言ってもエリカのようなオレンジに近い赤髪ではなく、どちらかというとルージュに近い赤髪だった。
ハートマン軍曹ばりに強面のマークス中佐は年下であるはずの彼女に敬礼する。
「ハッ!USNAの最強である貴方に言われるとは光栄でありますシリウス少佐!」
「所属は違えど階級は貴方が上ですよ。そこまで謙らなくても」
「いえ!今回の海兵隊、スターズの共同作戦においてはシリウス少佐が指揮官でありますがゆえ、態度を変えることは出来ません!」
海兵隊で鍛え上げられた人間として規律は絶対に守らなければならないのだろう。
それに彼自身、彼女に謙ること自体に不満はない。
だからこそ頑なに態度を変えないのだ。
「そうですか・・・では作戦が2ndフェイズに入ってからの対象の動向を教えてください。」
「報告によりますとポイントL14にて交戦。路地の奥に入っていたとのことです。そこから先は確認されていません。あと私からも報告なのですが辺り一帯に薄く広範囲にジャミングがかかっています。通信は大丈夫なのですが監視衛星や仕掛けたカメラからの映像が受信できなくなっています。」
「敵も考えてはいますね。ですが仕掛けたカメラはともかく監視衛星は今作戦においては気にせずともよいでしょう。」
シリウスは叱ることはしなかった。
そもそも作戦行動中に叱るというのは時間の無駄にすぎない。
叱る暇があるならば指示を出すなり、次の一手を考える方がよっぽど有益だ。
それに現地の特殊な状況を見れば無理もない。
「ええ、建物の間に布が張られていますから監視衛星も役に立たないかと。ただLPS(ローカルポスティングシステム)がありませんから路地に入られるとどうしても見失います。」
「そこが問題ですね。そして路地に入られた今、頼りはこの紙の地図だけ・・・1stフェィズをしくじった我々が言うのもなんですがデジタルに頼りすぎるのもよくありませんね。」
そう言いながら次なる一手を考えていると部下からの連絡がきた。
『チームγよりシリウス少佐へ!ポイントM16にて標的発見、戦闘に入りましたが途中でDEMの増援が現れました!現在標的はポイントH10の方向に逃走中!我々は増援に釘付けにされて追えません!』
『こちらチームマーズ!ポイントB7でも武装勢力を確認!察するにDEMと思われます!』
他にも二件ほど同じような報告が入った。
さすがに相手は武器商人、手回しが早いということなのか。
だがシリウスは慌てることも迷うこともなく次の指示を出した。
「各隊そのまま迎撃して対象を孤立させてください。マークス中佐、全体の指揮をお願いできますか?我々は前線で現場指揮をとります。」
「少佐自ら最前線に?相手はDEMのトップと言えど二匹。3rdフェイズに移行せずとも」
それ以上、中佐は声を出さなかった。
いや、出してはならないと身体が勝手に判断した。
「・・・どうやらマークス中佐は本作戦を狐狩りか猛獣狩りと勘違いされているようですが、あれは猛獣という枠には収まりきれません。一人は先代のシリウス。四葉の『極東の魔王』に匹敵する実力者です。さらにもう一人は佐渡防衛戦で艦隊を滅ぼしたと言われている魔法師。去年ヨーロッパで『王政の春』を引き起こし各国首脳を恐怖させた知能犯でもあります。殺るなら核弾頭を撃ち込むぐらいの勢いでないと狩れませんよ。」
ゴクッ・・・
マークス中佐は息を飲んだ。
話を聞いたせいもあるが、それ以上にアンジーシリウスの纏う雰囲気が変わったからだ。
「りょ、了解です。」
(こ、これが戦略級魔法師・・・海兵として20年戦ったこの俺が少女一人に震えてやがる)
「これが・・・スターズ」
マークス中佐の副官もそう呟いて後ろに組んでいる手を震わせていた。
幸いにもスターズの人間にその姿を見られなかったが二人とも心の中で情けない自分を恥じていた。
「シリウス少佐、準備完了しました。」
「同じく」
スターズの二人がシリウスに報告した。
自身も装備を整えるとおおまかな方針を決める。
「分かりました。それではベンジャミン・カノープス少佐はチームマーキュリーに、クリフ・カペラ少佐はチームジュピターに合流を。私は遊撃に回りフォースリーコン、スターズの各分隊を援護しながら対象を追撃します。」
「「了解」」
スターズの中でも選りすぐりの一等星が動き出した。
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2095年 5月3日 タイ ロアナプラ 市内
アイク達はポイントM16から逃げた後、今度は路地出口付近でホテル・モスクワに見つかった。
それもトラックの荷台にトンデモないものを載せてる状態で。
「重機関銃まで用意してるのか!?」
「アイクこちらです!」
二人は右にあった道に逃げ込もうとする。
「標的発見!!攻撃を・・・」
男が重機関銃のトリガーに指をかける
しかし、そこで仲間の一人が攻撃を止める。
「待て!」
「なんだよ!?」
「上見ろ!」
仲間が指差した先には屋上を駆ける武装勢力。
ホテル・モスクワと同じくらいの重装備だ。
だから武装勢力の正体については疑う余地もなかった。
「DEMの私設部隊か!?」
男は照準をアイクから屋上の人間に移した。
アイクは逃げながらも指示する
「私達はこのまま逃げる!殲滅しろ!」
「チィッ!」
ドォババババッバババッバババッ!!
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2095年 5月3日 タイ ロアナプラ 市内
重機関銃の重い銃声が鳴った頃、バラライカは車に乗ってある場所に向かっていた。
『大尉、こちら第3分隊!DEMの増援!数は10!現在ポイント”ラドガ”にて増援と交戦中!目標二人は予定どおり北に向かいました。』
「よくやった、そのまま目標を孤立させろ。だが深追いはするなよ。」
『はっ!』
「よくやった」と言った割には機嫌がよくない。
彼女自体、いちいち報告聞いて飛び跳ねたり肩を落とすような間抜けではないが
報告を聞いている彼女の姿にボリスは違和感を感じていた。
「同志軍曹、最終地点の配置を急がせてくれ。」
「増援が現れたことで想定ケース4になったとはいえ、目標は順当にコースを移動しています。何か腑に落ちないことでも?」
「おかしいのだよ軍曹、その
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2095年 5月3日 タイ ロアナプラ 市内
おかしいと感じたのはバラライカだけではなかった。
アンジー・シリウスもまた違和感を感じていた
『は?今なんと言いましたか少佐?』
「おかしいんですよベン。今、前線に出て感じましたがこの状況、
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2095年 5月3日 タイ ロアナプラ セントラルパーク
十数分後、追っ手から逃れたアイクとエレンは街の中央公園に訪れた。
普段なら家族連れで賑わうはずの公園も今日に限って大人はおろか子供すらいない。
ただ二人、ベンチにいる男女を除けば・・・
「お初にお目に掛かる。私はホテル・モスクワのソーフィヤ・イリーノスカヤ・パブロヴナだ。」
「初めましてDEM代表取締役アイザック・レイ・ペラム・ウェストコットと申します。ミス バラライカ。貴方達の話は部下から聞いております。ロアナプラのホテル・モスクワは全員軍人崩れだと。」
自己紹介はいらんよと言う代わりににアイクは彼女のコードネームで呼んだ。
こんな時でもアイクは武器商人の笑顔を忘れない。
しかし彼女がコードネームや笑顔に嫌悪のような顔で答えることはなかった。
「はるばる日本からよく来てくれた。鉛玉で歓迎しようと思うがいかがかな?」
「おや随分と物騒な歓迎ですね。確か初対面のはずですが何か因縁でも?」
「なに、これは単なる個人的な逆恨みだ。3年前の佐渡侵攻戦。当事者の貴方はご存知のはずだ。」
「ええ、人並みよりすこし知っている程度ですが。」
嘘だ。
アイクは忘れられるはずがない。
始めてはっきり異常を確認した出来事なのだから。
バラライカも嘘に気づいているがあえて言及することはなかった。
「あの戦場には部隊が違えど血を分けた家族同然のスペツナズの戦友がいたのだよ。これだけ言えばお分かりいただけるだろう?」
スペツナズ
これは新ソ連の特殊部隊のことだ。
USNAのように陸海空のいずれかに属しているわけでなく新ソ連の特殊部隊は魔法師の特殊部隊を含め全てスペツナズを指している。
「・・・つまり貴方達は敵討ちをしたいと。」
「その通りだよミスター。」
「大方、KGB(旧ソ連の諜報機関。新ソ連発足時に復活した)に来ることを教えてもらったってところですか。それで
「出てきなさい。アンジー、ベンジャミン、クリフ」
エレンが呼びかけると今度はバラライカとは逆方向の茂みからシリウス、カノープス、の三人が姿を現した。
しかもご丁寧に起動式まで展開させ、いつでも魔法を発動出来るようにしている。
「気づいてましたか・・・」
ボリスが仮面と赤髪を見てバラライカに耳打ちする。
「大尉、あの赤髪の女・・・まさか」
「分かっている軍曹。あれはアンジーシリウス率いるスターズだ。」
スターズとはUSNAの統合参謀本部直属の魔法師部隊だ。
陸軍、海軍、空軍、海兵隊に続く第5の軍系統として扱われており
スターズはその中でも最精鋭の魔法師が集まる。
もちろん各軍にも魔法師はいるが魔法の練度や運用方法に大きな差があり
ゆえにUSNAの最強魔法師部隊。
そして
エレンはジリジリと近寄るスターズの三人の前に立ちふさがった。
「お久しぶりですねリーナ。あぁ、今はシリウスの称号を貰ってアンジー・シリウスでしたね。それで何の用ですか?」
「黙れ!シリウスの称号まで手に入れといて国を裏切った愚か者め!貴様の後をついでも何の名誉にもならない!」
リーナと呼ばれたせいかアンジーシリウスは激昂して話にならない。
代わりに後ろにいたベンジャミンが話に入ってきた。
「お久しぶりですエレン・シリウス元大佐。単刀直入に申し上げます。現在、貴方とアイザック・レイ・ペラム・ウェストコットに殺害命令が下されています。しかし貴方が大人しく投降し装備を提供すれば罪を減じ大佐での原隊復帰を許可するとのことです。もちろんシリウスの称号は戻りませんし、国外に出ることは出来なくなりますが命と職は保証します。」
「殺す気満々だったくせによく言えたものですね。」
「ミスターも無抵抗でこちら側についてくれるならあらゆる協力、援助を惜しまないとのことです。」
「だってさエレン」
アイクはやれやれという表情でエレンに返した。
「自分の件は自分で決めろ」と言いたいのだろう。
だからエレンはキッパリと返答した。
「貴方もお久しぶりですベン。では私達も率直に返しますが答えはNOです。そもそも私とカレンをハメたウィルソン・・・」
「ウィルソン・フィリップ上院議員は先日更迭されました。」
「!!」
「投降してくれれば、あなたを五年前助けなかったこと警告なしに攻撃したことも全て我々、いえ国家をあげて貴方に償っていくつもりです。それを約束する大統領の書分もこちらにあります。それでも駄目ですか大佐?」
今度は元とはつけなかった。
シリウスと呼ばれたエレン達を陥れた元凶を退治したことを伝え、さらに情に訴える。
スターズ、根っからの武闘派と思われているがこの男は戦闘だけじゃなく交渉も出来る政治将校の適性もあるようだ。
それでもエレンは揺るがない。
「だとしてもいままで悪性腫瘍の存在に気づかなかった無能な国に戻るつもりはありません。それに私は例えアイクに裏切られるとしても信じてついていくと五年前に決めました。これはカレンも同じ気持ちです。」
「そういうことですベン。この女はすでにその男の犬に成り下がっている。戻ってきてもただの恥さらしですよ。ならいっそのことここで・・・」
シリウスの言葉にあわせてエレンは腕輪型のCADに手を伸ばす。
彼女ならアイクを守りながらでも殲滅は余裕だろう。
しかしその手をアイクは止めた。
「止めないでくださいアイク」
「まだ日本政府の監視があるかもしれない。それにね必要がないんだよエレン。
ピンチにも関わらずアイクは優しく笑った。
その笑顔にエレンは少し赤くなるがバラライカの声ですぐに現実に戻された。
「逃げられるとでも?」
バンッ!
右の遠くの方から弾丸が飛びアイクの目の前で止まった。
止めたのはもちろん磁力の盾だ。
「スナイパー・・・ですか。しかも魔法で加速させているとは。狙撃地点はマンションの屋上からですかね?」
「敵に位置を教えるほど間抜けじゃないわ。自分で考えなさい。」
スナイパーと言ってはいるが何もホテルモスクワだけじゃない。
磁力探知で装備を調べた限りUSNA、恐らくはフォースリーコンの人間も別地点からこちらを狙っている。
またスターズと思われる一団とホテルモスクワの別働隊らしき一団も公園の外でバックアップの用意に入っていた。
単純に言ってしまえば先程とは比べらないほどの狭い範囲で二つの軍隊に完全包囲されたのだ。
「そういえば・・・私が用意した増援はどうしました?」
アイクは時間を稼ぐかのように、しかし焦りの表情は見せずに話を変えた。
するとバラライカはハッと鼻で笑った。
「
アイクは笑みを見せた。
まるで生徒の正解を喜ぶ教師のような笑顔だ。
「どうして気づきました?」
「別に確証があったわけじゃないわ。だけど
続けるようにシリウスが語る。
「そしてこの可能性ならば様々な疑問にも納得できる。薄く広範囲に張られたジャミングは映像で第三勢力の存在に気付かせないため。そして貴方が増援を置いて逃げるのはどちらの武装勢力も味方じゃないから。」
「映像の妨害や命令ぐらいじゃDEMの増援と誤解しないでしょう」
「恐らく手品の種は
ここだけアンジーシリウスの推測が正しくなかった。
正しくは意識干渉型系統外魔法ではなく
より正確に言うと
まず先入観とは知った情報から生まれる固定的観念のことだ。
情報が少なければ少ないほど間違いやすくなるし、不安や恐怖で焦れば焦るほどドツボにはまりやすい。
アイクがやったのはまさにこれだ。
アイクはこの街にLPSがないことを利用し、両勢力が互いの存在に気付かないようにジャミングなどで妨害して情報を制限。
その後、精神干渉系領域魔法で範囲内の人間の不安、恐怖を煽った。
ドンパチに慣れているロアナプラの住人が一目散に逃げ出すのが不安や恐怖が膨れているその証拠だ。
そうして恐怖と不安をパンパンに膨れ上がらせたら最後に誘導して大きな声で攻撃命令するだけ・・・
あとは第三勢力の情報が入ってない彼らが互いに『DEMの増援』と勘違いし潰し合う。
そして潰し合えば潰し合うほどより間違った先入観を深めて、さらに潰し合う。
冷静に考えれば勘違いと気付くかもしれないが不安や恐怖が膨れ上がった精神状態で冷静になれる者はほぼいない。
だから、魔法の範囲外とはいえ冷静だった意味ではバラライカやアンジーシリウスは優秀な指揮官かもしれない。
気付くまでに双方半分以上の兵を消耗させてしまったわけだが・・・
「まぁ、そんなところですね・・・」
「もうお喋りはいいでしょう?そろそろ、おねんねの時間よ」
「こいつらを殺すのは私たちです。」
バラライカとシリウスがゆっくりと武器を構えた。
察するに双方ともアイク達だけでなく、互いの勢力もまとめて殺すつもりだ。
そんな危険な状況の中、アイクの顔に浮かんだのは恐怖でも怒りでもなく・・・
相も変わらず笑顔だった。
ただし先程とは違って『不気味な』という意味で・・・
「フフフ・・・」
「何がおかしい!」
ビュンッ!!バキン!
あまりの不気味さにアンジーシリウスは『ドライブリット』でドライアイスの塊を飛ばすがエレンの魔法障壁に防がれた。
バラライカも眉間にシワが寄っていた。
「私がこんな如何にもな場所まで馬鹿正直に誘導されたと思いましたか?違うんですよ。
「っ!!セルゲイ、シャミール!今すぐ奴をうt」
ドォンッ!!ドォンッ!!
バラライカの命令の直前、花火を打ち上げたかのような音が空から響いた。
そして次の瞬間、
対物ライフルでも出来る芸当ではない。
ボリスがその正体を語った。
「まさか、ハイパワーアンチマテリアルライフル・・・」
「バカな!魔法障壁を破るハイパワーライフルの対物ライフル仕様は
「その不可能をミスターは別の術式で可能にさせたんだよ。」
その声は発砲音と同じ空から聞こえた。
すると何もない所から数人の男が飛び降りる。
恐らく光学迷彩と魔法をかけた音の小さいヘリで来たからいままで気づかなかったのだろう。
命綱なしの魔法による着地は魔法戦闘の技量の高さを示していた。
音が鳴り止むとバラライカは忌々しげに睨んだ。
「ッ・・・タイ王室魔法団。タイ王国のエリート魔法師部隊か。」
だが驚くのはまだ早かった。
「お待たせしました。お怪我はありませんかミスター・ウェストコット」
「いえ、こちらこそこんな所までのお迎え感謝いたします団長。」
最後に降りてきた、先程の声の男に一同氷づく。
見た目こそ軍人だが屈強さで言えばボリスのほうが少し上だ。
では何故か。
それは降りてきた男達とは比べものにならない魔法師だからだ。
「私と同じ
「どうやら挨拶はいらないようだなアンジー・シリウス、そしてバラライカ。」
「なぜ貴方がこんな所に?」
「それは愚問だ。ここはタイ王国の領土。そして私はタイ王室に忠誠を捧げている身。別に不思議な話ではない。むしろ君こそ何でここにいる?」
「ッ!・・・」
確かに答えてはいる。
けどアンジーシリウスが聞きたいのはそんなことじゃない。
「そんなことはどうでもいい!こちらが聞きたいのは何故貴様がアイザック・ウェストコットを迎えに来ているかだ!!」
代わりに怒り爆破寸前のバラライカが理由を問うた。
「それはもちろんこの御仁が我が
「王の客人だと!?」
「今回、ミスターは日本とタイ王国をつなぐ特別大使で来訪されている。だが別に撃ってくれても構わんよ。そうすれば
掃除、つまりはここのマフィア、諜報員の一掃を意味指す。
ヘリが降りてきてアイクとエレンは足をかけた。
「ま、まて!裏切り者!?」
「くそっ!逃げるな!」
バラライカとアンジーシリウスが慌てて駆け寄ろうとするがソム・チャイが立ち塞がる。
「
「チッ!・・・」
バラライカは足を止めた。
特別大使とはいえ今のアイクは外交官。
それを攻撃すればすぐさま国際問題になる。
そんなことになればタイ王国はロアナプラのマフィア、諜報員を一掃する大義名分を手に入れてしまう。
しかも新ソ連が世界中から非難をあびる。
そう思うと動けなかった。
部下のためにも、祖国のためにも。
「団長スナイパーおよびバックアップチームの制圧完了しました。こちらの負傷者は0です。」
「と、いうことだ。安心したまえ制圧と言っても殺してはいない。帰るまで大人しくしてくれれば・・・」
「そんなの知らない!どけっ!」
ただそれでもシリウスだけは押し退けようとした。
その瞬間、耳につけてた通信機にノイズが入り、誰かが通信に割って入った。
『そこまでよ、お嬢ちゃん。これ以上は本国のプラスにならない。』
ボイスチェンジャー特有の声だが口調からして相手は女だった。
いや、そう思わせるフェイクか?
現段階では結論が出せなかった。
「通信に割り込み!?誰だ!」
『私の正体なんてどうでもいいじゃない。
(まさかCIA!?どこ?一体どこに!?)
通信相手はこちらを見ているはず。
アンジー・シリウスは周りを見渡すが通信相手は見当たらない。
彼女はそのまま少し後ろに下がり小声で返す。
「プラスにならないとはどういうことだ?」
『ここは工作、諜報において最重要拠点の一つ。ここを失うのは我らUSNAにとって大きな損害なの。だから今すぐ撤退しなさい。』
「しかしこの作戦は・・・」
アンジー・シリウスはあくまで食い下がった。
そんなワガママ娘に痺れを切らしたのか相手は本音で語った。
『分かれよ小娘。ただでさえ常軌を逸した作戦行動だ。NSA(国家安全保障局)とヴァージニア・バランスの許可で来ているかもしれねぇが、もしここで攻撃するならお前らまとめて国家反逆罪が適用されるぞ。分かったか?分かったら返事。』
「くっ!りょ、了解・・・」
ブッ!
通信を一方的に切られた。
だが通信相手に対して恨みはない。
憎むべきは
そしてエレン・M・メイザース。
彼女は二人を睨みつけた。
それにエレンが気付き嘲りの視線で返した
「それではさよならですリーナ、ベン。クリフ。殺されなかったことを泣きながら感謝しなさい。」
「いつかその余裕の面を引き剥がしてやる・・」
「ふっ、詰め将棋もできない子供にやれるもんならやってみなさい
エレンはそう言ってヘリに乗り込んだ。
対してアイクはというと電話をしながらもう一人の敵に視線を送っていた。
「もしもしラグーン商会ですか?ウェストコットです。・・・はい、仕事はキャンセルで・・・ええ、おかげさまでミンチになりませんでしたよ。・・・もちろん前金10万ドルは貴方達のものです。・・・ええ、また機会があれば、またお願いします。2丁拳銃にもよろしく言っといてください。それでは・・・」
ピッ・・
「ちっ・・・他にも逃亡策は用意していたということか。身の保身にたけた男だ。だがこれで終わったと思うなよ。アイザック・ウェストコット・・・」
「私としては永遠にさよならがいいですね。外国の893者に落ちぶれた元軍人なぞに構ってやる時間も金も人員もないんでね。新ソ連軍が貴方を追い出す理由も今ならよく分かりますよ。」
「・・・」
バラライカは無言で睨みつけた。
しかし何も出来ない。
アイクは話を続けた。
「敵討ちという感情論で部隊を動かしといて私のようなネズミを一匹も仕留められない人間なんて軍にいらない。結局、どんなに統率が取れていて、精強で、武器を揃えていようと貴方達はただのチンピラ。そして貴方達がやっているのは”作戦行動”ではない、ただの”おままごと”だ。」
何も言い返せない。
いや言い返してはならない、激昂して発砲してはならない。
怒りはとっくに爆発しているがギリギリのところで行動を堪えていた。
脅威なしと確認されたのか王室魔法団の人間もヘリに乗り込んでいく。
「行きましょうミスター。国王がお待ちです。」
「分かりました。では・・・」
アイクが別れの挨拶をしようとした。
すると我慢が出来なくなったのか、その前にバラライカの口が開いた。
「・・・貴様は・・・・貴様はどうなんだ。私には分かる、貴様も我々と同じ地獄を見て己の底から湧き出る感情に従い戦っているはずだ!それなのに何故こうも違う!!」
この質問に返す必要も義理もない。
だが本人も何を思ったのか分からないが返答する。
「そうですね・・・私も貴方も浅ましい人間、いや死人だ。生きている人間の幸せが羨ましくて妬ましくてならない。では何故違うか?それは・・・」
私が武器商人だから
答えはとてもシンプルだった。
きっとこれ以上の答えはないだろう。
アイクは今度こそ別れの挨拶をした。
「ではさよならだ阿呆のチンピラ君。この悪都で哀れな人形として踊り続けるがいい・・・無論、永遠にね」
バラライカは自身の悔しさに顔をしたに向け、体を震わせていた。
「さすが王室直属。練度が高いですね」
「いえいえ、まだ白兵剣技が課題でして・・・」
「では千葉家や軍に剣技指南を打診してみましょうか?」
「おお!イリュージョン・ブレード千葉修次がいる白兵剣技の名家ですね。それはありがたい!」
HAHAHAHA・・・
しかしアイクはそんな声に目もくれずソム・チャイと談笑を楽しみながらヘリに乗り込んだ。
全員乗り終わるとヘリは飛び立ち、数分後には目で見えないぐらい遠くなっていた。
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2095年 5月3日 タイ ロアナプラ ???
その姿を見ていたのはUSNAとホテル・モスクワだけではなかった。
『大佐。こちら鏑木。対象の離脱を確認。このまま王室に向かうものと思われます。スターズとホテル・モスクワはまだ撤退してません。送れ。』
「ああ、こちらでも確認が取れた。俺は勇三に報告があるから鏑木と黒坂は数人を連れてスターズの動向を監視。他は撤収作業に移る。送れ。」
言語は日本語だが見た目は船で品を売る行商人だ。
言うならばその一団は風景や人に綺麗に溶け込んでいた。
『こちら黒坂、了解。』
通信が切れ一佐と呼ばれた男は肩の力を抜くと自然と笑みが浮かんだ。
「がははは、あの修羅場を戦わずして切り抜けやがったか。東城、お前の雇い主そうとうブッ飛んでやがるぞ。」
今はいない元部下に呟きながら男は闇の中へと消えてった。
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2095年 5月3日 タイ ロアナプラ リップオフ教会
同じ頃シスター達も教会の中からヘリの飛び去る姿を見ていた。
「アイザック・ウェストコットか・・・一体何者ですかね?」
「
「はい?」
「何でもないよ。いいから、さっさとシスターの仕事に戻りなエダ!」
「は、はい!・・・ブックマン、あんたが扱うには少し荷が重い物件だと思うぜ。」
そうして銃と麻薬と情報と金で汚れた彼女達の日常に戻っていく。
そしてこの出来事もこの街で起こる数多くの事件に埋もれて忘れ去られていくのだろう。
憎しみと因縁だけを残して
恨みだけはどれだけ安くしても誰も買ってくれない・・・
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2095年 5月3日 ???
「あ〜あ、まったく使えないじゃない・・・せっかくNSAを動かして、KGBにまで情報を流したのに。所詮は混血の小娘とアフガンの負け犬ね〜。こうなったら多少のリスク承知で日本最強のアサシンを雇いましょうか。フフッ・・・・ウフフフフフ・・・ああ、早く・・・早くあの女の壊れる顔が見たいわ。」
というわけロアナプラ編はここまで!!
詰め将棋をしていると思ったら大ドンデン返し
いかがでしたか?
少しは良くなったのではないかと勝手に思っています。
大尉がこんなポカするわけないだろうというのは今回はナシでお願いします。
これ以上の展開が私の技術不足で書けないこともありますが
大尉を出し抜くというが今回のポイントにしており、どうしても譲れないのです。
ついでにUSNAのチーム呼称で惑星の名前にしてあるのはスターズの部隊でγといった記号などはフォースリーコンの部隊となっております。
後、「王政の春」の詳しい内容は次回以降となります。
お楽しみに
次回予告!
ロアナプラを後にしたアイク達はクロアチアに到着。
そこで清夜はココ・ヘクマティアルと名乗る若い女のウェポンディーラーと再会する。
彼女は清夜に一体、何を語り、何を見せるのか!?
だがその前にヨーロッパはヨルムンガンド原作以上に危ない情勢を迎えようとしていた。
次回もお楽しみに!
「これはダメじゃない?」、「これだと運営に取り締まられるんじゃない?」という場合には是非、メッセージなり感想なりで報告をお願いします。感想、誤字脱字、評価、アドバイスもジャンジャンお待ちしております。